時系列は突っ込まないで(殴
『私が飛行隊の隊長に!?』
『近年、我が街の自警団は保守的なイメージから若者の入隊希望者は減少している。 その対策として自警団初の女性だけの飛行隊を新しく発足する事にしたのだ』
『ですが私は自警団学校を卒業したばかりです』
『君の父親は伝説的なパイロットだと聞いている。 その娘が団長になれば世間の注目度も高い。 何も問題はない』
『分かりました。 父が愛した自警団を守る為に、何でもします!』
『うん? 今なんでもって言ったね?』
『へ?』
『早速、この衣装に着替えて欲しい』
『何ですかコレ!? スカートも凄く短くてスケスケじゃないですか!?』
『世間の注目を浴びる為だ、これくらいの露出は普通だよ。 君にはもっと恥ずかしい仕事をさせるからね、ほらほらほらぁ』
「いやあああ!?」
喧しいハァンで目覚めると、机や椅子が並ぶ部屋にいたから、クラフターはまんざらでもなかった。 統一されている内装の評価は高い。 唯一、理解出来ぬのは隅の黄色い置物だ。 たくさん並んでいる。 羊毛に似た材質を用いているようだ。 知っている知識では僅かに鶏のシルエットに似ている。 かなり不気味ではあるが。 何にせよ謎の生物を模している事に違いはない。
相変わらず謎に溢れる世界だ。 未だ見ぬ生物がいる予感がしてクラフターはワクワクした。
「アコ、大丈夫? 魘されていたけど」
「すいません……夢を見ていたようです」
「汗が凄いですよ」
「何の夢?」
「い、いえ。 大丈夫です。 あっ、ユーハングの方も起きたみたいですね。 取り調べをしなくちゃ!」
「大丈夫かしら」
赤毛が近寄ってきた。 周りには牛的村人と農家がいる。 しまった。 拉致されたのを思い出した。
柵で囲まれていないし、赤毛はハサミもバケツも剣も持っていない。 狩られる心配はないか。 いやしかし、アイテムスロットにナニを仕込んでるか分かったものではない。
「怖がらないで、少し話を聞くだけです」
話は通じない。
村人との取引は出来ても、それ以上の複雑は難しい。 その生態を理解しきれていないのが証拠だ。 まさか拉致されるとは考えもしなかったワケだし。
「うわっ、首をグリグリし始めましたよ!」
「うっ!?」
「気持ち悪い」
「お姉さま! この人は危険です! 離れましょう!」
どうしようかとクリーパーと対峙した時のように後退りながら周囲を見る。 統一された部屋からヒントを得ようとしての事だ。
そこでふと気付く。 この部屋は「遊び」が足りないと。
統一されてこそいる。 テーブルと椅子。 それらの明るさと配置。 綺麗だが悪く言えば味がない。 「楽しさ」が少ない。
松明を5マスや3マスおきにひたすら設置して並んでいるだけのスーパーフラットとは言わない。
だが真面目で質素。
そう評価を下したクラフターは首を横に振った。 振りつつ少ない手持ちと周囲を確認して……ダイヤ斧を手に持つ。 もう思考は建築家サイドに堕ちている。 仕方ないね。
「突然、手に斧が!?」
「コレは何事かね!?」
「ああ部長! 捕まえたユーハングが武装しまして!」
「なんで取り上げなかったんだい!?」
「と、突然にどこからともなく取り出しました!」
「危険です、下がりましょう!」
もっと遊んで良い。
僭越ながら内装改修をさせてもらう。 建造物とは、つい外装に拘りがちだが内装あってこその建物である。 細かながら、奥が深い。 利便性のみならず魅せ方もある。 ひとつの階段ブロックの位置でガラリと印象が変わるのだ。 その点、慎重を要し皮となる建築物より考え悩む事も珍しく無い。
それ故に面白い。 クラフターはこの困難をつくづく愛した。 だから真面目かつ面白みが少ない部屋に改善の余地有りと判断した今、愛故に改装をやろうと思う。 思う前に腕が動いていたが。
「あああ!? 本部が壊されていく!」
「危険です! 離れて!」
「シラサギ自警団を呼んできてくれ!」
斧を振って、既存物を破壊。 さっさと内装をサラにしてフラット面へ。 白紙に戻してイチから造り変えた。
少ない手持ちは、内部の要らない家具類を破壊して再利用して補う。 湧き潰しを埋めるだけでなく様々な模様替えと工夫をこなして……村人に邪魔されながらも完成した頃には夕焼けである。 ちょっとのつもりが実にクラフター好みに仕上がった。 ご機嫌だ。 その場で思わずジャンプする。
「結局は止められず……って、何よ、この窓際。 夕日に照らされて……綺麗」
いつの間にか乱入していた艶のある灰色髪の村人が、ウットリと夕陽の差し込む窓際を見ている。
そこは石ハーフブロックで壁際をカウンター風に仕立て上げたものだ。 窓際には余りのレンガで植木鉢をクラフトしてたんぽぽを生けている。 風で靡く一輪の花が、ほのぼのとした日常と平和を演出している。
「これは、シャンデリア? キラキラと輝いて綺麗ですわ」
金色髪が褒めそやす。
それはシャンデリア風にしたグロウストーンである。 松明を挿しまくるだけでは見た目が気になる。 かといって光源が無いのでは暗い。 そこで実用と見た目を考えた一品がソレという事だ。
「これは周辺の地図! 上空からの図のようですけれど、色付きで分かりやすいし正確です!」
紫髪が褒めている。
それは、この辺の地図を額縁にて貼り付けたものだ。 実用と事務的な部屋であると同時に遊び心を忘れまいという意思表示でもある。 インテリアのひとつとしての機能もあり、実用性も高い。 クラフターも良くやっている。 拠点に貼る事で世界を感じ、思いを馳せ、冒険の日々を送ったり考える。 それは とても素敵だ。
「うぅ〜! こんなの飾りよ! 飾りだけど……羨ましくなんてないんだからー!」
「勝手に改装されたけど、良いと思う」
「ユーハング人は謎だらけ。 止めることも叶わないですが……害は無いかと。 たぶん」
「全ての自由と楽しめる心が羨ましいですっ!」
「農業に料理に開拓に建築に外装に戦闘に……様々な分野で活躍してるのは本当なんだなって思いました」
「全部、この人たちで良いんじゃない?」
ハァンと褒めそやす灰色髪たち。
いやぁ、照れるな。 こだわりや遊び心って個人差はあるけどさ?
クラフターは満足気にウムウムと頷き、舞い上がる興奮を原動力に、再び世界と対峙していくのだった。