そんなわけで書いちゃったので供養します。
その人は、いつだって俺を支えてくれていた。
俺がくじけそうになった時だって、そばにいて笑いかけてくれた。
いつも認識阻害に特化した魔術礼装を着ていたけれど、それでも感情が出やすいってことがはよくわかる人だった。
もしかしたら感情が出すぎるから認識阻害なのか、なんて邪推してみたりもしてた。
真剣に俺が背負わされたものを変わろうかと提案してくれた。後でマスター適性があってもレイシフト適性がまるでない、って聞かされた時は答えを間違えなくてよかったと心から思った。
今俺が着てる魔術礼装だって、彼女の提案がいくらかあったこともダヴィンチちゃんから聞かされた。オルガマリー所長から仕事を任されて以来、まるで休まないロマニを気絶させて無理やり休ませているところを見た。
何度かロマニたちに変わって俺たちの指揮を取ってくれたりもした。
怒っているときだけは口調が崩れることだって、本人は気づいてないらしいけど、みんな知ってた。
いるだけで明るい空気が生まれる…そんな人だった。
「なんで、ここに…」
けれど。今その人は柄にもなく真剣な様子で俺の前に立っている。
いつもの認識阻害のローブを羽織って、レイシフトしてきたロマニの前でゲーティアに立ち向かっている。
「なんで君がここにいるんだ!」
『なっ!? なんで君がそこに?』
ロマニが焦ったような、怒ったような声で叫んだ。ダヴィンチちゃんが通信越しに疑問を放った。
それもそうだ。ここは特異点なのだ。レイシフト適性がなければそれこそ奇跡でも起こらない限りここには現れることなんてできないはずなのに。どうやってここに来たのか、まるで分らない。
「…そう、だね。こう言おうかな」
誰に言うでもなく、一度そう呟いてから、その人は言ってのけた。
「余計なお世話を焼きに来たよ」
いつものように、軽い声だった。いつか俺の部屋の掃除に来た時とおんなじ響きだった。
ローブがはためいて、その人を大きく見せていた。なのに背中は小さくて、とてつもなく遠くにあった。
「貴様、何者だ」
ゲーティアが重々しい声を響かせて問う。
その人は少し悩んだ様子だったけれど、それでも確かに答えていた。
「□▽♯※……かつての名前だけどね」
その名前に困惑したことを覚えている。その名前は俺達がよく知っている名前で、職員全員がとても驚いていた。
馬鹿な、ありえない…! ってゲーティアが零した声が遠くに聞こえた。実際はそこまで離れていないはずだったのに。
「じゃあ始めよう、終わりを。全部、きれいに終わらせよう」
その人はそう呟いて、動揺していたゲーティアに……ではなく、すぐ後ろで何が何だかわからない様子だったロマニに向けて、一発の弾丸を埋め込んだ。
突然、本当に突拍子もないことが起こりすぎて俺の頭はもう処理の限界を迎えていた。
ロマニも、ダヴィンチちゃんも。それこそゲーティアだって何があったのかわからないはずだった。
「
彼女がそう言って魔術回路を起動させた。そんなことが傍目から、魔術初心者でもわかるくらいに多くの魔力だった。
変化なんて何も起きていなかった。それなのに彼女はロマニに向けていた顔をまたゲーティアに戻そうとして、その途中で彼女のローブが吹き飛んだ。魔力の奔流に負けたのか弾けるようにして文字通りに吹き飛んだんだ。
一瞬だけだったけれど、顔を見た。その顔はロマニとまったく同じ顔で、ロマニよりも真剣な顔をしていた。
「一世一代、最後の魔術だ」
バチバチバチ、と圧縮され始めた魔力が小さくスパークしている。
それでもその人は更に圧縮率を上げ続ける。それこそ、まるでサーヴァントの宝具のように。
「これこそが、彼の者の"人間らしい"逸話だ。宝具、再現『
それはあり得ないことだった。英霊の逸話である宝具。それを転生体でもなんでもないただの人の身で完全に再現するなんて。あり得ないことであるはずだった。あり得てはいけないことだった。
それだというのに、その身は英霊であると世界をだまし、そして無理やり宝具へと昇華された代償としてそれこそ血肉が崩れ落ちるほどの反動がその人を襲っていた。
実際にその人は血を噴いていた。それだというのに、その人は一切止めることはなかった。
「そんな…。まさかそんなッ! 君はッ、わかっているのか!?」
「うん、もちろん。言ったでしょ? "余計なお世話を焼きに来た"って。だから、これはわたしの自己満足」
何を言ってるのか、わからなかった。けれどその人の体が消えかかっていることだけはわかった。取り返しのつかないようなことをされたことだってわかった。
