愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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農具「ついにワタシにも出番がきたデ・・・農具ってなんデスか!?」
工具「私も工具になってる・・・」
無性「なんでも正体バレを避けるためというらしいですけど・・・無性ってなんですか!?確かにボクに性別はないですけど!」
農具「こうしたの誰ですか!?」
工具「確か、戦兎先生が書いてたと思う・・・」
農具「よーし今すぐ切り刻みにいくデス」
無性「ま、まあまあ今はとにかくあらすじ紹介をしましょう!」
工具「そうだね。こほん、天才(笑)物理学者の兎ちゃん(悪意)は新世界創造を成し遂げたのでしたがなんと残念な事にノイズという脅威が世界を脅かしていました~」
農具「ぐぬぬ・・・分かった、ワタシもやるデース!それで合流した龍我さんと二課の人たちと一緒に、ノイズを倒していたいたのデスが、その最中で翼さんが大怪我を負ってしまうんデース!」
無性「それを受けた桐生戦兎は、失われた強化アイテムの修理の為に部屋に引きこも・・・え?何真面目にあらすじ紹介してんだ?ですか?」
農具「外野は引っ込んでろデース!」
工具「刻むよ?」
農場主「みーたん!?」
農具「関係ない奴は出てくるなデース!」
工具「はあ・・・とにかく、第十話をどうぞ」



工具「それじゃあ、行こうか」
農具「はいデース!」
無性「お、お手柔らかにお願いします・・・ね・・・」(南無三です戦兎さん・・・)


スパークリングした天才がやってくる!

東京近郊の森に、一つの豪邸があった。

 

 

『《ソロモンの杖・・・我々が譲渡した聖遺物の起動実験はどうなっている?》』

そこには、一人の女性のみがいて、その女性は、どこかと連絡を取っていた。

「《報告の通り、完全聖遺物の起動には相応レベルのフォニックゲインが必要になってくるの。簡単にはいかないわ》」

流暢な英語が、女性の口から話し出される。

『《ブラックアート・・・失われた先史文明の技術を解明し、ぜひとも我々の占有物としたい》』

ここは彼女の家であり、隠れ家。とある組織から身を隠すための拠点にして起点。

でなければ、誰もが彼女の姿に目を奪われていた事だろう。

長い金髪は言いとして、問題なのは、そのグラマラスな体が完全にさらされているという事だ。

着ているのは精々ハイヒールの靴に黒いニーソに黒のアームカバーのみ。

「《ギブ&テイクね。貴方の祖国からの支援には感謝しているわ。今日の鴨撃ちも首尾よく頼むわね》」

『《あくまでも便利に使う腹か。ならば見合った動きを見せてもらいたいものだ》』

「《もちろん理解しているつもりよ。従順な犬ほど長生きするというしね》」

その言葉を最後に、彼女は通話を切る。

「・・・野卑で下劣、生まれた国の品格さのままで辟易する・・・そんな男に、()()()()()()()()()()()()()()()事を教える道理はないわよね?」

その全身素っ裸の女性が、椅子から立ち上がって歩み寄り、巨大な食堂で話かけるのは、ある装置に拘束された服装をボンデージにされている銀髪の少女。

「クリス」

その少女―――クリスの頬を撫でれば、クリスは目を開ける。

「う・・・あ・・・」

「苦しい?可哀そうなクリス。貴方がぐずぐず戸惑うからよ。誘い出されたあの子をここまで連れてくればいいだけだったのに、手間取ったどころか空手で戻ってくるなんて」

顎を持ち上げ、女性は見下すようにクリスに言う。

 

このクリスこそが、この間戦兎たちを襲ったネフシュタンの鎧の正体である。

 

何故、彼女がその女性と行動を共にするのか。

「これで・・・いいんだよな・・・?」

ふと、クリスが弱々しく尋ねる。

「何?」

「あたしの望みを叶えるには、お前に従っていればいいんだよな・・・?」

「そうよ。だから、貴方は私の全てを受け入れなさい」

クリスから離れ、とあるレバーに手をかける。

「でないと嫌いになっちゃうわよ」

そのレバーを降ろした瞬間、クリスにすさまじい程の電流が流れ出す。

「うあぁぁあぁあぁぁあああぁぁあああ!!!」

悲鳴が響く。

発生した電気がクリスの体を迸り、筋肉を痙攣させ、激痛を与える。

「可愛いわよクリス。私だけが貴方を愛してあげられる」

数秒の後、女性は電流を止める。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・!?」

密着する女性。

「覚えておいてねクリス。痛みだけが人の心を繋いで結ぶ、世界の真実だと言う事を」

その言葉を、あの男が聞けばなんと言うだろうか。

「さあ、一緒に食事をしましょう?」

その言葉に、クリスは、僅かにでも安心して――――

 

