ツツジを嫁にするまで   作:呉蘭も良い

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思いつき投稿。
楽しんで頂けたら幸いです。
元々ポケモンの小説書きたかったので、ポケマスが配信されて結構楽しんでいるので書いてみました。



一話

『ポケモンは好きですか?』

そういう問いをされたら『まぁ嫌いじゃないです』程度の曖昧に濁した返答を俺は()()だろう。

 

子供の頃から身近にあったポケットモンスターというゲーム、あるいはアニメは幼心をガッチリ掴み、周りに知らない人など存在しない程の認知度を誇る。

最早テレビゲームやアニメーションの枠を越えた一つの文化とさえ言える程の大きな存在だ。

そんなものが嫌いなわけ、決してない。

 

が、だ。

 

少年から青年へ、そして大人になるにつれ、ポケットモンスターというゲームの複雑さに諦めに似た心境を抱くようになった。

 

歳を重ねるにつれアニメやゲームから徐々に離れていったということもあるが、ポケモンに関しては逆に深みに嵌まったが故に離れる決心をしたとも言えた。

 

ポケモンのゲームの目的は、ざっくり簡単に言ってしまえばバトルして勝つ事これに限る。

しかしそれこそがポケモンというゲームの最大の難易度と言える。

 

時代が進み、インターネット環境が当たり前になった現代社会ではポケモンバトルは簡単に見知らぬ誰かと勝負する事が可能になった。

そしてそれは熾烈な争いへと激化して、弱者を淘汰して行く事になった。

 

ストーリーモードで使っていたポケモン達、いわゆる旅パはギャグにもならない扱いになり、勝てる可能性なぞほぼない。

というか旅パで勝てるってどんな確率のどんなパーティーなのか聞いてみたいレベル。

 

なのでバトルに勝つ為の強いポケモンを用意しないといけなくなった。

しかしこれがポケモンの面白い要素であると同時に苦痛になる。

 

強いポケモンとはすなわち、ポケモンのタイプから始まり、種族値、個体値、努力値、特性、性格、技範囲、持ち物相性、これらがどれだけどう優れているかによる。

 

バトルに勝ちたいと思い、これらを初めて調べた時は頭が痛くなったものだ。

 

種族値は固定されてるのでともかく、個体値を厳選しないといけないと知った時は嫌気が差した。

更にそこから性格も合わせなくてはならず、場合によっては特性も夢特性でなくてはならなかったり、めざめるパワーのタイプを理想にする為粘ったり……etc.etc.。

 

出た結論は『俺には無理だ』だった。

 

大人になり、バトルで勝つ為に調べた強いポケモンを用意する方法は大人になって理解したからこそ絶望した。

そんな作業をする根気もなければ時間もない。

 

そもそも好きだから使ってた旅パのポケモンを外し、バトルで勝つ為の好きでもないポケモンにそこまでの時間を使いたいなど全く思わない。

 

結局、俺のポケモンに対する愛はその程度だったのだ。

そして勝てないゲームを続ける奴なんていない。

俺はゆっくりとポケモンから手を引いて行った。

 

とは言え、やはりポケモン自体が嫌いになる訳でもなく、動画投稿サイトなんかでバトルの実況動画を見たり、不遇ポケモンを使用して勝つ事を目指す動画を見るのは好きだった。

 

そして自分でもパーティー構築考えたり、好きなポケモンの技構築を考えたりするのはそれなりに楽しかった。

まぁ当然実際に行うとなれば面倒が過ぎるので、妄想だけで済ましていたが。

 

しかしそんな妄想をしていたら、ポケモンの知識だけは増えて行く。

本物の廃人様達には確実に及ばないものの、一般的には詳しい部類には俺は入るらしい。

 

だからポケモンの話を誰かとしているとたまに聞かれるのだ。

『ポケモンが好きなのか?』と。

そしてそれが上記の反応になるの()()()

 

……これまでが過去形、そしてここからが現在形だ。

 

