ツツジを嫁にするまで   作:呉蘭も良い

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十五話

リリーラとアノプスは中々孵らなかった。

ゲームだと大体のタマゴが1万歩以内に孵るけど、この世界じゃそうはいかない。

 

そりゃそうだ。

1万歩なんて数時間で歩ける数だ。

現実であるこの世界では、タマゴが出来て即孵化なんて事あり得る訳がない。

アニポケだって、長々とタマゴ持ってたろ?

 

でも最近じゃコロっと動く時があるから、順調に孵化の準備は進んでいるみたいだ。

 

待ち遠しいぜリリーラ。

どんな性格の子かな?

特性は何かな?

やっぱり【きゅうばん】かな?

【よびみず】だったら嬉しいけどなー。

 

そんな事ばかり考える。

 

ちなみに、うちのエルフーンはのんきな性格をしている。

防御に補正が掛かるのか、とゲームでなら考えるんだが、この世界では性格による補正が入ってるのかどうか正直わからん。

 

だって、同一の種族の同一な個体値を持つ同一な力量(レベル)のポケモンなんて存在しないし。

仮に居たとしても見つけられない。

比べようがないから、補正が入ってるのかどうか調べられない。

そこに努力値の補正まで考えたら、検討のしようもない。

 

だから、性格による得意不得意があるんじゃないかな?

程度の参考になるかもしれないって感じの心持ちだ。

 

でもまぁポケモンの知識持ちとしては気になるよね。

性格の一致はバトルの重要な要素だったし。

 

と言っても、この世界だとポケモンのスペックは確かに重要な要素ではあるが、それ以上にトレーナーの立ち回りや指示能力の方が遥かに重要視されている。

何よりも50レベルのフラットバトルなんてルールもないから、力量(レベル)を上げて物理で殴れが横行している。

そもそもこの世界はレベルの概念がないから、レベル100が上限かどうかもわかんねぇし。

 

あっ、でも個体値と努力値は明確に存在しますよ。

当然数値で計れるものじゃないけど、バトルの才能の有る無しは確かに存在するし、どんな訓練を施すかで能力の上昇の仕方が変わる。

だから、ポケモンの目利きや訓練方法もトレーナーの腕と言える所だな。

 

……何だろう、遠い何処かに『使えないな』とか言って、捕まえたポケモンを逃がす奴がいそうだ。

お前、俺の代わりに前世に行った方が良いんじゃねぇの?

お前だったら廃人様になれるよきっと。

 

……ミラクル交換で個体値逆Vのトサキントとか掴まされたら良いのに。

 

俺は個体値や性格なんかに縛られずに好きなポケモンと一緒にやってくぜ。

 

……言ってしまえば草ポケ統一の旅パな訳だが、そう聞くとすげぇ弱そうだな俺。

ま、それについてはこれから証明するしかないか。

 

ゲームなら、タイプ相性補完を考えながらパーティーを組まないといけないけど、この世界ならトレーナーの腕次第で統一パでも十分戦えるからな。

 

でもゲーム同様、一貫して弱点が出来るけども。

 

俺の場合は、やっぱり炎タイプだな。

他にも氷や毒、飛行に虫も弱いけど、それらは全く対処が出来ないって程じゃない。

現段階ではキツイが、将来的にはどうにかなる予定だ。

 

けど炎はキツイ。

何か炎タイプのポケモンってやたら火力が高いポケモンばっかな気がするんだよ。

こっちが耐久型だとしても、がっつり燃やされる未来しか見えない。

具体的にはメガニウム。

 

炎だからか?

そんなに草を燃やしたいのか?

自然破壊反対!

 

ってか草・炎タイプのポケモンがいないのが悪いんだ。

燃えている草の見た目をしたポケモンなんてロマンあるじゃん。

焚き火ポケモンとか居てくれても良いじゃん。

ゲーフリさん、私は待ってますよ。

……この世界ゲーフリ関係ねぇけど。

とは言え、ニートな(働かない)神には頼れないし。

 

だからリリーラさん、はよ孵っておくれ。

ユレイドルに進化して、炎タイプ(あいつら)ぶっ飛ばそうぜ。

 

そう思いつつ、俺はタマゴを抱いて()()()()()()()()()

勿論、フエンタウンの温泉だ。

 

何で温泉かって?