 

 

次の瞬間には、また電流を流されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――響が弦十郎に弟子入りしてから数日。

 

「オラァ!」

「くっ!」

万丈の蹴りが容赦なく響の顔面を狙うも、それを紙一重で躱す。

立て続けに右ジャブ二回の左フックと裏拳の二連撃が繰り出され、それを響は手ですべてそらしていく。だが、一発、頬を掠め、とにかく距離を取ろうと下がる下がる。

しかしその響に対して万丈は容赦無く距離を詰め、さらに追撃を重ねる。

「どうしたどうした!?逃げてばかりかァ!?」

「こっのぉ・・・!」

万丈の激しすぎるラッシュに響は防戦一方。万丈の繰り出すストレートやロ―キックなどが次々に響へと迫り、それらが掲げられた腕に炸裂する。

(流石元格闘家・・・強い・・・!)

しかしそのラッシュの最中で、響は万丈に出来る隙を見る。

左脇腹、そこが大きく開いている。

(ここっ!)

万丈が左拳を引いた所で、響はその脇腹へ向かって大きく踏み込み、そして右ショベルフックを繰り出す。だが、

「あめぇよ」

「あ!?」

だが、それはいとも容易くはたき落とされた。

(嘘、目はずっとこっちを見てるのに・・・!?)

正確無比に、渾身の一撃をいとも容易くはたき落とされた。その視線は常に響を見ており、決して響の拳を見ていた訳ではない。

「自分の部位と相手の狙いが分かれば、防ぐのは簡単なんだよ!」

そして、響の腹に万丈の蹴りが炸裂する。

「げぼ・・・」

おおよそ年頃の少女が出してはいけない声を発して響は蹴り飛ばされ、そして地面に倒れる。

「くぅっ!?・・・げほっ・・・ごほっ・・・・!」

「あ、やべ、やり過ぎた」

腹を抑えて悶える響に万丈はやってしまったという顔になる。

「おい大丈夫か?」

「あ・・・いえ・・・だいじょ・・ぶです・・・・」

余程効いたのか悶絶している響。

「うむ、二人とも、良い感じだったぞ」

そこへ弦十郎が近寄ってくる。

「ていうか風鳴のおっさん。なんで俺は女子高生とやりあってるんですかね?」

「戦場に歳の上下もないだろう。いつ何時だってどんな相手とも戦えなければ意味はないからな」

「それもそうか」

深くは考えない万丈。

「よし!龍我さん!もう一本お願いします!」

「お前まだやんのかよ!?」

「もちろん!」

 

響が弦十郎に弟子入りしてから数日、アクション映画の鍛錬法やそれなりの筋トレ、さらには拳法やら格闘技術からをある程度習得してきた所で、本場の格闘家である万丈と戦わせてみようという弦十郎の提案で、今まさにその模擬戦が行われていた。

 

「やぁあああ!!」

響のラッシュが万丈を襲うも、それらをいとも容易く躱して見せる万丈。

回し蹴り、正拳突き、ロ―キック、アッパー、踵落としなどなど、様々な攻撃を繰り出してはいるが、一向に当たる気配がない。

「ダメだ!そんなものじゃ当たらないぞ!稲妻を喰らい、雷を握りつぶすように打て!」

「言ってる事全然分かりません!でもやってみます!」

両足をしっかりと地面につけ、響は万丈をその双眸で見据える。

(来る・・・!)

