クラフターの数だけ考えがあってテーマがある。 ビル群を主な建築物としているクラフターもいれば、丸石製造機やトラップタワー、半自動回収畑等の工業系専門クラフターもいる。 巨大地上絵のようなアートに走る者もいる。 軍事系に吶喊する者もいる。
それらは総じて素晴らしいモノであり、決して批難されるような趣味ではない。
土地問題は別として。
マルチである以上、嫌でもついて回る問題のひとつだ。 考えがバラバラなら反りが合わない。 単に土地不足の場合もある。 そうして奪い合い追い出し合い、宝石類での取引や裏切りの果て……剣で肉を切り、矢で相手を針山にするという醜い争いが発生するのだ。 オフコウ山みたいに。
ここ、イジツ世界……タネガシなる街及び周辺の土地も例外ではない。 クラフターが来てからというものの、現地にいるマフィア『ゲキテツ一家』そっちのけで行われる厳しい創造の争いは激化するのであった。
「ユーハング人め! ゲキテツのシマを蹂躙しやがって!」
「選挙どころじゃないぞ!」
「ゲキテツ一家の名折れだ」
仁義なき創造の争い。
それは如何に自身のテーマが素晴らしいかを村人の数で決めようという事だ。
今回は暴力ではない。 村人から様々を学んだクラフターは、その名の通りに創造において勝負する。 素晴らしい街を造れば村人の数も多い。 分かりやすい『票』で勝負しようというのだ。
既存の街及び周辺の空き地を用いる。 どうしてか初心者染みた屋根を階段ブロックで貼り直し、デコボコした土ブロックをハーフブロックで平坦にし、割れたガラスはさっさと壊して新しい板ガラスを嵌め、水溜まりなのか分からない道の溝にある半端は水バケツで用水路にする。 例によって湧き潰しがなってないので松明を刺しまくって明るくした。
「スラム街が、あっという間に」
「年寄りも歩きやすく、飲み水に足る清水が流れ、夜を照らす街並みに廃屋の1件もない、か」
「良いんじゃないっすかね」
「住民は良くても、勝手にシマをやられて止められないのはメンツがない!」
「まあまあ。 人が来るぶん、みかじめも多くなると思えば」
ここまでが雛形。 初心者講習とも言うべき行為。 腕はここから必要になってくる。 ここからは空き地と周囲の土地を利用した拡張工事だ。
豆腐の大量生産をしたところで村人は喜ばない。 それは前の世界でもそうだった。
「なんだ? 急に辛そうにして」
「貧困街に何か思い入れでも?」
「…………どうすっかね。 この人らは何を考えてるか分からないっすから」
苦い思い出だ。
実はクラフターも元の世界で村を街にしようと試みた事がある。 建物を増やして拡張し、そうなる筈だった。
ゴーレムを見上げる子どもに癒されたり、穴に落ちてきた村人を殺したり、ハァンハァン煩い村人を丸石で殴ったり、どうしてかゾンビ化した村人にダイヤ剣をお見舞いしているうちに……ある日突然、飽きた。 村など どうでも良くなったのだ。
それでも惰性と偏在で作業を続けていたら ある事に気が付いた。 コイツら建物なんてどうでも良いのだと。 扉さえあれば満足する集団だと。
馬鹿馬鹿しくなって、丸石の壁に大量に扉を並べ立てた。 村人は嬉しそうにハァンと鳴いた。 クラフターは村を捨てた。
それでも作業を続けるべきだった。 そうするのが己の美学だったじゃんと思い返して、村に戻ってみればゾンビパニックだった。 群れを成して襲って来た。 子どもゾンビがニワトリに跨っている……チキンジョッキーも来た。 クラフターはダイヤ剣をお見舞いした。
そうして無人になった村を見て虚しい気持ちになる。 見ながら食べた腐った肉は……まあ、いつも通り腐っていた。 空腹の異常状態が いつもより虚しかった。
「レミの情報網的には? コイツらの経歴とか」
「調べた事はあるっすけどね。 ラハマの近くに空いた穴から突然現れて、イジツ中に拡散して主に開拓と建築をしているっす。 殆どは理解出来ない技術っすけど、危ない連中ではないっす」
「都市が吹き飛んだ事もあるって聞いたが?」
「そりゃ手を出したからっす。 そっとしておく分には、有益な方っすよ。 勝手にやられるっすけど」
過ぎた事は仕方なし。
今の風景を悪化させる事はしない。 クラフターは内装含めて作業に没頭。 グロウストーンと木柵を組み合わせた街灯を並べたり、土ブロックをハッチで囲ったプランターや観葉植物を置いてみたり、階段ブロックと看板を組み合わせた椅子を置いてみたり。
カーペットも敷いて、暗い街から明るい街へと改修及び拡張していく。
嗚呼。 素晴らしき建築物たち。
この世界、大きく良い点がある。 村人が扉だけでなく建築物そのものや内装を誉めそやしてくれる事だ。 そして使用してくれる。
創造主としては これ程に嬉しい事はない。 やはり使われてこそ価値がある。 更に造る気力が湧くというもの。
「戦闘機や爆撃機を造るとも聞くけれど」
「中身は私たちの知らない部品っすけどね。 スペックも本来のものより高くなってるっす」
「ユーハングが来た話から70年経ってるんだ。 向こうも技術が上がったって事じゃないか?」
「その事なんすけど。 彼らはユーハングじゃない可能性があるっす」
「というと?」
「70年経ってるにしても、こうもガラリと部品の形状や原型って変わるモノなんすかね?」
「うーん。 どうだろう。 考えた事がない」
「まっ。 想像の範疇から抜けないっすけど」
創造の世界は素晴らしい。
クラフターは互いに本来の目的を忘れて改築、改修、拡張を続けていく。
夢中になれるもの。 褒めてくれるもの。 それらは人生を豊かにするものだ。
直接世界を動かすものではない。 だが原動力だ。 それは必要である。 我々はRS回路やピストンのような無機物ではない。
して、無機物でないからこそ思考や気持ちを汲み取れる。 村人もそうだ。
効率だけを考えて生きる事は世界を狭める退屈な人生だ。 趣味を持て。 開拓し、建築し、邁進せよ。
クラフターは笑顔で進撃する。 ツルハシとスコップの腕は、これからも止まる事を知らない。