ツツジを嫁にするまで   作:呉蘭も良い

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五話

「これで仕留めますわよ! ノズパス、“がんせきふうじ”!」

 

バトル開始から数分、トレーナーとしての実力もポケモンの実力も、相手のおっさんとイシツブテのコンビよりも上だったツツジ達はほぼ無傷で楽々とバトルに勝利した。

 

「はっはっはっ! これは敵わん! いや、実力を疑って悪かった。 これなら地下に行っても問題無いだろう。……なんて、負けた私が言うのも烏滸がましいな!」

 

「いえ、ご心配ありがとうございますの。」

 

「うむ。 私に勝利したお嬢さんには、おこづかいと特別にこの“フラッシュ”のわざマシンをやろう。」

 

なぬ?

“フラッシュ”とな?

 

「まぁ! わざマシンなんて貴重なもの、よろしいのですか?」

 

「なに問題ないさ。 それはコピー品だからな。 私はまだまだ“フラッシュ”のコピー品を持っているのだ。」

 

「コピー品だとしても、ありがたいですわ。」

 

う、うーん。

正直“フラッシュ”は使い道が……。

 

いや、敵の目の前で閃光弾みたいに強烈に光ったら、某大佐みたいに『眼がっ、眼がぁぁぁ!!、』みたいにならないかな?

 

ゲーム的にはバトルで命中率を1段階下げるだけの技だったけど、何せ時代によっては世にも貴重な秘伝の技なのだ。

この世界ならば確定ひるみを取れる様なチート技の可能性がワンチャン___

 

「お嬢さん方、天井を見ると良い。 あの天井で光ってるのが“フラッシュ”を使っている私のケーシィだ。」

 

あ、この広間が地味に小明るいのはそういう事だったのか。

……この優しく淡い感じの光、チート技は無理そうですね。

 

「洞窟の奥へと進んで行くのなら、ポケモンに“フラッシュ”を覚えさせると良いぞ。 懐中電灯よりも視界が開け周囲の確認が取りやすいからな。」

 

「成る程、それは便利ですの。」

 

「ありがとうございます。……しかし残念ながらわざマシンを使う為の機械を持って来ていないので、ここでポケモンに覚えさせるのは、無理みたいです。」

 

「ふむ、そうか。 生憎私も持って来ていないので、どうやら今すぐ使うのは無理だな。 では今日の所はこのまま懐中電灯で進むしかないか。 あまり無理をせず気を付けて進むのだぞ?」

 

……まぁ、ありがたい話ではあるのだが、仮に使えたとしても別に“フラッシュ”を覚えさせたいとは思わないな。

洞窟だと便利ではあるけどね。

 

……この世界でもひでん要員とか必要になるのかなぁ?

……いずれはトロピウス先生を捕まえに行こう。

 

こうして優しいおっさんと別れた俺とツツジは再び暗闇の通路を順調に進み始めた。

 

途中野生のポケモンと遭遇してバトルになる事もあったが、洞窟の中が慣れて来た俺達はこちらも問題なく処理する事が出来た。

それに、野生だからと言って必ずバトルになる事はない。

穏やかな性格をしているポケモンならこちらを結構スルーしてくるし、手を振ったら振り返してくるマクノシタなんかもいた。

 

「あら? ここから下に降りるのでしょうか?」

 

「おっ、そうみたいだな。」

 

そうこうして進んでいる内に、俺達は地下へと降りる梯子まで到着した。

 

ここまで来るのにおおよそ40分。

ここから地下1階そして地下2階の奥まで行くとなると、帰りを考えたら採掘時間は1時間あるかないか、って所か。

……中々ハードだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

途中途中で休憩を挟みつつ、俺達は時間を掛けてようやく地下2階の奥までやって来た。

 

その最中で結構強い野生のポケモンとバトルになったりもしたので、用意していたキズぐすりや各種状態異常回復系アイテムもそれなりに消費している。

 

残りはキズぐすり5個、いいキズぐすりが2個、どくけしが2個にまひなおしとやけどなおしが3個ずつだ。

 

こおりなおし?

……そんなもの、ないよ。

 

まぁ無理をしなければまだ余裕はある。

とは言え、現実足るこの世界ではキズぐすりを使用したからといって、その場で即回復なんてしない。

こちらも、徐々にゆっくりと回復していく。

まぁ30分もあれば効果は充分に発揮するので、前世基準だと異常な回復アイテムではある。

 

それでも連続使用は推奨されてないがね。

これらのアイテムはあくまでも薬品なので、多量の服用はあまり身体には良くない。

前世と同様に、薬が転じて毒になるようなものだ。

 

だから本来は自然に存在するきのみなんかの方が好ましい。

 

しかしきのみは意外と所有するのが難しい。

フレンドリーショップに売っている訳でもないし、生物(なまもの)であるきのみは長く放っておくと腐ってしまうのだ。

俺もオレンの実とモモンの実を少しずつしか保有していない。

 

……ちなみに、ゲームではお世話になるあなぬけのヒモというチートアイテムはこの世界には存在しない。

 

そらそうだ。

使用したら出口まで飛ぶとか、そんなんある訳ねぇ。

いや、ポケモンというファンタジーな世界なんだから、あって欲しかったんだけどね?