そして、先ほどとは打って変わった一撃が来ると悟った万丈も構える。

一瞬の静寂。しかし、響は自らの心臓が大きく跳ねた事を感じると、地面を踏み砕く踏み込みで、万丈に接近し、右拳を引き絞って、一気に万丈に叩きつける。

それに対して万丈が放ったのは掌底。

響の一撃に合わせて放った来たのだ。

響の渾身の一撃と万丈の迎撃の一撃。それが、双方から直撃する。

衝突した拳と掌。それは、構図から見れば万丈が響の一撃を受け止めたように見える。

実際、それはその通りであり、万丈が二ッと笑ったと思った瞬間、手を掴まれた響は引っ張られ前のめりにつんのめる。

「う、うわわわわ・・・!?」

「おーらよっと!」

「うわぁあ!?」

転ばないように前に出そうとした足を引っかけられ、その引っ掛けられた足で下半身を跳ね上げられ、見事に投げられる。

「あうぅ・・・」

「今の良い一撃だったぜ」

元々鍛えてきた万丈と鍛えて数日の響ではその筋量に差が出るのは当然。

それでも木に括りつけられたサンドバックをぶっ飛ばす程の威力はあったであろう響の先の一撃は、見事なものだった。

お陰で、実は万丈の手は結構痺れている。

「よし、そろそろこちらもスイッチを入れるとするか」

そしてさらに、弦十郎まで乱入してくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー、朝からハードすぎますよ」

「ハア・・・ハア・・・おい、なんで俺ばっかりこんなに疲れてんだ・・・!?」

あの後、弦十郎の扱きを受けた万丈と響。

何故万丈の方が疲れているのかというと、理由としては響はまだ未熟、しかし万丈はプロだという事で察してほしい。

「頼んだぞ、明日のチャンピオン」

「はい、これご苦労様」

「あ!すいません!」

「すまねえな・・・」

友里からスポーツドリンクを受け取る響と万丈。

「んぐ・・・っぷはぁ!あの、自分でやると決めた癖に申し訳ないんですけど、何もうら若き女子高生に頼まなくとも、ノイズと戦える武器って、ライダーシステム以外にないんですか?外国とか・・・」

藪から棒に、響はそんな質問を上げる。

「公式にはないな。日本だって、シンフォギアを最重要機密事項として、完全非公開だ。ついで、ライダーシステムに関する情報も全てシャットアウトしている」

「ええー、私、あまり気にしないで結構やらかしてるかも・・・」

「情報封鎖も二課の仕事だから」

「仮面ライダーなら、顔バレしないで済むんだけどな」

シンフォギアとライダーシステムは、その身を鎧に包むという点では同じだが、ライダーシステムは全身を鎧で包み込むものに対して、シンフォギアは一部のプロテクターと生地は薄いが強靭なぴっちりボディスーツのみで顔が出ているといったデザインだ。

だから、顔が見られれば一発アウト、という事もあり得る。

「だけど、時々無理を通すから、今や、我々の事を良く思ってない閣僚や省庁だらけだ。特異災害対策機動部二課を縮め、『(とっ)()部二(ぶつ)』と揶揄されてる」

「情報秘匿は、政府上層部の指示だってのにね。やりきれない」

「んなもん無視すりゃあいいだろ・・・」

「そうもいかないんだよね」

万丈の言葉を否定する藤尭。

「それに、いずれシンフォギアの有利な外交カードにしようと目論んでいるんだろう。まあ最も、首相、それも首相補佐官がそれを許さないだろうけどね」

「EUや米国は、いつだって回転の機会を伺っている。シンフォギアの開発は、既知の系統とは全く異なる所から突然発生した理論と技術で成り立っているわ。日本以外の国では到底真似できないから、猶更欲しいのでしょうね」

「結局やっぱり、色々とややこしいってことですよね」

「あーだめだ。そういうのは全部任せるわ。俺にはなんも分からん」

もはや理解を超えた事態にすでに思考を放棄した響と万丈。

「あれ?師匠、そういえば了子さんは?」

「永田町さ」

「永田町?」

「政府のお偉いさんに呼び出されてね。本部の安全性、及び防衛システムについて、関係閣僚に説明義務を果たしにいっている。仕方の無い事さ」

「本当、何もかもがややこしいんですね・・・」

「とにかく、大変ってことだな」

「ルールをややこしくするのはいつも、責任を取らずに立ち回りたい連中なんだが、その点、広木防衛大臣と氷室首相、そして、氷室幻徳首相補佐官は・・・・了子君の戻りが遅れているようだな」

