10数年前に書いて投稿せず閉まっていたものを片付けの際に偶然発掘したものをちょいちょい修正して書き上げました。
時系列は3になるので2までしかやってない方やソシャゲのRしかやったことない方は設定や世界観に大きな食い違いが出てくるので観覧注意っス。
それでも見たいんじゃ! と言う方はどうぞ観覧くださいな^^
──────俺は、英雄なんかじゃないよ。
「よし。俺たちはこれから空中城へ突入する事になる。準備はいいか、アレク」
「はい! いつでもいけます、エルクさん!」
頭に炎のような赤のバンダナを巻き、オレンジのマントをなびかせた青年が目の前の少年─────アレクにそう問いかける。
問いかけにアレクは頷いて笑ってみせた。
側で彼がハンターとなり各地を旅して得た仲間達も同じように頷いていた。
それを確認した青年──────エルクも頷いて返し、はるか上空を見上げ浮かんでいる黒く禍々しい物体を視界に入れた。
あれはロマリア空中城───世界最大の大国『ロマリア』の王が、世界を闇で染めし『闇黒の支配者』とその配下であった魔物達に唆されて建造され、世界の大半を崩壊へと導いた災厄の象徴である。
かつてエルクは五大精霊に認められし勇者アークと聖母ククル、そして仲間達と共に、ロマリア王を唆していた闇黒の支配者と戦い、アークとククルの犠牲を持って闇黒の支配者を封印し、空中城をロマリア─────現在はラグナークと呼ばれているこの地に封印する事に成功したのである。
しかし、その封印は『アカデミー』と呼ばれる組織の手によって解かれてしまった。
アカデミーの目的は空中城内部に封印されている闇黒の支配者。
彼らは闇黒の支配者を無尽蔵のエネルギー体と計測し、それを利用すれば世界を再生できると信じて空中城を復活させてしまったのである。
それを阻止するため、エルクは空中城と供にラグナークの地に放棄されていたかつての旅でも使っていた飛行船『ヒエン』を回収修理し、アレク達と供に空中城へと乗り込もうとしていた。
思い緊張感が張り詰める。
それを断ち切るように声をあげたのはアレクの幼馴染にして、自称アイテムマスターのルッツだ。
「アカデミーの野望を阻止して世界を救ったら、俺も英雄の仲間入りかぁ。くぅ〜、燃えるぜぇ!」
彼の言葉にアレク達は苦笑いになる。
そんな中、妙なテンションのルッツに
「アレクならともかく、アンタが英雄とか似合わなすぎでしょ。冗談は顔だけにしときな」
呆れた顔で言い放ったのは赤い髪の少女。
彼女の名はシェリル。
荒廃の最も酷いと言われている街『ギスレム』で出会った凄腕の銃使いだ。
「うわぁ……シェリルさん、バッサリ言い過ぎですよ。ね、マーシアさん、ヴェルハルトさん?」
「シェリルだから仕方ないわよ、テオ」
「……くだらんな」
シェリルの言葉に槍を携えた────テオの近くいる魔道士の少女と大剣を携えた少年────マーシアとヴェルハルトに問いかけると、それぞれの反応が返ってきた。
そんな彼らを他所に
「にゃ、にゃにをぉぉぉぉぉ!!!」
「なにさ!」
ルッツとシェリルは睨み合い、ギャンギャンと言い合いを始めていた。
その様子にアレクは溜息を吐き
「やれやれ、またか……」
そう言って自身の顳顬に手を当てる。
「苦労人ですね、アレクさん」
テオの言葉にアレクはまたも溜息。
せっかちでお調子者のルッツと、男勝りで自立心の高いシェリルは些細なきっかけで喧嘩を始めることは今に始まった事ではない。
その度に仲裁するのがアレクの役目になっている。
未だギャンギャンと言い合いを続けいる2人をアレクが仲裁し、その様子を残りの3人が見守るというのが今ではお決まりの光景だ。
そんな彼らの様子を見ながら
「……英雄……か……」
エルクはボソリと呟き、在りし日の過去を思い返していた。
***三年前***
「英雄? 俺がかい?」
「ああ。このままロマリアの野望を潰して世界を救うことが出来たら、アンデルってやつに着せられたスメリア国王暗殺の冤罪も晴らせるだろ。そしたらあっという間に英雄扱いだぜ。ハンターの俺が言うんだ、間違いねぇよ」
他に握った木槍を肩で担ぎながら、炎のような赤のターバンを頭に巻いている少年─────エルクがそう言うと、目の前にいる黒髪の少年は考える素振りを見せて
「確かにそうかも」
苦笑い気味にそう答えた。
彼の名はアーク・エダ・リコルヌ。
五大精霊に認められ、聖櫃より力を授かった正真正銘の『精霊の勇者』だ。
そんな彼だが、現在はスメリア王国の大臣であり、ロマリア四将軍の一人アンデルの策略でスメリア国王暗殺の汚名を着せられ、仲間たちと共に高額な賞金をかけられて全世界に指名手配されてしまっていた。
