隻狼ロール SAO縛りRTA   作:腹筋崩壊二郎

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2日目にいきなりこの小説が伸び出して、最終的に日間ランキング2位のお気に入り登録者様が2000人を突破評価バー人生初の真っ赤っかを達成した筆者の顔


おま○け その①

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 時は令和四年。一人の天才によって仮想現実技術は画期的な進化を遂げ、その勢いは日の本全てを包み込んでいた。熱狂の渦は勢い衰えず、天才の全ての技術を結集した一つの作品が世に出回ることとなる。

 しかしそれは、やがて仮想現実空間に降り立つ人々に強大な試練として降りかかる、誠に恐ろしき厄災の種だったのだ……(語り手:菅生 隆之)

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 鼠のアルゴ。それはβテストプレイヤーならば一度は聞いた事がある名だった。

 使用する武器は超マイナー武器のクロー、ステータスは敏捷極振りの、一見初心者かと見間違うかのような馬鹿らしいビルド。しかし彼女はそのふざけたような構成で名を上げていったのだ。

 剣士としてではなく、情報屋として。

 

 情報屋の仕事においてなによりも大切なのは、虚偽のない正しい情報を素早く仕入れることだ。正式版がリリースされた当日も、アルゴはβテスト時代の情報のみを過信することはない。

 βテスト時代に話したNPCとの会話、クエスト発生条件、その他イベントがどれだけ正式版に引き継がれているか、その確認で初日を終えようと計画していた。

 

 必要とあらば他人との会話の中でも必要な情報を抜き取る。誰が言ったか、「アルゴと五分雑談すると100コル分のネタを奪われる」。

 しかしそれで上手く情報を得ることができていたあたり、彼女は口が上手いだけでなく、人を見る目にも才能があったのだろう。

 こと情報戦において、アルゴを上回る者は開発者を除いていない。アルゴ自身もそれだけ自分の仕事に自信を持っていた。

 

 そんな彼女が目をつけた人物がいた。それは正式版アインクラッドで新たに得た情報をまとめ、一息ついていた時のこと。

 

 その男は、SAOにログインしている男性の中では比較的小柄な体格だった。160cm半ばといったところだろうか。

 少し伸ばされた白髪混じりの髪は後ろで纏められ、ある程度切り揃えられている。

 そして一際目を惹く首に巻かれている白い布は、この街の限定販売の《白麻の襟巻き》だったはずだ。加えて腰に吊るしてある武器は《ブロンズシミター》。玄人向きの、はじまりの街で手に入る武器の中で攻撃力が最も高いカテゴリーのものだ。

 

 

 

 和。

 

 それが彼の第一印象だった。

 老け顔ともいえる渋い顔は女性だけでなく男性にも人気がありそうな顔だ。身長なども含めてかなり手の込んだアバターだ。古い時代の日本人の平均身長は今よりも少し低かったと聞く。

 

 

 しばらくアルゴは彼を観察した結果、彼がβテストプレイヤーだと確信した。アバター作成はかなり複雑な技術を要求される上、彼の装備は初心者では見つけるのが困難な代物ばかりだ。

 何より、彼のその一切迷いのない動きを見れば、彼がこの街について知り尽くしているという事がすぐに分かった。

 

 多くのプレイヤーが街の外へと繰り出している中で、彼は迷わず街中を散策している。もしかすると彼も自分と同じようにこの街で情報を集めているのかもしれない。

 情報屋としての対抗心からか、はたまた単純な彼に対する興味からか。アルゴは彼の後を尾ける事にした。

 

 

 結論から言えば、アルゴの推測は全て正しかったといえるだろう。男が巡っていた建物には、βテスト時代はその全てにクエストを受注できるNPCが配置されていた。

 すなわち彼は元βテストプレイヤーで、この正式版で情報を集めるため、NPCの配置などの確認を行っていたのだろう。

 恐らく同じ稼業のプレイヤーの、しかもあの様子からかなりの手練れだ。アルゴの心を占めていたのは僅かな焦燥感とーーーー大きな感心だった。

 

 クエスト受注と達成報告、そしてそのルート構築など、彼の動きには一切の無駄がない。恐らくβテストが終了してからも、どこでどのように動けば最短ルートで行動することができるか、綿密な計算が行われていたのだろう。