「・・・・」

弦十郎がそう言う傍らで、万丈は思わず笑みを浮かべる。

(そうか、あの野郎ちゃんとやってんじゃねえか)

かつての戦友の事を思いながら、万丈は、自室にて修理に没頭している相棒の事を思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い、海の底のように暗い場所で―――彼女は―――翼は一人、沈んでいた。

 

―――私・・・生きてる・・・?違う、死に損なっただけ・・・

 

どうしてか、生きているという実感があった。理由は、腹のあたりにあるこの温かさ。

あの赤い兎が、自分のお腹の上で、丸まってそこに座っていた。

その温かさが、なんとも心地が良い。

その温かさを感じながら、翼は思った。

 

―――奏は、何のために生きて、何のために死んだのだろう・・・

 

お腹の兎の頭を撫でながら、そう考える。

その時、どこからか、聞き覚えのある声がした。

 

「真面目が過ぎるぞ、翼」

 

――――ッ!?

 

それは、聞き間違えるはずのない、大切な人の声。

 

「あんまりガチガチだと、そのうちぽっきり行っちゃいそうだ」

 

間違いなく、奏の声だ。

 

―――一人になって私は、一層の研鑽を積んできた。数えきれない程のノイズを倒し、死線を乗り越え、そこに意味など求めず、ただひたすらに戦い続けてきた。そして、気付いたんだ。

 

お腹の赤い兎を抱き上げて、そして優しく抱きしめて、翼は、想いを吐き出す。

 

―――私の命にも、意味や価値がないって事に・・・!?

 

その時、腕に抱く兎が、怒ったように翼の顔をぱしぱしと叩く。

 

―――え?何?なんなの・・・?

 

その行為の意味がいまいちわからない。

 

「・・・戦いの裏側とか、その向こうには、また違ったものがあるんじゃないかな?」

 

兎に叩かれ続ける翼に、奏は言う。

 

「あたしはそう考えてきたし、そいつを見てきた」

 

―――っ・・・それは何?・・・痛い、痛いよ・・・!

 

なおも叩いてくる兎を制しつつ、翼は聞き返す。

 

「自分で見つけるものじゃないかな?」

 

―――奏は私にいじわるだ・・・

 

やっと大人しくなってくれた兎をそのままにして、翼は頬を膨らませてみる。

 

―――だけど、私にいじわるな奏は、もういないんだよね・・・

 

もう一度、兎を抱きしめて、そう呟いた。

 

「そいつは結構な事じゃないか」

 

―――私は嫌だ!奏に側にいて欲しいんだよ・・・

 

今にも泣きそうな翼。そんな翼を、赤い兎は心配そうに見上げる。

 

「・・・あたしが傍にいるか遠くにいるかは、翼が決める事さ」

 

―――私が・・・?

 

その言葉は、翼の胸に響く。そしていつの間にか、赤い兎は離れていっていた―――

 

 

 

―――そうだ。お前が決める事なんだよ。

 

 

 

―――そして、奏の物とは違う、聞き覚えのある声が、聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、翼の意識は覚醒する。

(ここ・・・は・・・)

「先生!患者の意識が・・・」

「各部のメディカルチェックだ。急げ!」

視界に、見覚えの無い白い服を着た人々が見える。

少し見渡せば、様々な機材がそこに置かれていて、脈拍を測るもの、点滴の管、何かのレントゲン写真といった様々なものが確認出来た。

そして、耳に微かに届く、聞き覚えのある歌。

視線を向ければ、そのガラス窓からリディアンが見えた。

(・・・不思議な感覚。まるで世界から切り抜かれて、私の時間だけゆっくり流れてるよう・・・・)

そして、思い出す。

仕事でも任務でもないのに、学校を休んだのは、これが初めてなのだ、と。

(皆勤賞は絶望的か・・・)

などと思いつつ、翼は、もういない奏に向かって言う。

(心配しないで、奏。私、貴方が言う程真面目じゃないから、ぽっきり折れたりしない。だからこうして、今日も無様に生き恥を晒している・・・)

ふと、自分の手に何かが握られている事に気付き、まだ重い腕を、無理矢理動かして、その手に握られているものが何なのかを見る。

 

それは、あの男と同じ名前の入った、赤いフルボトルだった。

 

