ツツジを嫁にするまで   作:呉蘭も良い

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二十九話

ミナモシティは相当大きな街だ。

 

目当てのデパートは勿論、船乗り場や美術館、コンテスト会場やトレーナーファンクラブなんてものもある。

観光するなら1番楽しい街かもしれない。

 

だから今日は久々にポケモンバトルから離れて、ツツジと楽しいデートが出来る。

 

……と、思っていた。

 

「色々な技マシンが置いてありますわね。」

 

現在俺達はミナモデパートの4Fにある技マシン売場で、様々な技マシンを物色している。

 

……いやまぁ、ここに来るつもりはあったよ?

 

でも全然バトルから離れていない!

寧ろバトルと直結してるよ!

 

原作なんぞより多種多様な技マシンがあって楽しいよ?

 

けどね、初っぱなから()()じゃなくても良いと思うの俺!

 

デパートなんだから他のフロアで色々ショッピングとか出来るじゃん!

なんならウィンドウショッピングでも良いよ俺!

 

最初に来るのが技マシン売場って、バトル脳過ぎないか君?

 

……まぁ、欲しい技マシン___ってかぶっちゃけ“まもる”はずっと欲しかったから良いんだけどさ。

 

しっかし高いのよ技マシンって。

値段がね?

“まもる”でも1万円するのよ。

“ギガインパクト”なんて5万円するからね?

 

“ギガインパクト”が買えないのは勿論___まぁ、買うつもりも無いが、“まもる”でさえ手を出したら親父と交渉して何とか折角手に入れた1万円も即パーよ。

 

……すっごく欲しいけど躊躇っちゃうわ。

 

この世界では技マシンは使いきりタイプじゃなくて、何度でも使えるのだ。

だから意外と、何かしらの施設で使わせて頂く事は結構ある。

 

例えばヒワマキジムで“そらをとぶ”を使わせて頂いたり、スクールでもちょくちょくと使わせて貰った事は何度もある。

 

だから“まもる”に1万円を使うのは正直勿体ない。

……勿体ないんだが___

 

じゃあ何故今まで“まもる”の技マシンを使えなかったかと言うと、……“まもる”が圧倒的に人気が無いからだ。

 

この世界の“まもる”は、前世程の滅茶苦茶優れている性能を発揮しないのだ。

 

前世ならコマンド1つポチーで大体何でも即守ってくれる“まもる”だが、今世では指示しないとポケモンは“まもる”を使ってくれない。

 

つまり、技の出の速さならもの凄く速い“まもる”なんだが、トレーナーの指示が遅れたら何の効果も無い事になる。

 

しかもゲームでZ技のダメージが4分の1貫通する様に、この世界でも高威力過ぎる技のダメージはきっちり貫通するのが人気の無い理由の1つなのだ。

 

……そりゃまぁ何でもかんでも守れたら実際はチート技の1つなのかもしれんが。

 

だからこそ殆どの施設で“まもる”の技マシンを見ない。

 

欲しい。

物凄く欲しい。

“まもる”があったら俺の戦い方にも幅が出る。

 

真正面から戦える強さは必要だと思うが、だからといって害悪戦法を止めるつもりはサラサラ無いし、“まもる”は俺の戦法に実にフィットする。

 

……けどなぁ。

10歳児にとって1万円ってすっごい大金なのよ。

これだけで半年はやってけるレベルの金額なの。

 

前世なら___ってか大人基準ならば大金だけども給料の一部、レベルの金でしかないが、子供にとっては1年に1度見るか見ないかのレベルなのが万札だからさぁ。

 

……正直キツイ。

 

買っても後悔しそうだし、買わなくても後悔しそう。

 

俺はガラスケースの中にある技マシンの前で、本気で頭を抱えて悩んでいた。

 

……まぁ他者から見たら変態だ。

だからツツジにも変な目で声を掛けられた。

 

「……何をそんなに悩んでいるのですの?」

 

「……いや、まぁ、……“まもる”が欲しいな、って思ってさ。」

 

“まもる”が欲しい。

けどそしたら今度はセットで“みがわり”も欲しい。

だけどそんなの完全に予算オーバー。

予算オーバーどころか財布の中身オーバー。

 

けど、“まもる”って“みがわり”とセットな所もあるじゃん?

今の所“みがわり”覚えているのロトムだけだし。

全員に覚えさせたい。

 

けど“みがわり”も“まもる”同様人気ねぇし。

やっぱ自分で自分の体力削る技って人気ねぇよのよな。

 

「? でしたら買えばよろしいのでは?」

 

簡単に言ってくれるな!

そんな即決出来る値段かよ!?

 

……あー、そう言えばツツジはお嬢様だったな。

多分このくらいのレベルなら問題ないのか。

 

「君ね……いや、ホント、1万円って大金だからね? そんな簡単に決断とか出来ないから。」

 

「そ、そうですか。」

 

俺の変な迫力に押されてツツジは納得する。

 

あぁ~、でも本当にどうしよう。

“そらをとぶ”が出来る様になったから、ミナモシティに来るのはそこまで難しい話ではなくなったのだ。

今が駄目ならまた今度って考えも出来なくは無いのだが、今すぐ使える技が目の前にあるのにそれを放って置くのも、なんだかなぁ~。

 

やっぱり俺が、う~んう~ん、と悩んでいたら、ツツジが何かを閃いて俺に提案をする。

 

「! それでしたら()()を売って、資金の足しに致しませんか?」

 

彼女はチラッと自身のバッグから、どこか見覚えのある宝石を俺に見せてそう言う。

 

お、おまっ!ディ、ディアンシーのダイヤじゃねぇか!? 隠せ!

