ツツジを嫁にするまで   作:呉蘭も良い

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二話連続投稿。
この話から気付いた人は前の話をお読み下さい。



十六話

俺とツツジはカナズミシティーへと帰っていない。

リリーラとアノプスが孵ったので、フエンタウンの滞在を1日伸ばす事にしたのだ。

当然、それぞれの親へは連絡済みだ。

 

孵ったから帰ってないのだ。

……すいません。

 

冗談はともかく、ポケモンセンターでの健康診断は無事に終わった。

2匹とも大変元気との事で、午前中には俺達の手元に戻って来たのだ。

 

その際に、2匹の特性も判明した。

アノプスは普通に【カブトアーマー】だったが、リリーラは何と嬉しい事に夢特性の【よびみず】だったのだ。

 

……というか、正確には【きゅうばん】ではない事が発覚したのだ。

だから多分【よびみず】ではないかと推測されている。

 

流石ダイゴ神やでぇ。

ここまで用意周到だったのか!

 

俺は改めてダイゴ神へと感謝を捧げつつ、リリーラを大切にする決意をするのだった。

 

そして今はフエンタウンのちょっとした公園で、エルフーンとメレシー、リリーラとアノプスを放して遊ばせている。

 

エルフーンとメレシーがお兄さんぶって___メレシーは性別不詳だからお姉さんぶってるのかもわからないが、とにかく年上ぶってリリーラとアノプスの面倒を見ている。

 

何だこの癒される光景。

ここは天国かな?

俺とツツジはニヤニヤが止まらないぞ?

 

「あ、フエンジムはどうしましょうか……。」

 

ツツジが本来の予定に気付きそう呟く。

 

「もう良いんじゃねぇの? こっちの方がよっぽど大切だし。」

 

「それは確かに。……いえ、ですが、手紙を出して約束してしまいましたし。」

 

俺達はトウカジムの二の舞を踏まない為にも、今回は事前に手紙を送り、アスナと約束を取り付けている。

本当は午前中に伺う予定だったのだが……。

 

……流石に約束を破るのは駄目か。

 

俺は渋々、フエンジムに行く事を了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っていたぞ、挑戦者よ! 私こそがこのフエンタウンのジムリーダーであるアスナだ!」

 

俺達がジムを訪れると、アスナはそう言って決めポーズを取り、俺達を歓迎してくれた。

いや、しかし___

 

うわぁ、すっげぇナイスボディ。

それがアスナを見て真っ先に浮かんだ想いだ。

 

出る所は大きく出て、引っ込む所は綺麗に引っ込んでいる。

足はスラッと長いし、顔は端正に整っている。

見目麗しいとはこの事だ。

 

ま、足に関してはツツジも負けてないがな。

彼女のカラータイツは眩しいからな!

 

それにしても、わかってはいたが、アスナは大胆にお腹を出すファッションをしていて、……何か、えっちぃな。

ありがとうございます!

 

何故か彼女に感謝せざるを得ない。

きっと、俺が男だからだろう。

 

「……何を見てますの、ソースケ?」

 

俺がアスナのおへそをチラチラ見ていたら、ツツジにシラッとした目をされてそう問われた。

 

「……や、別に。 どんなポケモンを使うのかな?って、ベルトのボール見てただけだし。」

 

……俺の声は、決して震えてなんかいないぞ。

 

「ふーん、そうですの。……ふぅ~ん。」

 

な、何だよぅ!

仕方ないじゃん!

文句ならあんな格好しているアスナに言えよな!

 

これが嫉妬ならまだ嬉しいが、ただの軽蔑だったらキツイぞ畜生。

それもこれも、アスナのおへそのせいだ!

 

俺がアスナに責任転嫁をしている間に、ツツジは今回の挑戦理由をアスナに説明し、本気バトルのお願いをしている。

 

「成る程ね、わかるわかる。 私もおじいちゃんが四天王だったからさぁ、プレッシャーとか凄いんだよね。……私も今年からジムリーダーだから、ちゃんとしたジムリーダーってどうすれば良いのか、未だに悩むしさぁ___」

 

……おい、大物2世の愚痴大会じゃねぇんだぞ。

何共感しあってるのあんたら。

バトル前の馴れ合いは好ましくないぞ。

そういうのは終ってからにしろ。

 

ツツジは俺にはあんな視線を送った癖に、俺のシラッとした目は無視して一頻りアスナと『私達大変だよね』トークをしている。

 

……知らねぇよ。

だったら断れっつーの。

 

俺がいい加減呆れて、エルフーンとリリーラを出して戯れていたら、40分経ってようやくバトルをする事に至ったらしい。

……このまま帰っても良かったのに。

 

今回のバトルもトウキの時と同様に1対1のエースバトルだ。

当たり前だが、孵ったばかりのアノプスは使わない。

俺と一緒に見学だ。

 

リリーラとアノプスにとっては初めて見るポケモンバトルなので、良い経験になるだろう。

それにこれでバトルに対して消極的になる様なら、バトルはしない方が良いしな。

 

俺個人の考えだが、例え6Vで、性格が一致していて、良特性だったとしても、本人がやりたくないならさせるべきじゃないと思っている。

 

甘やかし?