そうして、初めて知った。消えかかっているその人を見て初めて知ったんだ。その人は女の人で、明るい赤銅色の色の髪をしていて、サイドテールにしていることを。オレンジ色の瞳をしていることを。俺と、さして変わらないような年齢の見た目をしていることを。
何も、知らなかった。俺はただ彼女に自分の悩みを話しているだけだった。彼女は人との壁を取り払うのが上手くて、ついつい話していることが多かった。だけど、彼女の話は聞いたことがなかった。
「じゃあね、ロマニ。もう少し"人"生を楽しんでおいで」
ふわり、と最後に彼女は笑って空に溶けた。
それは本当に余計なお世話だった。それは本当になくてもいいことだったどころか、無い方がいいことだった。それなのに彼女は自己満足の為にそれを実行した。
ゲーティアの騒ぐ声がどうしようもなく遠くに聞こえた。ロマニが立ち尽くす姿が頭から追いやられた。
けれど、空に溶けた一粒が俺の手の上に落ちてきて、現実を見据えることができた。彼女は消えたんだ。俺のするべきことはゲーティアとの決着だってこともわかった。……いや、彼女が教えてくれた。
「ゲーティア……決着をつけよう」
旅の中で絆を紡いできたサーヴァント達が俺にはいる。
「この身に宿る令呪全てを持ってサーヴァントに命ずる……この戦いに、勝て!!」
この場に集まってくれたサーヴァント達、それぞれの返事が飛んできて、それと同時に各々の宝具が解放される。宝具が魔神柱を斬り裂き、撃ちぬき、潰し、刺し殺す。
残ったのはゲーティアと俺、ロマニだけだ。
「ロマニ、先にカルデアに帰っておいて。俺は……やることがあるから」
「………わかったよ、藤丸君。キミは絶対に、帰ってきてね」
ロマニの言葉に頷いて返して、俺はゲーティアを見据える。ゲーティアも最後に残った俺を隙なく視て―――。
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結果だけを見れば、カルデアに帰ってこなかったのは一人だけだった。始めこそ全員で嘆いた。日に日に薄れていく彼女の名前を書き残そうとして、できなくて策を練っていた。少しでも彼女のことを忘れないためにみんなで一冊の英雄譚を作り上げた。そうして彼女を押し上げようとした。けれど、もうそうすることもできない状況に今はなってしまっていた。
人理焼却に続き、異聞帯が当時Aチームに所属していた者たちによって引き起こされてしまったのだ。
だから、俺は今日も召喚して
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
現れたのは、ローブで身を隠したサーヴァントだった。そのローブの色や形、はためき方が否応なしに彼女のことを思い出させて、少しだけ気分が悪くなる。
「サーヴァント、アヴェンジャー。真名はありませんがよろしくお願いします……マスター」
「え……その声………」
「おや? どうやらこの世界のわたしは目的を達成できたようですね。まぁ、わたしはただの運命への復讐者ですので悪しからず」
この世界の、わたし? 何を言っているのかはわからないが、とりあえず彼女は俺の知っている彼女だってことだけならわかる。
だって、目の前にいる彼女はとても挙動不審で、俺に顔を合わせようとしていないことがまるわかりなのだ。本当に、彼女はローブがあってもわかりやすい。
「これからもよろしく、アヴェンジャー」
「……うん。こっちこそよろしくね、
>主人公
藤丸君。みんな大好きなぐだ男。
>認識阻害に特化した魔術礼装
タイムパラドックス防止。
>レイシフト適性がない
そもそも人間じゃないから人間用のじゃ測れない。
>□▽#※
藤丸リッカ(♀)つまりぐだ子。ただし聖杯によってできた人形にコピーの人格を入れただけの存在。ロマニの生存のためのやり直しを望み、結果としていくつもの並行世界を経験することになった。
>藤丸♀の魔術回路
起源が共有。っていう独自設定。
>なんでロマニの姿してんの?
撃ち込んだ弾丸が起源弾で、強制的に自分との境界をなくしたから足して2で割った感じになってる。
>"人"生
まぁ、うん。あそこクリアした人ならわかって欲しい。
>なんで召喚されてんの?
共有の結果、宝具使用者の肉体と名前、本来ならロマニの中にあったはずのソロモンとしての記憶なんかが世界から消えてそれ以外が残った。それとスタッフ一同の藤丸♀の英霊視、英雄譚の登場人物として英霊に仕立て上げられた。それとどっかの並行世界で抑止と契約してるとこもありそう。
>アヴェンジャー
あくまで成功したのはこの世界だけだから、まとめられた結果アヴェンジャーとして顕現した。多分この世界の藤丸♀単体で呼んだらルーラーになれると思う。
ただ、あくまでデフォルトはアヴェンジャー。