ゴリラの雄姿を見てくれ。

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オリ主が異世界転生して無双ハーレムする話を書きたくなったので初投稿です


ゴリラ、異世界へ行く

 そのゴリラは、気が付いたら異世界にいた。

 

 もっとも、彼にはここが異世界だとはわからなかったが。

 

 ただ、自分がいるのは見知らぬ土地だということだけがわかった。

 

 彼は自分が何をしていたのか思い返す。

 

 いつも通り、食べるものを探し平地をうろついていたはずだった。

 

 群れの為に食べられるものを探し、平地に出てきた。

 

 そして見事蟻の巣を見つけ、叩き壊してほじくり返そうとしていた。

 

 そのはずだった。

 

 だが、蟻の巣穴を破壊した瞬間に地面が崩れ、落下したのだ。

 

 破壊した蟻の巣穴を落下する際に彼が見たのはまばゆい光。

 

 いや、彼自身もまた光に同化した感覚を覚え、そして意識が遠のき……

 

 見知らぬ土地で目を覚ましたのだ。

 

 彼は周囲を見渡す。

 

 見たことの無い紫色の空。

 

 枯れた木がまばらに立つ荒れた大地。

 

 彼以外の動物は見当たらない。

 

 群れのみんなもいない。

 

 彼は急に心細くなってきた。

 

 ゴリラは繊細な動物だ。

 

 衆人環視の動物園ではストレスから下痢になったり心神喪失したりしてしまうほどだ。

 

 そんな生き物が自分ただ一頭のみ異世界に放り込まれたら……不安に心を支配され、最早蟻の巣どころではない。

 

 だが、彼はかしこく、勇敢だった。

 

 ただ一人震えていてもどうにもならないことがわかっていた。

 

 彼はこの土地を探索することにした。

 

 ナックルウォーキングで素早く駆けだした。

 

 しかし、行けども行けども荒れた大地が続く。

 

 空はどこまでも薄暗く禍々しい紫色だった。

 

 しかし彼の心は折れなかった。

 

 この世に無限に続くものなどないことを彼は知っていた。

 

 木々が生い茂る森林にも限りがあり、長大な川にも果てというものは必ずある。

 

 ならば、この荒れた大地にも禍々しい空にも果てがあるのが道理であり、その先には美しい森や湖があるかもしれない。

 

 しかし、視界に変化は見られない。

 

 例え彼の期待通りに美しい緑や水場があったとしても、力尽きる前に辿りつけなければ意味が無い。

 

 彼は駆けながら願った。

 

 もっと速く。

 

 もっと速く大地を駆ける力が欲しいと。

 

 願いが天に届いたのか、彼は四肢に力が漲るのを感じた。

 

 彼は加速した。

 

 それでも景色に変化は見えぬ。

 

 ならば、もっと速く駆ければよい。

 

 ならば、もっと加速すればよい。

 

 彼は加速を繰り返し、遂には音よりも速く、衝撃波を伴いながら大地を駆けるゴリラになった。

 

 その時、視界の端に何かが映った。

 

 彼は急減速した。

 

 摩擦で火花が散り、炎が上がった。

 

 彼はその炎を両の拳にエンチャントした。

 

 不思議と熱さはなく、彼自身も炎を宿すことになんの不自然を感じることもなく受け入れることができた。

 

 視界に映ったのは三人組の人間の女だった。

 

 彼も多少は人間を知っているつもりだった。

 

 というのも、動物学者たちが彼らの生体を調べるために定期的に彼らを観察しにきていたからだ。

 

 しかし、目の前にいる人間たちは彼が知る人間の格好とは些か違っていた。

 

 目の前の人間たちは見たことも無い衣服を纏っていたのだ。

 

 やたらと固くて重そうなゴテゴテしたものを纏った女。

 

 目に悪そうな真っピンクのローブを着た女。

 

 人間の雄ならば欲情してしまいそうな、面積の少ない布しか身につけていない女。

 

 彼は見たことの無い格好の人間たちに興味を持った。

 

 もしかしたら、時折彼らを観察しにくる人間のようにバナナとかをくれるかもしれない、とも思いゆっくり歩み寄った。

 

「うわ、勇者様!なんかこっち来たよ!」

 

「おっおおおおおお落ちちつ着いて!ててて敵とは限らないでひょ!」

 

「くそっ、せっかくドラゴンから逃げおおせたってのに!これだから魔界は!」

 

 人間たちが何か言いながらこっちに向かってくる。

 

 彼は人間たちの攻撃的な感情を感じ取った。

 

 なんということだ。

 

 彼自身は彼女たちと敵対する意志など無いのに。

 

 彼は咄嗟の機転で二本の後ろ脚で立ち、胸を叩いた。

 

 争いをやめてくれ!自分は敵じゃない!

