ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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すみません、更新するのを忘れていました。偶にあるヤツ。

今日、上映期間ギリギリでしたけどワンピース観に行ってきてテンション上がったので二話更新するつもりだったんすよ。
それが遅れちゃったんで、まぁしょうがないです。

三話更新しましょう。

ということで
※本日一話目


味方したいのは

 帝都アガスティア。

 エルステ帝国の首都にして、ファータ・グランデ空域内では最も人口密度の高い場所だ。上空から眺めても所狭しと建物が並び、夜の今となっては明かりが照らし出していた。島の奥には割れた球体の欠片のようなモノも見え、異様を見せている。その欠片の中で守られるかのように、巨大な建物であるタワーが建設されていた。そこがエルステ帝国の中枢となっている。

 

「おぉ、もうやってるねぇ」

 

 俺は小型騎空艇で上空から帝都を見下ろし、騒ぎになっているのを確認してほくそ笑む。

 

「ま、その方が動きやすくて助かるんだけどな」

「も~。ダナンが時間かけるから出遅れちゃったんだよ?」

「悪かったって。必要だと思う準備は全部する主義なんだよ」

「まだ終わってないから別にいいだろ。それよりこれからどうするつもりだ?」

 

 同乗しているドランクとスツルムを、少しばかり待たせてしまっていた。おかげでもうあいつらが侵攻し、協力者達も到着した頃になってしまっている。

 

「僕達はボスと合流するつもりでいるよ~? ダナンはどうするの?」

「合流はしねぇ。できれば影からこっそり手助けするくらいにしておきたいんだが、まぁ必要になったら顔出すさ」

 

 帝都を上空から見下ろして戦況をざっくり把握しようとする。……ふむふむ。協力者らしき連中は大勢の帝国兵と交戦中、か。秩序の騎空団ももういんな。モニカの紫電は上からでも目立つからわかりやすい。あとは……ん?

 

「なぁ。あれってグランサイファーだよな?」

 

 俺が見つけたのは帝都に停めてある一隻の騎空艇だ。

 

「ああ。帝国兵が放っておくはずもない、が誰かが守ってるな」

 

 スツルムの言う通りグランサイファーの近くには大勢の帝国兵が詰め寄っている。しかし直前で倒れている者が多く、船の前に立つ白い衣装のヤツが守っているように見えた。

 

「おっ? あれは帝国の大将アダムだねぇ。帝国の重鎮がグランサイファー守って兵士と戦ってる、なんて面白い状況」

「ほう、あれがなぁ。まぁなんか事情があるんだろ。俺はあいつのとこ行ってみようかな。あいつらの状況もわかるだろうし」

「オッケー。じゃあ僕達はあのでっかいタワーが怪しいと思って近くに行くから。あとこれ、なにかあったら連絡してね」

「おう。――死ぬなよ、二人共」

「そっちもね」

「言われるまでもない」

 

 俺は二人とそれぞれの手で拳を突き合わせてから、タイミングを見計らって飛び降りた。低空飛行をしてくれていたので、まだいなせるくらいの衝撃で着地できる。大将アダムと、グランサイファーを狙っている帝国兵との間だ。タイミングばっちり、双方驚いているのが手に取るようにわかる。

 

「き、貴様は黒騎士の一味の! 敵だ! 構わん、やってしまえ!」

「お、装備ちょっと良くしてきたってのに顔バレしてら。しょうがない、いらんとは思うが助太刀するぜ大将。お礼はちょーっと話聞かせてくれるだけでいいからよぉ」

「……わかりました。殺さず、峰打ちでお願いします」

 

 アダムというらしい黒髪の男は落ち着き払った声で言った。そういや、よく見ると倒れてる兵士達も死んではいない。完全に裏切った、ってわけでもないのか? まぁそれも聞けばわかることか。

 この数を一人で、しかも手加減して相手できる強者だ。そこに俺が加われば、兵士の群れなんざ一掃できる。

 

「一部が逃げたな。ありゃ増援を呼ぶぞ。放っておいていいのか?」

「構いません。私はこの船を守るだけです、どんな敵が来ても、どれだけの敵が来ても」

「そうか」

 

 覚悟を持っているならそれでいい、のかもしれない。一時とはいえ兵士達を退けたので、話をする機会を設けられた。

 

「……話の前に一つ、聞いてもいいでしょうか」

「ん?」

「あなたとは初対面です。なぜ躊躇いなく私を助けたのですか?」

 

 随分と簡単なことを聞いてきた。わからないのではなく、向こうが俺を信用するために声に出して答えて欲しいのかもしれない。

 

