愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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ク「仮面ライダークローズこと万丈龍我と、アタシ、シンフォギア『イチイバル』の装者である雪音クリスは、互いの意志のままにぶつかりあったのでした」
響「ちょっと待ってクリスちゃん!?なんで私が入ってないの!?」
ク「お前前回あんまり活躍してないだろ?」
響「酷い!?クリスちゃんに自己紹介したり龍我さんと一緒にクリスちゃん殴り飛ばしたのに!」
ク「それはアタシへの当てこすりのつもりか?」イチイバルを構える
響「あぁああ!?ごめんなさい!」
翼「落ち着け雪音。立花も悪気があっていった訳じゃないんだ。許してやってくれ」
ク「まあ先輩がそう言うなら・・・」
戦「そして!この天才物理学者にしt」
万「お前もそんなに活躍してないだろ」
戦「主役なのに!?」
未「まあ仕方がないですよ。私も登場ほんのちょっとだったんですから」
ク「まあいい。今回はついにフィーネがこいつらの前に姿を現すぞ」
戦「こんな所でネタバレすんじゃないよ!さあどうなる第十三話!」


終わりの名を持つアンノウン

「ウォリヤァァァアア!!」

雄叫びを上げて、クローズはクリスに向かって走る。

「馬鹿正直に突っ込んでくるとは馬鹿か!」

「馬鹿じゃねえ!筋肉をつけろ筋肉を!」

「じゃあ筋肉馬鹿!」

クリスの放つボウガンから矢が射出される。

それらが一気にクローズに殺到し、直撃する。だが、クローズは止まらない。

「な!?」

「オラァ!」

クローズの拳がクリスに叩きつけられる、かと思いきや紙一重で躱し、その脇腹にボウガンの一撃を叩き込む。

「ぐ・・・おぉぉお!」

しかし怯む事なくクローズはすかさず、蹴りを振るうも、それをバク転で躱される。

距離を取ったクリスは、すかさずボウガンを変形する。

 

その形は―――二門三連ガトリングが一つずつ。

 

「んなッ!?」

 

BILLION MAIDEN

 

放たれる弾丸の嵐。それをクローズは両腕を交差させる事で真っ向から受ける。

「ぐぅ・・・この程度で、俺が止まると思うなぁ!!」

またしてもクローズは弾丸の嵐を突っ切ってくる。

(無茶苦茶かよ!?)

明らかにネフシュタンの鎧の時よりも強く感じる。

振るわれる拳、顔面を狙ったその一撃を、クリスはどうにか躱し、だが、続く蹴りは避け切れず、蹴り飛ばされる。

「ぐぅ・・・!?」

一瞬、顔をしかめる。だが、すぐに気を持ち直したクリスは、飛んで追撃してくるクローズに腰部アーマーから展開した小型ミサイルを解き放つ――――

 

CUT IN CUT OUT

 