 実際にプレイできない期間にそのルートを練り上げたと考えるに、彼のこのゲームに対する真摯な態度が見て取れた。

 

 これは自分も負けていられないな。アルゴがそう意気込んだ時。

 

 

「………………おい」

 

 その底冷えするような男の低い声が自分に向けられていると知った時、アルゴは思わず震え上がった。

 眉間に皺を寄せた男の瞳は、確かにアルゴをまっすぐと見据えていたのだ。

 

 どうすべきか。アルゴはしばし考え、ここで逃げて変な噂を立てられては堪ったもんじゃないと、潔く木の陰から彼の前に姿を現した。

 

 

「………………尾けていたのか」

「ゴメンゴメン。別に悪気があった訳じゃないんダ。ただ単にオニーサンの動きが偶然目に止まっちまってサ」

「………………」

「いやほんとすみませんでしたマジで謝るから怒らないでください」

 

 思わず素の声で謝ってしまうほど、彼の剣幕は恐ろしいものだった。眉間にはこれでもかと皺が寄せられており、その渋い顔も相まって彼の背後に巨大な龍が見えた。

 

「………………何故、俺の後を尾けていた」

「……俺っち、情報屋なんだヨ。ベータ版の情報と正式版を照らし合わせようとしてたのサ。そのルート上にオニーサンがいてね。かなり慣れてるような動きが少し気になって後を尾けてたんダ」

「………………そうか」

 

 剣気が緩まった。許されたようだ。

 

「………………すまぬ。少し、気を張りすぎた」

「こっちこそゴメンナ。一言かけるべきだったヨ」

「………………」

「………………」

「………………」

「えっと……俺っちは情報屋。鼠のアルゴだヨ。オニーサンの名前は?」

「………………言えぬ」

 

 いやなんでだよ。アルゴは思い切りツッコミたかった。だがまあ、確かに状況を見ればストーカー紛いのプレイヤーに名乗りを上げないのは普通かと考え、一先ずは彼の名を聞き出すのは諦めることにした。

 あと彼の容姿と言葉遣いが相まって、いよいよ目の前にいる男が戦国時代に生きる侍のように見えてきた。

 

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

 

 何とも言えぬ沈黙が2人を包む。なんか言えよと思う矢先、口を開いたのは男の方だった。

 

「………………其方は」

「ン?」

「…………鼠殿は、この街で何をしていた」

「え?」

「…………何か、俺を尾ける以外に、していた事はないのか」

 

 なんでストーカー相手に今そんなことを聞くのだろう。アルゴは彼の突然の話題の切り替えにやや困惑し、しかし彼のほんの少し申し訳なさそうな顔を見てなんとなく察した。

 彼は別に怒ってなどいない。さっさと立ち去れば済むところを、今もこうして中途半端な空気を和ませようと、話題を振ってくれたのだ。

 

 仮想世界ではリアルの話はNGという暗黙の了解があるが、彼はあまりリアルでも人と話さないのかもしれない。だから人との距離を測りかねて、自分の事を何故か尾けてくるプレイヤーに対しても怒りや苛立ちより不安が大きかったのだろう。

 要するに根は悪い人ではないのだ。口下手なだけで。コミュ障なだけで。

 

 アルゴは彼の問いに答えることにした。

 

「うーん、さっき言ったこと以外だと……お使いクエストをいくつか終わらせてきたゾ。と言っても簡単なやつだけどナ」

「………………」

「オニーサンもさっきいくつかクエスト、終わらせてたダロ?あれとは別のやつサ」

「!そ、そうか…………」

 

 何故だか、クエストの話題を振ったその瞬間だけ彼の眉間の皺が取れた気がした。

 

「ん?……あ、そ、そうだ。勝手に尾けてたお詫びに、クエストペーパーやるヨ。受け取ってクレ」

「…………要らぬ」

「そうカ?別にコルを取ったりはしないゾ?」

「…………要らぬ」

「そ、そうカ」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

 

 

 

 

 

 

 会  話  が  続  か  ね  ぇ  。

 

 

 だが、途切れ途切れの会話の途中で僅かに彼の眉間の皺が取れる場面があった。押し付けとはいえ親切に対して「要らぬ」という言葉選びは正直どうかとは思ったが、別段悪気があってその言葉を選んでいるようには見えなかった。

