アリス・バスタースタッフ   作:蟹アンテナ

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10.的当て訓練

アリスとパラミュはレオンの目を盗んで、日が暮れた後、魔法の杖で的当て訓練をするのであった・・・。

 

「ファイアーボルト!」

 

パラミュの持つ魔法の杖の先端から一握り程の小さな火球が放たれ、岩に描かれた円の中心から少しそれた場所に命中し、少し岩が焦げる。

 

「中々命中精度が上がってきたじゃないパラミュ。」

 

「いやいや、当たり前のように中心に当てるアリスちゃんの方が凄いよ。」

 

「まぁ、パラミュよりも自由な時間がある分、訓練が出来ているんだと思う。」

 

「むー・・・薬草摘みに行っているんじゃ無かったの?」

 

「え?あぁ・・・いやぁ、ちゃんと材料調達はしているよ?護身用があるだけで気分も違うし。」

 

「はぁ・・・まぁ材料はちゃんと必要量集めてくれるから良いけど!時々貴重な薬草摘んで来てくれるけど!一人で訓練なんてずる・・・じゃない!サボりはだめだよ!」

 

(本当は、私の経験をそのままアリスにフィードバックさせているだけなのだがな、まぁアリスは私で、ニコルはアタシなんだ。パラミュには悪いがそう簡単に追いつかせてやらないんだから!)

 

アリスの護身用の魔法の杖は、細身ながら全てが金属製で、多少乱暴に扱っても壊れる事がない丈夫な作りである。

実は、そこらの冒険者の魔法使いが装備している杖に比べても耐久値は雲泥の差で、近接戦闘になる前に魔法で仕留めるか、近接武器が使用できる仲間がカバーするかの戦法が主流であった。

 

「いいなぁ、魔法の杖・・・私もお小遣いを溜めて、アリスちゃんみたいにお色気で手にれるんだ!!」

 

「あぁいや、変な男の人に騙されそうだからやめといた方が良いと思うよパラミュ?」

 

(アリスが変な事を言うからだぞ?まったく、しょうがない、後でパラミュ用にも何か杖を作ってやろうか・・・。)

 

(金属インゴットはまだ、ちょっと残っているけど、木材と組み合わせる事になるかもね。)

 

(アリスやパラミュくらいの年齢の女の子は、ある程度軽量な物が望ましいだろう、店売りの同じ材質の杖でもこちらで作ってしまった方が強度が高い筈だから、訓練のついでに適当な木片でも拾っておこう。)

 

「さて、そろそろ時間だしレオンさんのお店に戻ろう?」

 

「そうだね、アリスちゃんが見つけてくれた薬草束もあるし、お父さんに報告して店番に戻ろっか?」

 

アリスは道中パラミュの目を盗んで、樵が切り倒した後残ったと思われる切り株をSSSの亜空間に複数仕舞い込みレオンの店に戻った。

 

「お父さん!ただいまー!」

 

「みてみて、レオンおじさん!薬草いっぱい集まったよ!」

 

アリスが小型センサーで探知した薬草の群生地から摘み取った薬草の束をレオンに見せると、多少驚きながらレオンは薬草束を受け取った。

 

「これまた、そこそこ貴重な種類の薬草を・・・良く集めたな?よしよしいい子だ。」

 

「えへへ、やったねパラミュ!」

 

「アリスちゃんのお陰だよ!!」

 

レオンは少女たちから受け取った薬草束を糸で縛り、天井に張ってある縄に吊り下げて乾燥させる。

 

「これで幾らか悪魔の風から身を守ることが出来るな。」

 

「まだ空気が乾き始めるまで期間があるじゃない、気が早いよレオンおじさん。」

 

「まぁ、でも病気の対策が出来ていれば安心感はあるよね。」

 

「悪魔の風と言えば、ここ最近街周辺が物騒らしいな?私達の馬車も盗賊に襲撃されたから実感があるが、魔物の活動も活発化して来ているらしい。」

 

「うーん、一体何でだろう?アリスちゃんは何か知らない?」

 

