人類が故郷である星、ウォルトスから離れてどれだけの時が経ったのだろうか?星の海を突き進み、人が生きるのに適した土壌の星を見つけては開拓し、それを何度も繰り返し、途方もない年月をかけてそれぞれの勢力圏を持つに至った。
だが、銀河中に広がった人類はやがて勢力圏同士で争いをはじめ、夥しい量の血が流れた。人類はその反省から一つにまとまる為に銀河連邦を結成し、数千数百の星々がそれに加わった。
しかし、独立心が強い傾向にある勢力の星々は反連邦組織を結成し、銀河連邦に反旗を翻した。
戦争は新たな憎しみを産み、ついには惑星破壊兵器すらも使用される始末である。
私はそんな戦乱の時代の中、遺伝子操作兵としての生を受けた。
身体能力は一般市民よりも飛びぬけていたし、武器の取り扱いも同期の仲間よりも少しは抜きんでていた様に思う。
我々が守るべき市民たちは、我々遺伝子操作兵を嫌悪感と恐怖の視線で見ていたと感じた。
過去の戦争で活躍した英雄や容姿が優れていた故に広告塔扱いされていた将兵の遺伝子が組み込まれているので見栄えが悪いわけではない、だが生命の禁忌に触れた方法で生み出された我々を忌避するのも無理はない話であった。
私たちが拠点としている惑星は、母星ウォルトス直系の血を受け継ぐ純血種たる一般市民と、母星を離れて遺伝子的に変異した亜人や過去の戦乱で活躍した兵士の遺伝子を混ぜこぜにして生み出された我々が暮らしていた。
一般市民は殆どホワイトカラーの職に就き、遺伝子操作によって生まれた我々は社会の実働を担うブルーカラーの職が殆どで、特別情報処理に優れた調整がされた者は半ば生体部品同然で機械に繋がれて働いていた。あれをホワイトカラーと称するには些か禍々しすぎる様に思える。
「最近随分ときな臭くなってきたな?ニコル。」
ニコル、それが私の名前・・・本当はニコルと言う名前の後ろに製造番号に相当する長ったらしい記号が付くのだが、それは割愛する。
「たて続けに発生する信号の途絶・・・やはり、惑星破壊兵器が使用されたというのか?」
「人類発祥の地ウォルトスに憎しみを持つ反逆者が増えてきている。すでにこの短期間で24の惑星が連邦から離反しているんだ。何が起こっても不思議ではない。」
「D.G、ここから最寄りの魔力フェーズゲートの監視はどうなっているんだ?どうにも嫌な予感がするんだ。」
「魔力フェーズゲート技術の独占・・・それが、銀河連邦が他の勢力よりも抜きんでている要素だったのだが、離反した中に技術の中核となる学者たちの出身地も含まれている・・・このままでは・・・。」
その時、軍事施設は元より街全体に警報が鳴り響いた。
大気圏外に大規模な時空の歪みが観測されたのである。
「一体何が起こっている!?」
「きょ・・・巨大な質量の物体が、突如空間を突き破って姿を現しました!!」
「詳細は・・・ば・・・馬鹿な・・・プラネットブレイカーだと!?」
「脱出艇を発進させろ!超時空ジャンプでなるべく市民を効果範囲から逃すんだ!」
「迎撃は出来ないのか!?そうだ、ニコル!D.G!杖だ!杖を使うんだ!緊急時につき制御装置は解除されている筈!」
「ここまで、接近された状態で迎撃など出来るか!しかも、魔力障壁まで張っているんだぞ!?」
「巡洋艦ほどの質量を持つ物体を押し返せるというのか!?」
街中は混乱していた。市民も軍人も関係なく、怒号が飛び交い我先にと脱出艇に乗り込んでゆく。
我々遺伝子操作兵の中で、士官クラスが所持を許される特殊兵装を持ち、初めから結果など分かり切っている戦いに身を投じる事となった。
クアッド・クラウンMkⅣ、それが私の半身にして相棒であった。
SSS[ソウル・ストレージ・システム]を起動し、何もなかった筈の空間から先端が4つに分かれた杖を取り出し、浮遊魔法で惑星に衝突しようとするプラネットブレイカーへと飛び立った。
「薬室内正常加圧中、魔力圧縮完了!時空アンカー展開!角度よし、行くぞニコル!!」
「せめて、時間稼ぎくらいにはなってほしいものだが・・・致し方あるまい!!全力で行くぞD.G!!」
惑星破壊兵器の突撃に間に合った士官クラス遺伝子操作兵の特殊兵装の一斉照射、大気圏防衛用長射程対空砲の雨がプラネットブレイカーに降り注ぐ。
魔力障壁を展開したそれは、迎撃に出た遺伝子操作兵の特殊兵装も、惑星防衛兵器も無慈悲に弾いた。しかし・・・・
「くっそおおおぉぉぉ!」
「止まれぇぇぇぇ!!!」
その時、火力が一点に集中した一瞬、障壁を突き破り魔力制御盤を破壊した一撃が入ったのだ。障壁が消え、プラネットブレイカーを押し出すスタラスターが機能停止する。
「プラネットブレイカーの機能停止を確認!やったぞ!」
「だが、このままでは自由落下でどの道ダメージを受ける、重力カタパルトで弾き出せないか?」
「まて!通信機にノイズが・・・これは一体?」
突如、機能停止したはずのプラネットブレイカーが光り輝く
「遠隔操作・・・自爆信号だと!?惑星破壊ではなく、地表を焼き払う事に妥協したのか!?」
「い・・・いかん、このままでは・・・。」
そして、私は眩い光と共にその肉体を灰燼へと帰した・・・その筈だったのだ・・・。
目を覚ませば、私はアリスで・・・・盗賊に村を焼かれて、私自身も盗賊に殺害されて・・・アタシは・・私は・・・一体何者だというの?