 何というか、かわいいヤツだと思った。ただ人と話すのが少し苦手なだけの、愛想を振りまくのが苦手の不器用な男だと思った。

 

 自然とアルゴは頬を緩めた。

 

「ぷっ……にゃははは!」

「………………どうした?」

「にゃははは……いや、オニーサン結構面白いね」

「………………顔に何か、付いていたか」

「違う違う。雰囲気っていうかなんていうか……とにかくオニーサンのこと、気に入ったヨ」

 

 正式版のリリース初日。

 単純作業のみで終わらせる予定だったこの日、アルゴは不思議な人物との出会いを果たした。

 

「フレンド登録、しないカ?俺っちも情報屋だから、お互い連絡とか取れた方が便利だロ?」

「!そう、だな」

 

 また目を見開いた。ついでに皺も取れた。たまに来るこの変な反応が面白い人物だなぁとアルゴは感じた。

 この出会いはなんというか、変な出会いだ。熟練の動きを見せる男をストーカー紛いの尾行で後を尾け、バレたと思ったらその男がものすごいコミュ障で。なんとか会話を繋げたら彼の不器用さが滑稽に見えて。

 だが彼のそれは決して人を不愉快にさせるようなものではなかった。

 

「セキロ?変な名前だナ」

「………………隻腕の隻に、狼と書く」

「ふーん…………」

「………………好きなように呼べ」

「じゃあオオカミで」

「!あ、ああ。それでいい」

 

 初日からこの出会いがあったのは運が良かったかもしれない。これはSAO正式版、非常に面白い出会いがたくさんありそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 だと信じていたのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

『......以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る』

 

 こんなことに、なるなんて。

 

 

 

 初めは信じられなかった。

 何を言っているのだ。

 何が起こっているのだ。

 何故急にこんな場所に呼び出されたのか。

 何故茅場はあんな事を急に言い出したのか。

 なんでログアウトできないの。

 なんで帰れないの。

 なんでこんな場所に閉じ込められないといけないの。

 私が何をしたの。

 どうして私達なの。

 私は早く帰りたいの。

 

 茅場から告げられた残酷な真実を信じられない一方で、どこか酷く冷静に茅場の言葉を呑み込んでいる自分がいた。

 物理学者を親に持つアルゴならば知っている。マイクロ波は分子振動を拡大するものであり、高出力によって生み出される熱エネルギーは一瞬で眼球を白濁させるほどに強烈だと。

 それが人1人の脳味噌を焼き切るくらい容易であるということに。

 

 誰一人、この世界で生き返っていないという事に。

 

 

 

 はじまりの街には黒鉄宮という建物がある。そこにβテスト時代にはなかった《生命の碑》があった。

 生命の碑にはアインクラッドにいる全てのプレイヤーの名前が刻まれていた。

 

 そして、斜線で掻き消されたプレイヤーの数は、茅場が先程言っていた永久退場のプレイヤー数と一致した。

 

 これが偶然と言えるだろうか。

 茅場が悪ふざけでプレイヤーのログアウトボタンを消去しただけのドッキリだと断言できるだろうか。

 わからない。わからない。わからない。

 

 人は抱える希望が大きい程、絶望に陥った時の落差が大きくなる。不思議な出会いを果たして気分が良かったアルゴは、その瞬間に絶望の底に叩き落とされた。

 

 

「……確かめないと」

 

 そうだ。私は情報屋なのだから。早くプレイヤーのみんなに安心を与えてあげないと。

 こんなの茅場の悪質な悪戯に決まっている。

 だってこんな事をする必要がない。

 したところで何の意味もない。

 そうだ。ログアウトすればちゃんと、茅場の言っていることが嘘だと証明できる。

 

 ログアウトができない。だったらーーー。

 

「はじまりの街を出た南西には……展望台が……」

 

 アインクラッドの外を一望できる展望台。手摺は低かった。

 アルゴの脚は自然と動いていた。

 虚ろな瞳のままふらふらと覚束ない足取りで、それでもその脚は迷うことなく真っ直ぐと展望台へとーーーー

 

 

 

 

 

 

「待て」

 

 その肩を掴む手があった。

 

「……え?」

「待てと言っている」

 

 その顔に見覚えがあった。

 

「なんで…………顔……変わってないの?それに、私……全然違うのに……?」

「どうでもいい」

 

 有無を言わせぬ彼のその言葉には、出会った時のような確かな力があった。

 よく見れば彼はかなり息が上がっているようで、システムで設定されているスタミナゲージをほぼ全て使い切っている状態だった。

 茅場の話のあと、ずっと走り回っていたのだろうか。だとしたら何のために走って……?

