モンメンを進化させよう。
そう思い立ったのは、いつもの如くツツジと
この技は非常に優秀で、なんと自身の防御力を3段階も上昇させる技なのだ。
なのでバトルの時に初っぱなでこの技を使ったら、ツツジには最早俺を倒せる火力を出すのは不可能になる。
プラス“あまえる”で相手の攻撃力をがくっと下げ、“やどりぎのタネ”のコンボでスリップダメージを与えながらこちらが回復すると無敵状態になる。
彼女が良く使うノズパスやイシツブテは基本的に物理技しかないからな。
今まで俺がモンメンを進化させて来なかったのも、この技を覚えるのを待っていたからとも言える。
進化したエルフーンだと、独力では覚えてくれないからな。
しかしこの世界でも積み技が絶対的な優秀さを見せるかと言えば、前世程ではないとしか言えない。
何度でも言うが、この世界は数字ではない。
優秀な積み技、“つるぎのまい”や“りゅうのまい”、“ちょうのまい”や“めいそう”などなど、前世でのバトル環境でも使われていたこれらの技は、一度使用してしまえば必ず1段階あるいは2段階上昇していたが、この世界だと
つまり、技として全て完了したならそれ相応の効果が出るが、普通なら技が完成する前に相手に攻撃されて中断されてしまうのだ。
例えば“つるぎのまい”をしている最中に相手の攻撃を受けて、中断されてしまい1段階、あるいはそれ以下しか攻撃力が上がらないとかも普通にある。
まぁそもそも積み技、というか補助技自体が
効果がわかりやすい補助技なら使ってくるがね。
“でんじは”や“どくどく”、“おにび”なんかがそうだろう。
しかしそんな状況の中で、何故俺がわざわざ“コットンガード”を覚えるのを待っていたかと言うと、それはモンメンの特性にある。
【いたずらごころ】
この特性は補助技を優先的に使用する特性だ。
これによって、モンメンは補助技ならば相手が動ききる前に技を完成させてくれる。
まぁデメリットも少しはあるが、メリットの方が圧倒的に多いので、うちのモンメンも例に漏れず補助技主体の技構成をしている。
面白いのは“コットンガード”を使用した時、ただでさえ目元と手の葉っぱしか見えないモンメンが、完全に綿毛に覆われてただの毛玉になるのだ。
それもバスケットボールサイズの毛玉だ。
今まで“たいあたり”なんかをされた時は、ドフッ、くらいの音はしていたが、“コットンガード”を使用したら完全に、モフッ、なのだ。
“たいあたり”した時のイシツブテのなんとも言えないあの微妙そうな顔は笑えた。
まぁとにもかくにも、これで俺のモンメンは進化する準備が出来たと言える。
だから平日のこの暇な時間を使って、ちょっとムロタウンの石の洞窟まで出張り、【たいようのいし】を 掘って来ようかと画策している。
ゲーム的には出来ない事ではあるのだが、この世界では自身で採掘が可能だし、石の洞窟は名前の通り石関連なら大体何でも出てくる。
本来ならソルロックから(倒して)貰った方が良いのだが、場所が場所なのであそこは行きたくない。
……流星の滝は、ちょっとなぁ。
ボーマンダやサザンドラなんかが野生で飛び出す危険性があるとか地獄かよ。
いくらうちのモンメンがフェアリータイプを有しているからと言って、あれらと野生でバトルとか考えたくない。
だって野生なら
……嫌過ぎる。
それに奥に行くなら“なみのり”とかも必要になるし、まかり間違って何かしらのイベントとかがあっても非常に困る。
よって安全性を考慮したら石の洞窟一択になる。
まぁ一発で掘れるなんて思ってないし、別に今すぐ堀り当てる必要もないので、ここ暫くの目標、暇潰しに近い感覚だな。
_____
そんな訳で数日後カナズミシティから南下しトウカの森を抜け、ハギ老人に頼んで船を出して貰い、数時間掛けて石の洞窟へとやって来た。
ゲームではものの数分で完了するのだが実際移動するとなるとめっちゃ大変だわ。
つるはしとかの採掘道具も持って来てるから荷物重いし。
早朝から行動を開始してもう昼前だからな。
帰りの事も考えたら採掘時間足りねーぞこれ。
うーむ、今度しっかりと外泊も考えて計画しないと。
それにしても___
「……本当に付いて来るの?」
「当然ですわ!」
来ちゃったんだよなー、ツツジ。
俺が石の洞窟で採掘する為の準備をしている所を発見した彼女は、何故か自身も一緒に行くと言いだし、マジで付いて来ちゃった。
まぁ良いんだけどね?
