行けども行けども未開拓地は緑なき荒野が続くように見せかけて、クラフターはとうとう見つけた。
大地を割る渓谷を! 聳える山を!
おお、我が人生よ!
迎えたる めくるめく創造の世界よ!
クラフターは歓喜した。 感動と共に涙を拭うまでに。 現作業内容を放棄してまで、駆け寄ったのだ。
無意味に山頂に登り、無意味に崖に身を投げた。 リスポーンも構わぬ捨て身の行動だ。
バイオームも そうはなく、フラット面の割合を高く感じてきた我々にとって、この変化がどれ程の感動と興味を呼んだことか……仲間の行為から理解して頂けると思う。
同時に感動は使命へと変化を遂げ、皆はツルハシとスコップを握る。
ここまでは同じだった。 皆、笑顔を向けあって志は同じだと信じていた。
信じていたのだ……。
それが勘違いだと気付くのに、10秒も要らない。
だって。
片や山を削り崖を埋め始め。
片や山に装飾と建築を始めたのだから。
互いに目を合わせた。 互いにハモった。
いや、お前。 何してくれてるの?
景観維持の観点と共存、対する平坦にするという謎の情熱と勢い。
次には両陣営、フルダイヤ装備で剣先を向けあった。 言葉は最早意味を成さない。 無言の威圧感のままに大きく山と崖で二分された。
オフコウ山 縄張り争いの幕開けである。
「オフコウ山にユーハングが?」
渓谷に位置する卓状の山にて。
目と鼻の先で弓矢が飛び交い、ベッドを置いて リスポーン地点を設定してまで醜い縄張り争いを繰り広げる整地厨と建築厨の両陣営。 ダイヤブロック何スタックで土地を譲るかとか、その他の交渉も行われつつ、裏切り者も出しつつの泥沼戦争だ。
「ちょっと!? 何を争ってるの!?」
その最中。 保持派の山側陣営に空飛ぶモンスターが落ちて来た事で状況一変。
中からは何時ぞやの赤服村人。 ケーキモドキを好んで食す個体だと記憶に残る。 この事で戦闘は中断された。
これが村人単体だったら、容赦無く村人を巻き込んで縄張り争いを続行していた事だろう。 しかし、ここからは別の興味に注意がいく事になる。
「ココにもユーハング人がいるなんて……いや、それより今は! 私の隼を直すの手伝ってくれないかな?」
空飛ぶモンスターという、クラフターによっては興味が尽きぬ、同時に喉から手が出る程に欲しいブツへ群がって唸りを上げる。 闘争心は既に忘れた。
見たところ、頭の部分が変形しており耐久値が減っている。 だがこれくらいなら適当に鉄インゴットを注ぎ足せば回復するんじゃないか。 ツールと同じように。
やってみた。 出来た。 新品同様になった。
「ええ!? 今の一瞬で なんで直るの!? 何をどうしたの!? ……へ? パンケーキ? ありがとう……じゃなくて!」
村人が騒がしいからケーキモドキを与えてみた。 今度はダメだった。 コイツらの生態は相変わらず謎である。 下手すると空飛ぶモンスターより謎かも知れない。
兎に角今はモンスターだ。 調べていると 動力と思われる部分の耐久がないのが分かった。 レッドストーン回路を伸ばす時に、出力が足りない状態のようで、完全に死んでいる様にも感じる。
かまど と レッドストーンブロック、リピーターを試しに突っ込んだ。 モンスターは生き返った。 ひとりでに 先端の棒が動く位には元気だ。 分かりやすくて良いと皆は頷く。
「いやいやいや!? 相変わらず謎過ぎるよ!? 整備班もビックリだよ……いや、もうしてたか!」
オマケで石炭をフルスタック突っ込んどいたから、しばらく大丈夫じゃないか?
なんの保証もナシに そう思うクラフターである。 ネザーでベッドに寝そべって爆発するような……あのような惨事は無いハズ。 たぶん。
「よ、よし! 取り敢えずこれで飛べる。 ありがとう!」
クラフターが乗り込もうとしたら、先に村人が前を横切ってサドルモドキ部分を奪われた。 思わず殴りそうになった。
耐久を回復させた途端にコレである。 少しくらい乗せてくれても良いのになぁ。 クラフターはブーたれた。
村人相手に荒ぶるのも馬鹿らしいから、それ以上の事はしないが。 直ぐに諦めて行く末を見守り……はしない。
「いや、ちょっと。 そこにいられると飛べないんだけど」
コレ、譲って欲しい。
新たな目的が浮かび上がり、クラフターはモンスターの前にラージチェストを並び立てる。 中はダイヤモンドフルスタックだ。 取引を持ち掛けているのだ。
「交換しろって? 無理だよ、隼はあげれないよ。 だからどいて。 退かないと轢くよ?」
足りないらしい。 無視して前に進んで来た。
前列にいた交渉クラフターは、それでも逃げない。 寧ろ試しに突撃した。
結果、丸い足や高速で回転する棒に巻き込まれて視界が赤く染まる。 己の失敗を突き付けられる瞬間だ。
遺品を辺りに撒き散らし、背後にいた仲間は戦慄と共に身を震わす。 見た目通りに凶悪であったかと。
「あっ!? ちょ、ちょっと嘘……私……人を……ってアレ!? ベッドから生き返ってきたあああ!?」
ダメージ測定も兼ねて避けなかったのが災いした。 かなりのダメージ量だ。 遺品回収をしつつ、素早くダイヤ防具を着込む。
ますます気に入った。 モンスターが。 コイツさえあれば空を自由に飛べる。 エリトラより楽かも知れない。
くれないなら創りたい……でも鞍のようにクラフト方法が不明だ。 やはり村人を撲殺し、鹵獲するしかないのだろうか。
だがしかし。 村人の家を間借りする以上の情けない行為に思えて、手が伸びない。 マルチ経験者なのもある。
人様の迷惑になってはいけないと考えると、せめて交渉で、という考え方になってしまうのだ。 利益を追求すると他者が邪魔になるものだが、暴力に訴えると孤立と偏見の牢に囚われる事となる。
「ま、まあ無事なら良いか……取り敢えず空だ。 空を飛ぼう。 パイロットは……そう。 機体に寄り添うだけ」
アレ。 じゃあ、俺たちは牢に囚われてる囚人やん。
ハタと気付いた。 先程まで暴力に訴えていたのは どこの誰かと。 紛れもなく我々ではないか。
己の欲に突き進み、周囲があまりにも見えてなかった。 落ち着いて見渡せば、弓矢による縄張り争いの痕跡が生々しく残っている。
同時に落ち着いてみると。 耐久がゼロに等しいボロボロの空飛ぶモンスターが周囲に転がっているではないか。
何故、欲しいと願っていながら、これらに気が付かなかったのか。
とうに答えは知れている。 不利益な争いを繰り返していたからだ。 文字通り周りが見えてなかった。
再び教えられたな、村人に。
クラフターは空を仰いだ。 丁度、赤服村人の乗るモンスターが遠く離れて行く様が見えた。
自由の空。 自由な地上。
クラフター同士は握手した。 縄張り争いは終わりだと互いに頷く。
その意味と有り難みを、ここにいた創造者達は改めて噛み締めるのであった。