ひたすら書いてる実験場   作:ナルヴィク

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名前は大体適当。



英雄好漢もの02

 〇

 

「はてさてどうしたものかな……」

 ぶらぶらと歩きながら俺は呟いた。

 実の所、俺は転生者だった。

 とはいえ、死に方を覚えてはいない。気がついたらこの世界にいた。何故転生をしたかすら分からない。

 初めは困惑した。もっとも気がついたらこの世界にいたのだから当たり前だ。その上、この世界は自分が生きていた世界よりもかなり厳しい世界だから尚の事だ。

 人の命は軽いし、モンスターだっている。なにせ人が住む場所はモンスターが少ない平原に限られてる。環境が過酷になればなるほどに、そこに住まうモンスターは強くなる。

 なら、どうして人間が生きているのかというと、モンスターの侵入をさえぎる壁を立て、それを拡張していったからだ。

 その壁は年輪の様に都市の中心部からだんだんと外へと広がり、今でも拡張されている。

 そして、もう一つ理由がある。

 それがーー武術と気功だった。

 師曰く、生命力の操作であるとの事らしい。

 気を操作する事により、人間は普段の何倍もの力を出すことができた。

 そしてそれ故に、気を操作する方法と、それを使うための身体の使い方が発展していったのは自然の流れと言えるだろう。

 それはいくつもの流派となり、今でも鎬を削っている程だ。むしろ都市の外へ出るにはこうした武術者か、それを護衛と出来るものに限られている。

 こうして考えると本当、我ながら良く生き残ったもんだ。

 早死にしていてもおかしくない。

 もっとも、師父に拾われてから生易しい生活だったかというと違う訳だけど。

 拾われてからあったのは毎日、鍛錬に次ぐ鍛錬だったし。

 師兄の中には嫌な奴もいたし。

「まぁ、それもここでおさらばだ」

 門下の人間は一定のレベルまでくると卒業試験の様なものを課せられる。とはいえ、別に点数をつけるペーパーテストがある訳ではない。内容は流派の目的である人助けだ。

 その内容は多岐に渡るが、基本的には力無き人の代わりに立ち上がるべし、である。

 正直に言えば元々が平和な国に過ごしていた人間と今のこの世界の常識はかなり違う訳で、この手助けも今の世界基準からであるから、師から聞いた話などはかなり苛烈だ。

 政府の人間が間違っているのであれば、それに立ち向かうし、暴力を使い悪漢を殺す事もある。もっとも大抵は殺されるだけの理由がある訳だけど。

 モラルの面から言えば、けしてこの世界は高くない。そんな世界における犯罪行為はあまりにも悲惨な結果を残す。

 そしてだからこそ、それに対抗しようとすると、それそうおうの手段になってしまう面があった。

 かくいう自分も既に人殺しだ。殺した相手は殺人、放火、窃盗などを繰り返した人間であり、都市内部で一時期問題になった人間達の一人である。

 もし仮に、元々の国であったなら、まごう事なき私刑であり、俺も犯罪者である。

 しかしこの世界においては、正義とまではいかないし、けして良き行いとも言えないが、同時に極悪とも言いがたい。

 あの場で動かなかったら、より被害が出ていたのは明白であった。

 もっとも独善ではある。また行いは褒められる事かというと、違うだろう。

「いやはや、スレてしまったものだね」

 とはいえ、どうしたものか。

 自由になればなったで、困りものではあった。

 市場で買った肉焼きの串を手に持ちながらぶらぶらと街中をぶらつく。

 街中は活気に満ちている。運搬の為の馬車が中央へ通り、商業区においては売り子達の声が響いていた。

 比較的、この場においては犯罪という犯罪は少ない。喧騒の様なものこそあるが、明るく開かれた場所においては余程の事がない限り安全といえた。

 のだが。何事にも例外はあるらしい。

 「何だ……?」

 一段と人が集まる場所があった。

 人垣ができ、そこからは怒号が聞こえてくる。

 「女と男二人だなこれは」