これもデートの一種だ、うん。
「それにしても思ってたより暗いな。」
「ですわね。 こんな懐中電灯だけで大丈夫でしょうか?」
俺達は洞窟の入口前で中を照らしてみたが、思ってたよりも中は暗かった。
俺が用意した懐中電灯は3つで、2つは前世で言う所の軍用ライトみたいな強い光を出すタイプの奴で、1つはベルトに付け提げれる360度全域に光るタイプの夜釣りとかで使用する電灯だ。
……まぁ、多分なんとかなるだろう。
「よし、今から中に入るけど、ポケモンは常に外に出しとけよ?」
「野生ポケモンの奇襲警戒ですわね? わかっていますわよ。」
そうは言うが、彼女はきっとわかってない。
頭では教科書通りの理屈を理解しているのだろうが、試合経験ではなく、実戦経験の少ない彼女は野生の在り方を理解していないだろう。
俺だってトウカの森に行って恐ろしい思いをし学んだ事なんだ。
普段カナズミシティから出ない彼女に野生の怖さがわかるとは思えない。
とは言え、石の洞窟はそこまで強いポケモンが出現する場所ではない。
群れで襲われるとかでもない限り、通常のバトルなら俺達に問題が起こる事はないだろう。
けど一応は少し脅しておこう。
「本当に気を付けろよ? ズバットがいきなり首に噛みついて来る事だってあるんだからな。」
「えっ!? き、気を付けますわ。」
俺はコクりと頷いてからボールからポケモンを出す。
「よし、警戒頼むぞモンメン。」
「お願いしますわ、ノズパス。」
そして俺達は慎重に洞窟の中へと入って行った。
そして歩く事数分、未だに野生ポケモンと遭遇しないまま進んでいると、少し明るい広間の様な場所が見えて来た。
「……何か、先が明るいですわね。」
「誰かいるのかもな。」
広間に入りそこに居たのは、非常にわかりやすい格好をした、所謂ゲームのやまおとこの風貌をしたおっさんが居た。
「おや? こんな所に年端の行かぬ少年少女が来るとは珍しい。 お嬢さん方、ここへは何をしにやって来たのかね?」
「あ、どうも。 ここへは採掘をしに、俺が【たいようのいし】が欲しかったもので。」
「私は付き添いですわ。」
俺達がそう答えるとおっさんは『成る程、成る程』と頷き、大きな笑みでアドバイスをくれた。
「うむ、それなら地下2階の奥へと行くと良い。 奥の突き当たりに亀裂があるので、そこを掘ると出てくる可能性があるぞ? 以前そこで出土した報告を聞いた事がある。」
奥か、結構時間掛かるかもなー。
「ありがとうございます。 早速行ってみようと思い出ます。」
「うむ、頑張れよ。……と言いたいが、すまんが君達を少し試させてくれんか?」
はて?
一体何の事だろうか?
「試すとは、何を試すのですの?」
「いやなに、疑って申し訳ないのだが、君達のポケモンバトルの実力を試したい。 石の洞窟は比較的安全ではあるが、それでも危険が無い訳ではないからね。」
成る程、この人めっちゃ親切だな。
「そういう事でしたら私が相手しますわ。」
「よし、では手加減はせんぞお嬢さん!」
こうして石の洞窟での最初のポケモンバトルは、野生のポケモン相手ではなく親切なおっさんとのバトルへと相成った。