ああ……作者も楽しい世界に行きたい。 美味いもの食べたい……悲しみのない世界へ……(殴
腹が減っては開拓出来ぬ。
クラフターは村人が食事をする施設へと足を踏み入れた。 ここでは取引によって美味い食料を手に入れる事が出来る場所である。
ここに在住する村人は何を渡しても成立するから良い。 宝石やら石炭やらツールを渡すと色々と出て来るから、今日も そのつもりだ。
食事を通り越してレート調査場でもある。 渡すモノによって出てくる量や物が変わるからだ。
金塊1個ならシチュー系とかケーキモドキとか「カラーゲ」なるちょっとした量と大きさが並ぶ。 インゴット1個ならステーキが何枚も来たり、金塊の倍を超える量が来る。 9倍を超えるので損はしない。 寧ろ特だ。
何が出ても美味いが毎度食い切れないのでテイクアウトだ。 勢い余ってテイクオフをする時もあるくらい。
因みに土や丸石等の建材系はあまり成立しない。 やはりその辺で取れるから安価過ぎる、或いは無価値という事か。 ちっ。
「ひーふーみーよー、ひーふーみーよー」
何にせよ、食事だ。 先客が7名いて、うち後方にいる1名は知っている赤服村人だ。 例によってケーキモドキを食している。
クラフターは既にレシピを知り得ているから、取引してまで食う気はない。 それより「カラーゲ」なる物が欲しい。
外はパリッと。 中はジューシーな鳥肉を用いた食料。 未だにクラフト出来ぬから取引して食うしかない。 でも、いつかはクラフトしたい。
「はい、おつかれさまー」
残り6名は若いな……。
長年の感覚から、それが分かる。 背丈ではない。 若草の匂いや雰囲気。 新人クラフター独特の雰囲気に似ている。
ひとり、妙に大きく耳が垂れ下がる帽子を被った金色チビは、可愛くも何処と無く放置出来ぬ気持ちになる。 新人にある突っ走り行為をしそうな一方、問題に巻き込まれそうな危険を孕む。 他の仲間がいるから大丈夫かも知れないけれども。
「とほほ」
「どうしたの、ダリア」
その仲間……空色っぽい髪で背の高い村人はグッタリして元気が無い。 恐らく慣れぬ冒険で失敗でもしたのだ。 地下渓谷でスケルトンに射抜かれた反動のまま奈落の底に落下したとか。
或いはハイセンスな建造物と新人にありがちな自身の豆腐建築を見比べて落ち込んだとか。 つまるところ若造である。
ああいや、村人に建築が出来るとは思えぬから、別の話か。 だがそれらは経験と時間が解決する。 焦らなくて良い。
取り敢えず食事だ。 今日は金ではなく取引で馴染みあるエメラルドで試した。 相変わらずギョッとしたような歓喜したような反応と共に受け取られたから何かしらは出て来るか。
「あんなに頑張ったのに、分け分けしたらこれだけ」
「仕方ないよ。 機体の修理代や燃料代もあるし」
「毎日の食費もバカに出来ないしね」
食料が出て来たら分けてあげよう。 物資もな。
どうしてか、この若造達をある種の危険の中に放置する気になれない。 何故とは考えない。 故にと動く。 衝動に突き動かされるままに邁進する。 励ましと勧誘目的もある。
「イケスカ動乱があって、仕事が増えてると思ったのになー」
「イサオって人もいなくなったんでしょ?」
「工事はあちこちでやってるのにな」
「空賊が減ってるらしいですし、逆に仕事は減ってるのかも」
「ユーハングの影響?」
「でしょうね」
「でも飛行船護衛は引き続きあるハズで」
「なんでないのかなー」
「そ、それは…………ウチらがペーペーだから?」
「あー! あー! 聞こえなーい!」
ヨシヨシ食料が来た。 「カラーゲ」とケーキモドキとステーキが何枚も来た。 卵料理である「おむらいす」なるモノも来た。 総じて美味い。 湯気を立て、食欲を唆る匂いを建物に充満させる。 収穫して直ぐに食うスイカや生人参のような効率重視を捨てて、敢えて食を楽しむ為に求められた嗜好品……様々な創意工夫の努力と旨み。
もうね。 コレ美学。
効率のみを求めて来たクラフターほど、物資や技術を得たけれど、そういったワクワクやドキドキに欠けていたのではないか。 何にせよ、最近になってソレを学べたのは僥倖に至り。 そういった意味では、我々も若造かとクフクフと笑う。