 強化かれた聴覚から分かるのはそれぐらいだ。内容は耳障りが悪い内容であり、正直にいってなにが何だか分からない。

「よっと」

 軽功により、軽くがると屋根へと登る。

 そこから見えたのは、女武術者と男武術者二人、そして女武術者の裏に隠れている子供が一人である。

「……どうしたものか」

 パッと見たところは、子供を守るように立つ女武芸者へ味方すべきように見えるが、かといってどういった理由があって争っているかが判断出来ない。

 これが師兄であれば考えなしに女へと加勢するかもしれないが。

「いい加減にしなさい! 二人とも武芸者ならば自分より弱い者を狙うなんて恥ずかしくないの!」

「喧しい! 女如きが口出しするな!」

「これ以上邪魔立てするなら……!」

 そうこうしているうちに、男二人が刀を抜く。

 それを見て、女も腰に佩た剣を抜いた。

 それを観ていた者たちも、流石にこれは危ないと思ったのか、どんどん三人から遠ざかる。

 流石にこれはほっておいたら良くないよなぁ。現場にいたから余計に。後で何言われるか分かったもんじゃない。

「あー君たち」

 バッと三人がこちらをみる。

「誰だ! この女の味方か!」

「違うぞ。強いて言うなら都市の武芸者さ」

「都市の……!」

「でーー君たちは何で争ってるのかな?」

 男二人が顔を見合わせる。そしてまるで何かを決意したような顔になる。

「おいおい。何か勘違いしてるようだが――」

「シッーー!」

 最後まで言う前に、男の一人がこちらへと刀を振り下ろしながら飛びかかる。

 それを避けながらも、下を見るともう一人が女へと襲い掛かっていて、それを女が剣を使い、立ち向かっていた。

 あーもう。めちゃくちゃだよ。

 とはいえ……うすうすこうなるのではないかとは思っていた。だからこそ出来るだけ穏便に話かけたのだけど、無駄だったな。

 こうなってしまったら仕方ない。最早言葉でどうにかなる話ではなくなった。

 背負った刀を抜き、俄然の男へと向き合う。

 構えは半身。脚と刀が揃う。

「――!」

 どうやら相手は見掛け倒しではなかったらしい。気に活性化された身体が鋭く刀を振り下ろしてくる。

 それを俺は受け、捌き、この場から動かない。

 下では女武芸者が剣と身体をうまく使い、相手を翻弄していた。

 強いな。あの女。

 ならば援護はいらないだろう。

「きさま!さっきから!舐めてるのか!」

「いや? 舐めてはいないが」

「なら、何故攻撃しない!」

「ははは! 攻撃しない者は殺せないか? 先ほどまで殺そうとしてた人間が!」

「――!」

 ――怒気を含ませた踏み込みが来る。

 別に俺はこの男をなめていた訳ではない。ただ俺は嫌だったのだ。例えそれが狂った人であろうとも、できるだけ殺したくなくはなかった。

 師は先の先を取れと。守るためには躊躇ってはならないと良くいった。

 それは正しい。この世界で狂っているのは俺だ。暴力は暴力で身を守らなければならない。守るためには殺さなければならない。先手必勝こそが必要なのだろう。だがそれでもかつての価値観を未だに捨てられない。捨てない。

 ――空気中の気を呼吸にて取り入れ、気を体内に循環させる。狙うのは一瞬だ。

 だからこれはその矛盾によって作られた技だ。

 相手がこちらを殺しに来なければ、けして成り立たない。

 ――鋭い踏み込みと共に大上段から刀が迫る。体内で作られた、蓄えられた気を爆発させる。一気に放たれた気が弛緩したと研ぎ澄まされた意志により相手の刀の腹を滑り――

「馬鹿な……早すぎる」

 男の刀を受け流した俺の刀を受けて、男が倒れる。

 タイザン派の一手の変形が一つ。因果応報。

 簡潔に言ってしまえばカウンターだが、これの要訣は内功であって、型そのものはあまり関係ない。

「……向こうも終わったか」

 下をみれば、彼女が既に終わらせていた。

 軽功による体捌きで男を翻弄し、剣による刺突で見事に相手を殺している。

「無事か?」

 刀を納め、下にひらりと降りると、彼女はこちらへと顔を向ける。

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