ツツジを嫁にするまで   作:呉蘭も良い

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八話

俺達はその人の事を良く知っている。

何せ彼は俺達の通うスクールの伝説的なOBで、特別優秀な成績を修める俺とツツジは何度も顔を合わせているし、バトルを教示して貰った事が何度もある。

 

そうでなくともこのホウエン地方で一番の有名人だし、ポケモンの知識が有るならば知らない訳がない。

 

「……ダイゴ、さん? 何でここに?」

 

石の洞窟(ここ)は僕の庭みたいなものだよ?」

 

俺が唖然としながらそう呟くと、彼は笑ってそう答えた。

 

「なんてね。 実は君達が中々石の洞窟から戻って来ないものだから、心配したハギ老人がカナズミの君達の両親に報告に来たんだ。」

 

……そういえば、とっくに約束の時間は過ぎているのか。

 

「それでたまたまその事を知った僕が、様子を見に来たと言う訳さ。」

 

「……それは、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんわ。」

 

「そんな事ないさ。 それよりも君達はとんだ貧乏くじを引いたみたいだね。 ここでは稀に見る強さのヤミラミに狙われるなんて。……ほら、僕のメタグロスの技を受けても立ち上がって来るヤミラミなんて野生ではそうはいないよ?」

 

ダイゴさんの言う通り、ヤミラミへと目を向ければ奴はメタグロスの“バレットパンチ”を受けて尚も闘争心を剥き出しにして立ち上がって来た。

 

だが、何と言うか、もう心配はしていない。

あそこまでの化け物っぷりを披露したヤミラミだが、ダイゴさんのメタグロスとは比べ物にはないないからだ。

 

生物として、圧倒的に“格”が違う。

 

600族うんぬんではなく、そこに至るまでの次元が違うのだ。

 

「中々面白いヤミラミだね。 フヨウなんかが喜びそうなポケモンだ。」

 

えっ、このヤミラミは四天王が目をつけるレベルの化け物なの?

 

改めてとんでもない奴を相手にしてたんだなぁ、なんて思っていたら、僅か数秒で決着はついた。

 

「メタグロス、“コメットパンチ”。」

 

ダイゴさんがそう指示を出したら、バコン!という音を鳴らし、今度こそメタグロスがヤミラミを沈めた。

 

……強過ぎる。

 

俺達がスクールでこの人相手にバトルをさせて貰った時は、もの凄く手加減していた事が良くわかる。

しかもあの時はメタグロス(相棒)ではなく、ココドラだったし。

 

……これが、最強のトレーナー(チャンピオン)か。

 

『結局、僕が一番強くて凄いんだよね。』

有名なダイゴの自己紹介文だが、 前世と違い全くギャグとは思えない。

 

カッコいいじゃないか。

 

「……凄いですわ。」

 

ただし、ツツジが頬を染めて目を輝かせていなかったらね!

 

畜生!

何か全部持って行かれた!

 

いや命の恩人だし、滅茶苦茶助かったんだけど、……何かこう、……何かこう!

 

俺が心の中のモヤモヤに葛藤していたら、ダイゴさんが話しかけて来た。

 

「さて、色々と……本当に色々と聞きたい事が今出来たけど、先ずは僕達の街(カナズミシティー)へ帰ろうか。」

 

ダイゴさんの目線はツツジの隣に居るメレシーへと釘付けになっている。

……聞きたい事、多いだろうね。

俺だって聞きたいくらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カナズミシティーへの帰路中、俺達はハギ老人の船の上にいる。

ダイゴさんは来る時は自身の手持ちのエアームドで飛んで来たらしいが、帰りは一緒に帰る為に俺達と同行している。

まぁエアームドで三人は運べないからね。

 

と言うのは建前で、俺達はダイゴさんからそれはもう質問責めにされた。

まぁ何と言ってもメレシーの事だ。

 

自身の庭宣言する程に石の洞窟に足繁く通っていても、今回初めて見たらしいからな。

 

「う~ん、これはもう一度隅々まで探索する必要があるなぁ。 いや、それにしても羨ましい。」

 

ダイゴさんはそんな事を言いながらツツジからメレシーを預り、額にある大きな宝石を丁寧に磨いている。

メレシーも凄く嬉しそうだ。

 

「……メレシーのポケリフレは宝石磨きみたいだな。 君も鉱石の磨き方を勉強した方が良いんじゃないか?」

 

「……ですわね。主人は私である筈ですのに何故か敗北感が……。」

 

もし出会う順番が逆なら100%ダイゴさんに懐いてたなこれ。

 

「しかし今回は本当に君達は災難と同時に大手柄だったね。 メレシーの発見は学術的にも凄い事だよ? オダマキ博士なんかも驚くんじゃないかな?」

 

「まぁ偶然ですけどね。」

 

「そのせいでヤミラミにも襲われる事になりましたし。」

 

プラマイで言ったらマイナスな気がする。

ダイゴさんが来なかったらヤバかったし。

 

「ツツジさん、このメレシーはホウエンで初めて発見された存在だ。 悪いが時々は観察や研究の目的で何度か借りる事があるかもしれない。……了承してくれないかな?」

 

「……まぁ、無理のない範囲で時々でしたら。」

 

「心配しなくとも、基本は石の洞窟の探索や研究になる筈さ。 何故メレシーが石の洞窟に現れたかの研究が第一だろうね。」

 

……研究、か。

 

その時、ふと変な事を思いついた。

 

メレシーとは幻のポケモンであるディアンシーの前身と言われていて、ディアンシーはメレシーの突然変異と言われている。

 

ならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

例えば、食生なんかはどうだろう?

