剥かれた地表。 轟々と燃える美しかった木造の建物。 響くハァンと野太い声。
ネザーもかくや。 クラフターが最近交流を始めた 遠方にあった この村は、ウィザーが複数同時出現したんじゃないかという大惨事に見舞われている。
多くは景観を優先したが為の惨事だと評価を下した。 元から存在した この村は、その美しさや多い子の無邪気さから、防衛の為のツールや壁をクラフトしなかった。
ところが、これだ。 直ぐにでも対空職人を呼び出して総出でクラフトすれば良かった。 過去への後悔先に立たず。
「わ〜ん!」
「起きてよ! お母さん! お母さんッ!」
「痛い……痛いよぉ……ッ!」
「パパ! ママ! 死なないでよ! お願い! 言う事聞くから! 良い子にするから……うえええん!!」
クラフターは悲鳴と火の海の中、ぐりんと首を動かした。 その先の燃える空を見上げ、悠々と去り行く大怪鳥の群れを睨みつける。
ヤツが通った下。 地表に黒い点……TNTモドキが未だ落下しては、ドカンドカンと派手な音で地表が抉れていた。
それは創造に相対する破壊。 景観と建造物をこれでもかと破壊し尽くす無慈悲な爆発。
クリーパーというレベルではない。 その命を散らしてまで仕事を完遂する美しさが微塵もない。 一方的に努力を消し炭にする理不尽な破壊者だ。 対して全く悪びれる様子すらない。
上等だぞ、このヤロウ。
久し振りにキレちまった。
かの大怪鳥は建造物及び付随する景観破壊の現行犯である。
「子どもたちは、孤児院に?」
「ええ。 幸い、ユーハングが薬を使ってくれたみたいで怪我も快癒したし。 直ぐにでも……ね」
「ああ……飲むだけで傷が即塞がるヤツか」
「いや、今回は投げつけていた。 浴びたら治った」
「へ?」
「今は、その話は良い」
「……心の傷までは治せない」
「そうね、でも もうこれ以上どうしようもない。 失った命は戻せないもの」
「ユーハングの人がいたんでしょ! なんで守らなかったの!?」
「それは間違いね。 彼らは守ろうとはしてたわ。 でも、相手の方が多かったし武器だって碌に用意出来てなかった」
村は同志が元に戻し、対空設備をクラフトしているが、無かった事には出来ない。
ケリがつくまでは、生存した村人を初期スポーンにトロッコで輸送した。 数少ない無事な美しきハァンだ。 これ以上失うワケにはいかない。 スプラッシュポーションをウィッチの如く投げつけて回復もさせた。
エリトラ持ちのクラフターは、怒りに任せて怪鳥……いや、バカ鳥共を叩き落とそうとしたが、ヤツらの持つ飛び道具に撃たれて返り討ちに遭った。
皆はリスポーンする前に撤退し、武装を整える事となる。
「深山で複数回攻撃していたみたいだけど……詳細不明」
「目的は?」
「分からない」
「ユーハング人の物資はイジツを潤した。 だが同時に機体生産コストが下がり、量産や開発が進んでいる。 今回は……その結果ならば」
「やったヤツが悪いに決まってんじゃん。 ユーハング人は関係ないよ」
「そうだな……ああ、そうだ。 すまない」
「少し落ち着きましょう。 整理が必要です」
この事件は多くのクラフターに、あっという間に伝播した。
イジツ全土に散らばるクラフターは久し振りに初期スポーン地点にあるビルに集結。 弔い合戦の用意を始める。
「こんな暗い雰囲気だってのに……アイツら、何やってんだ?」
「あの建物って、ユーハング人が火薬や武器を集めてた所だよな?」
「うん? ああ。 物騒だよな。 鉄扉で施錠しているし」
「施錠、ね……レバーやボタンを後付けして操作したり、終わったら破壊しているだけに見えるんだがな」
「謎の技術だ。 考えるな」
このビルは各階に防衛システムを設けている。 最初の頃、初期スポーンが襲撃された際、ファイヤチャージを撃ったビルだ。
そのビルは、防衛好きクラフター達の手によって火薬やフルエンチャントダイヤ装備が蓄えられている。
同時に集会場やリスポーン地点と認知されており、皆、自然とココに集まったのである。
普段バラバラの方向やセンスで行動しているのもあり、防衛組織や上下関係はハッキリしないクラフター達であるが、有事の際の結束は固い。 主に血に飢えているせいで。 離れても心は一緒。 バカ鳥 潰す。 祭りだ。 祭りの用意だ。
以上! 終わり! 解散! 閉廷!
