奏音くんの日常!   作:彼方の刹那

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自分としては初めて書くジャンルになるので少し不安ですがよろしくお願いします。


結城友奈の章
ある日の朝のこと


 普通っていう単語の定義は何なのだろう、なんてふと思ったことがあった。

 

 本を読んでいる時だったか、授業中だったか、もしくはテレビを見ている時だったか。

 

 それがいつだったかはさっぱり思い出せないけれど、それってつまりそれ自体はあまり重要な事じゃなかったという事だと思う。

 

 じゃあ、実際には何をもって普通と言うのかな?

 

 両親がいて、友達がいて、楽しい日常をすごせていること?

 

 特異な才能や変わった所もないこと?

 

 他にも色々と有りそうだけど一旦この辺で。

 

 要するにそれに明確な基準があるのかは分からない。

 

 だけど、少なくとも世間にとっての”普通”とその人にとっての普通が違うものであることだけは確かで。

 

 なら自分の場合はどうなんだろう、なんてふと考えてみたんだけど……

 

『どうした奏音(かのん)、何か考え事をしているようだが悩み事でもあるのか?』

 

『そうなのですか? もしそうなら私達に相談してくださいね?』

 

『その時は遠慮なくタマ達に頼りタマえ!』

 

『そうですね、一人で悩んでも解決しないことは多いですから』

 

『うんうん、遠慮なく頼って欲しいな!』

 

『あなたも好かれているわね……まぁ、私も聞いてあげるくらいなら出来るけど』

 

 少なくとも自分にとっての普通が世間からすれば絶対に”普通”では無いことだけは間違いないと思う。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 何時からどうしてこうなったのか実際のところ理由や原因なんて分からない。

 

 気付いたら彼女達が見えて、普通に話せて。

 

 両親は最初は驚いていたけど、そんな自分に怖がることなくそれが自分の個性なんだって受け入れてくれて。

 

 そうこうしている間に彼女達の存在を何も不思議に思わなくなっていた、というよりも自分にとってはそれが当たり前のことだった。

 

 神樹様や殺人ウイルスなんてものが存在するのだから幽霊と言葉を交わせても何も可笑しくはない……はず。

 

「どうしたの、奏音くん」

 

「あっ、おはよう樹ちゃん。ちょっとした考え事だけど大した事じゃないから大丈夫」

 

「そうなんだ、何かあったら私じゃなくても誰かに相談してね」

 

 あの人達もそうだけど自分の周りにいる人達は皆優しい。それがどれだけ恵まれていることか以前聞かされた事があった。

 

 ただ千景姉レベルで周囲の環境が悪かった人も早々いないとは思うけど絶対にそんな事は口にしない。

 

 態々千景姉を悲しませることを言う必要性がないから。

 

「今日も部活?」

 

「うん、お姉ちゃん達と一緒に幼稚園で劇をやるんだ」

 

「劇か~、樹ちゃんは何か役をやるの?」

 

「私は……音響係かな。お姉ちゃんと友奈さんが役をやるんだ」

 

 樹ちゃんの所属する勇者部は一年前に設立されたばかりの部だけど、その活動故に地域では結構有名な部になっている。

 

 樹ちゃんのお姉さんの風さんが部長で、二年の先輩が二人に樹ちゃんの合わせて四人が部員として”世の為、人の為に”をモットーに活動している。

 

 その活動は砂浜でのゴミ拾いから運動系の部活への助っ人、猫の親探し、果ては老人ホームや幼稚園での劇やレクリエーションと色々ある。

 

『世の為、人の為にボランティアをね……私には無理そうね』

 

『そうかな~、ぐんちゃんも出来るよ!』

 

『高嶋さん……』

 

 なんだろう、この少し甘ったるい感じは。いや、二人が友人なのは良く伝わってくるし、良いことだとは思うんだけど。

 

『ふふ、奏音さんもこちらに興味を示してみませんか? 私厳選の参考資料ならいくつかあるので』

 

『ちょっと待ちタマえ、杏。 奏音にはそちらの道はまだ早い!』

 

『もうそんなことはないよ、タマっち先輩。こっちは奥が深いんだから精々入門編ぐらいだよ』

 

 ……ああもう、自分は一旦樹ちゃんとの会話に集中するから皆は好きに話してて!

