今までの騒動と戦闘経験から、防衛拠点の整備と大規模な防衛基地の建造が急務と感じたクラフターは、巨大な敷地を要する施設を造り始めた。 各地に、地表に、地下に、空にだ。
あのバカ鳥にしろ、喧しいゾンビイベントにしろ、敵対する村人にしろ。 この世界は強力な敵だらけである故に。
元の世界での戦闘経験が無駄だとは言わないが、弓矢届かぬ高高度を飛ぶ体力の高い敵と強力無慈悲な飛び道具を前にしては、我々は陸でも空中でも劣勢だ。 悔しいが認めざるを得ない。
だが、それは負けを意味するのか。 否。 始まりなのだ。
危険を伴う闇への切り込み。 開拓と建築に魅入られた者である。 道中の障害なんて しょっちゅうだ。
それらも多くの技術と建築様式で乗り越えて来れた。 今回も乗り越えられる。 寧ろ世界の理不尽を楽しもう。 どんとこい。 それが人生だ。 何もかも上手く行ったらつまらない。
クラフター達はツルハシを振るう。 スコップを振るう。 今度こそ防衛と勝利を。 栄光を。
そんな気迫と勢いだ。 ウィザーをウッカリ召喚した時を思う。 アレも挫折しかけたが、ナントカしたじゃないか。
ベイクドポテトではなく焼き鳥を左手に持って時々食い散らかすのは、験担ぎみたいなものだ。 単に食いたくなった だけなのもあるが。
「ねぇ。 地面や地下に建物を造るのは、まだ分かる。 でも空中にどうやって、建物を浮かせてるの!?」
「知らないわよ! 直接聞いて来なさいな!」
「言葉通じるようで通じてない人達だよ? 無理だよ」
「ユーハング謎の技術」
待てど暮らせど、闇覆う未開拓地の荒野でモンスターがスポーンしないピースフルな環境に見せかけて、実はハードコアな世界なのだ、ココは。
陸に地下に空。 湧き潰しも意味を成さず、常日頃に都市や村は襲撃される恐れが付き纏う。 安心出来る場所がない。
この世界もまた、残酷を持って道理とする……そこに己の居場所を切り取る……至難の業である。 いざとなれば扉に駈け込めば良いなんて建物に対する妄信でしかないのだ。 畢竟、世界を侮っていると言える。
対して村人は、そんなハードコア世界を生きている。 そう考えると感服いたす。 知性的なハァンを見せるのは、生存戦略から来るものなのかも知れない。
「ちょっと赤とんぼで周りを見ようか」
「へ? なんでよ」
「隼が壊れたから。 直るまで乗って良いって、許可は貰ったよ。 操縦も大丈夫」
「ああ……なんで燃料タンクから穀物が出て来るのかしらね」
「ユーハング人の仕業らしいよ」
「相変わらず謎の行いばかりする人たち」
「まっ、取り敢えず見に行こう」
「大丈夫かしら。 遠目から見ても砲台門数が今までの比じゃないのよ?」
ぶんぶん聞こえたから、いったん作業を停止。 敵かと見上げれば赤い空飛ぶモンスターが飛んでいる。 今までのより遅く低空だ。 中性なのか攻撃もしてこない。 あれくらいなら脅威ではない。
ふと思う。 そういや空飛ぶモンスターは味方するような動きをするヤツがいると。 この間の騒動でも そうだった。
色や形がバラバラで、敵味方になる条件が分からないのだが。 オオカミみたいだったら分かりやすいのに。
その思考に至り、懐柔出来るかとモンスターに かまどを入れたり石炭入れたり小麦を入れたり砂糖をねじ込んだ。 結果はダメだった。 ダメを通り越して倒してしまった。 そうしたらチビっこい村人に殴られた。 悪い事をしたと反省はしている。
「所々紫のような、黒いような壁だね」
「壁伝いに、水を流しているところもあるわ」
「えーと、ユーハングの大砲にも水が使われるけど……耐爆用?」
「そうでしょうね」
「なんで水があると周囲が壊れないんだろうね?」
「考えてはいけないわ」
「それはそうと。 門数からして相当重要な建物なんじゃない?」
「きっと、そう……あら? アレは滑走路じゃない? 昼間だというのに明かりが綺麗……」
「本当だ! 降りてみようよ!」
「ちょ、ちょっと!?」
今や昔。 目の前の作業に集中だ。
天空にしろ地表にしろ地下にしろ、共通して使用されたブロックがある。 黒曜石だ。
マグマを冷やすと生まれる、凄まじい硬さのブロックだ。 ダイヤツルハシでしか採掘出来ぬ上に、効率強化のエンチャントを付加していないと掘るのが とんでもなく大変だ。
しかし、大きな利点がある。 TNTで壊れないのだ。 その為に重要な建物や区画、TNTの実験場、偶に心の壁の如く使われる。
だが、ウッカリしていた。 別に耐爆だけなら滝で良いじゃんと。