良いんだよ。

こんなのはやりたい奴だけやれば良いんだ。

バトルは二の次、優先すべきは愛でる事だ。

 

ま、当の2匹はこれから始まるバトルにワクワクしている雰囲気だがな。

 

「行きますわよ! メレシー!」

 

「行くよ! コータス!」

 

お、やっぱりコータスか。

……どこぞのアプリゲームの様に、不当に弱くないと良いが。

 

「メレシー! “ひかりのかべ”!」

 

「コータス! “かえんほうしゃ”!」

 

コータスは非常に遅いポケモンで、一般的には鈍足にあたるメレシーよりも技が後だしになってしまう。

 

だから先にメレシーが“ひかりのかべ”を展開し、特殊攻撃の威力を半減されたのが痛い。

これでは特殊攻撃の“かえんほうしゃ”でダメージは___

 

!?

 

嘘だろおい?

軽くではあるが、きっちりダメージが入っている!

タイプも岩と炎だぞ!?

 

ツツジが最初に有利になったなと思ったがこれでは___いや、逆にここで“ひかりのかべ”を張れて助かったのか。

 

「……“ひかりのかべ”。 やるねツツジさん!」

 

「アスナさんのコータスもお見事ですわ!」

 

「私のコータスは特殊技の訓練を毎日しているからね! まだまだ行くよ! “ねっぷう”!」

 

成る程、特攻に努力値を振っている訳か!

そして次手もいやらしい。

 

“ねっぷう”はフィールドに対する全体攻撃だ。

これ系統の技を避けるのはかなり難しい。

鈍足なメレシーで避けるのはまず無理だろう。

 

着実に詰みに来てるな。

 

「メレシー! “いわなだれ”!」

 

……うーわ。

 

コータスよりも先手を取ったメレシーが、“いわなだれ”をコータスにぶち当て()()()()

コータスはそのせいで“ねっぷう”を撃てない。

 

いくらコータスの物理防御が高くて、抜群技でもあまりダメージは入らないにしても___

……これは酷い。

ってか30%の怯みを引いたメレシーも凄い。

 

……ツツジ___いや、ツツジさん、何処でそんな性格の悪い技覚えたんですか?

 

「コータス! しっかりして!」

 

アスナが悲鳴に近い叫び声をあげる。

……気持ちは痛い程わかる。

ヤミラミの“あくのはどう”でモンメンが怯んだ時は、そんな感じだったよ俺も。

 

「今のうちですわよメレシー! “ロックカットでかくばる”!」

 

コータスが“いわなだれ”でがっつりと怯んでいるうちに、メレシーは悠々と積み技で能力を上昇させる。

 

ツツジさんの十八番、入りましたー。

そしてメレシーの能力が上昇仕切ると同時にツツジが攻勢に移る。

 

「行きますわよ! “ストーンエッジ”!」

 

コータスは怯みから立ち直りはしたが、これを避けられそうにない。

コータスが遅いのはもとより、速くなったメレシーの技を避けるのは厳しい。

 

「くっ! 耐えてコータス!」

 

「仕留めなさいメレシー!」

 

メレシーが全力で地面を叩き付け、ドゴン!という轟音を鳴らし、コータスの真下から尖った岩石を突起させる。

 

その際に起こる土煙で僅かに視界が妨げられたが、………結果は___

 

土煙が晴れて行く中、非常に傷付き今にも倒れそうなフラフラしたコータスが居るが、確かに、まだ目に光を宿して立っている。

 

「コータス、良く耐えたわ! お返しするよ! “オーバーヒート”!」

 

「!? 嘘、耐えましたの!? くっ、メレシー避けっ___今度は私達が耐えますわよ!」

 

メレシーは全力の“ストーンエッジ”を打ち終えたばかりで、まだ技硬直中の為に俊敏には動けそうにない。

その事を悟ったツツジは唇を噛み締めて、メレシーに耐える様に頼む。

 

「行っけぇぇぇ!!!」

 

アスナの暑い、熱い掛け声と共に、コータスが全力の“オーバーヒート”を放つ。

 

こちらもブオォン!という轟音を鳴り響かせながら、とんでもない火炎がメレシーを襲う。

 

……おいおい、これメレシー溶けるんじゃねぇの?

 

そう思う程の熱量がバトルコートを包み込む。

観戦している俺達にまで、もの凄い熱気が伝わるからな。

 

この“オーバーヒート”を放ったコータスは、後ろ足も前足も曲げて、地面に膝を着く。

まさにぶっ倒れる前の瞬間って感じだ。

 

「行けますわよね! メレシー!」

 

未だに燃え盛る火炎の中に、ツツジがそう叫ぶ。

 

「後もう一押しですわ! 僅か少し!……お願いしますわ、“がんせきふうじ”!」

 

「気合いは認めるけど、流石に___」

 

アスナが勝ちを確信し、ツツジに話かけた時に、それは起きた。

 

「ッッッ~! シィ~!!!」

 

火炎の中からメレシーの鳴き声が聞こえ、そこから岩石が飛んで来る。

 

「っ! 嘘!?」

 

「メレシー!」

 

その“がんせきふうじ”は見事コータスに当たり、コータスは沈んだ。

 

……。

 

沈黙が場を支配する。

 

「…私達の、勝ちですわ。」

 

「……あっ、うん。……負けた。」

 

悔しいとか、悲しいとかではなく、純粋に驚いたアスナはそう呟くのだった。

 


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