私の名前は『結城友奈』である   作:紅氷(しょうが味)

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五十二話

◾️

 

 

 

『お邪魔します』

「いらっしゃい。早かったわねー、入って入って」

 

風先輩の家に到着した私たちはインターホンを鳴らしてお邪魔させてもらうことにした。中からはエプロン姿の風先輩が出てくれて招き入れられた私たちはリビングに案内された。

 

「あっ、 友奈先輩に東郷先輩! こんばんはです」

「こんばんは樹ちゃん。お邪魔してます」

「二人とも意外と早く来たわね」

「夏凜ちゃんだー! 夏凜ちゃんも早く来てたんだね」

「まーね。特にやる事なかったから手伝いでもしようかと思って」

「とかなんとか言ってー。楽しみで辛抱たまらなかったんじゃないのかしらぁ〜? サンタ帽も被ってやる気満々だし」

「んなっ!? そ、そそそんなこと……ないしっ! これは樹が一緒に着けようって提案されてそれで」

「とっても似合ってますよね夏凜先輩」

「うん、可愛いね夏凜ちゃん! 樹ちゃんも似合ってて可愛いよー」

「本当ですか! ありがとうこざいます先輩」

「〜〜ッ! あぁもう集中できないから私を弄るなぁー!」

 

顔を真っ赤にした夏凜ちゃんを見て私たちは笑い合う。みんなこの日を楽しみにしてたのがよく分かるほどに場の空気は和んでいてとても安らぐ。

 

「風先輩。お料理の準備私も手伝います」

「ほんと? 助かるわ、じゃあこっちでさっそくお願いしようかしら」

「任せてください」

「行ってらっしゃい東郷さん」

「うん。行ってきます」

「後は園子だけか。何時ぐらいにこれそうなの?」

「用事も予定通りに終わりそうって連絡が来てましたよ。十八時前には着くんじゃないですかね」

「そか。うっし、園子をあっと驚かせる飾り付けをするわよ樹!」

「で、出来るか心配ですけど……はい、頑張りましょう!」

「友奈もこっちに来てやるわよ!」

「うん。じゃあお言葉に甘えてお邪魔します」

 

東郷さんと風先輩はキッチンに、私と樹ちゃん、夏凜ちゃんはリビングのテーブルを囲んで飾り付けの道具を作成していく。

 

「わっ、夏凜ちゃん作るのはやいね〜」

「ふふん。この輪っかを作るのにも随分手慣れたもんだわ」

「幼稚園の飾り付けにもよく使ってましたからね。夏凜さん、お姉ちゃんとどっちが長く作れるかーって勝負したこともありましたよね」

「……あれは『勝負』って言葉にうまく乗せられただけよ」

「でもムカデみたいにずらーって長く作ってすごく盛り上がってましたねぇー」

「へぇ…そんなことがあったんだ。他にも教えて教えて」

「しゃーないわね。なら私が活躍した依頼の──」

「あっ、この写真見てください友奈先輩。夏凜さんが猫まみれになった時のやつなんですけどー」

「あはは! なにこれ夏凜ちゃん凄い慌ててる顔してる。ぷっ、くく…」

「えっ、なにそれ……樹っ!? アンタいつの間にこんなもの撮って──!」

「お姉ちゃんも撮ってましたよ? 後はこれ文化祭の時の衣装でー」

「あーいいなぁ樹ちゃん。その写真私にもくれる?」

「はい、もちろんです」

「本人目の前にしてシェアすんなぁ!」

 

ぐむむ、と膨れっ面になる夏凜ちゃんだけど樹ちゃんを本気で止めないあたり優しいなと思う。写真はもらっちゃうけどね。

 

「あっ、せっかくだし三人で写真撮ろうよ」

「わぁ賛成です! それならここにもう一つ帽子あるので友奈さんもどうぞです」

「ありがとう樹ちゃん。じゃあ端末をカメラモードにしてー……夏凜ちゃんを挟んでスリーショットだ!」

「ふぁ!? あ、ああんた急に何抱きついて……私はまだ撮るとは一言も言ってな──」

「じゃあもう片方は私が失礼しますね! えいっ!」

「樹まで?! ちょぉ! 苦し、二人してくっつきすぎぃ!」

「撮るよ〜ぶい!」

 

私の掛け声でシャッターを押して何枚か写真に収める。ポーズや角度を変えて更にパシャパシャと撮っていく中で逃げないように夏凜ちゃんは真ん中でホールドする。最終的には彼女も乗り気になってくれてたので楽しくできた。

 