TNTキャノン砲内で使われる事もあるように、水や水流によってコーティング、あるいは水中にあるTNTは爆発しても周囲の構造物を傷付けない。 耐爆コストも安く済み、大変楽に防げるのだ。
心配だったのは、この世界のTNTモドキにも有効か否かの点だった。 しかし、同志による実験で大丈夫だと証明される。 杞憂で良かった。
して、各施設には豪華に大きな道路が整備される。 これは友好的な空飛ぶモンスターを懐柔出来た時に備えてだ。
松明ではなく、埋め込み式のグロウストーンランプにより、景観を壊す事なく道を美しく照らしている。
初期スポーン地点の村人に人気だった左右のリピーターを始め、物見櫓も完備。
今回、複数の回路群が集結した為に物見櫓は大きめとなった。
リピーターの点灯回路とグロウストーンランプの点灯回路。
簡易対空兵器としてクロック回路で溜めた矢をTNTの爆風で吹き飛ばし、辺り一面に矢の弾幕を張る散弾兵器も大量配備。 それらの操作も物見櫓から操作出来るようにした。 レバーひとつで矢の雨だ。
TNTでは高度や距離感から起爆タイミングを見計らうのが物凄く難しく、一方で矢を直接放つのでは1発やる間に何発も撃たれてしまう。 腕の差もある。 ならばフルオートの矢の散弾兵器を製造しようとなり、このような物が生産された。
昔、この技術を開発したり製造したクラフターは涙した。 ああ、日の目を浴びる時が来たなと。 元の世界じゃ、これまた趣味の域だったから……。
おや。 油断していたら赤い空飛ぶモンスターが道路に降りてきた。 いけない。 友好的か敵対か判断がつかない。 皆は警戒した。
「ユーハング人の皆さん! 怪しいものじゃーありません! ちょっと見学させて下さいな」
「重要な建物なら、許されないでしょ! 早く逃げましょうよ!?」
「何言ってんの。 ダメなら今頃は撃墜されてるよ」
「何考えてるか分からない人たちですのよ!?」
危うく物見櫓にある自爆スイッチ安全装置解除レバーを倒し、起爆スイッチを押すところだった。
自爆はロマンだとして同志が付けたのが悪い。 クリーパーの発想だろうか。 何にせよ、滑走路が吹き飛ぶ事態は無かった。
因みに。 人工的に造られた浮遊要塞にいるクラフターは、要塞を木っ端微塵にする自爆回路とTNTを詰め込もうとしたが、他の仲間に拒絶された。 回路は超単純で良くても、TNTを搭載するスペースがあまり無かったからだ。 それだけ中までたっぷりのロマンで溢れている。
例えば、ほら。 監視をしつつ村人の後をつけると……そこは大きな空洞スペース。 空飛ぶモンスターを沢山「お座り」させておく場所だ。 何気に回復アイテムも完備。
「うおっ!? 収容スペースがっ!?」
「ガラガラですわね」
「で、でもこれだけ広ければ……たくさんの飛行隊が いっぺんに来れるよ! 外の滑走路の大きさも合わせて、空爆機がきたってお釣りがくるんじゃない!?」
「この人達が、それを許せばですがね。 こちらの箱は……あら。 燃料と鉄ですわ」
万が一、攻撃を受けた時を想定して壁や天井、床の二層目は黒曜石だ。 一層目でも良かったが、見た目が悪いのでこうなった。 建築家としては実用性だけを求めない。 デザインも考えるのだ。
また、表の大きな道だけが全てではない。 この空洞スペースから複数の大きな道路に抜けられる。 一部は要塞内を走って助走をつけ、要塞外に落ちるように空へ飛ばすのを想定した道もある。 それは空飛ぶ白い建造物を参考にした。
「こっちはなんだろう……箱がいっぱい」
「中身は……大量の弓矢!?」
「うわあ。 爆弾に剣に鎧に怪しい薬や金色に輝くりんご……白い液体が入ったバケツ? なんか怖いから閉めとこ」
驚く村人を見て、うむうむと満足するクラフター。 良いぞ。 もっと驚け。 もっと褒めろ。
だが防空網は完璧とは言い難い。 どうしても突破される危険性がある。 して、内部に侵入されたらヤバい。 その為にも各場所に武器を置いているのだ。
また、ボタンを押せば粘着ピストンを用いたシャッターで壁を封鎖出来る。 落とし穴もある。 壁に収容しているディスペンサーを通路にピストンで出してフルオートで撃ちまくる所もある。
「こんなの造って……この間の騒動の影響だろうね」
「そうかも知れませんわ。 もう二度と、悲劇は繰り返すまいとチカラを蓄えているのでしょう」
「よく分からないけどさ、情のある人達なんだよ」
場所によっては毒矢でジワジワ苦しませたり、溶岩浴を味わって貰う。 もう二度と来る気が起きないようにだ。
他にも色々あるが、それは後の楽しみだ。
いやぁ、その時が楽しみだなぁ!
クラフターはワクワクした。 まるで悪戯を敢行する子どものように。