ツツジを嫁にするまで   作:呉蘭も良い

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二十話

バトルコートからツツジが身を引き、代わりに俺が前に出る。

 

「お願いします。」

 

「わっはっは! あのロトムを何処まで御しきれるか見せて貰おう!」

 

「はい! やろうか、ロトム!」

 

「頼むぞ、ジバコイル!」

 

ジ、ジバコイルか~。

ロトムじゃ打点ねぇぞ。

おやっさん実は性格悪くねぇか?

 

仕方ない、ちょっとは自重しようかと考えてたが、やっぱり害悪(いつもの)で行くしかないか。

 

「ロトム! “あやしいひかり”!」

 

「ジバコイル、“シグナルビ___むむっ!?」

 

いきなり危ねぇ!

“シグナルビーム”は虫タイプの特殊攻撃技だ。

カットロトムには効果抜群だし、ジバコイルは特殊攻撃力が高いから、まともに喰らえば一撃もありえたぞ!

しかもそのジバコイル多分【アナライズ】だろ?

攻撃するのが後攻の場合は技の威力が上がる特性の奴!

 

ロトムが先に動いて“あやしいひかり”でジバコイルを混乱させ、自傷させる事が出来たから良いものの、ちょっと容赦なさすぎないかおやっさん!

 

「くっ、“かげぶんしん”だ!」

 

「シャキっとせいジバコイル! “シグナルビーム”!」

 

俺が指示を出したらロトムはブゥン!と自身と同じ姿をした分身を多数生み出し、イェーイ!と言わんばかりにニヤニヤしてコートの中を走り回る。

そこにおやっさんの指示を受けたジバコイルが今度はちゃんと動いて“シグナルビーム”を放つが、ロトムの本体に当たる事はなかった。

 

よし、よし。

一撃貰えば負けと思って慎重に動かないとな。

 

「まだまだ、好きなだけ遊べ! 思いっ切り“かげぶんしん”で翻弄するんだ!」

 

「甘いわ! ジバコイル、“ロックオン”!」

 

不味っ!

“ロックオン”は次の攻撃技を必ず当てる技だ!

“かげぶんしん”の意味がない!

 

だがもう遅い、俺の指示でロトムは更に分身を増やして遊ぶが、ジバコイルはそれを意に介さず、冷静に本体を狙う。

 

「“みがわり”だぁ!!!」

 

「今だ、“シグナルビーム”!」

 

……だが、何も起こらない。

ゴスっと、ジバコイルが自身を自傷するだけだった。

 

「ぐぬぬ!」

 

よっしゃ、ナイス混乱!

混乱の状態異常は長く続く。

軽く3~5分は混乱し続ける。

問題はいつ混乱するかわからないから、運要素が強い為、作戦には組み込み辛い所だな。

でも今回は実に良い所で引いてくれた。

しかも身代わりも張れたし、これは行けるぞ。

 

「ロトム、“おにび”!」

 

「ぬぅ! “マジックコート”だ!」

 

くっそ、やっぱ持ってたか!

もしかしたらとは思っていたが!

 

“マジックコート”は変化技を跳ね返す技だ。

だからロトムが放った“おにび”がジバコイルに当たってロトムに跳ね返って来る。

 

だがここで“みがわり”が活きて来る。

あの時は“シグナルビーム”の攻撃を受ける為に身代わりを出したが、予想外にも身代わりが残ったので、ロトムは“おにび”で火傷状態にはならない。

 

ちなみに、この世界では身代わり人形が出て来る事はない。

“かげぶんしん”同様に、自身の分身を作り出すだけだ。

しかも“かげぶんしん”とは違い動かない分身を。

 

では何故そんなものが身代わりとして役に立つのか?

答えはヘイト集中能力とでも言うべき、脅威的な技吸収能力にある。

この能力のせいで、大抵の技は基本的に身代わりに集まるのだ。

 

……恐ろしいぞ?

サンドバッグを集中して叩いてる奴の横から、こっちは狙い打ち出来るんだからな。

 

ただし個人的な所感だが、体力の4分の1を使うのは結構リスキーだと思っている。

前世と違って体力ゲージとかないし、数値で1さえ残ればポケモンが全力で動いてくれる訳じゃない。

傷付き疲れたら、ポケモンだってパフォーマンスが落ちるからな。

 

ダメージ感覚ガバリアスはギャグじゃねぇぞ。

この世界じゃ笑えない。

弱いトレーナーじゃなくて、悪いトレーナーと言われかねんからな。

 

話を戻して今はバトルだ。

 

残った身代わりのおかげで、“マジックコート”で“おにび”が跳ね返って来ても火傷にならないから、俺達は何度だってノーリスクで“おにび”チャレンジが出来る。

 

「ロトム、“おにび”だ! しつこく、何度だって、絶対に火傷させるまで、“おにび”だ!」

 

鋼タイプは燃やしてなんぼじゃー!

