私の名前は『結城友奈』である   作:紅氷(しょうが味)

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五十三話

◾️

 

 

 

全員がグラスを片手に風先輩に視線を傾ける。先輩もにこやかにジュースの入ったグラスを手にして言葉を紡ぐ。

 

「今年一年の締めくくりとして今日の参加をまずはありがとねみんな。勇者部部員として、そして勇者としてのお務め本当にご苦労様。正直色々なことがありすぎて怒涛の一年──って感じだけどまずはここにこうして集まれたことに感謝しましょうか」

 

先輩はみんなに視線を移しながら自嘲気味に笑う。

 

「……まぁ、色々とあるけど長ったらしい話は嫌われると言うから程々にした方がいいかしらね。年内の活動は今日で最後。年明けはみんなで神社に初詣にいくからそのつもりでいるように! じゃあ──乾杯っ!」

『乾杯ー!』

 

みんなでグラスを掲げてクリスマスパーティーが始まる。私も隣に座る東郷さんとグラスを合わせてから他のみんなに続く。

 

「メリークリスマス、東郷さん」

「め、めりーくりすます。友奈ちゃん……むむ、やっぱり言い慣れないわね」

「あは、東郷さんらしいねー」

「ゆっちーメリクリ! みんなではお初パーティーじゃない〜?」

「ですね。私にとっては何もかもが初めてなのでとっても新鮮ですけど……結城ちゃんには申し訳ないなって思うよ」

「何言ってるのよ。あの友奈ならむしろ喜んでアンタに譲りそうだけどね。なにはともあれ今のアンタはアンタなんだから素直に楽しみなさいよ」

「そうよ友奈。きっと何かいい方法が見つけられるはずだから、今日は二人分以上に楽しんでいきなさい!」

「夏凜ちゃん…風先輩」

「そうですよ友奈先輩! 私も先輩とクリスマスパーティー楽しみにしてたんですから」

「樹ちゃん……ありがとう、みんな」

 

ああ、みんなの優しさが身に染みるのがわかる。本当に私の周りの環境はとっても恵まれているのが理解できる。『友奈』ちゃんはとても幸せ者なんだなと。私のことさえもこうして仲間と認めてくれる。だからちょっとだけ甘えても……いいかな。

 

「ほぉら、友奈。腕によりをかけて作ったんだから堪能しなさいよ〜?」

「ありがとうございます風先輩。いただきます────ん、おいしーですっ!」

「そか! やっぱり美味しく食べてくれた方が作った側からすれば嬉しいものよねー。はむ」

 

満足げに頷き自身も料理に手を伸ばしている。良かった。

 

「あっ……」

「ほら友奈ちゃん。よそ見しながら食べてるからだよ……はい、拭いてあげる」

「ご、ごめんね東郷さん」

「くす、まるで小さな子供みたい。それとも私が食べさせてあげようか?」

「か、からかわないでよー! 自分で食べられるもん」

「あら残念。じゃあこのフォークに刺したお肉はそのっちにあげようかしら?」

「お! わっしーが食べさせてくれるの〜?」

「ぁ……」

 

子供扱いされていると思われて反発した矢先、東郷さんは自分のフォークに刺した料理をそのっちさんの口元に運ぼうと手を動かしていた。その様子を見てちょっとだけ寂しさを覚えた私は今更に前言撤回するには恥ずかしくて出来ず、その光景を眺めることしか出来ないでいた。

 

「──あ〜でも私先約があったんだよねぇ。にぼっしーから食べさせてもらうの」

「え? なんで私が園子に食べさせなきゃ──あっ、ちょっと!?」

 

言うや否やそのっちさんは今まさに食べようとしていた夏凜ちゃんの料理を横取りするようにパクっと口に頬張ってしまった彼女は蕩けるように頰に手を添えて美味しそうに食べていた。

 

「うまうま。フーミン先輩の料理さいこーだね。にぼっしー次はそこのやつが食べたいなぁ」

「なん、ぐっ……しゃーないわね」

「わーい♪ ってことなんでわっしーごめんね〜。そのお役目はゆっちーに譲るとしますよ」

「そのっちさん……」

 

小さくウィンクして夏凜ちゃんから再び食べさせてもらいにいくそのっちさんを他所に、東郷さんはよく分からないといった様子でこちらも私の方に戻ってきてくれた。

 

「断られちゃったわ友奈ちゃん」

「あ、あはは……食べてもいい?」

「うん。あーん」

「あーん」

 

一度顔を見合わせた私たちはどちらからともなく料理が自然と運ばれていった。

 