追尾性があるのか、小型ミサイルはクローズに殺到する。

「ぐぉぁぁああ!?」

ミサイルは全て直撃する。爆炎をまき散らし、直接喰らったクローズはそのまま落ちていく―――筈だった。

「ま・・・だ、まだぁぁぁああ!!」

「なっ!?」

なんと、ミサイルを喰らってもなお、クローズの勢いは衰える事なくクリスへと向かっていた。

「くそ!」

ガトリングガンをすぐさまハンドガンへと変形。クローズを迎え撃つ。

クローズの拳が顔面のすぐ横を掠め、その胸に拳銃の銃口を押し当て、トリガーを引く。

フルオートで射出される弾丸が何発もクローズの胸部に叩き込まれる。

しかし、それではクローズの装甲を貫く事は出来ず、すかさず放たれた蹴りが脇腹に直撃し、地面に向かって落とす。

「がっは・・・!?」

「おぉぉおお!!」

クローズが落下しながら、クリスを追撃する。だが、クリスはすでにその手にライフルを構えており、そこから放たれる必殺の一撃がクローズの腹を穿つ。

「があ!?」

直撃はやや右より、しかし直撃した事によって回転、吹き飛び、クリスから数メートル離れたところに落ちる。

「ぐ・・・くぅ・・・」

「こん・・・の・・・」

よろよろと立ち上がるクローズとクリス。

「なんだよ・・・なんなんだよさっきから!」

すかさずガトリングの乱射が始まる。

クローズはそれを横に走りながら躱す。

「くそ!」

それを銃口を向けながら追いかけ、そして小型ミサイルをまた放つ。

何度も炸裂する小型ミサイルを躱しながら、クローズは何かを投げる。

「ッ!?」

それをガトリングガンをかざす事で防ぐ。それは―――石だ。

「石・・・!?・・・はっ!?」

その一瞬の隙で、クローズはクリスに接近する。

飛び上がってボレーキックを放つも、しゃがんで躱される。しかし次の空中回転後ろ回し蹴りは当たり、吹き飛ばされる中、反撃に放ったガトリングがクローズに殺到する。

「ぐぅ・・・!?」

銃弾の雨を受け、膝をつくクローズ。

「ハア・・・ハア・・・中々やるじゃねえか・・・!」

(なんなんだよ、さっきから・・・!)

何故、この男はこんなにも楽しそうなのだろうか。

「もっと聞かせてくれよ。お前の歌をよ・・・」

(こいつまさか・・・アタシの歌で強く・・・!?)

まさか、と思う。

この歌に、そんな力があるとは思えない。

 

壊す事しかできない、自分の歌になんて。

 

「―――ッ!!」

ガトリングを乱射する。

それをクローズは掻い潜る。ある程度近付かれた所でガトリングからボウガンに変形。

拳が振るわれる。躱してボウガンを撃つ。今度は躱される。

蹴りが迫る。下がって躱す。続く二撃目をさらに下がって躱して見せる。

距離が、出来る。

「「―――ッ!!」」

クローズがボルテックレバーを回す。クリスが巨大ミサイルを二基展開する。

 

グレートドラゴニックフィニッシュ!』

 

MEGA DETH FUGA

 

クローズが拳に乗せて放ったクローズドラゴン・ブレイズがクリスに、クリスの放った巨大ミサイル二基がクローズに、衝突する事なく、互いに直撃する。

「「ぐあぁぁああぁあ!?」」

凄まじい爆発が巻き起こる。

「龍我さん・・・クリスちゃん・・・どうして・・・・」

そして、その激しさに響は立ち入れないでいた。

「あーあー、あの馬鹿。派手にやりまくりやがって」

「え・・・」

聞き覚えのある声がしたと思うと、そこにはホークガトリングフォームのビルドがいた。

「戦兎先生!」

「遅れて悪いな。話は風鳴さんから聞いてる。もう一つのシンフォギアだろ?」

「はい。イチイバルっていうらしいです」

「みたいだな」

ビルドは鷹の眼の能力で戦況を見ていた。

「あの、戦兎先生・・・」

「止めたい、だろ?大丈夫だ。あの馬鹿はそもそも倒すためだけに戦っている訳じゃない。万丈には万丈なりのやり方って奴があるんだよ」

その言葉の意味を、響は理解できず首を傾げる。

だが、その言葉の意味を響はすぐに理解する事になる。

 

互いの大技を喰らったクローズとクリスは、その身をボロボロにして向かい合っていた。

「くそ・・・なんなんだよ、さっきから・・・!」

こうもボロボロにされて、同じようにボロボロにされているクローズを見て、クリスは悪態を吐く。

「なんで・・・倒れないんだよ・・・!」

「なんで?決まってんだろ」

クローズは、よろよろとクリスに向かって指を差す。

「テメェを止めるためだよ」

「アタシを・・・止めるだと?」

「そうだ」

「ハッ!何を言うかと思えば、お前もアイツと同じ甘ちゃんかよ。いいか、アタシは大人が大っ嫌いだ!力を振りかざして弱者を蹴落とす!いつも自分の事しか考えてねえ!お前だってそうだ!お前だって自分の力振りかざして見せつけて、力を見せびらかしたいろくでなしなんだろ!?なあ!?」

クローズを責め立てるように、クリスは怒鳴り散らす。

だが、それにクローズは静かに答える。

「・・・確かに俺はろくでなしだ。八百長に手を出して、()()を死なせちまって、馬鹿で間抜けで、冤罪で捕まって・・・一人じゃなんにも出来ねえ馬鹿野郎だ。けどな、そんな俺でも、誰かの役に立ちたいって思うんだよ!」

拳を胸に当てて、クローズは叫ぶ。

「愛と平和を胸に生きて、俺は戦えねえ奴の為に戦う!そんでもってお前を止める!」

桐生戦兎という男を見てきた。その男が掲げる信念をいつも間近で見てきた。

だからこそ、彼も掲げる愛と平和。

 