しかし……たった1個でこれだけ来るのも感動ものだ。 元の世界の村人もこれくらいだったら良いのに。
ハァン合唱が喧しいのは共通しているが、それはそれ。 これはこれ。 楽しめるものは楽しもう。
ああ、そうだ。 お福分けしよう。 揃いも揃って物欲しげであるし。 共に世界を楽しもうではないか。
「あっ、あの人……あんなに肉を」
「唐揚げ……オムライス……食べたい」
「虚しくなるから。 余計にお腹空くから言わない見ない」
「でも匂いは防げない」
「うぅ」
「……あまりじろじろ見ないの……あれ!? 食べ物がどんどん消えていく!?」
「ユーハング人か!」
「う、噂の謎の技術……ッ!」
「余裕の笑み……羨ましいなぁ」
各種をアイテムスロットに入れていく。 ステーキ同様1スタック64個で纏められるから良い。
「こっち来たよ!」
「どーしよ!?」
「大丈夫。 悪い事はしないハズ」
「で、でも怖いよぉ」
「万が一は逃げる用意を」
何でか此方を見て怯えてる若造。 可哀想に、冒険の最中で先輩に騙されての決められた建築の強制労働や全ロスト、荒らし被害に遭ったか。 自身は そんな事はしないけどなぁ。
だが臆するな。 それで楽しい事に溢れる世界から身を消したら悲しい。 これから先、それ以上の苦難もあるだろうが、同時に楽しい事もあるのだから。
ますます同情の念に駆られたクラフターは、相手のテーブルに食料を設置した。 好みが分からないのと、どうせ食い切れないので置きまくる。
「わっ!? 今度は突然、消えた料理が目の前に!」
「えっ? くれるの?」
「そうみたい」
「やったー! オムライスー!」
さあ。 たんと食え。 元気を付けろ。
空腹は駄目だ。 走れないし体力が回復しなくなるばかりか、下手するとダメージを喰らって瀕死状態だ。 そんな状態では冒険出来ない。 仲良く分けあって食するが良い。 班の結束も固まる。
「唐揚げもくれるって!」
「良い人じゃん!」
「ありがとうございます。 この恩は いつか返します」
「唐揚げ! 唐揚げ!」
「ちょっと待って。 何でソースをかけようと?」
「え? 醤油しょっぱいよ?」
「私はどっちでも良いけど、ソースはちょっとーって感じぃ?」
「ソース!」
「醤油!」
「マヨ……」
「「なんか言った?」」
「ひぇっ!? な、なんでもありません!?」
おかしい。 何故か「カラーゲ」を巡って争いのハァンが響いた。
醜い。 先程までの同情から一変、欲深い連中だとゲンナリしてしまう。
クラフターは「カラーゲ」を 1個かじって眺める。 たくさんあるんだから仲良く分け分けすれば良いのになぁと。
マルチにあるあるな土地や物資の奪い合いも、客観的に見ると虚しいがコレもまた虚しかった。 堕落の食がこういった美醜を生み出す。 それを見て考えて食う「カラーゲ」もまた美味かった。 食とは奥深い。
「この人、そのまま食べてるよ」
「こっちを見ながら、美味しそうに」
「食い散らかして行儀悪いけど……とても美味しそうに食べるわね」
「仲良くしろって事か」
「そうね……小皿で分けて食べましょうか」
「みんな違って、みんな良い」
おや。 パタリと大人しくなって食べ始めたぞ。 なにか黒っぽい液体やドロドロした白い謎の液体を組み合わせて。
そういえば、自分のテーブルにも置いてある。 クラフトして食する。
美味い!? 美味いぞ! 美味すぎる!!
なんだコレは! 普通に食うだけで美味いのに、組み合わせる事で味に更なる深みが出た!
液体は3種類ある。 性質の異なる黒が2つと白がひとつ。
どれも美味い!
美味い!
美味いぞぉッ!!
クラフターはパクつきまくる。 喜びが頂点に達した今、満腹値の限界を超えてもなお食える。 素晴らしい。 素晴らしきかなこの世界!
「あ、あの人。 醤油もソースもマヨネーズもかけて食べまくってるよ」
「相変わらず行儀が悪いけど、どれも美味しそうに食べてる」
「……たまには、醤油かけようかな」
「私も たまにはソースかけようかな」
「マヨネーズも」
再び教えられたな、村人に。
未知の世界は身近にも広がる。 生きるとは感動の連続だ。
クラフターは涙ぐみながらも、美味しそうにパクついたのであった。