戦場。 マルチにおいては互いの承諾を得たバトル会場であったり、集団戦のフィールドもそうであるが……破壊の美学に囚われた、哀れな片手落ちの荒らしとの殴り合いの場も含まれる。
今は……そう。 そんな戦場の中にいる。
効率強化のダイヤスコップで大至急で掘った幅たったひとマス、奥行きは10マスはあるか。 深さは4マス程の塹壕の中。
そんな即席塹壕……蛸壺というには少し豪華か……で、クラフターは いた。
爆発で舞う土柱がすぐ側を跳ねまくる穴蔵、そこで気楽に焼き鳥を食べながら、クラフターはヘラヘラしている。
ただ、まあ、そうやってヘラヘラしているのはクラフターだけである。 そうやってヘラヘラ過ごして来て、残ってるクラフターと物資は僅かとなった。
剣折れ、矢は尽き、それでもまだ生きている。
休憩がてら、塹壕から空を見上げた。 沢山の巨大な怪鳥の群れが これでもかとTNTモドキを落としている。 爆音が止まらない。
時々、小回りの効く空飛ぶモンスターが飛んで来ては、飛び道具で攻撃して来る。 迂闊に動けない。
やれやれ……どうしたものかなぁ。 クラフターはヘラヘラしながら のんびり考えた。
開拓中、突然襲われたクラフターたち。
始まった祭りに心躍らせながら、一方でドロドロした想いで考える。
荒らし共が。
そろそろ飽きたぜコノヤロウ。
実のところクラフターは笑顔で怒っていた。 幾度とない荒らし被害に辟易しているのだ。
「富嶽の大規模な編隊。 いつの間にこんな」
「恐らく護衛につく戦闘機数も」
「これらを隠し通した お偉方も、つるむバカも……よほど わっか の利権を得たいのかしら」
「力尽くって事?」
「そうじゃなかったら、こんな事にならなかったわよ」
「本当にバカばかり。 滅ぼされるわよ、私たち」
遠方開拓組が、またも大規模な空飛ぶ荒らし被害に遭っていると聞いたから、他の地にいたクラフターはウンザリした。
原因は知れている。 村人だ。 既存の都市部でハァンハァンと長的なヤツが鳴くと空飛ぶバカデカいモンスターに乗った荒らしが 一斉に空へ上がるのを見たからだ。
既存の建造物を作品として、その美術品を破壊するなんて とんでもないと考えているクラフターだったが、もう考えを改めるしかなさそうだ。
「ほら見なさい。 ユーハング人が武装し始めた」
「今のうちに別れの電報を入れた方が良いわよ」
「避難なら済ませたわ」
「でも一方的に攻撃しておいて、反撃されたらコッチの所為にするんでしょ?」
「殴ったら殴り返される。 それが理不尽だなんて、どうして言えるのかしらね」
駆け出しの頃。 村を実験台にした愚行の歴史をなぞるようで、凄い嫌だが仕方ない。
このままでは建つモノも建たない。 壊されるのに飽きて黒曜石製や水流を用いた建物を建てる者もいるが、やはり自由にモノを創りたい。
その自由の為に。 時としては心を鬼にしないとならないとクラフターは決意した。
アイテムスロットには大量TNT。 各防衛拠点を稼働させ、座標は某既存都市部。 砲撃するのだ。
荒らし許さん慈悲はない。
「ユーハング人の建てた施設で動きがあるって。 大砲に爆弾を詰め込んでるらしいわ」
「やっぱり」
「結果は知れてる。 それより、避難民は?」
「ユーハングが造った都市に避難した」
「受け入れ態勢は大丈夫なの?」
「彼らが造った都市部は、ガラガラなのよ。 空き家だらけ。 利権者も権力者も、長もいないから好き勝手に使わして貰ってる」
「空賊や離反者の支援法も、それで?」
「ええ。 ユーハングが放棄した都市の管理を手伝わせる。 畑の労働もあるし」
「空賊の支援だって反対していた者は?」
「その都市の利権を手に入れられると考えたのか、手の平を返したわ。 ホント、どいつもこいつも……」
バカ鳥の巣と同じやり方だ。 大きな道路を優先して爆破する。 元から地下道はあるから、TNTトロッコを送り込んで都市部を根元から爆破だ。
クラフターは怒りのあまり、笑顔になった。 笑顔でキャノンのレバーを倒した。 トロッコを送りまくった。 吹き飛べ。 怒りと悲しみを思い知れ。
「報告! ユーハングの攻撃が始まりました!」
「はぁ……これでバカ共が大人しくなれば良いけど」
「言葉で言っても分からない。 その結果はどうなるか知った方が良い。 現に偉い人は自身は安全だと思い込んでるか、あり得ないと思って都市に残ってるし」
「今まで何を見聞きしてきたのかしら」
「利益しか見えてないのよ」
やがて都市部に弾着。 連続して爆音が鳴り響いた。 さぞ苦労して整備しただろう道路やビルの ことごとくは破壊され、見劣りする空中浮遊するブロックのひとつとて許さぬ。
ウィザーなんて生温い威力と爆音が都市に響き続ける。
そうだ。 全て吹き飛んでしまえ。 アイツらがやってきた事を倍にして返すのだ。
「都市が砲撃で吹き飛びました!」
「一部で死亡報告や行方不明の報告がっ!」
「ああ、それは大丈夫よ。 それより……ユーハング人を排除しようとする連中を何とかするのを考えなきゃね」
岩盤が見えるほどの爆破。 凄い数の投射量を経て、ようやく止まった頃。
そこには何もなかった。 煙と土埃が舞うだけだ。
これで良かった…………クラフターは自身に言い聞かせる。 怒りの後、破壊の衝動と実行の後にはスッキリした感覚があったが、喜びが起きない。 綺麗な青空を見上げれば、虚しさに襲われる。
まあ、良いか。
爆破した場所は何を建てようかしらん。
直ぐに建築にシフトした。 過去は経験で後悔はあっても、最早昔。
開発が過ぎた土地に突如として空いた地に、期待を寄せて未来へ歩む。
やって終わりでは済まない。 やったからこそ、先がある。 次への原動力が生まれる。
豆腐建築が小粋で魅力溢れる建造物へと進化していったように。
クラフターは地上を進む。 今度は純粋な笑顔と共に。 既に場所取り合戦は始まっているのだ。