俺は今、学校の講堂で校長の話を聞いている。

4月になり、新入生を歓迎する入学式にて俺は迎える側の在校生としてここにいる。

 

大人としての自分語りをしといて、何故そんな事になっているのかと言うと、俺はいわゆる“転生”という奴をしたようなのだ。

 

それも、何故かポケモンの世界に。

 

いや、ホント訳ワカメだよね。

産まれてこのかた未だにわかんないからね。

10年も経つのにまだ夢見心地の時があるからね。

 

まぁ、ここが現実だって重々承知してますが。

俺にとってここは現実だってよーくわかってますがね?

【自分だけの現実】(パーソナルリアリティー)は強固ですよ、えぇ。

超能力が目覚める兆しは一向にないけどな!

俺にサイキッカーの才能はないらしい。

 

まぁとにもかくにも、俺はこの世界で生きて行く事になった。

 

最初の頃、ってか赤ちゃんだった頃はこの世界でポケモンの知識を活かしたら無双出来んじゃね?とか思ったりもしたけど、廃人でもない俺が中途半端な知識でそんなにイキったら凄く恥ずかしい事に気付き、程々にこの世界を楽しむことにした。

 

ってか、現実で廃人プレイの厳選作業とか出来ないしね!

同種ポケモンの卵を沢山集めて孵化させまくって、いらない奴を逃がしたりしたら間違いなくヤバい奴認定だし、個体値の計測とか出来ないし、そんな事に協力する奴も財力もない。

 

そしてそもそも、俺はポケモンバトルで最強になりたいなんて夢はない。

そんな夢を持っていたら、俺は前世でもっと頑張っていた。

 

だから今回の人生では、ひたすら自分の好きなポケモンと戯れようと思う。

後、前世ではチェリンボだったので、進化してチェリムになって可愛い奥さんを貰いたい。

 

大丈夫、候補なら隣にいる。

このポケモンスクールで出会った幼なじみだ。

まぁ10才だから幼なじみと言っても、同学年全員が幼なじみだけども。

 

だがそれでも、低学年の頃から成績1、2位を争ってきて交流も深く毎日切磋琢磨している仲だ。

相手はまだ恋愛とかに興味はないかもしれないけど、憎からず俺の事をそこそこ良い相手と想っている、と思いたい。

 

前世も合わせたら確実におっさんな俺が、10才のロリを狙って良いのか?だと?

 

問題ない!

重要なのは俺が10才で、非常に可愛い幼なじみが隣にいるという現実だ!

それにチェリンボうんぬんは将来的な話だ。

 

将来彼女は間違いなく美人になるし、結構な大物にもなるだろう。

そういう意味では俺も彼女と釣り合うようにそれなりの人物にはならないといけないだろう。

 

何せ彼女は今年からジムリーダーの代理になるのだから。

 

そんな事を考えていたら、校長が締めの言葉を話した。

 

「皆さん、ポケモンは好きですか? その気持ちが強い程、ポケモンも皆さんの事が好きになり、強くなって行きます。 どうかその事を忘れないで、彼らを大切にして上げて下さい。」

 

校長はそう締めくくり、壇上を去って行った。

 

改めて思う。

『俺はポケモンが好きか?』

そして隣の彼女に問う。

 

「なぁ()()()、ポケモンは好きか?」

 

「ソースケ? 何ですか今更、当然好きですわ!」

 

2つに纏めたお団子頭で勝ち気なお嬢様な彼女は、俺の問いに対して当然のように即断で答える。

それがなんとも可笑しくて、俺も笑って答える。

 

「だよな! 俺も好きだ、ポケモン!」

 

俺の答えに腰のベルトについたボール(相棒)が嬉しそうに揺れる。

 

ここはホウエン地方カナズミシティ。

ここが、今の俺が生きる世界だ。

 

 




チェリンボ=さくらんぼポケモン=経験0のレベル1
つまり、そういう事だ。

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