「・・・・もう」

それを見て、一度目を見開いた後、それを握ったまま、胸に当てた。

「ばか・・・」

そして、短くそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその日の夕方――――広木防衛大臣が殺害された――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その報告を受けて、二課では、その事件の犯人について捜索していた。

だが、一向に正体は掴めず、手をこまねく状況となっている。

ただ、了子の方は通信機が壊れてただけで、連絡が取れなかったという事以外、何に問題も無かった。

 

そして、上層部の命により、二課はサクリスト-D『デュランダル』を輸送する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、作戦当日―――

「防衛大臣殺害犯を検挙する名目で、検問を配備!『記憶の遺跡』まで一気に駆け抜ける」

「名付けて、『天下の往来独り占め』作戦!」

その作戦名はどうなんだ、と万丈と響は思った。

 

作戦の内容は、まず、輸送対象であるデュランダルを乗せた了子の車を、四台の護衛車で囲う。そして、その上から弦十郎の乗るヘリが周囲を索敵する。

そして、デュランダルを乗せた車両に、ノイズが現れた時の為に響と万丈、そして戦兎を同乗させる。

そのまま、一気に『記憶の遺跡』と呼ばれる場所まで逃げる。

簡潔に説明するとこんな感じだ。

 

だが―――

「戦兎先生は、やっぱりまだ・・・」

「あともう少しだって言ってたし、たぶん大丈夫だろ」

まだ、強化アイテムの修復が出来ていなかったのだ。

なんでも、パンドラボックスの成分がないとかで苦戦していたらしいが。

車に乗りつつ、万丈と響はそう言い合う。

「大丈夫でしょ。何せ、仮面ライダーとシンフォギア装者が一人ずついるんだから」

了子がそう言うも、響は、少し心配だった。

「大丈夫だ」

そんな響の肩を、万丈が掴む。

「あいつは必ず来る」

「龍我さん・・・」

万丈の戦兎に向ける絶対的な信頼。

(龍我さんが信じるなら・・・)

「分かりました。私、信じてみます!」

「おう!そんじゃ、出発進行と行こうか!」

「「おー!」」

その掛け声に了子も乗り、そして、作戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

前後左右に護衛車がついていき、その上から弦十郎の乗るヘリが上空から異変がないかを探す。

響も響で、窓から顔を出し、周囲を探る。

万丈も万丈で響同様に周囲を探っていた。

やがて、車両群が長い橋に入った。

ふと、響が前を向いた時―――

 

道路が崩れているのを見た。

 

「了子さん!」

「ッ!」

了子がハンドルを切る。崩れた場所は大きくも、片側に移動すれば避けられるほどの損壊。

しかし、一番端にいた車両だけは避け切れず、そのまま空中に飛び出し、反対の崩れた場所に激突し、爆発する。

「ああ・・・」

「マジかよ・・・・」

その惨状に、響と万丈は言葉を失う。

「しっかり掴まっててね・・・」

「え?」

「は?」

「私のドラテク(ドライブテクニックの略)は狂暴よ」

車両群が加速する。

『敵襲だ。まだ姿は確認出来ていないがノイズだろう』

「この展開、想定していたより早いかも」

次の瞬間、マンホールが吹き飛び、響たちの乗る車両のすぐ後ろの車両が空高くぶっ飛ぶ。

「ひぃ・・・」

その様子に響は思わず悲鳴を上げる。

『下水道だ!ノイズは下水道を使って攻撃してきている!』

弦十郎からの連絡が入った瞬間、今度は目の前の護送車が吹っ飛び、こちらに向かって落ちてくる。

「うわぁぁぁああ!?ぶつかるぅぅぅぅうう!!」

「よ、避けろぉぉぉおお!!」

響と万丈の絶叫が車両内に轟き、了子はすぐさまハンドルを切って落ちてくる黒い護送車を躱す。だが、思いっきりハンドルを切り過ぎたのか歩道に突っ込んでごみ箱などを弾き飛ばす。

