ひたすら書いてる実験場   作:ナルヴィク

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ニヒ武狭モノ。



英雄好漢もの01

 二つの影が宙を舞った。

 一つ、二つ、三つーー影が合わさると、それらはまた離れる。合わさる毎に甲高い音が響き、火花が宵闇を裂いた。

 幾重にもくりかさえされ、まるでそれは一つの踊りの様でさえあった。

 しかし永遠に続くかと思われたそれはふと、途切れることになる。

「ここまでか」

 遠方へ視線をやり、彼は呟いた。

 未だ姿は見えないが、彼には近づいてくる気配を感じていた.

「――結局は決着がつかなかったか」

「ふん! 貴様が帰ってきたらワシが勝つは!」

 まるで納得がいかないというように一人の男が言った。

 それに答えるように、相対していた男が刀を仕舞いながら「ははは。悪いが――決着はつけられないだろう」と呟く。

「おい! 貴様――」

「分かっているだろう。快刀乱麻とまで呼ばれたのか漢が分からない筈もない」

 向けられてた視線に、先ほどまでの勢いはどうしたのか言葉を飲み込み、快刀乱麻と呼ばれた男は渋い顔をする。

「……馬鹿め! 見知らぬ者の為に官軍に立てつくとは! 正気が知れんわい! 一人でどうやって勝つというのだ!」

「ははは! 全くだ!」 正気が知れないと言われた男が快活に嗤う。それは今から死地へと向かう人間の態度ではなかった。

「だが――かつて私は己に誓ったのだ。この誰もが怯える世界で、官軍すら民を守らぬならば、己一人だけでも弱きモノを守ると。例え悪鬼羅刹になろうとも引かないと誓ったのだ」

「……本当に馬鹿ものめ!」快刀乱麻と呼ばれた男は、背中の刀を外すとそれを目の前の男に放り投げる。

「これは……」

「使え。貴様の獲物よりもワシの獲物の方がいい。ただし生きて帰ってきたら返せ」

「……すまない」

「ふん! いいか! 絶対に返せよ!」

「ああ――」

 そこに込められた気持ちと共に背に刀を背負う。

 これが目の前のぶっきらぼうな男ができる最大の応援だと分かっていた。なにせこの男の二つ名はこの宝刀と共に作られたものだ。偏屈な男だが、決して卑怯な男ではなかった。また加勢ができない理由も分かっている。

 なにせ一都市の武術指南役である。

 下手に関われば、戦争になる事は必至だった。

 無辜の民まで関わるような事態にまで発展させることは男も本意では無かった。

 そもそもこの宝刀すら過分だろう。最悪、この宝刀により相手が難癖をつける可能性だってある。

「――――さて、行くか」

 覚悟は既にできていた。

 貰った友の餞別と気持ちを握りながら、音へと走る。

 ――俄然に広がるのは、人の群れ。これ全てが己を殺すための兵士である。

 それは眼に見える明確な死だった。

 いくら武術の腕があろうとも、数の暴力は強大だ。それをひるがえすには武術の腕とは別の何かが必要だろう。

「だが――それでも」

 ――身を捨ててこそ浮かぶ瀬もある、だったか。

 国語は苦手だったが、どうやら少しは覚えてたらしい。

「ここが私の――俺の命の懸け時だ!」

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