そりゃタマゴの為よ。

 

ツツジとの泊まり掛けのデートがてら、温泉に入ってタマゴを暖めている訳よ。

 

……温泉卵にはならないから大丈夫だよ。

そういうのはキチンと調べた。

寧ろ、孵化の促進効果もあって良いらしい。

 

まぁついでにツツジはジム戦もやって行く。

いや、ツツジにとってはそれがメインで他がついでか。

 

……俺はやらんぞ。

何が楽しくて炎タイプのスペシャリストと戦わねばならんのだ。

エルフーンのモフモフが燃えちゃったらどうすんのさ。

 

ジムリーダーのアスナは確かに可愛い女の子で魅力のあるキャラだとは思うが、だからってバトルするのは別の話だし。

リリーラが孵っていたら、考えても良かったけどね。

 

何て事を考えながら、俺はポケモンセンターの宿泊施設の自分の部屋へと戻って寝た。

 

ツツジとは部屋が別だ。

ま、そこはね?

男と女だから、一応は仕方ないよね?

 

本番は夏休みだから。

一緒のテントでのお休みイベントは未来に取って置くさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょんちょん。

ん~、何だ?

 

俺は目を閉じたまま顔の周りを手で振り払って、また眠りつく。

 

……ちょんちょん。

……またか、何だってんだ?

 

仕方なく目を開けて周りを確認すると___

 

「プィ~。」

 

「……あ、おはようございます。……じゃねぇ! リ、リリーラ!?」

 

眠気が一気に飛んだ俺は、ベッドから跳ね起き、目の前のリリーラをマジマジと見つめる。

 

い、何時孵化したんだ!?

ってか俺のリリーラだよな?

今何時だ?……早朝か。

くっそ、何で気付かなかったんだ畜生!

そうか、昨日のあれがフラグだったんだな!?

 

俺は驚きと感動で声が出ず、非常に混乱していた。

そんな俺に懐く様に、リリーラは触手を伸ばして俺をちょんちょん突っついたり、ペシペシと軽く叩いたりする。

 

「お、おぉ! そうだ俺が親だぞ! 可愛いな畜生!」

 

俺が感動に打ち震えていると、外からドタドタと騒がしい音が聞こえて来る。

そしてどんどんその音が近付いて来ると、俺の部屋のドアがドンドン叩かれる。

 

『ソースケ! 私ですの! ツツジですの! か、孵りましたの! アノプスが孵っていましたの!』

 

俺はその言葉を聞いて、すぐにドアを開けた。

 

「俺も孵ったぞツツジ! リリーラが孵った!」

 

「まぁ! きっと同時期に孵ったのですわね!」

 

俺は驚くツツジを部屋に入れ、彼女が抱きかかえるアノプスを見る。

よく抱っこ出来たなそれ。

怪我しそうだぞ。

 

「それよりも、先ずはご飯をあげなきゃ。 えっと、離乳食的な物は必要ない、よな?」

 

「ですわね。 すぐに普通の食事を与えてもよろしかった筈ですわ。」

 

よしよし。

じゃあ、と思ってポケモンフーズを取り出そうとしたけれど、孵って初めての食事だ、多少贅沢にきのみを___オレンの実をあげよう。

 

エルフーンもそうだが、基本的にはポケモンはきのみが好きだ。

きのみは簡単には手に入らないから、そう毎度毎度与える事は出来ないが、こんな時は良いだろう。

 

俺がオレンの実をリリーラとアノプスに渡したら、2匹は嬉しそうにオレンの実を食べる。

 

「……超可愛い。」

 

「……ですわね。」

 

くっ、これが親になるって事なのか。

俺は心を鬼にして、この子をバトルに参加させる事が出来るだろうか?

 

俺とツツジがニマニマしながら可愛い2匹を眺めていたら、コンコンと部屋のドアをノックされた。

 

俺が不思議に思い、ドアを開けるとそこにはポケモンセンターのジョーイさんが居て___

 

「朝早くに申し訳ありません。……先程、このフロアから騒がしい物音が聞こえましたので、少し伺いに参ったのですが。」

 

……あ~。

チラッとツツジを見ると、目を泳がせながら冷や汗を掻いていた。

 

俺とツツジはジョーイさんに丁寧に謝罪して、今朝タマゴが孵ったので慌てていた旨を話す。

 

ジョーイさんは成る程と納得した上で、孵ったばかりの子を一度ポケモンセンターに預けて健康診断させる事を勧めた。

親馬鹿になった俺達はその提案を即座に受け入れ、ジョーイさんに2匹を預けるのだった。

 

今日の予定?

2匹の面倒を見る事ですよ!

……ジム戦? 知りませんね。

 




前話にて、ダイゴさんに厳選厨の疑いがかけられてしまった。
そんな設定は決してない。
決してないが、感想でも言われた通り、ダイゴさん厳選厨でも違和感がまるでない。
ですので、ここは敢えて明言せず皆様のご想像にお任せします。

ヒント
原作にてストーリー終了後にダイゴの家に行くと、ダンバルが貰えます。
そして公式でもダイゴの色違いダンバルが配布されましたね。

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