「おーい、そこの後輩ズに妹ー。仲睦まじいのは結構だけど終わらせないと間に合わなくなるわよー」

『はーい♪』

「くっ、なんで私がこんな目に……!」

「満更でもないってカオしてるけど?」

「う、うるさい」

「樹ちゃん、じゃあ今度はツーショットね」

「はい! ピース」

「あっ今の樹可愛い。あたしも撮ってる二人を撮ろーっと」

 

ぷいっとそっぽ向く夏凜ちゃんの横でシャッター切る風先輩。私は樹ちゃんと二人で何枚か撮った後に写真を二人に転送した。

 

「綺麗に撮れたね! ありがとう二人とも」

「いえいえ。こちらこそありがとうございます!」

「……ええ」

「ふふ。思い出がまた増えたなぁ……」

「は、恥ずかしいからそんなに撮ったやつマジマジと見ないでよ。風の言った通り早く済ませるわよ二人とも!」

 

照れ隠しなのか話題を切り上げた夏凜ちゃんは飾りの作成に再び取り掛かっていく。確かに横道に逸れてばかりでは時間に間に合わなくなるのも事実なので私も後に続いていくことにした。

 

 

 

 

 

 

談笑を交えて作業をしていき、部屋の飾り付けも程なくして収まりがついていた。

 

「やっほー、おまたせしました乃木園子でーす」

「おっ、来たわね園子」

「いらっしゃいです。園子先輩」

 

外の日も暮れ始めたころ、そのっちさんが到着した。これで勇者部全員集合したね。にこにこと笑みを浮かべながら彼女は着ていた上着のコートを脱いでいく。

 

「ふぃー寒かった寒かった」

「お疲れ様そのっち。用事の方は無事に終わったのかしら?」

「うん。思いの外スムーズにいってよかったんよ。それにしてもワクワクする飾りだねぇ」

「まっ、私にかかればこんなもんよ」

 

部屋の周囲には私たちが作った飾りを夏凜ちゃん監修の元に彩られている。本人も満足げに頷いているところから自信はあるようだ。

 

「ごめんねーみんな。私なにも手伝えなくて〜」

「いいのよそんなこと。乃木にはクリスマスケーキをお願いしちゃったんだから」

「ふっふっふー。期待してくれていいですよぶちょー。何と二段ケーキっすよ二段〜♪ ブイブイ」

「マジか!? 嬉しいけど食べ切れるのかしら……」

「車に待機してもらってるんですけど、もう持ってきますー?」

「あ、それならあたしも行くわ。東郷、テーブルに料理運んでもらってていい?」

「お任せください」

「あっ! 私も手伝うよ東郷さん」

「ありがとう友奈ちゃん。じゃあお願いしちゃおうかな」

「それなら私も手伝います! みなさんでちゃちゃっと終わらせちゃいましょう」

「なら私はテーブルを綺麗にしときましょうかね」

 

ささっと手分けして最終準備に取り掛かる。運ぶときに手渡される料理の数々はとても食欲をそそるいい匂いを漂わせ、飾り付けにも工夫を施しているためか見た目でも楽しめるものとなっていた。

 

「すごーい。流石東郷さんと先輩。美味しそう!」

「ほとんど風先輩が仕込みをおわらせてたから私はちょっとお手伝いしただけよ」

「でも本当に凄いです。私なんて……まだまだ」

「樹ちゃんも料理できるんだ。偉いなぁ……」

「そんなことないです。ついこの間まで物体Xを作っていたわけですし」

「ぶったいえっくす?」

 

なんの料理なのだろうかと思いつつ、いつか頼めば食べさせてもらえるかなぁなんて考えながらお皿をリビングに運んでいく。

 

リビングでは夏凜ちゃんがキメ顔でピカピカになったテーブルを背に満足そうに立っている。いつもの夏凜ちゃんよりもテンション高めで私も嬉しい限りである。

 

「ありがとー夏凜ちゃん。ピカピカだね」

「完璧に仕上げておいたわ。それにしても凄い品数ね……」

「風先輩も張り切って作ってたみたい。でもこの人数なら多分平気じゃないかしら?」

「私、お腹空いてきちゃいました」

「私も私もー!」

 

みんなでパパッと準備を進めてテーブルを華やかにしていき、その頃には先輩とそのっちさんも戻ってきて全員がようやく集まると時間もいい感じになってきていた。

グラスにジュースを注いでみんなが手に持ったところで風先輩は一度頷いてから、

 

「じゃあ始めましょうか。クリスマスパーティーを!」

 

にこやかな笑顔を浮かべながらパーティーの開催を宣言した。

 

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