何故なら、『仮面ライダー』とは、そのためにあるのだから。

 

「愛と平和だと・・・?」

その一方で、クリスは肩を震わせていた。

「ふざけんなぁ!」

「ッ!?」

クリスがガトリングを乱射する。

「何が愛だ!何が平和だ!そんな寝言は寝てから言えよ!そんな事言って、お前もまたアタシを独りにさせるんだろうがぁぁぁあ!」

ガトリングから大量の弾丸が吐き出され、それがクローズに殺到する。

さらにダメ押しで小型ミサイルを乱射。追尾性のあるそれらが一気にクローズを襲いまくる。

「ちくしょう!そんな事言う奴から死んでいくんだ!パパもママも死んじまうんだ!皆、皆アタシを独りにする・・・アタシから遠ざかっていく!だからもう、誰も、こんな思いをしないように、アタシは力を持つ奴全員ぶっ潰すんだぁぁあああ!!」

 

「―――それがお前の戦う理由かよ」

 

「ッ!?」

気付けば、クローズはクリスの背後に回り込んでいた。

「くっ―――!?」

すぐさま振り返ってガトリングで薙ぎ払おうとしたが、それよりも早くクローズがクリスのガトリングを持つ手を掴んで懐に踏み込んだ。

「くそ!離せよ・・・!」

「離さねえ」

「離せよ!」

()()()()()の手を離せるかよ!」

「―――ッ!?」

クローズが言った事で、クリスは、自分が泣いている事に気付いた。

頬を伝う、熱い液体。それが、彼女の興奮して赤く染まった白い肌を滴っていた。

「う・・・うるさい!」

クリスは、振り払うように腕に力を込める。だが、クローズの力が予想以上に強く、動かす事は出来ない。

(なんなんだよ・・・なんなんだよこいつは・・・!)

何故ここまで踏み込んでくる。何故ここまで近づいてくる。何故ここまで、全力でぶつかってくる。

分からない分からない。

この男の行動全てが分からない。

「なんなんだよ、お前は―――」

「俺の名前は万丈龍我!そして、愛と平和の戦う『仮面ライダー』だ!二度も言わせんな!」

そう名乗るクローズ。その迫力に、クリスは思わず動きを止めてしまう。

複眼越しから、彼の真っ直ぐな視線を感じる。

その想いを感じてしまう。

そのまま硬直し、二人の視線が交じり合う。

 

その時―――

 

「避けてください!」

「ッ!?」

突如聞こえた響の声に、クローズは慌ててクリスを抱えて前に飛ぶ。

次の瞬間、先ほどまで二人がいた場所に飛行型ノイズが落下してきて、その地面を抉り飛ばした。

「なんだ!?」

「あれは・・・ノイズ・・・?」

気付けば、空中には大量のノイズが空を埋め尽くすほどに出現していた。

「んだよあの数!?」

「万丈!そいつは任せた!」

クリスを抱えるクローズの前に、ビルドと響が立つ。

「あの数、一体どこから・・・・」

響がそう呟いた時――――

 

「――――命じた事も出来ないなんて、貴方はどこまで私を失望させるのかしら?」

 

どこからか聞こえた声。それに、彼らは一層警戒を強める。

「あそこだ!」

ビルドが見つけた先に、それはいた。

海が見える海岸の手摺。そこに、一人、黒いコートと蝶の飾りがついた帽子を被り、金色の長髪を靡かせる女性がいた。

その手には、以前クリスが持っていた杖『ソロモンの杖』が握られていた。

「フィーネ・・・」

クリスが、その女性の名を呼ぶ。

「フィーネ?なんじゃそりゃ?」

「フィーネ・・・確か、音楽でいう所の終止記号の名前だったような・・・」

「フィーネ・・・終わり・・・」

四人の視線が、女性―――フィーネに向けられる。

だが、クリスは一度クローズを見ると、その腕から逃れ、フィーネに向かって叫ぶ。

「こんな奴がいなくたって、戦争の火種くらいアタシ一人で消してやる!そうすれば、アンタの言うように、人は呪いから解放されて、バラバラになった世界は元に戻るんだろ!?」