 

 そう訴えた。

 

 ぱこぱこぱこぱこ!

 

 間の抜けた乾いた音が響き、人間の女たちも毒毛を抜かれたのか間の抜けた貌を見せた。

 

「え、なにこの生き物……」

 

「魔界のモンスターじゃないのか?」

 

「そ、そんな不用意に近付いて危なくないですか…?」

 

 人間の女たちはおそるおそる彼に近付いてくる。

 

 彼は地面に座り、彼女たちが警戒を解くのを待つことにした。

 

「て、敵じゃないのか?」

 

「あの手、熱くないのかな?」

 

「けっこうイケメンじゃないですか…?」

 

 彼が彼女たちの格好を見たことがないように、彼女たちも彼の存在を知らないようだ。

 

 彼女たちがゴリラをまじまじと眺めていると、巨大な影が彼らを覆った。

 

「しまっ……!」

 

「ドラゴン!もう追いついてきたのか!?」

 

 女たちも驚愕したが、ゴリラの驚愕はそれ以上であった。

 

 このような巨大な生き物は見たことが無い。

 

 サイや象よりも遥かに大きい。

 

 アフリカの地にいるオオトカゲに似ている。

 

 しかしその躰はそれを何十倍にもしたような巨躯だ。

 

 その巨大生物は敵意を剥き出しにしてゴリラたちに襲いかかってきた。

 

「やばい!に、にげ」

 

「この距離じゃ逃げきれない!闘うしかねえ!」

 

 女たたちが闘う覚悟を決め武器を構える。

 

 彼は彼女たちのその意志を感じ取った。

 

 彼は彼女たちの前に飛び出し、巨大な生き物の前に立ち塞がる。

 

「な、なに?」

 

「私たちを守ってくれるんですか…!?」

 

 彼とて雄である。

 

 人間とて雌は雌。

 

 自分に襲いかかる敵との闘争を雌に任せるなど雄の恥である。

 

 彼は地面を叩き威嚇した。

 

 大地が割れ、岩盤がめくり返る。

 

 しかし敵も怯まず咆哮を返してくる。

 

 やる気だ。

 

 ならば闘うしかない。

 

 彼は炎を宿した拳をふりかぶり、殴りかかった。

 

 大地を割るゴリラの一撃である。

 

 敵は巨体に似合わぬ素早い動きでそれを回避した。

 

 敵は回避のしざま、長い尾をしならせ、振るった。

 

 圧倒的質量がゴリラを襲う!

 

 だがゴリラも素早い。

 

 敵の一撃をかいくぐり、一瞬にして敵の懐に入り込んだ。

 

 その勢いのままに胴体を殴りつける。

 

 その超怪力の一撃に、敵の巨体が揺れる。

 

 敵が苦悶の声を上げる。

 

 更に殴る。

 

 殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。

 

 炎を纏った彼の拳は、連打を重ねるたびに風を纏い、激しい爆風となり敵の鱗を爆砕し、その衝撃を体内に伝播させた。

 

 彼の猛連打に内臓を破壊し尽くされた敵は血反吐を吐き地に伏した。

 

 絶命したようだ。

 

 人間の女たちは彼の闘争に気圧されたが、やがて歓声を上げた。

 

「すごい!ドラゴンを殴り倒すなんて!」

 

「滅茶苦茶つえーじゃねーか!」

 

「イケメン!」

 

 彼女たちは彼を誉めたたえながら駆けよってきた。

 

 彼に人間の言葉など理解できないが、敵を打ち倒した彼に友好的なのはわかった。 

 

 ゴテゴテした格好の女が彼の正面に立つ。

 

「私は勇者のオーメル。貴方は?」

 

 彼は小さく「ウホ」と鳴いた。

 

「そう、ウホって言うのね。後ろの二人は私の仲間。武術家のバレーナと魔術師のミラージュ」

 

 ゴテゴテした女の後ろ、布面積の小さい女と真ッピンクのローブの女も彼に歩み寄って笑顔を見せた。

 

「私たちは魔王を倒しに魔界までやってきたの」

 

 そう言ってゴテゴテした格好の女はゴリラの瞳を覗きこんだ。女の目には強い意志が宿っていた。

 

「世界を救うために、貴方の力を貸してほしい」

 

 布面積の小さい女と真ッピンクのローブの女も彼を見つめる。

 

 何を言っているかは知らないが、その瞳には彼に助けを求める意志があるのがわかった。

 

 ならば。

 

 助けを求める雌の声に応えなければ雄が廃るというものである。

 

 ゴリラは立ちあがり、俺に任せろと言わんばかりに胸を叩いた。

 

 ぱこぱこぱこぱこぱこぱこ!

 

 ゴリラが見せた侠気に、女たちも相好を崩した。

 

 今、異世界を救うための、ゴリラの闘争が始まる!

 

 

 


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