「簡単なことだろ。一つ、お前があいつらの船を守って戦ってたから。となるとあいつらに一時的にでも同行してた可能性が高く、あいつらがいつ頃到着してどこへ向かったのか知ってる可能性が高いから。もう一つはもっと簡単だ。俺は知ってるかもしれないが黒騎士の仲間だ。帝国と敵対したあいつと出会い、船という退路を任せて先に進んだってことはあんたの事情を聞いてあいつがとりあえず信用した、ってことだ。まぁなんだ、あいつが信用したんならそれで充分なんだよ」

 

 回りくどい言い方にはなったが、つまりはそういうこと。

 

「そうですか。ではあなたは、彼らに助力すると?」

「ああ。どうしても正面から乗り込むって性分じゃなくてな。こうして別行動してるってわけだ」

「なるほど。ではあなたにも、彼らにした話と同じことを告げましょう」

 

 アダムは一旦俺を信用することにしたらしい。

 

「エルステ帝国の、息の根を止めてください」

 

 裏切り者に相応しいセリフだった。

 

「私はエルステに長く、帝国になる前から仕える身です。エルステの歯車は狂ってしまった。エルステを救うためにも、どうかお願いしたいのです」

「そういうのはグラン達の仕事だな。まぁあいつらがその話を聞いて行ったんなら、大丈夫だろ。で、あいつらはどこだ?」

 

 アダムは真剣だったからか微妙な表情をしつつも、答えてくれる。

 

「……あの方々はリアクターを止めるためにタワーの方へ向かいました」

「タワーってのはあの奥のでかい建物だとして、リアクターってのはなんだ?」

「あなたが黒騎士の仲間だというならご存知とは思いますが、フリーシア宰相が星晶獣アーカーシャをルリアさんとオルキス様なしで起動させるために作った装置のことです」

「そんな手段あるんじゃねぇかなとは言ってたが、本当にあるって言うのかよ」

「はい。リアクターの役目とは人の精神を魔晶によって擬似的な星の力へと変換すること。そうして変換した擬似的な星の力を使い、ルリアさんとオルキス様なしであっても強制的にアーカーシャを起動させる事ができる、ということのようです」

「ほーう」

 

 全然わからん。まぁその説明だけ覚えておくか。詳しい仕組みなんか知らんし。

 

「そして、そのリアクターが変換する元となる精神の部分に、もう一体の星晶獣が関わってきます」

「まだいやがんのかよ……」

「はい。ですがルーマシー群島の遺跡に封じられていたアーカーシャとは異なり、こちらは元からエルステにいた星晶獣となります。星の民から与えられた星晶獣――名をデウス・エクス・マキナと言います」

 

 与えられた……? 妙な言い回しだな。細かい部分は省くが、空の民からしたら星の民は侵略者。言ってしまえば敵対関係にある。それではまるで、協力関係にあったみたいじゃないか。

 

「星の民からしてみれば、空の島と提携しておくのは悪くないことではあったのです。覇空戦争が終わった時、万が一のために星の民の生き残りを匿ってもらうためにも。尤も星の民は空を支配できないとは考えていなかったようですが、念のためを作っておくくらいの慎重さは持ち合わせていたようですね」

 

 確かにメリットとも言えなくもないが。

 

「当時空の世界の最高戦力とは、ゴーレムでした。しかしゴーレムでは星晶獣に敵いません。空の世界で最も戦力のあったエルステ王国は、敵わないと見るや降伏し星の民と提携を結んだのです」

「賢明な判断だな」

「ええ。その時に王国の安全と、星の民の兵器である星晶獣を要求しました」

「その結果与えられたのが星晶獣デウス・エクス・マキナ、ってことか」

 

 しっかし負けそうになった癖して要求が大きいな。ともすれば反抗する戦力になるかもしれないってのに。

 

「デウス・エクス・マキナに戦闘力はあまりありませんよ。そう、星の民が作って与えたのでしょうが。エルステが欲したのは、戦力としての星晶獣ではなく人に限りなく近いゴーレムを作り出すための星晶獣でした。ゴーレムの技術はエルステ王国が卓越していましたが、どうしても心を宿すことができなかった。ゴーレムは、心を宿して完全だと思っていたのです。そこでデウス・エクス・マキナを得るのですが、結局のところ使用はしませんでした」

 

 ゴーレムに心を与えるための星晶獣、か。

 

「それは星晶獣デウス・エクス・マキナが心を作る星晶獣ではなく、人から精神を抜き取り別のモノへと移すことが可能な星晶獣だからです」

「……なるほどな。そこでリアクターの話に繋がってくるわけか」

 

 おそらく、現状の技術では人の精神をそのまま星の力に変換することができない。だから元からいたデウス・エクス・マキナの力を使ってリアクターを噛ませ星の力にする。

 