(季節的に冬眠の為の脂肪分を蓄えるために、動物やら魔物やらが餌を求めて徘徊するようになる頃だが、盗賊と言うのは恐らくかの国の工作員だろう。)

 

「多分、お腹がすいているんじゃないかな?冬になると食べ物全然ないし・・・。」

 

「あぁそっか、まぁちょっと気が早いけど私達も冬に備えて日持ちのするもの用意しないとね。」

 

(ふむ、虫型探査機によるとこの街の備蓄は十分で今年の冬は余裕をもって乗り切れそうだが、個人や家庭での対策も必要か。)

 

「小麦をちょっと硬めに焼き固めれば、日持ちのする保存食が作れるって聞いたことあるなぁ。」

 

「へぇ、アリスちゃん物知り!」

 

「・・・そいつは、砦の兵士の非常食の事だな、ただあまり美味い代物じゃないはずだが・・・。」

 

「うーん、何か工夫すれば美味しく出来そうだけど思いつかないなぁ・・・。」

 

(クアッドクラウンのファブリケーション機能で幾らでも食材を保存食に加工できるが、行きつく先は栄養ブロックのパウチだしな・・・この時代にこの保存食は不自然すぎる。)

 

「まぁ、干した葡萄とかの果物を練り込んで焼き上げるくらいじゃないかな?工夫できるとしたらさ・・・?どしたの二人とも固まって・・・。」

 

「それだ!!」

 

「ぴゃっ!?な・・何よ?」

 

その日、レオンは店を一端閉め、乾物店から何種類かドライフルーツを購入し、保存食の制作に取り掛かるのであった。

 

「レオンおじさん上手く行くかなぁ・・・ぽりぽり」

 

(合成した栄養ブロック片手に、保存食の完成を待つとは、中々良い根性をしているなアリス?しかも、分子配列弄って糖分増やすとは・・・。)

 

(だって、アタシ未来の料理ニコルさんの記憶だけでしか味を知らないし、王都に来るまでバッタとかお八つにしていたんだよ?ちょっとくらい良いじゃない。)

 

「あれ?アリスちゃん何食べているの?」

 

「あはは、アタシもちょっと自分で作ってみたんだけど、パサパサで口の中の水分奪われちゃうのしか作れなかったんだ。」

 

(ミルクからバターを合成して、ファブリケーション機能でしっとり仕上げた甘味ではないか、図太いにも程がある。)

 

「ふぅん?でも、お父さんの真似が出来るだけ凄いと思うよ?私も料理あんまり作った事ないし・・・。」

 

「手先が器用だからパラミュなら出来ると思うんだけどなぁ・・・。」

 

その時、扉が開かれて香ばしい匂いと共に、レオンが部屋へと入って来た。

 

「よし子供たち!試作品の果実入り保存食だ!食べてみな!」

 

「わーい!いただきますー!」

 

「ちょ、ちょっとアリスちゃん私も!私も食べるの!」

 

ドライフルーツの入った保存食の試作品は、砂糖などで味付けはされてはいないものの、素材本来の香ばしさ、自然な甘味を持ち、ただ硬くて味気ないだけの塊ではなく、ちゃんとした菓子であった。

 

「ちょっと水分取られちゃうへほ、噛めば噛むほにょほいひぃ~ね!」

 

「もう、食べながら喋るのは行儀が悪いよ?アリスちゃん、でも美味しいね。」

 

「ははは、こりゃ商品として売れるぞ!・・・まぁ、ほったらかしといて腐るか腐らないか調べるのに時間はかかるけどな・・・。」

 

(ドライフルーツの影響で幾らか湿度があるが、管理がしっかりしていれば従来の保存食と同じ程度には保存は可能だろうな、まぁ管理方法なんて手探りになるんだろうが・・・。)

 

「でも、もし保存食になるなら街の門番さんとかに喜ばれるかもね?勤務中に水を飲んだり手持ちの干し肉とか果物とか食べるのは許可されているらしいけど、こういうのを持っていたら幾らか楽になると思うんだ。」

