・・・・・まず、状況を整理しよう。
私は、生まれながらの軍人として生を受け、志半ば星ごと命を失う・・・。
アタシは、何処にでもいる村娘で、盗賊に村を襲われて、そして体を切り刻まれ胸を貫かれ、死んじゃったはず・・・。
だが、それは変な話だ。
たかだか腕を切り落とされた程度なら、直ぐに腕を拾って魔法で直せばよいし、心臓を貫かれたとしても損傷個所をすぐにナノマシンが硬化して塞ぐので、それが原因で命を失う事なんて早々はない。はず・・・。
でも、でも・・・そんなすごい魔法なんて聞いたことも無いし、心臓に穴が開いたらまず助からないし、それに確かに胸に傷が・・・え・・服がはだけて・・・。い・・いやぁっ!?
今の自分の格好を思い出して、少女は赤面しながら胸を隠すが、ふと周りを見渡すと盗賊と村人の遺体と、村の廃墟しか残っていない事に気づく・・・。
「・・・そうだった、みんな、みんな居なくなっちゃったんだ。」
「あはは・・・バカみたい、生娘な年齢でもあるまいし、しかもこのような状況で肌を見せたのどうこうで声を上げるなんて・・・・。」
「お父さん・・・あぁ、私の父親・・・か・・・。」
(ナノマシンによって選別された遺伝子情報と培養槽こそ、私の父であり母親であった筈・・・・血のつながった両親か、不思議な感覚だ・・・。)
「・・・・?」
(涙?私は今泣いているというのか?・・・そっか、そうだよね。お父さん、お母さん・・アタシ一人ぼっちに・・・。)
少女は困惑していた、死を2度経験していた事に、そして村が焼かれ街が滅ぼされ、2つの故郷を同時に失っていたことに・・・。
(はははっ、アリスという少女は随分と泣き虫なんだな・・・。)
「でも、ニコルさんはこんなに泣き虫さんじゃなかった筈、アタシも私も今とても悲しい気持ちのはずなのに・・・一体何でこんなことに・・・。」
(そうだな・・・アタシはここで確かに死んだ、そして私もあの星で確かに命を落とした・・・今の自分がそれらの歪な複合体だったとしても、今この時代を生きる少女そのもの・・・。)
「・・・・兎に角、早くこの村から離れないと、確か森を抜けた先に峡谷があって、さらにその向こうにウォーテリアっていう王都があって・・・。」
(まて、ウォーテリア?どこかで聞いたことがあるような・・・?)
生前の・・・ニコルとしての記憶を掘り起こす。睡眠学習で無理やり詰め込んだ後、記憶として定着させるために筆記試験を受けた記憶がある・・・たしか、歴史の科目で・・・。
「ウォーテリア帝国・・・いつの時代に王国から帝国になったのかは分からないが、その名前の国が存在する星は、人類発祥の地ウォルトスだけの筈・・・・。」
(帝国となる前の、王国時代・・・つまり、それが意味するところは・・・・。)
「旧世紀・・・だというのか?」
銀河歴が使われる前、人類がまだ宇宙に進出していない頃の時代の総称であり、多くの歴史が失われた今、歴史家の中で議論が続けられている時代でもある。
「ふつうは死んだら未来の誰かに生まれ変わると思っていたが、過去の人間に生まれてしまう事もあるものだな・・・いや、歴史上のアタシは・・・アリスは死ぬはずの人間だったという事なの!?」
(いや、だが・・・それならば、だからこそ・・・。)
「アタシが生きているという事は、歴史が変わったことと言う証明・・・なら、折角この時代に生まれ変わったんだし、遠い遠い未来、人と人が憎しみ合わない世界に近づけることが出来るかもしれない!」
(無邪気な少女の理想だな、たかが一人の人間が何をできる?)
「遥か未来の産物・・・士官用特殊兵装クアッド・クラウンMkⅣ、どう考えてもSSSの影響よね?魂を核に亜空間を作り出し、魂に焼き付ける事で鹵獲を防ぐ機構・・・。」
(過去に転生し、魂に武器を格納したが故に未来のものを過去に持ち込む・・・か、知らないだけで相当数似たような現象が起きていたのかもしれんな、案外神話の武器などもそれに近い物だったのかもしれんが・・・。)
「さて、クアッド・クラウンには装備瞬間装着機能が搭載されていたな、取りあえずこの服装のまま王都へ向かう訳には行かないから、まずはこの服装から着替えて・・・。」
ボロボロになった安物の布の服は、分子レベルで分解し、ほんの一瞬だけ裸になるが、次の瞬間には士官用装備に変更されていた・・・・サイズが合わないが・・・。
「ぶかぶかぁ・・・うぅ~~・・・。」
(抜かったか!私としたことが・・・いや、そこまで流石に抜けてはいないはず・・・アタシのせいか!!?)
「でもさぁ、ニコルさんは高速培養で子供時代自体が短いし、それに合わせた服装データなんて多分読み込まれていないし、アタシすっぽんぽんで王都まで向かわないといけないの?それは流石に・・・嫌だなぁ・・・。」
(気は進まないが、村のみんなの服装をスキャンしてそのデータをもとに私の服を再構成する線で・・・うん?)
クアッド・クラウンの内部データを閲覧していると、子供用の兵装のデータが何故かダウンロードされていた。
「どう考えても子供が着るような服のサイズだが、一体何故この様なモノが・・・まぁいい、銀河連邦制の服だ、最低限防弾防刃機能があれば問題あるまい。」
クアッド・クラウンの装備瞬間装着機能を再び起動すると、膨大なエネルギーが迸り、ぶかぶかの士官服を粒子化させ、ほんの少し長めの装着時間で下着から上着まで順番に装着され、やたらと装飾が過剰と思える服装へと変化した。何故か気づかぬうちにポーズまで取って・・・。
「な・・・な・・・な・・・・。」
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!!?」
村の廃墟に、少女の叫び声が轟いた・・・。