「おや。 建物から出て来たぞ」
「武装してるが、何か見つけたのか?」
「進む方向からして深山が飛んで行った方向……まさか」
バカ鳥の巣は知れている。 イジツの彼方此方に展開していたクラフター達だ、情報を整理したら既存の某都市部方面にある大きな道路だと分かった。
お礼参りだ。 クラフターの群れのチカラを見せてやる。
空飛ぶモンスターは回避行動をとる知性を見せるから、バカ正直に 一方向では攻めない。 様々な角度から攻撃だ。 特に地表にいるならば、飛び立つ前に倒す。 地表にいるうちなら、動きが かなり 鈍いからだ。
「───あれ? 空を飛ばない?」
「地下に潜ってるな」
一部は地下道をトロッコで進み、目的地近くまで来ると降車。 貨物線から分岐するように線路を延長。 バカ鳥の巣の地下座標まで あっという間に到達すると直ぐ同志に連絡してTNTトロッコを大量に走らせる。
起爆地点にはちゃんと起爆するようにアクティベーターレールを敷設。
「で、こっちは?」
「新手のビルか?」
「いや……爆弾や赤い粉を撒いているから大砲だろう」
「対空兵器とは、また違った形を造ってるな」
「随分デカいしな」
「しかし爆弾で爆弾を飛ばすって……ヤツらの爆弾って誘爆でその場で爆発する事もあるのに、信号で起爆のカウントダウンが始まったものは、なんで爆風を浴びても直ぐに爆発しないんだ?」
「考えるな」
一方、TNTキャノン職人は固定座標ならばと長距離キャノンを製造。 もちろん無慈悲にフルオート機構だが、なにぶん弾となるTNTを遠くの標的に正確に飛ばす為に計算やリピーター調整を細かに行い、砲内で爆発させるTNTを圧縮する機構も付けたりと、これまた複雑になった。
だが複雑な程に造った感があって良い。 成功した時の喜びも 一入だ。
よし。 後は撃ちまくるだけ。 遥か遠くから突如として高速で飛んでくるTNTの硝煙弾雨に飛び立つ事叶わず爆散するが良いバカ鳥。 ドロップ? 知らん。
「報告! 町を爆撃した連中のアジトと滑走路が判明しました!」
「直ぐにでも、近くの都市に事実確認などを……」
来た。 キタキタキタァ!
大量のTNTトロッコが! 初期スポーン地点から遥々行列をなして無事巣の下へ流れ込むのを確認した地下組は、さっさと退避。
間も無くTNTトロッコが巣の直下で着火、地下でドカンドカンと大爆発発生。
地表面が突如として盛り上がり、巣を地下から粉々にしていく。 巣にいたバカ鳥共も爆散だ。
「ああ! 再び報告がッ! 突然、滑走路が爆発したとの事!」
「なんですって!?」
「それから、地面に空いた穴から続々と武装したユーハング人が出て来ているそうです!?」
続いて、空いた大穴から ダイヤフル装備で殴り込む。 スポーンブロックはないにせよ、大きな巣ならば爆破した場所以外にもバカ鳥はいるハズだからだ。 急いで確認し、初めて制圧となる。 いつもの癖で松明を刺すものすらいた。
して案の定というべきか。 バカ鳥はいた。 別の道路で飛んで逃げようとしている。 しまった。 起爆座標が甘かった。
逃すか。 クラフター達は慌てて火矢で応射。 バカ鳥は火の鳥……焼き鳥になった。
だが倒れない。 燃えながらも飛び道具で やり返してくる。 ダイヤ防具故に直ぐにはリスポーンはしない。 負けじと矢を放つ。
そんな弾幕の最中。 なんと村人が出て来て、なんらかの飛び道具でバカ鳥の援護を始めた。 村人め、お前らもか。
もう許せないぞ。 貴様らも同罪だ。
衝撃を受けつつ両者の間で激しい撃ち合いが始まった。 最早乱戦激闘。 硝煙弾雨の嵐。
「両者間で激しい戦闘が発生していますッ!!」
「急いで救援隊を編成! ユーハング人を援護ッ!」
「はい!」
マズい。
いくらダイヤ装備とはいえ、ヤツらの飛び道具は かなりのダメージ量だ。 防具なしなら全滅すらありえる程に。
ノックバックもキツい。 強行突破をしようと剣を振るいながら、ジャンプしつつ走り込む仲間も、撃たれるたびに押し戻されている。
だが我らはクラフター。 丸石ブロックとハーフブロックを組み合わせ、即席トーチカを作成。 被弾率を抑えつつ、スリットから狙撃。
固まっている村人を見つけると、スプラッシュのダメージポーションをトーチカ越しに投げつける。 もれなく 纏めて葬った。
「深山が飛び立ちます!」
「墜とせ! どこにも行かすな!」
バカ鳥が燃えながら、空を飛ぶ。 慌ててエリトラ飛行で追う仲間がいたが、プレートを外してマントに着替えた所為で防御力低下。
空中で撃たれて遺品をばら撒きながら、リスポーンしてしまう。 後で拾って渡してやらなきゃな……。
「ユーハング人が撃たれた!」
「生死は!?」
「不明です! て、てか体が消えましたよ!? 遺品はありますが!?」
「あっ、別の町で同じ格好の人物を見たという報告が」
「どういうことなの……」
「ええい! 今は集中!」
ピンチである。
だが目の前だけが全てではない…………ヤツらには、それを教えてやる。
そろそろ来る頃だろ……ほら、きた。
「うおっ!? 今、風防の横を何か白く点滅するモノが沢山通り過ぎたよ!?」
「前! 前を見て!」
「うおっ!? 標的の滑走路が吹き飛んだー!?」
初期スポーン地点側や、各町からの長距離TNTキャノン連続精密砲撃……それが今、弾着し始めたのだ。
ドカンドカンドカンと鳴り止まぬ砲撃により、目の前の村人や道路の一切が消し飛んでいく。 よし。 地表はもう良い。
後は あの逃げたバカ鳥だ。 これ以上、破壊はさせない。
「あ、後は任せろー!」
「ここまでしてくれたんだ! 絶対仕留める!」
と思ったが。 新手の空飛ぶモンスターが、バカ鳥に集って……飛び道具で仕留めてしまった。 最後は呆気なかった。
取り敢えずの復讐は果たしたクラフター達であったが、刹那の喜びと後に引く虚しさに襲われて…………取り敢えず、偶には焼き鳥を食べようかな。 そう考えるのだった。