 

 そんなー、なんて杏姉の残念そうな声を聴きながらすぐに樹ちゃんの方に意識を向けると、少し心配そうにこちらを見ていた。

 

「奏音くん、大丈夫? 何だかぼーっとしていたみたいだけど」

 

「ごめんね樹ちゃん、実は昨日夜遅くまでゲームしていたから少し寝不足で……」

 

「なら先生が来るまで寝るのはどうかな? 私が起こすから」

 

「良いの?」

 

 こちらの質問に頷いて大丈夫と伝えてくる樹ちゃん。

 

 本当の理由ではないとはいえ、実際昨日千景姉と新作のRPGで盛り上がって寝不足なのも事実で。

 

 だから彼女の提案はありがたかった。彼女がOKだと言ってくれているから起こしてもらうよう頼んでも問題ないってことになる。

 

「ありがとう樹ちゃん、先生来たら起こして。 おやすみー」

 

「うん、おやすみ奏音くん」

 

 そうして自分は机に突っ伏すと思ったより体は疲れていたのか、すぐに意識は薄れていった。

 

 

◆◆◆

 

 

 

「すぐに寝ちゃった……よっぽど眠かったんだね」

 

 隣の机にてぐっすりと眠る奏音くんの寝顔を見る。

 

 中性的な顔立ちの奏音くんはこうやって眠っているときは女の子にしか見えない。

 

 男の子にしては少し長めの色素の薄い髪が余計にそう見せているのだと思う。

 

 まだ私たち以外誰もいない教室で奏音くんを起こさないようにそっと撫でるように髪を触る。

 

「髪の毛、さらさらだなぁ」

 

 その髪は男の子と思えないほどでさらさらとしていて、思わずずっと触っていたいくらい。

 

 そんな奏音くんを私が独り占めしていると思うと恥ずかしいけどそれ以上に嬉しかった。

 

「ん、んん……」

 

「か、奏音くん!? ど、どうしよう……」

 

 起こしちゃ不味いよね、だったら髪を触るの止めなきゃだけど止めたくない。

 

 ゲームに熱中で寝不足なのにここで起こしちゃったら、間違いなく後の授業に響く。

 

「え、えっとこういう時は……取りあえずタロットで……」

 

 一先ず鞄から取り出したタロットカードで占うことにしたけど、何を占えば良いんだろう。

 

 奏音くんがすぐに起きるかどうか? それとも奏音くんの髪を触り続けて良いか? かな。

 

「ひな……、そろそろ……だから……」

 

「奏音……くん?」

 

 何て悩んでいると奏音くんの声がして、起こしてしまったかと思って恐る恐る見たけど変わらず寝ていた。

 

 さっきのはただの寝言だったらしい。

 

 起こした訳じゃないのはちょっと一安心で正直なところほっとした。

 

 一旦中止した奏音くんの髪を触ることを再開し、ぐっすりと眠る彼の顔をじっと見つめる。

 

 たったそれだけの事なのに私にとってこの時間は凄く楽しいものだった。

 

「奏音くん」

 

 目の前の友達の名前を言葉にする。

 

「奏音くん」

 

 讃州中学に入って出来た最初の友達。

 

「奏音くん」

 

 声をかけてきたのは彼の方からだったけど、それでも私が自分の意志で歩み寄ろうとした男の子。

 

 まだちゃんと友達になってからそんなに時間が経っていないけど、これからもっと一緒に過ごしたい。

 

 友達としてもっと遊びたい。

 

「楽しみ……」

 

 そんなこれからの学校生活に期待を寄せて。

 

 担任の先生が来るまで、奏音くんをずっと見ていました。

 

 流石にクラスメイトが来てからは恥ずかしいから髪を触るのは止めたけど、それが少し残念で。

 

 また明日になれば触れるかも、何て密かに思ったりもしています。




きらめきの章の公開が10月下旬と決まり、蓮華さんのcvや新キャラの情報まで出てとても楽しみです。

五周年五箇条の続きを楽しみに待っています。
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