この世界はどこか地味に厳しい所がある。

アルセウス仕事しろよ。

 

「さて、早速やるか。」

 

「私が周りを警戒しておくので、ご心配なさらずにどうぞ。」

 

ありがとナス!

 

俺は軍手にヘルメットのヒョウタスタイルで壁の亀裂に向かってつるはしを頭上から振り下ろした。

そしてカーン!と甲高い音を鳴らせ、反動でつるはしが頭上へと返って来る。

 

……凄く、手が痺れる。

痛……くはないが、こう、腕全体がビリビリっとする。

ぬぅ、やってやるさ!

 

それから俺は一心不乱につるはしを振るい、壁の亀裂をガシガシと掘った。

そして息が大きく乱れた頃に、他とは違う色をした石がコロッと転がって出て来た。

 

「ハァハァ、……っ、はぁ。 お、おぉ? これは___」

 

「あら、【リーフのいし】ですわね。 一先ずおめでとうございます。」

 

緑色のそれは、ツツジの言う通り【リーフのいし】だった。

【たいようのいし】と同じく進化の石ではあるのだが、これじゃないんだよ。

いや、逆に考えれば早速同系統の進化の石が出土したので、幸先は良いのか?

 

「まだ時間に余裕はあるな。 もう一回掘ってみるか。」

 

「それでしたら私も一度経験として発掘作業をしてみたいのですが、よろしいですか?」

 

「マジで? いやまぁ良いんだけど、結構な重労働なんだがマジでやるのか?」

 

「大マジですわ。」

 

マジか。

俺は被っていたヘルメットをツツジに被せ、軍手を付けさせつるはしを渡した。

 

「危ないから慎重にな。」

 

「了解しましたわ!」

 

彼女はそう言って、思いっきりつるはしを振りかぶり全力で亀裂へと叩きつける。

 

全然了解していない!

見ているこっちはたまったものじゃない!

 

と、俺がハラハラしていたらものの数分で勢いが収まり、5分も立てば息が完全に上がっていた。

 

「ハァ!ハァ! っぐ、ぐぬぬ!」

 

「あんなに全力でやるから……。」

 

「むぅ~!……はっ!」

 

彼女は何かを思い立ち、ベルトからボールを取り出した。

 

「イシツブテ! 私の代わりにここを掘って下さいな!」

 

汚ねぇ!

いや賢いんだが、何か釈然としないぞこれ!

 

「……自分で掘りたいんじゃなかったのか?」

 

「私のポケモンが掘ったなら、私が掘ったのと同義ですわ!」

 

うんまぁ、そうなんだけども。

実際つるはしを握って振るう腕があるのは、俺達二人の手持ちじゃイシツブテくらいしかいない。

つまり、この荒業が可能なのはツツジだけというのが何とも汚いじゃないか。

 

俺は恨めしい想いでイシツブテを見ていたが、そんなもの気にせずにガンガン堀り進めるイシツブテは様々な石を出土した。

 

【ほのおのいし】【やみのいし】【かわらずのいし】

 

「よ、良かったな。」

 

「良くやりましたわイシツブテ!」

 

く、悔しい!

俺と同じぐらいの発掘時間でここまで出土させるとは、やるなイシツブテ!

だがまだ目的の【たいようのいし】が出てないので負けではないのだよ!

最終的に目標を達成した奴が勝者なのだ!

それまでに出土した物の数など、たいした意味など持たん!

 

くっそ~!と、俺が奮起し再び発掘しようかと思っていたら、遠くから2匹のポケモンがこちらの方へと結構なスピードでやって来る。

 

どうやらこちらから見て手前側の方が、奥側のポケモンに襲われていて逃げている様だ。

 

懐中電灯では薄暗い洞窟の中、手前のポケモンはこちらの光に気付きこちらを頼るかの様に駆け寄って来た。

 

そこで俺は驚愕した。

 

それはどのような世界観でも、ホウエン地方では野生で見られないポケモン。

 

「メ、メレシー!?」

 

()()ポケモンメレシー。

流石は石の洞窟、石関連なら何でもあるんだなぁ。(白目)

 




トロピウスとは、ゲームにおいて大事な技枠4つに、“いあいぎり”“いわくだき”“かいりき”“そらをとぶ”の秘伝の技4つが修まる達人先生なのである!

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