このメレシーにダイヤばかりを与え、額の宝石が完全にダイヤになったならば、ディアンシーの専用技である“ダイヤストーム”を覚え、そこからディアンシーに成るなんてあり得るのではないか?

 

特定の技を覚えてからレベルアップすると、進化するなどの条件はポケモン世界だとあり得る事だ。

俺の好きなポケモンであるアマージョが良い例だろう。

 

ポケモンの世界とは関係ないが、かの有名なモンスターハンターの世界での亜種とかは、住んでいる場所の環境や食生での変質は良くある設定だった筈だ。

 

……とは言え、 常にダイヤを餌として与えるなんて、一体いくら金が掛かるのだろうか。

エンゲル係数半端じゃねぇぞ。

カビゴンより餌代かかるんじゃね?

 

……でも、思いついちゃったから言わずには居られない。

 

「……あの、ダイゴさん___」

 

俺はダイゴさんにメレシーの食生による変質変化の考えを話した。

 

「成る程、それは面白い! いや、どうしてそれを思いつかなかったんだろう。……成る程、食生か。」

 

うん、うん。

と、ダイゴさんはしきりに頷き目を輝かせている。

 

「ツツジさん! 是非その実験をして欲しい。 メレシーの餌を毎日毎食ダイヤにして欲しい。」

 

「えっ!? あの、ダイヤは流石に……。」

 

「あぁ、そうだね。 何、僕がスポンサーに成ろう! そうだな、……うん、一年。 一年、毎食メレシーにダイヤを与えて、その変化をレポートしてくれないかい?」

 

「は、はぁ? わかりましたの?」

 

「うん! これは面白いぞ。 オダマキ博士にも協力して貰おう。」

 

……とんとん拍子に話が進んでしまった。

でもメレシーが人工的にディアンシーに変化したら凄いぞ。

俺も柄にも無くちょっと興奮している。

 

「それにしても、ソースケ君は良くもまぁメレシーやディアンシーの生態系なんかを詳しく知っていたね?」

 

「えっ!?……あ、あぁ~、あれですよ、俺も男の子ですからね? 伝説のポケモンや幻のポケモンなんかは好きで、良く調べていたんですよ!」

 

うん、嘘じゃないぞ。

伝説や幻なんかの中二病あふれるワードは嫌いじゃないからな!

 

「あ~、成る程。 ふふっ、じゃあ君はどんな伝説や幻が好きなんだい?」

 

「あ~、……ビ、ビリジオン? セレビィやシェイミなんかも気になります。」

 

岩タイプのスペシャリストになるツツジに対抗して、と言うか、俺は前世から割りと草タイプが好きなので、この世界では草タイプのスペシャリストに成るべく努力をしていたりする。

 

ついでにホウエン地方には有名な草のスペシャリストが存在しない所も狙い所だと思った。

 

他にも、カプ・ブルルやカミツルギも草タイプだが、まだ世に出回っている名前ではないので割愛した。

 

「成る程ね、君は草タイプが好きなんだね?」

 

「好きです。」

 

ホント好きなんだよなぁ。

最初、モンメンに出会う前はキノココを捕まえる為にトウカの森に入ったしね。

まぁ、モンメンに出会ったから即シフトチェンジしたけど。

 

他にも、今でもキモリが欲しかったりする。

メガシンカさせてメガジュカインを愛でたい。

俺が最初にポケモンのゲームやった時の相棒はジュカインだったしね。

メガシンカして、初めて草タイプにドラゴンタイプが付与された時はちょっと感動したぞ。

 

なんて、俺が草タイプの魅力を話していたらダイゴさんも鋼タイプの魅力を語りだし、そこにツツジも参戦して岩タイプの魅力を語る。

しかも奴らは近しい性質のタイプだから、岩・鋼連合が出来上がり、鉱石が如何に魅力的か語るのだ。

 

……く、草だって魅力あるわい!

弱点5つあるけどな!

 

そんな熱い語り合いならぬ“語り愛”をしていたら、いつの間にかカナズミシティーへと到着していた。

 

そして大きく目立つデボンコーポレーションが見えたので、ダイゴさんが別れの挨拶をする。

 

「今日の所は僕はここで離れるけど、君達は真っ直ぐ家に帰るんだよ?」

 

本日はお世話になりました、と俺とツツジが頭を下げるとダイゴさんは、ふと何かに気づいたように俺に話しかける。

 

「そうだ、忘れていたなソースケ君。……これを君に。」

 

そう言ってダイゴさんは俺に【たいようのいし】を渡した。

 

「あ、これは___」

 

「何、冒険に報酬は付き物だろう?……今日の君の頑張りを称えて、さ。」

 

ダイゴさんはそう言って、俺へとウィンクをし爽やかに去って行った。

 

……やっぱ、超カッコいいぜあの人。

 

俺が呆然とダイゴさんを見送っていると、今度はツツジが話しかけて来た。

 

「……えっと、ソースケ。……その、今日は色々ありましたが、……あの……その……。」

 

ツツジは顔を俯かせて、しどろもどろに話す。

 

「えっと、今日は、……かっ、カッコ良かったですわ!」

 

そう言って、彼女は顔を真っ赤にさせて走り去って行った。

 

……………。

…………。

………。

……。

…。

 

お、おぅ。

 

何だ。

今日はホント色々災難だったが、【たいようのいし】は貰えるし、ツツジにはメレシーという相棒が出来たし、俺はカッコ良かったと言って貰えたし___

 

洞窟デートって最高だな!

 




誤字報告ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。

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