 

「そうねパラミュ、やっぱり目の付け所が違うわね。」

 

「アリスちゃんの方こそ・・・・。」

 

アリスは、パラミュに近づくと耳元で小さく囁いた。

 

「・・・後で、いつもの場所に来てくれるかな?渡したいものがあるんだ。」

 

「え?」

 

「また明日・・・ね。」

 

新作の保存食の試食会が終わり、後片付けをした後、就眠するレオン家。

翌日、日が昇るとアリスとパラミュはいつも通り薬草摘みに出かけ、岩に木炭で円を書いた的のある隠れ訓練場へと訪れていた。

 

「そう言えば、昨日渡したいものがあるって言っていたけど、何をくれるの?」

 

「ふふん、実はね・・・じゃーん!パラミュの杖だよ!」

 

アリスが背中に背負っていた布に巻かれた棒状の物体をパラミュに差し出すと、布をほどき美しい光沢の先端が金属で補強された杖が姿を現す。

 

クアッドクラウンのファブリケーション機能で木材から水分を抜き圧縮した高密度の圧縮木材のフレームに、内部に複雑な魔法回路が編み込まれた金属球が取り付けられた魔法の杖である。魔力効率の向上と消費量の低減などアリスの護身用の杖と同じ様な性能で下手な冒険者の装備よりも上等なスペックである。

 

「え・・・うわ、うそ!うそうそ嘘ぉ!?本当に!!本当にくれるのっ!?」

 

「うん、お金をためて材料持ち込みで特別に作って貰ったんだ。」

 

「こんなに良い品なのに材料持ち込みだったの?一体どこでそんなもの・・・。」

 

「へへへ、秘密だよ!あ、ちなみに作ってくれた人にも口止めされているんだ。」

 

「むー・・いろいろ気になるけど、嬉しいよ!有難うアリスちゃん!大切にするからね!」

 

(完全に金属で作られた我々の杖と比べると、木材なので耐久性に難があるがな・・・だが、圧縮木材なので通常木材よりかなり耐久性は高い筈だ。デザインは何処にでもありそうな杖だが中身は店売りの杖とは別物だぞ。)

 

(しかし、圧縮木材かぁ・・・金属素材ばかり目が行っていたけど、これも色々と用途があるから集めておくのも悪くないかもね。)

 

その日の訓練は、いつになくやる気になったパラミュが体中の魔力が切れかけるまで魔法弾を撃ちだし、目を回すまで続けられ、アリスに担がれて家に帰る事になった。

 

「むにゃぁぁ・・・えへへ、手に馴染んできたよぉアリスちゃぁん・・・。」

 

「夢の中でも的当て訓練しているし・・・しかし、本当に腕が上がったなぁパラミュ・・。」

 

(色々な物に触れる事で、その身に秘められた才能が開花する事があるが、遺伝子操作されたわけでもないパラミュがこれ程の才能を秘めているとは驚きだな。)

 

(それにしたって、やる気の出し過ぎだよ。魔力切れなんて起こしたのアタシの場合いつぶりだったかなぁ・・・?)

 

(5年ほど前に魔法使いごっこで、体内魔力の流れを弄っている時以来だろう?まぁ、私は遺伝子操作兵として生まれたから、今まで一度も魔力切れなんて経験したことが無いがな。)

 

(ああ、無尽蔵に魔力を生み出しちゃう遺伝病の遺伝子を完全制御できるように改良して組み込まれているからね・・・・まぁ、幾らナノマシン強化されているからと言っても今のアタシの魔力はニコルさんみたいに無尽蔵って訳でも無いんだけど。)

 

「アリスちゃんと一緒に魔法戦士様みたいに強くなるんだぁ・・・ふへへ・・。」

 

「えぇ・・・。」

 

的当て訓練と薬草摘みの帰りに、パラミュの言った寝言に魔法少女姿のアリスとパラミュのタッグが脳裏に浮かびあがり、何とも言えない表情で帰路に就くのであった。

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