「ちゃんと運転しろよ!」

「運転もしてないのに文句言わない!」

万丈からの怒鳴りにそう返しつつ、了子は弦十郎に連絡を入れる。

「弦十郎君、ちょっとやばいんじゃない?この先の薬品工場で爆発でも起きたらデュランダルは・・・」

『分かっている!さっきから護衛車を的確に狙い撃ちしてくるのは、ノイズがデュランダルを損壊させないよう、制御されているように見える!』

実際にも、了子の乗る車以外をあまりにも正確に破壊している。こんな事をただのノイズがするとは思えない。

だとすれば―――

「チッ」

―――万丈は、了子が舌打ちしたのを見逃さなかった。

(こいつ・・・なんで舌打ちを・・・・)

『狙いがデュランダルの確保なら、あえて危険な地域に滑り込み、攻め手を封じるって寸断だ!』

「勝算は?」

『思いつきを数字で語れるものかよ!』

その弦十郎の判断に従い、残った二両は薬品工場へと突っ込む。

すると目の前のマンホールが吹き飛び、そこからノイズが飛び出し、前方の護衛車を襲う。

視界を塞がれた車両をすぐさま乗員は乗り捨て、一方の車は建物の一つに突っ込んで爆発する。

その中で、ノイズがまるで躊躇うかのように動きが鈍る。

「狙い通りです!」

響が喜ぶも束の間、何かに乗り上げたのか、車が一気に転倒する。

「うわぁぁあぁああ!?」

「うぉあぁぁあぁあ!?」

盛大にひっくり返り、スピンを繰り返してようやく止まる了子の車。

「南無三!」

その様子を弦十郎は見ていた。

そして車から響、万丈、了子の三人が出てくる。

「くっそ・・・もっとちゃんと運転しろよゴラァ!」

「うるさいわね!こっちだって必死だったのよ!?」

「あ、あの!ノイズが・・・!」

気付けば、周囲を大量のノイズに囲まれていた。

しかもその数は増えている。

「了子さん・・・これ、重い・・・!」

「だったら、いっそここに置いて私たちは逃げましょ?」

「そんなのダメです!」

「そりゃそうよね・・・」

「んな事言い合ってないでさっさと行くぞ!」

万丈が響からデュランダルの入ったケースを取り上げてせかす。それと同時にノイズが弾丸の如く飛んでくる。

そのノイズたちから逃げるように走る三人だが、ノイズに貫かれた車が背後で爆発、その爆風で万丈はケースを落としてしまう。

「しまった!?」

そして次の瞬間、ノイズが一斉に万丈たちに襲い掛かってくる。

(やられる・・・!)

変身している暇が、ない。クローズドラゴンをセットする時間がない。

これでは、死ぬ―――

 

だが、ノイズが万丈たちに攻撃を入れる事はなかった。

 

突如として、了子がノイズの前に出て、右手を掲げた。

すると、何かしらのバリアが張られ、ノイズがそれに触れた途端、一瞬にして炭素の塊を化してしまう。

「了子・・・さん・・・?」

「おい、なんだよそれ・・・」

まるで人間技ではない。

弦十郎とは違う、人間離れした能力。

ノイズの攻撃を防ぐ度に、髪が解け、眼鏡が飛ぶも、了子は不敵な笑みを崩さない。

「しょうがないわね。貴方のやりたいことを、やりたいようにやりなさい」

その言葉を受けて、響は立ち上がる。

「私、歌います!」

そして、万丈は了子を怪訝そうに見ながら、クローズドラゴンのドラゴンフルボトルをセットする。

 

Wake UP!』

 

CROSS-Z DRAGON!』

 

『Are You Ready?』

 

「変身!」

 

「―――Balwisyall Nescell gungnir tron――――」

 

『Wake UP Burning!』

 

『Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

 

その身を蒼炎の鎧で包み込み、万丈は仮面ライダークローズへと変身して、響は神々の槍の名を持つ鎧を纏う。

「行くぜぇ!」

「はい!」

駆け出すクローズと響―――が、響は足元のパイプに足を引っかけて盛大に転ぶ。

慣れないヒールを履いているからだ。

「大丈夫か!?」

思わずクローズが立ち止まり、その間にノイズが周囲を囲む。

「チッ!」

短く舌打ちをして、クローズは響を守るようにノイズと向き合う。

その一方で、響も立ち上がる。

(ヒールが邪魔だ・・・!)

