ツツジを嫁にするまで   作:呉蘭も良い

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二話連続投稿。
今気づいた人は前の話を読んで下さい。

そして日間ランキング入りに驚きました。
皆様のおかげです。
本当にありがとうございます。



十一話

それからかなりの日数を掛けてツツジと話し合い、夏休みの計画を綿密に詰めていく。

 

いや~、それにしても母ちゃんは強敵でしたね。

『お前またやらかすのか』みたいな目で見られた時は、必死に弁解しましたよ。

最終的にツツジからの要請だからと話したら、渋々了承してくれた。

 

……でもお小遣いは毎月通り3千円。

せめて前借り含めて1万円は欲しかった。

親父のボーナスも出るんだから、もうちょい渡してくれても良くないですかね?

 

仕方ないので、母ちゃんがいない所で親父に直談判をしたら、1万円を内緒でくれる事を約束した。

 

親父、you know(有能)(貴方は(わか)っている)。

 

そして着々と準備は進んで行く。

 

ツツジは俺のおかげで自転車に乗れる様になったし、“ひみつのちから”のわざマシンは普通に見つかってエルフーンに覚えさせる事が出来た。

 

実は“ひみつのちから”だが、これはスクールの学生の間で流行っていたのだ。

 

そりゃそうだ。

秘密基地なんて、この年頃の生徒が一番喜ぶ遊びじゃないか。

 

だからこの技のわざマシンを持っている生徒にお願いして、俺も使用させて貰う事が出来たのだ。

 

俺達の計画は順調に進んでいる。

 

しかし、一部変更した事もある。

 

それはジムバッジ集めの事だ。

 

カナズミジムのストーンバッジを除いても、残り7つのバッジを夏休みの間だけで集めるのはどう考えても厳しいのだ。

 

だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

具体的には東ホウエンと言える場所にある、ヒワマキ、トクサネ、ルネを夏休みに回し、西ホウエンと言えるトウカ、ムロ、キンセツ、フエンは週末や公休日を利用して挑戦する事にした。

 

……だから俺達は今、ムロジムのジムリーダーであるトウキを目の前にしている。

 

「おっ! 君達が石の洞窟でメレシーを発見したツツジとソースケか! 石の洞窟が目立ったおかげでムロタウンも活性化して、君達には感謝感謝だ!」

 

わっはっは、と笑うトウキは爽やかな好青年だ。

 

「それで? 今日はジムへの挑戦か?」

 

……訂正、バトルを前にして目が笑っていない。

ここら辺が一流トレーナーの在り方なのかもしれない。

 

トウキの態度を見て、真面目に対応をするツツジが自分がジムリーダーへと挑戦する理由を話す。

 

「___ですので、私は次期ジムリーダーへと相応しくなる為に、貴方との本気のバトルを望みますわ!」

 

「成る程! 普通ならジムバッジを1つも持っていない君を相手に全力なんて出せないが、そういう事なら協力するさ!」

 

この世界のジム戦の基本は、ジムバッジの所得数によってジムリーダーが難易度を変える。

 

俺達は1つも___いや、ストーンバッジを持っている事にしたとしても1つしか所有していないので、普通はそれ相応に手加減する事になる。

 

しかしツツジの次期ジムリーダーという立場が、彼を本気にしてくれた。

 

ツツジとトウキがバトルする直前の雰囲気になったので、俺はバトルコートから離れて観戦する態勢を取る。

 

普通なら観戦席へと移動しないといけないのだが、そこはそれ、ツツジの付き添いだから許されている。

……多分な。

誰も何も言わないから大丈夫でしょ。

 

「ルールは1対1で良いな? 君はまだ1匹しかポケモンを所持していないみたいだし、平等にエース対決といこうか!」

 

「了解しましたわ!」

 

……そしてバトルが始まる。

 

「やりますわよ、メレシー!」

 

「戦いの時間だ、カイリキー!」

 

あれ、()()()()()

トウキだったらマクノシタ___いや、本気ならばハリテヤマだと思っていたな。

ゲームに思考を引っ張られ過ぎたかな?

 

「先ずは“からてチョップ”だ。」

 

先制はトウキ。

様子見がてらの技で、ツツジの出方を伺っている。

 

「メレシー“リフレクター”。」

 

その対応としてツツジはメレシーにその場で“リフレクター”の壁を張らせ、楽々とカイリキーの攻撃を受ける。

 

物理攻撃のダメージを半減する“リフレクター”を張ったら、メレシーには全くダメージが入らない。

この一手はツツジが有利になる。

ま、当然これが普通の物理アタッカーならばの話だ。

 

「やるな! だがその壁ごと割ってやれカイリキー! “かわらわり”だ!」

 

「む、仕方ありませんわね、メレシー“ロックカットでかくばる”のですわ!」

 

何!?

