いや、ホント、後から確認したら出るわ出るわ。
これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
洞窟デートをしたあの日、俺が浮かれながら家に帰ると鬼の形相をした母ちゃんが居間で待っていて、死ぬ程怒られた。
そして現実へと引き戻され、凄くへこんだ。
普段そこまで我が儘も言わずに子供らしくやんちゃもしない俺は、あまり怒られた経験がない。
まぁ前世の記憶があるので、普通の子供とは違ったからな。
今まで言った事のある我が儘なんて、ミナモシティのデパートに行ってわざマシンが買いたいだの、モンスターボールを10個買ったら付いてくるプレミアボールが欲しいだのだったからな。
……だってプレミアボールお洒落だし。
まぁどちらも叶わなかったけど。
親父、デボンの社員の癖して給料そこまで良い訳じゃないらしいからなぁ。
でも一応は一般家庭よりは貰っているのかな?
母ちゃんは専業主婦だし。
それは一旦置いといて。
何にせよ、これは俺だけの問題じゃない。
ツツジだって俺のせいで家族に叱られている筈だ。
そう思った俺は、彼女の両親と祖父である校長先生に翌日謝罪しに行ったのだ。
誠心誠意、申し訳ありませんと頭を下げると彼等は俺の事を快く赦してくれて、これからもツツジの事をよろしく頼むと逆にお願いされた。
何でも、今まで箱入りで優等生だった彼女が、こんなやんちゃを仕出かすのが少し嬉しいらしい。
……どうして俺の両親とは態度が違うのだろうか?
俺だってこういう反応になってもおかしくないだろうが。
そう思って後日母ちゃんに聞いてみると、『あんたは今までやらかしてないだけで、いつかこうなるとは思っていた。』と、言われた。
……信用ねぇな俺。
まぁ暫くは大人しくしておこう。
特別何かをする予定もなければ、何かが欲しいみたいな願望もないしな。
だって欲しい物は手に入ったし!
「ここに取り出しますは【たいようのいし】!」
「待っていましたわ!」
今はあの日から1週間たったスクールの放課後。
メレシー関連の色々なゴタゴタを片付けるのに非常に時間が掛かって面倒臭かった。
まぁオダマキ博士と知り合いになれたのは良かったけどね。
だから今日、スクールのグラウンドにて俺とツツジはようやくモンメンを進化させる事が出来るのだ。
意外とポケモンの進化を目にする機会はない。
そういう事で俺もツツジも結構ワクワクしてる。
ちなみに、あの日を境に俺とツツジの間に甘酸っぱい空気が流れる……なんて事はない。
割りと直ぐにいつもの空気になった。
……もっとフラグが立つイベントがあっても良かったんだけどなぁ。
幼なじみは負けフラグ、なんて言葉があるくらいだ。
フラグやイベントは何度あってもウェルカムなんだが。
まぁ良いさ、これだってイベントみたいなものだ。
「さぁモンメン! 今こそ進化する時だ!」
そう大袈裟に煽ったけど、やる事は【たいようのいし】をモンメンに渡すだけ。
……だよね?
ゲームで【たいようのいし】を使用するって、こういう事で良いんだよね?
間違っていたら超恥ずかしいんだけど?
進化の石の正しい使用方法とかあったりするのん?
俺が別の意味でドキドキしていたら、【たいようのいし】を持ったモンメンが光輝き始めた。
俺がその光景にほっと一安心していたら、隣のツツジが興奮し始めた。
「これが進化! 凄い光景ですわね!」
自分より興奮している人を見ると、逆に冷静になる法則。
ツツジとは逆に俺は静かにその光景を眺めた。
そして一際輝いた後、メェ~!と言う可愛い鳴き声と共にモンメン___いや、エルフーンが姿を現した。
「やったなエルフーン!」
「おめでとうございますわ!」
頭と胸元のモコモコは相変わらずだが、茶色の顔と胴体が今度は良く見える。
表情がモンメンの頃よりもはっきりしていて、笑った顔がめっちゃ可愛いぞ!