その為、エルクやその仲間達と一時衝突するも、今では和解し共にロマリアの野望を阻止するために協力し合う仲間だ。
次の敵の情報を掴むまで下手に動けないので、しばしの休息を取る目的で彼らは拠点であるトウヴィル村へと訪れ、その中でエルクとアークはそれぞれの武具のメンテナンスをしていた。
そんな中、精霊の勇者の話になり今に至ると言うわけだ。
「だろ? 」
アークから返ってきた言葉にエルクは満足そうに頷いた。
最初は衝突していたが、共に戦う内にエルクは彼を信頼し、かけがえない友だと思うようになっていた。
暴虐によって理不尽に大切なものを奪おうとする
もっとも、歳が近いからという理由もあるのだろうが、何よりかつて、幼い頃に理不尽に家族を殺され、故郷を焼き払われたエルクにとって、ロマリアと戦うアークの姿は彼の中で英雄というものが一番しっくりと当てはまるものだと思っているのだろう。
しかし、次にアークから出てきた言葉はエルクが予想し得ないものだった。
「けど、俺には英雄なんて呼ばれる資格はないよ」
耳に届いた言葉に、エルクは疑問符を浮かべながら
「なんでだ? だって、あんたは『精霊の勇者』だろ? 資格なら充分にあるじゃねぇか」
そうアークに問いかけた。
すると彼は
「ん。あぁ」
エルクの方へ視線を向けながら
「確かに俺は五大精霊に認められて、聖櫃から勇者の力を授かり、その力で、この世界を闇に沈めようとするもの達と戦ってきた。アンデルやガルアーノの放ったキメラ達とも戦ったよ」
そう言ってくる。
その言葉にエルクは益々疑問符をを浮かべる。
それだけ世界の為に戦っているなら尚更資格がないとは思えないからだ。
エルクの様子に構うことなく、アークは言葉を続けていく。
「エルク。君はキメラがどうやって造られているか覚えてるかい?」
「そりゃ勿論」
投げかけられた問いに
「人間とモンスターを合成したのがキメラだ。それが────」
そこまで答えてエルクは気付いた。
なぜ彼が、アークが自分には英雄と呼ばれる資格が無いと言ったのかを。
「そう。キメラ化したモノも、していなかったモノも俺は斬ってきた。結果的に、
剣を鞘に納め、自らの両手を見ながらまるで自嘲するかのように言うアーク。
彼の言葉にエルクは何も言葉が出てこない。
するとアークは徐に自身の両手から視線を外し
「けど、だからと言って立ち止まるつもりもないよ。手に掛けてしまった命に贖うためにもね」
空を見上げながらアークは言う。
そしてエルクに視線を向けて
「それに、大切な人達が、みんなが生きるこの世界が好きだから、俺はこれからも戦い続けていけるんだ」
笑いながらアークはそう言った。
彼のその笑顔と言葉を────今でもエルクは忘れることなく鮮明に覚えていた。
**********
「─────クさん? エルクさん?!」
不意に自分を呼ぶ声が聞こえ、エルクは過去を回想するのを中断し、声の方へと目を向ける。
視線の先には不思議そうな表情をしているアレクの姿が映った。
彼の後ろにいる仲間達も同様な表情を浮かべている。
「どうかしたんですか?」
「……んや、なんでもねぇよ」
心配そうに声をかけてくるアレクに、エルクは笑いながらそう返す。
が。すぐに表情を引き締めて
「よし! そんじゃ、空中城に乗り込むぞ!!」
『はい!!』
エルクの言葉にアレク達は力強く返事を返す。
そして空中城へ向かう為に修理されたヒエンへと歩き出した。
そんな彼らの後ろ姿を見ながら
(アーク……あんたが罪人なら、俺だってそうさ……。俺も沢山のキメラを殺してきたんだから……けど)
思考し、自身の右手に視線を向けた。
彼の右手首には赤い布が巻いて結んである。
これはアークが命を賭して闇黒の支配者を封印した時に、彼の頭に巻いてあったハチマキが外れたもの────空中城の最深部にある彼の剣と同様の形見の一つである。
3年前のあの日から、エルクはこれを自身の右手首に巻いている。
彼を─────アークを決して忘れない為に。
(俺も立ち止まったりはしねぇよ。みんなが生きるこの世界が、あんたが命を懸けて護ったこの世界が好きだから、俺も戦い続ける)
そう想いを巡らせ、歩き出そうとした─────その時
─────がんばれ、エルク
聞き覚えのある声が耳に届いて、彼は目を見開き振り返った。
しかし振り返った先には何もない。
変わらず風が吹いているだけだった。
けれど、エルクは確信している。
さっきの声は、きっと────────
「エルクさーん!」
アレクの呼ぶ声が聞こえ、エルクは一瞬だけ笑い
「あぁ、今行く!」
そう返事を返して歩き出す。
(必ずこの世界を護ってみせる。だからよ────見ててくれよな、アーク)
そう思考を巡らせて、彼は若きハンター達と共に因縁の彼の地へと向かうのだった。