「その通りです。そしてその星晶獣は、オルキス様にとって関わりの深い存在となります」

「ん? …………そうか、そういうことかよ……」

 

 言われて、少し考えればすぐに答えが出てきた。

 オルキスは確か「星晶獣の暴走によって心を失い今の人形のような状態となってしまった」。

 

「つまり、十年前にオルキスを人形にした星晶獣ってのがそいつってことか!」

「はい。十年前フリーシアは今よりずっと不安定な魔晶を使ってデウス・エクス・マキナの封印を解きました。その結果が星晶獣の暴走。女王夫妻は死に、オルキス王女は人形と成り果てました」

「……あいつが全ての元凶かよ」

「はい。そして、星晶獣デウス・エクス・マキナは星の民がエルステへ与えるために弱めて作った星晶獣です。精神を移し変えるのが精いっぱいで、創造や破壊などの強い力を持ってはいません」

「ってことは……」

「オルキス王女の精神は、今もあの事件が起きた現場――旧王都メフォラシュの中に漂っています」

 

 オルキスは心を奪われただけで破壊はされていない。そして今現在に至るまでオルキス王女の精神が入ったと思われるヤツなども確認されていない。そんな情報があれば王都の人や黒騎士達がとっくに見つけてるだろう。

 ……それをあいつが聞いたら、やっぱりオルキスの精神を元に戻すんだろうか。戻すんだろうな、きっと。

 

「今デウス・エクス・マキナはフリーシアの制御下にあります。彼女を倒しデウス・エクス・マキナを解放すれば、オルキス王女は戻ってくるでしょう」

「……で、その話を黒騎士も聞いてるから、今突き進んでるってわけか」

「はい。肝心のリアクターはタワーにあります。とはいえ本物でもない星の力でアーカーシャを起動させるには、途方もない数の精神を変換する必要があります。デウス・エクス・マキナの力が行き渡り、帝都全体を覆うまでの時間くらいは猶予があるでしょう」

「帝都全体って……具体的な数はわかってんのか?」

 

 帝都全体ならどれくらいの数に上るのか。俺は詳細な人口を記憶していなかったが。

 

「百万。帝都に住まう全住人が犠牲になります」

 

 なるほど、確かに途方もない数だ。

 

「……とんでもねぇなぁ」

「はい。私はエルステを守りたい。ですので、あなた方の味方はしてもエルステの民を傷つけるわけにはいきません。そしてそれを実現するには、なんとしても宰相フリーシアの目論見を打ち砕いてもらわなければなりません」

「あんたの立場はわかった。だが強いんだったらあんたが一緒に攻め込んでも良かったんじゃないか?」

「いえ。私では、星の力や魔晶に勝つことが不可能なのです。強い、弱いの問題ではなく」

「ふぅん。まぁ無理ってんなら仕方がないか」

 

 事情は察しがついている。……なにせ多少手傷は負っているのか服の一部が裂けているからな。そこを見れば、人でないことは理解できた。

 

「そろそろ話は終わりにしましょう。増援です」

 

 アダムが変わらぬ声音で言ってから、俺も多くの気配が近づいてくるのを感じる。

 

「あなたは行ってください。どうかあの方々に勝利を」

「わかった。また会おうぜ、アダム」

 

 必要な話は聞けた。アダムならどんな敵が来ても騎空艇を守り抜くだろう。なら俺はいつまでもここにいるべきじゃない。

 

 俺は簡単に別れを告げて帝国兵達が来ている方向とは別の方角に向かう。複数人だとバレやすいが、単独なら問題ない。【アサシン】もあることだしな。

 

 目指すはリアクターのあるタワー。そこでおそらく、フリーシアが待っている。あいつらはいつ向かって行ったか聞くの忘れてたな。まぁできるだけ急げば追いつける、先回りできる。

 正面からの戦闘は好きじゃないが、こうして裏から手を回すのは得意中の得意だ。

 

「……さぁて、引っ掻き回してやるとするかぁ」

 

 俺は小道に入って姿を隠しつつ、タワーへと一直線に駆けていく。

 

 元々エルステ王国にいながら、同じ悲劇を目にしていながら、全く違う立場の三人。

 

 十年前の事件で親友であるオルキス王女を失い、かつてのオルキスを取り戻さんと七曜の騎士にまでなったアポロニア。

 

 十年前の事件を経て王国が帝国に変わっても、ただただエルステを守るためだけに振る舞うアダム。

 

 十年前の事件を引き起こした張本人にして、今や星の民そのモノを世界から抹消しようとしているフリーシア。

 

 ……やっぱり俺が味方したいのは一人だけだな。

 

 考える必要もない。なら、全力で影ながら手助けするだけのことだ。


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