 

「其方を探していた」

「え……?」

 

 彼はそう言って、おもむろにメニュー画面を開いた。そして出会った時のような迷いのない素早い手捌きで紙のようなアイテムを7枚、実体化してみせた。

 

「それは……クエストペーパー?」

「7枚しかないが、買え。1枚10コルでいい」

「え、でも、え、なんで?」

「其方は情報屋なのだろう」

 

 だからだ、そう言って彼は有無を言わせぬと言った態度でアルゴにクエストペーパーを押し付けた。

 

「なんで、私に、でも、茅場が、ログアウトが、え?」

「気を確かに持て」

「わかんないよ。だって私、こんな事になるなんて、なんで、どうして、なんで!?」

 

 両肩を掴まれ、正面からその鋭い目を向けられる。

 そこから目を背けることができなかった。

 

「あの男…………まやかしを言っているとは思えぬ」

「」

「碑に刻まれた斜線の数が、死者の数と一致していた」

 

 知っている。そんなこと、既に確かめた。

 

「この城から出ることは叶わぬ」

「……うん」

「あの男の言うことが真であるやもしれぬ」

「……うん」

「ならばそれが虚偽であると分からぬ限り、誰も死んではならん」

「…………うん」

 

 そうだ。確かに茅場が言ったことが本当であるという確証はないが、『嘘である』という確証が何一つない。寧ろ、アルゴは何も知らない他のプレイヤーよりも確実に、茅場の言葉が真実だと見抜いていた。だというのに、取ろうとした手段はーーーーーー

 

「其方は絶対に死んではならん」

 

 その言葉が、アルゴの、私の心に深く突き刺さった。

 

 

「俺の、この紙を買え。其方がこれを他の者に広めるのだ。死ぬべきでない者を、死なせてはならん。あの狂人の言葉が虚偽であると証明されるその日まで、其方は死んではならぬ」

「……そう、だよ、ナ。死んでる暇なんて、まだ無いよナ」

 

 気がつけば、不自然な震えは止まっていた。虚ろだった瞳に微かな光が灯っていた。

 

「俺は情報屋ではない。ツテも何もない。だが其方という巨大なツテがある」

「俺っちが、これをプレイヤーに広めれば……誰も死なずに済むのカ?」

「死ぬ」

 

 その言葉は確かな重みがあった。

 

「其方が、俺がいくら呼び止めたとて、助からぬ命はある」

「…………」

「だが、其方と俺が動けば、助かる命がある」

 

 そうだ。全てを救うのは不可能だ。それは人間のなせる技ではない。しかし救うことができる命がある。放っておけば死んでしまう命がある。

 

 だからこそ。為せる事に限界がある人間だからこそ。

 

 

「為すべき事を、為すのです」

 

 

 為すべきことがある。

 

 

 

 

 

 

 

 狼の提案で、鼠はその日は早めに休息をとる事にした。そして宿屋にて、2人はある契りを交わした。

 

 2人で協力してアインクラッド内に囚われとなったプレイヤー達の救済となる本を出版すること。

 その際、狼は極力立場を考えずに自由に動くことができる協力者として活動するために、その名前は伏せておくこと。

 情報の売買は必ず公平に執り行うこと。

 個人の感情に囚われて人を命の危険に曝さないこと。

 そのためにも。

 

「為すべきことを為す。今はやるしか、ナイよな」

 

 死んでなんかやるものか。

 

 

 鼠と狼の戦いは、今始まったばかりなのだから。




え、えっと。
さ、最近トマトが不味いやつが多くて残念だなぁ(震え声)
な、なんでだろうなぁ。

とにかく、名が前に比べて売れるようになってしまった以上、これからも失踪しないように頑張ります。週一の仮面ライダーみたいな感じでのんびりペースなので気長にお付き合いください。

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