そう思った響は、迷いなく踵のヒールを破壊して、いつも履いている靴と同じようにする。

そして、独特な構えでノイズと向き合う。

いざ、戦いが始まろうとしたその時、

 

「てーんーさーいーがー!」

 

「「ッ!?」」

 

「展開を予測してここにいたぁぁぁああ!!!」

 

見上げれば、工場の塔のような建物の上に、天を指差して立つ一人の男がいた。

擬音があればバァァァンッ!なんていう音が出てきそうな程に、その男は背を反らして天を指差していた。

その男は―――

「戦兎!?何やってんだ!?」

「戦兎先生!?」

その一方で、

「何やってんだアイツ・・・」

クリスもその場に来ていた。当然、ノイズを操っているのは彼女である。

そしてその戦兎は、顔を真っ黒にしたままでトレンチコートの下に着ている服もどこもかしこも黒ずんでいた。

「ヴァーハハハハハ!!この天才の手にかかればこの程度の展開を予測してここにあらかじめ来ることなど造作もない!さあ俺を崇めよ!神と称えよヴァハハハハハ!!」

「なんか・・・キャラ崩壊してませんか?しかもボロボロ・・・」

「たぶん何日も徹夜続きだったからテンションが可笑しくなってるんだろ」

完全にどこか壊れている戦兎の様子にドン引きの二人。

「ヴァハハハハハ・・・はぁー」

やっと落ち着いたのか、息を吐く戦兎だったが、次の瞬間、左手を前に突き出した。

それは、ビルドの複眼が描かれた、缶だった。

「なんですかあれ?炭酸飲料?」

「やっと出来たのか・・・」

それに響は首を傾げ、クローズは安心するように呟く。

「ここ数日、失敗に失敗を重ね、抜けてしまったパンドラボックスの成分を再現するために何度も爆発を喰らい、ボロボロになりながらも、翼の為を思って根性を見せて直したビルドのパワーアップアイテム・・・その名も『ラビットタンクスパークリング』ぅ!すごいでしょぉ!?最っ高でしょぉ!天っっ才でしょぉぉぉおお!?ヴァハハハハハ!!!」

またキャラ崩壊を引き起こす戦兎。

しかし、それもほんの少しの事。

 

「さあ、実験を始めようか」

 

やがて、いつもの眼差し、戦いを前にする戦士の眼に戻ると、戦兎は、突き出したラビットタンクスパークリングを振る。

 

シュワシュワシュワ

 

まるで炭酸飲料から泡が吹き出すのと同じ音が響き、戦兎は、プルタブパーツを開ける。

爽快な音が鳴り、戦兎は起動したラビットタンクスパークリングを掲げる。

そして、それを腰に装着したらビルドドライバーにセットした。

 

ラビットタンクスパークリング!』

 

そんな音が響き渡り、戦兎は、ボルテックレバーを回す。

(もう二度と・・・・)

今までとは違うスナップライドビルダーが展開され、戦兎の前後に展開される。

その最中で、戦兎は思い出す。

 

翼が、絶唱を使ったあの夜の事を。

 

(翼を、あんな目にさせない為に・・・!)

 

その為に、この力を取り戻したのだ。

 

『Are You Ready?』

 

覚悟は、良いか?

 

そのいつもの問いかけが、戦兎に告げられる。

(ああ―――)

そういえば、と戦兎は思い出す。

 

彼女の笑顔を、見た事ないな、と。

 

だったら、見よう。彼女の笑顔を。

戦兎の想う、最っ高の笑顔を、創ってみせよう!

 

(―――出来てるぜ)

 

両腕を広げた後、ファイティングポーズをとって、戦兎は叫ぶ。

 

「―――変身!」

 

シュワッと弾けるラビットタンクスパークリング!イェイイェーイ!』

 

赤と青、そして、白というトリコロールの装甲を身に纏い、ビルド・ラビットタンクスパークリングが、新世界に誕生する。

 

「勝利の法則は、決まった!」

 




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「あれが・・・戦兎先生の新しい力・・・」

ついにその姿を現すラビットタンクスパークリング!

「アタシのもんだ!」

そして繰り広げられるデュランダル争奪戦。

「渡すものかぁぁぁ!!」

それを手にした響に変化が起こり――――

「俺が?何故に?」

どういう訳か、戦兎と響が翼の見舞いに―――

次回『病床のディーヴァ』

「えーっと・・・」


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