「呪い?なんだそれは・・・」

物理学者であるビルド―――戦兎に、呪いなどのオカルトはよくわからない。

もちろん、クローズと響にも分からない。

「――――はあ」

ふと、フィーネが溜息を零した。

「もう貴方に用はないわ」

「え・・・」

その言葉に、クリスは言葉を失う。

「な、なんだよそれ・・・!?」

しかしフィーネは答える事なく、片手を掲げた。

すると、周囲に散らばったネフシュタンの鎧が粒子化、フィーネの掲げられた手に集まっていき、やがて消えていく。

そして、杖を掲げると、上空のノイズが一斉に襲い掛かってくる。

「うわ!?」

「チッ!」

響は慌てて避け、ビルドはホークガトリンガーで応戦。

「待てよ・・・フィーネ!」

「あ、おい!」

その間に、クリスが走り出す。

その後を、クローズが追いかける。

「あ、クリスちゃ・・・」

「アイツの事は万丈に任せて、とにかく俺たちはノイズを片付けるぞ!」

ビルドがホークガトリンガーを乱射しながら響にそう叫ぶ。

「わ、分かりました!」

響もビルドの言葉に頷くも、一度クリスとクローズが行ってしまった方を見る。

(クリスちゃんの事、よろしくお願いします!)

「あ、馬鹿!余所見すんな!」

「え・・・」

だが、見てしまった事が命取りだった。

飛翔型がその身を槍状にして襲い掛かってきたのだ。

その距離と態勢では、迎撃するのは難しい。

(しまった・・・!?)

ノイズが、響に直撃する―――粉塵が巻き起こり、凄まじい衝撃が迸る。

「響ぃ!」

ビルドが叫ぶ。

舞い上がる粉塵。その中で、見たものは―――何かの壁だった。

「壁・・・?」

「―――剣だ」

「ッ!?」

上から声が聞こえ、見上げれば、そこには、巨大な剣の上に佇む風鳴翼の姿があった。

「おまっ―――遅いんだよ!」

「それについては申し訳ない。ただ抜け出すのに時間がかかってしまった」

謝罪する翼。

「ったく、無理すんじゃねーぞ」

「分かっている」

「翼さん・・・」

「気付いたか、立花。だが私も十全ではない。―――力を貸してほしい」

翼から、初めて頼られる。それが、響にとってどれだけ嬉しい事か。

「はい!」

響からの心地良い返事をもらった所で、翼はあの二人が走っていった方を見る。

(あの少女、イチイバルの事もあるが、今はノイズの殲滅が優先・・・そっちは任せたぞ、万丈)

すかさずノイズが翼に向かって突貫。しかし、翼は巨大な剣から飛びなり足のブレードを使ってそのノイズらを切り刻む。

 

「―――去りなさい。無想に猛る炎」

 

次の瞬間、空から無数の剣が降り注ぎ、それよりも下にいたノイズらを一掃する。

 

千ノ落涙

 

落下する翼と入れ替わるようにビルドが飛び立ち、周囲に球状のフィールドを展開する。

 

ONE HUNDRED! FULL BULLET!

 

そして空間内に入ったノイズに向かって銃弾を乱射。一匹残らず、百発の弾丸の元に一層する。

「やぁあ!」

一方、地面に振ってきたノイズに対して、響は真正面から迎え撃っていた。

腕のガジェットをパイルバンカーのように打ち込む事によって拳の威力を高め、敵を粉砕していく。

その威力は、まさしく一撃必殺、雷を打ち込むが如くの威力であり、初めてギアを纏ったときとは見間違えるような動きでどんどんノイズを粉砕していく。

「良い動きだ。見間違えるようだぞ」

「ありがとうございます!風鳴師匠のお陰です!」

「おじさまが鍛えたのなら納得だ!」

まだぎこちない連携だが、以前より遥かに噛み合った動きで翼と響はノイズを倒していく。

「勝利の法則は、決まった!」

ビルドがビルドドライバーのボルテックレバーを回す。

 

『Ready Go!』

 

ボルテックフィニッシュ!』

 

「ハァァアアア!!!」

空中で加速したビルドが放つ飛び蹴り。それは一条の槍となりて、直線状のノイズを全て殲滅する。

「翼さん!」

「ッ!」

翼の背後からノイズが襲い掛かる。

その攻撃を翼は飛んで躱し、響の上空を飛び越えた時、

「立花!」

「っ!はい!」

開いたガジェットをさらに引っ張り、肘にまで伸ばすと、響は脚部のパワージャッキを伸ばし、それを地面に叩きつける事で加速、拳を引き絞り、そのノイズに向かって渾身の一撃を叩き込む。