ジバコイルが混乱して自傷ダメージ引いて火傷になるまでひたすら“おにび”するんだ!

 

「むぅ!……致し方なし、ジバコイルあの身代わりを壊す事を優先するぞ!」

 

流石おやっさん賢いな。

俺がしつこく火傷を狙ってるのを知り、このまま“マジックコート”を続けてもいずれ混乱する事を察し、早めの損切りとして身代わりを壊す事を選んだか。

 

ですがここで問題です___

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

ずらっと広がるのは無数のロトム分身。

どれも全く同じポーズで動かず、どれが身代わりか見分けがつかない。

 

本体のロトムがジバコイルに“おにび”を当てて火傷状態にすると同時にジバコイルが“シグナルビーム”を放つが、結果は外れ。

 

「……っ! 厄介な!」

 

“みがわり”と“かげぶんしん”は連動する。

同じ分身同士、どれがどれかわからなくする能力がある。

本体が好き勝手やっても、身代わりが技を集めて多数の分身で身代わりをフォローする。

 

ゲーム同様最低な事をしてます。

すまんなおやっさん。

だが手心は加えんぞ!

 

「ぐぬぬ! “ほうでん”だ!」

 

成る程、フィールドに対する範囲攻撃に切り替えたか。

確かにそれなら身代わりも分身も関係なく全部同時に攻撃出来る。

しかし残念、いくら高威力の技でもカットロトムの場合は電気技自体が4分の1までダメージが軽減される。

それじゃ身代わりは壊せないぞ。

 

「今のうちに“どろかけ”もするんだ!」

 

ジバコイルが“ほうでん”をしている間にロトムが地面技の“どろかけ”をする。

ジバコイルがいくら地面タイプが4倍弱点とは言え、“どろかけ”ではダメージは期待出来ない。

しかし“どろかけ”は命中率を下げてくれる。

言ってしまえば目潰しだ。

 

この世界がいくら命中率ガバガバの世界観だとしても、目潰しを喰らえばそりゃ命中率は落ちるさ。

 

それに、()()高威力の攻撃技は使いたくないしな。

 

「……何と姑息な、……いや、褒め言葉だがね。」

 

いや、わかってる。

すまんなおやっさん。

 

「……ジバコイル、“ロックオン”。」

 

それしかない。

……それ以外、やる事がない。

 

最早おやっさんの打つ手は、“ロックオン”して“シグナルビーム”で身代わりを確実に壊し、その後に再び“ロックオン”して本体に“シグナルビーム”を当てる。

これをしなくては勝てない。

 

しかし___

 

ゴスっと、再びジバコイルは自身を傷つける。

更に火傷でダメージもじわじわ重ねる。

俺の目から見ても、ジバコイルは確実に弱っている。

ゲーム的に言っても、体力ゲージ3分の1以下だろう。

 

「これでラスト! ロトム、“たたりめ”!」

 

「ジバコイル! “ミラーコート”!」

 

……やっぱり持っていたか。

特殊攻撃技を喰らった時に、倍の威力で跳ね返す“ミラーコート”。

 

身代わりを張っているので、大丈夫だとは思うのだが、今まで使って来る人がいなかったので、この世界でも大丈夫なのかはわからない。

……わからないから、ずっと警戒していた。

 

ロトムは高威力の特殊攻撃技が使えるからな。

確実に落とせる圏内に入るまでは怖くて使えなかった。

 

……けど、状態異常の相手に対して威力が2倍になる“たたりめ”なら、もうジバコイルは落とせる。

 

俺の予想通りロトムの“たたりめ”を喰らったジバコイルは静かに沈んだ。

 

「……わっ___笑えないなぁ。 全く、君にロトムを預けたのは正解だったわい。 ここまで凶悪な相性だとはな!」

 

わっはっは!

と、おやっさんは結局笑ったが、本当に申し訳ない。

 

「ロトムの奴も実にイキイキとバトルをしておったわい。 これからも奴をよろしく頼むぞソースケ君!」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

「うむ! 実に見事なバトルだった!」

 

おやっさんは大きく笑いながら、俺とツツジにダイナモバッジを授与するのだった。

 

久しぶりに、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 

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