そうか、“ロックカット”と“かくばる”は相性の良い技どうしなのか!

 

いつの間にこんな連結技が使える様になったんだ。

あの日から鍛え直す為にも何度もバトルしたと言うのに、俺には見せてくれなかった技じゃないか。

 

“ロックカット”は素早さを2段階上昇させ、“かくばる”は物理攻撃力を1段階上昇させる。

これを同時にされたらたまったもんじゃない!

 

だがカイリキーが直ぐそこまで迫り、“リフレクター”ごとメレシーを叩いた。

これによってメレシーの積み技は中断されたが、多少とは言え確実に能力は上昇した。

 

安全には積み技を使えないと判断したツツジは、今だからこの技を使用した訳だな。

 

それにしても素早さの上昇が美味しい。

 

この世界におけるゲームで言う素早さというステータスの概念は3つの能力に細分化されている。

と、俺は考えている。

 

1つ目は運動速度。

例えば反復横飛び等がそうだが、瞬発力や敏捷力と呼ばれる能力がそれにあたる。

敵が背後に回った時に咄嗟に振り向ける速さだったり、こちらから攻撃する時に一瞬で敵の懐に入れる様な小回りの効く速さを指す。

 

2つ目は機動速度。

これは直線的な加速力の事だ。

例えば100mを何秒で走り抜けるか、とかがそれだ。

 

そして3つ目、反応速度。

俺はこれが一番重要だと思っている。

これはトレーナーが指示を出した時にどれだけ速く反応するかの速度を指す。

これが速ければ速い程、技を出したり技を避けたりが出来るからだ。

 

ゲームで言う素早さとは、これらを統括した能力だと俺は思う。

 

だから、マッハを越えるスピードで空を飛べるカイリューやガブリアスよりも、ジュカインの方が速いのがあり得るのだ。

 

語りだしたらキリがないが、ここでツツジの素早さ上昇の話に戻すと、今回の“ロックカット”で統括された全ての素早さが上昇したと言える。

 

だから、素早さの上昇はゲーム同様非常に美味しい。

 

まぁ速くなったからと言って、必ずバトルで勝てる訳じゃないが___

 

「ここからは私達が先手を取って行きますわよ! メレシー、“げんしのちから”!」

 

おいおい、欲張りだな。

これの追加効果で更に能力が上昇したら、殆ど詰みじゃないか。

 

だが素早さの上昇したメレシーならば、ツツジの言う通り先手が取りやすく、主導権を握りやすい。

大したダメージを与える事は出来ないけど、カイリキーの攻撃を避けながら“げんしのちから”でゆっくりごり押せるし、火力が必要な場面では急所狙いの“ストーンエッジ”も使える。

ここで“かくばる”で物理攻撃力を上昇させた意味が出て来る訳だな。

 

……何か性格の悪い戦い方になってないか?

誰のせいだ?

 

……どう考えても俺のせいですね、すみません。

 

「まだまだぁ! カイリキー“ビルドアップ”だぁ!」

 

トウキさんは熱血バトルに夢中になってるが、これはツツジの勝ちだろ。

 

俺がそう思った10分後、危なげなくメレシーがカイリキーを仕留め、勝負はツツジの勝ちで終わった。

 

「驚いた! 本気でやったつもりだったが、まだ君を侮っていたのかもしれないな。 まるで冷静に獲物を仕留める狩人(ハンター)の様に強かったぜ!」

 

「ありがとうございますの。 私はまだまだ強くなりますわ! 今回のバトルも良い経験として精進を怠らないつもりですわ。」

 

「あぁ! その意気だ! 俺ももっと強くなる様に努力しないとな!」

 

ツツジとトウキの間にトレーナーとしての熱血が共感して、非常に良い空気が流れる。

 

うん、めでたしめでたし。

これにてムロジム戦は終了だ。

 

「それじゃ、次はソースケの番だな!」

 

……何でやねん(白目)。

 




感想にて、皆さん意外とルンパッパ大好きで驚きました。
誤解がないよう明言すると、作者もルンパッパ大好きです。
草タイプにしては珍しくバトルで使えるポケモンですしね(笑)。

ですがルンパッパを始め、キノガッサもナットレイも、とあるカイオーガを探しに行く小説で進化前ポケモンが使われているので、なるべくパクりにならない様に自重するつもりです。
そこの所をご了承下さい。

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