「この、更に可愛くなったな! この、この!」
「私にもモフモフさせて下さいな!」
俺がエルフーンを全体的にモフモフしたのを見て、ツツジもそれに参加する。
エルフーンも俺達二人にモフモフされるのを喜び、嬉しそうに顔を緩ませている。
そこから更にテンションの上がった俺とツツジは、エルフーンに“コットンガード”を使用させて、全身モフモフにしてから久々にモンメンキャッチボールならぬ、エルフーンキャッチボールをした。
……ただ、モンメンと違いエルフーンは少し重いわ。
何度か続けたら結構疲れたぞ。
「さて喜ぶのもそこそこに、そろそろバトルの方の確認もしないとな。」
進化してステータスが上がり純粋に強くなる。
……なんて事、やっぱりこの世界はないんだよなぁ。
数値じゃ表せないが、ステータス的なものが上がるのは事実なんだが、進化したら
だからバトルでの動き方や技の出し方、ちょっとした回避方法なんかも前とは変えないといけない。
こういった微調整をする事も、暫く大人しくする為の理由の一環だったりする。
「では、私とメレシーでお相手致しますわ。」
「ふふふ、進化したエルフーンに勝てると思うなよ?」
そう言ってお互いが不遜な笑みを浮かべながら、バトルコートへと向かう。
_____
ツツジの協力もあり、バトルは何の問題もなく終わった。
まぁ今回はバトルと言うよりも、エルフーンの動作チェックが主だったので、真面目に戦ってキチンと決着をつけた訳ではない。
それでもエルフーンの強さを存分に示せたのではないかと思う。
モンメンの頃とは異なり、1つ1つの技のキレがかなり向上していた。
モンメンの頃を良く知るツツジだからこそ、この違いに驚いていたんじゃないかな?
「ふふふ、いくらメレシーを得たからと言って、そう簡単には勝たせてやらんよ?」
「む、……まぁ、ここは意地を張っても仕方ありませんし、正直に申しますと、タイプ相性が不利ですのでどうしても火力不足が目に付きますわね。……
むぅ、そう言われると俺も閉口するしかない。
いくら進化したとは言え、エルフーンは超火力の出せるポケモンではない。
メレシーレベルの防御能力を有しているポケモンを相手にしたら、攻撃技だけではまともには勝てない。
補助技でじわりじわりと追い詰める様な戦い方にどうしてもなる。
ま、勝てばよかろうなのだぁー、ってとある究極生命体も言っていたから良いんだけどね。
そもそもこの
「……ソースケ、私、……傲慢な事に、自分の事を強いと思っておりましたわ。」
「……は? いや、うん。 別に間違ってないんじゃないの? 少なくとも弱いって事はないだろ。」
「いいえ、弱いですわ。」
ツツジの言葉に俺は眉を寄せるが、彼女はそのまま言葉を続ける。
「この前の石の洞窟での時、私は野生のヤミラミ相手に何も出来ませんでしたわ。」
「……それは、俺だって殆ど何も出来なかったよ。 ひたすら逃げてただけだ。」
……どうにかする宣言しといて、どうにも出来なかったしな。
「そんな事ありませんわ。 確かにヤミラミが強くて逃げるばかりでしたけど、貴方はキチンと指示を出し、方針を決めていましたわ。……私はただ状況に流されるだけでしたし。」
いや、俺も結構流れに身を任せていた感じなのだが。
「知った気でいましたわ。……スクールで習ったから大丈夫、ポケモンバトルなら負けない、野生と言っても怖くない。……全部、知ったかぶり。」
ツツジは反省しているのだ。
あの日、何も出来なかった反省。
……他人事じゃないなぁ。
俺も反省しなきゃな。
「……私はジムリーダーになる予定ですわ。」
「そうだな。 皆知ってる。」
「はい。 ですので、このままでは良くありませんの。」
うん。
……うん?
「私、自分を鍛える為に、
「……は?……いや、は? はぁ!?」
「スクールが夏休みに入ったら、ホウエン地方のジムバッジを集める旅に出ようと思っていますの。」
な、なんだってぇー!!!
「つきましてはソースケ、貴方も一緒に行きませんか?」
「お、俺もか!?」
「お互い、今回の事で井の中の蛙だと言う事は痛感した筈ですわ。 どうでしょう? 夏休み、私とホウエン地方を回りませんか?」
【朗報?】今年の夏休みの自由研究、ジムバッジ集め【マジか】