ヒワマキジムの初戦、ナギさん対ツツジは3分とかからず決着がついた。
ツツジが岩タイプのスペシャリストだと聞いたナギさんは水タイプを有するペリッパーを繰り出して来たのだ。
そしてそのペリッパーは特性【あめふらし】で、ボールから出てバトルと認識した瞬間にポツポツとフィールドに雨を降らせる。
これは不味い。
俺がそう思ってツツジを見ると、ツツジもそう思ったのか顔を強張らせながらディアンシーをボールから出す。
ディアンシーをあまり表に出すなと警告されてから、ツツジは最近アノプスを良く育てていた。
そしてようやくアーマルドに進化し、ツツジは今回のジム戦ではアーマルドを本当は使おうと考えていた。
……しかし、アーマルドではペリッパーに勝てない。
そう判断したのであろうツツジはエースであるディアンシーに賭けたのだ。
だがそれでも、圧倒的に不利だった。
お互いがお互いにタイプ一致で相手の弱点を突ける対面だが、ディアンシーもアーマルドも、ペリッパーより遅いので先に弱点を突かれやすいのだ。
ならばやる事は1つで、ペリッパーの攻撃を避けるか耐えるかをして、一撃で葬る他ない。
しかし天候雨でペリッパーの水技は威力が上昇しているので、耐えるという選択はほぼほぼ無い。
物理攻撃力に優れたアーマルドだが、防御力は物理も特殊も然程高くない。
更に言うなら素早さもディアンシー以下のアーマルドでは技を避けるという選択も辛い。
もしもアーマルドの攻撃が先に届くのならば、一撃の可能性は高いが、先に届く可能性があまりにも低過ぎる。
だからディアンシーなのだが、ディアンシーだって遅いポケモンなのだ。
……言ってしまえば、仕方なくディアンシー。
アーマルドよりかは勝ちの目がギリギリある程度の選択だ。
ディアンシーなら持ち前の防御力で何とか一撃程度なら水技を耐えてくれる可能性もあるからな。
……だがやはり、勝てなかった。
先手は当然ペリッパー。
ナギさんが“ハイドロポンプ”を指示し、ツツジがそれを避けて“ストーンエッジ”をするよう指示した。
しかしディアンシーはペリッパーの“ハイドロポンプ”を避ける事が出来ずに半身を撃ち抜かれ効果抜群でダメージを喰らう。
それでも一応はそこで倒れずに返す刀でペリッパーに“ストーンエッジ”を当て、大きいダメージを与えるが、……残念ながら一撃では倒せなかった。
そしてナギさんがペリッパーに“はねやすめ”を指示した時にツツジは詰んだ。
“はねやすめ”はポケモンの体力を半分回復させる良い技だが、それだけではなく、
それによって岩タイプが弱点でなくなったペリッパーは、次のディアンシーの“ストーンエッジ”も余裕で耐えて、最後に避けられないよう“なみのり”をして、フィールド全体を水で覆い勝利を飾った。
……本来なら、岩タイプと飛行タイプなら、岩タイプが有利なのだ。
だが、実際に不利を喰らったのはツツジだった。
これだから、ポケモンバトルは面白い。
敗北を喫したツツジはナギさんに笑顔で感謝を述べ、晴れやかにコートから出る。
……悔しくない訳じゃないだろうが、完全なる力負けで笑うしかないって感じなのかもしれない。
そこにナギさんがやって来て、ツツジにアドバイスを送る。
「貴女の力量は確かに高いわ。 だけど、貴女は弱点タイプに対する対策がとても甘いと思う。」
……確かに。
思い返してみれば、ツツジは真っ向から弱点タイプを突かれた事は極少ない。
それ故なのかもしれない。
「恐らくはそのディアンシーのせいもあるでしょうね。 貴女のディアンシー、そうとう硬いわね。 まさか私のペリッパーの雨天時における“ハイドロポンプ”で落ちないとは思わなかったわ。……きっと、並の効果抜群では致命傷にもならないのでしょうね。 けど、それ故に貴女はディアンシーの硬さに甘えているとも言えるわ。」
「……はい。」
ツツジはナギさんの言葉を真摯に受け止めている。
「私は飛行タイプの専門、恐らく私の他の手持ちポケモンでは、貴女のディアンシーに勝てる子はそうはいない。……それでも、どの子も一応は弱点タイプのポケモンとも戦えるように考えて訓練しているつもり。……貴女も岩タイプのスペシャリストを名乗るなら、弱点タイプとも戦える様に考えておくべきだわ。」
「はい!」
「そう、例えば高い所で全身に風を感じたりすると良い考えが___」
「あ、それは結構ですわ。」
……締まらないなぁ。
折角格好良かったのに。
……さてツツジの弱点タイプに対する甘さは、俺のせいでもあるだろう。
俺が真正面から草技を使ってダメージを与えるタイプのスタイルではないせいで、弱点タイプに対するダメージの通らなさなら熟知していても、弱点タイプで攻撃される事の厄介さを強く理解していなかったかもしれない。
……俺のせいであるならば、せめて敵討ちくらいはしたいものだ。
「お願いします。」
俺はバトルコートに立ち、ナギさんとバトルをする準備をした。
「うん、こちらこそよろしく。」
出て来るであろうポケモンはチルタリスの一点読み。
俺が草ポケ使いであるのは知っているので、草タイプに滅法強いチルタリスを選ばない筈はない。
それに、ナギさんのエースだしな。
「やろうか、ユレイドル。」
「行っておいで、チルタリス。」
……来たな、チルタリス。
俺もリリーラからユレイドルに進化したとはいえ、正直まだ不安はあるが___
「……ユレイドル、また岩タイプね。 なら、チルタリス
メ、メガシンカァァァ!?
まっ、マジかよ!?
大丈夫か俺の作戦?
いや、ユレイドルを信じよう!
そして一瞬にしてチルタリスは強い光に包まれた後に、殻を破るかの如く姿を変貌させて現れる。
これがメガシンカポケモンか!
成る程、強い威圧感を感じる!
でも、多分大丈夫!
勝てる可能性はまだ0じゃない!
ユレイドルは非常に遅いポケモンだ。
だがその分耐久性は悪くない。
だからこそ使える技がある。
「チルタリス___」
「……ユレイドル!___」
「“れいとうビーム”」
「っ! “ミラーコート”!」
以前、テッセンのおやっさんが使おうとした“ミラーコート”は喰らったダメージを倍にして返す技だ。
ただし、特殊技のみ。
どんな技が来るかわかっていた訳ではない。
ただ、チルタリスなら強い特殊技がある可能性は高いと思っていた。
元々俺のユレイドルは
だから“こうごうせい”や“ねをはる”等の回復技も覚えさせていて、強い特殊技に対して“ミラーコート”を使える様に頑張っていた。
例え効果抜群の技でも、タイプ一致じゃないならユレイドルならきっと耐える。
それでもメガシンカしたチルタリスの“れいとうビーム”は物凄い威力でユレイドルにダメージを与える。
だがユレイドルは確かに耐えた。
そして、“れいとうビーム”直後のチルタリスへと“ミラーコート”を叩き込み、一撃で沈めてみせた。
相手が強いからこそ、勝てる。
……こんな方法も、ちゃんとあるんだぜツツジ。