 

俺が慌てて小声で叫ぶが、ツツジは自分の提案を良案だと思っているのか、俺の焦りに素知らぬ顔をする。

 

()()に関しては元々貴方の提案ですし、貴方の報酬として、売値をそのままそっくり貴方にお渡しして私は構いませんわよ?」

 

私は無限に生み出せますし、とツツジはそう呟く。

 

……確かに。

いやしかし、……良い、のか?

 

でも、どうなんだ?

()()は、どれ程の値が付くんだ?

 

俺は少し考え、ディアンシーのダイヤにどれ程の値が付くかの好奇心が抑えられずに、ツツジの提案を了承した。

 

「良いか、査定だけだ。……ちょっと査定して貰うだけ。 このダイヤの値段が気になったから、見て貰うだけだ。……そこまで高くなかったら、……まぁ、お小遣いとして売ってから俺が貰うよ。」

 

「わかりましたわ。」

 

……こんな宣言しといて何だが、あまり高い値段が付かない方が俺にとって良いような___

 

「申し訳ありません、()()を売りたいのですが、査定をお願い出来ませんか?」

 

「はい! お買い取りですね?……こちらはガラス……ではありませ___えっ、……え!? しょ、少々お待ち下さい! 私では判断出来かねますので、今すぐ担当者をお呼び致します!」

 

……これ、不味いパターンでは?

 

買い取りカウンターにてツツジが店員に声を掛けたら、店員が軽く検分した後に驚愕顔をしてダッシュで裏に行ったぞ。

 

きんのたまが普通に売買出来る世界なのであるいはと思ったが、流石にダイヤは駄目か。

これでも自重して、1番小さい親指の先程度の大きさのダイヤを出したのだが。

 

俺がやっちゃったなぁー、と思いながら諦めモードで待っていたら、急ぎ足で先程の店員と身分が高そうな人物が現れて、俺達はデパートの裏の個室へと通された。

 

……もうこの時点でお小遣い無理やん。

10万以下の値段なら売ろうと思ってたのに。

 

そこで俺達は色々説明を受けたが、……まぁ良くわからん。

カラットがどうやら純度がどうやら言われても、悪いけどそんな知識無いのだ。

 

とにかく査定していた人がめっちゃ驚いていたので、かなりの品という事なんだろう。

 

「お恥ずかしい事に、この様なダイヤモンドを今まで見た事がありません。……失礼ながら、何処でこれを入手されたので?」

 

あ、このボールに入ってます。

って言えたら凄い楽。

 

「申し訳ありません、守秘義務がございますので……。」

 

今はツツジが対応しているが、俺は今までこんな経験が無いので酷く緊張していて、対応出来るツツジが凄く大人に見える。

……精神年齢では俺が激しくおっさんな筈なのに。

 

「左様でございますか。……しかし、う~む。……見た事の無い美しいダイヤ、しかし綺麗にカットされている訳ではなく、アクセサリーとして加工されている訳でもない。 だがこの大きさ。……そして希少であるのも事実。」

 

……すいません、今に限っては実は希少じゃないんです。

これよりデカイのがバッグにあるんです。

それこそ拳大サイズが。

……いや、世界的に考えれば希少なのかもしれないが。

 

「……大変申し訳ありません。 私の権限では100万円までしか値が付けられません。……それでもよろしければ、喜んで買い取らせて頂きますが___」

 

その言葉にツツジが俺をチラッと見たので、俺はその値段に怖くなり凄い勢いで顔を横に振る。

 

「……ありがたいお話ですが、私共もこのダイヤの正当な価値がわからないので、査定をお願いしに参った次第です。……良き勉強にはなりましたが、今日はここで___」

 

「左様でございますか。 非常に残念ではございますが、私も良い経験をさせて頂きましたので、ご感謝を。……また機会がございますれば当店をご利用下さいませ。」

 

その言葉を皮切りに俺達は深々と頭を下げて、俺はツツジの手を引きながら逃げる様にデパートを後にした。

 

そして外に出て取り敢えずの一安心を得た俺は、ドキドキする心臓を押さえながら、一応気になったのでダイゴ神へと連絡し、今の話をした。

 

『ははは。 確かにディアンシーのダイヤならそういう事になるかもね。 でも君達は良い鑑定士に出会ったね。 下手な所ならもっと低く見積られて騙されていたかもしれない。 親指の先程の大きさだっけ? それならオークションにでもかければ500万円以上は行くかも知れないよ?』

 

……うせやん。(白目)

 

『お金が必要なら僕が買い取ろうか? あのダイヤならいくらあっても嬉しいからね。』

 

いや、アンタには拳大の大きさの奴を数個渡しただろ。

……なんてツッコミも出来ずに、俺はただただ呆然とした。

 

後にツツジから呆れられながら、『いずれ通る道ですわよ?』なんて言われた。

 

……これだからボンボンは。

普通こんな道通らねぇよ!

 




感想にて、ツツジ視点の話が読みたいやら、主人公の手持ちポケモンのスペックが知りたいなど、前にありました。

非常に嬉しい要望なのですが、この作品は思いつきで書いてる作品なので、そんなに設定とか考えていないのですよ。
プロットとか無いし。
だからエルフーンの使用した技の数とかかなり多いかも。

いつもその時のノリと勢いで書いてるので、何時矛盾が起こるかわからないハラハラ作品なのです。
なるべく矛盾がない様に努力しますが。

ですので、ツツジ視点とか主人公のポケモンスペックやらは、やりたいとは思いますが、何時になるかわかりません。
一応は、取り敢えず、まずは完結させたいので、その後から考えてみます。

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