「仲良いわねー。樹、おねーちゃんが食べさせてあげよっか?」

「い、いいよ私は!」

「がーん!? 樹が反抗期になっちゃったのかしら?!!」

「ちーがーうー!」

 

その横で姉妹が仲良くスキンシップをする中で、食事の時間は緩やかに過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

程よくお腹もいい感じに、風先輩は立ち上がってコホンと一つ咳払いをする。

 

 

「さて、じゃあそろそろケーキとプレゼント交換を始めちゃいましょうか!」

『おー!』

 

パチパチと拍手をして盛り上げつつ風先輩は準備を始めた。私たちも続いて用意を始めていく。

 

「そういえばどうやって交換することになったわけ?」

「それはですね夏凜先輩、私がこれを作ってみました!」

「くじ引きか。まぁ確かにこれなら公平かもね」

「はい。人数分の割り箸にそれぞれ番号が貼ってあるので同じ番号の人と交換…って感じにしました」

「あたしの樹が考えたんだから感謝を込めて引きなさいよぉー」

「なんでアンタがドヤ顔してるのよ……」

「早くやろやろー」

 

くじ引き。一応誰の手に渡っても平気な物を用意したけれど、みんなはどんなのにしたのかな。風先輩は「こういうのは気持ちの問題だからあまり高価すぎるのはナシよ!」って言ってたからどうなるんだろ。

樹ちゃんが準備した番号の振られた割り箸入り紙コップを囲んで私たちはそれぞれ割り箸の先を摘んだ。

 

「じゃあみんな持ったわね……一斉に引くわよー、せーのっ!」

 

風先輩の掛け声に従って私たちは割り箸を引き抜いた。番号は一から三までの二セットずつ。私が引いたのは……、

 

「……三番」

 

目にした数字は三番だった。みんなは? と視線を巡らせてみる。

 

「あたしは二番ね! 二番って誰ー?」

「……私よ、風」

「お、夏凜か。それじゃあプレゼントを進呈しましょー」

「ありがと。じゃあ私からもコレ」

「私は一番でした!」

「一番は私よ樹ちゃん。はい、受け取って」

「ありがとうございます東郷先輩……って重い?!」

「ふふ、今から楽しみだわ♪」

「こ、この中身は一体なんなんでしょうか……?」

 

どうやら組み合わせとしてはこうらしい。だとしたら私の相手は、

 

「ゆっちーは私と交換だねぇ〜。はい、メリークリスマス!」

「うん、ありがとうそのっちさん。メリークリスマス」

 

きらきらと輝いた笑顔と共に私はそのっちさんからプレゼントを受け取る。クリスマス用にラッピングされた物の大きさは中々のものだ。

 

「開けてもいい?」

「いいよー」

「──わぁ。ぬいぐるみ?」

「サンチョの相方のムーチョ! 可愛いよねぇ〜♪ ゆっちーのプレゼントは……おー、手袋だぁ」

「そのっちさんのに比べたらって思いますけど、冬場は冷え込むから丁度いいかなって」

「ありがと〜♪ 確かに買おうか迷ってたからピッタリのプレゼントだね。ムーチョは抱き枕としても使えるからわっしー代わりに使ってくれてもええんよー」

「そ、そんな……せっかくそのっちさんから貰ったんだから思い浮かべるとしたらそのっちさんですよぉ」

「………えへへーそっかそっか〜。それは嬉しいなぁ♪」

 

私があげた白い毛糸で編んだ手袋を装着しながらとても嬉しそうにはにかんでいるそのっちさんは、そのまま東郷さんたちの所にとてとてと歩いていく。

 

「わっしー」

「……? どうしたのそのっち?」

「みてみてわっしー。ゆっちーの初めて(、、、、、、、、)貰っちゃった〜♪」

『ぶふぅー??!?』

「そ、そそそそのっちさん!?」

 

聞いていたみんなが一斉に吹き出し、私は顔が真っ赤に熱くなるのがわかる。急に何を言い出す……というか言い方ぁ!

 

「ゆっちーが初めてプレゼントくれてー……って、わっしー?」

「あぁ!? 東郷の処理能力がオーバーヒートしてるわ!」

「乃木ぃ! アンタもうちょっと言葉を選びなさいー!」

「東郷せんぱーいっ?!」

「あばばばば────ッ」

「あれれ〜? 私何かおかしいこと言ったかなーゆっちー?」

「もーー! そのっちさんー!」

「あははー。あっフーミン先輩、ケーキ食べましょー♪」

「今この状況で言う!?」

 

言動がおかしくなった東郷さんを他所にそのっちさんはマイペースを貫き続けていた。

 

 

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