その一撃を叩き込まれたノイズはたちまち木端微塵になり、炭となって消える。

『全てのノイズの消失を確認しました』

「万丈たちの行方は?」

『すみません。先ほどロストしてしまいました・・・』

「いいや、大丈夫。あの馬鹿の事だ」

友里の申し訳なさそうな声にそう返しつつ、ビルドは、クローズが置いていったであろう通信機を拾う。

「それなりに考えて行動してるはずだ」

戦いが終わり、残ったのはこの森の惨状。

そして、万丈の通信機。

(あの少女の事は万丈に任せるとして・・・俺は俺で、やれる事をやっておくか・・・)

視界に映る、響と翼。

駆け寄る響と笑いかける翼の二人に、仮面の下で顔を()()()()としつつ、戦兎はあのフィーネという女性の事を考える。

(あの女、どこかで・・・)

言いようのない既視感(デジャヴ)を感じながら、ビルドは、思考を巡らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――イチイバル・・・北欧の神ウルの弓にして、第二号聖遺物、か・・・」

資料を読み漁り、戦兎はそう呟く。

「あの少女・・・雪音クリス、だっけ?一体どんな奴なんだよ?」

指令室にて、戦兎はそう尋ねる。

「雪音クリス・・・二年前行方知れずとなった、ギア装着候補の一人だ。そして、バルベルデ共和国にて、内戦で両親を殺害された戦争孤児だ」

「戦争・・・」

その言葉に、戦兎は苦い顔をする。

かつて、戦争の火種となったライダーシステムを作った本人であるがゆえに、戦争という言葉は戦兎の心に強く響く。

「まさか、イチイバルまで敵の手に・・・」

「二年前か・・・ライブ会場の惨劇といい、なんで二年前の物が出てくるんだよ・・・ああ、最っ悪だ」

「何かの因縁か、誰かの策略かは分からんが、とにかく放っておく事は出来ない」

「しかし、聖遺物を力に変えて戦う事において、我々の優位性は完全に失われてしまいました」

「敵の正体・・・フィーネの目的は・・・」

「その手の資料があればな。当然ネットには出てねえと思うし」

「そういえば龍我君、通信機置いてあの少女の事を追いかけてるんでしょうけど、大丈夫かな・・・」

「あの馬鹿なら何の問題もねえよ」

「だといいのだけれど・・・」

そこで、扉が開いて響と翼のメディカルチェックをしていた了子が戻ってくる。

「深刻になるのは分かるけど、シンフォギアの装者は二人とも健在、さらに仮面ライダーもいるんだから、頭を抱えるにはまだ早すぎるわよ」

そう言う通り、響も翼、戦兎も無事だ。行方が分からなくなった万丈は怪我をしていてもあの程度でくたばるような根性なしではない。

だから、そこまで心配する事はでない。心配事があるとすれば、あの少女の事だろう。

「翼、全く、無茶しやがって」

弦十郎の言い分は、まだ入院している必要のある翼に対する咎だろう。

「独断については謝ります。ですが、仲間の危機に伏せっている事など出来ませんでした。立花は未熟な戦士です。半人前ではありますが、戦士に相違ないと、確信しています」

「翼さん・・・」

思ってもみなかった翼からの言葉に、響は驚く。

「完璧には程遠いが、立花の援護ぐらいは出来るかもな」

体の調子を確かめつつ、翼は響にそう言う。

「・・・私、頑張ります!」

そして期待に応えるという意気込みをするかのように、響はそう返した。

「響君のメディカルチェックも気になる所だが・・・」

「ご飯を食べて、ぐっすり眠れば、元気回復です!」

「どんな理論だそりゃ・・・」

呆れる戦兎。だが、その思考は別の事に回っていた。

(雪音クリスのシンフォギア・・・二年前のライブ・・・ライブの目的は、確かネフシュタンの鎧の起動実験であり、その時にイチイバルも盗まれた・・・その事は、おそらく日本政府でも一部の人間しかしらず、アメリカ政府も知る由もない筈だ・・・だとすれば、この一連の事件の犯人はおそらく――――)

「にょわぁぁああなんて事をぉぉおお!?」

突然、響が悲鳴を上げるものだから強制的に思考が中断させられる。

「なんだ!?」

「いや、単純に櫻井女史が立花に悪戯しただけだ。気にするな」

「あ、そう・・・」

(その程度の事で思考中断させられたのか俺はぁぁあ!?)

まさかの展開にダメージを受ける戦兎。

「響ちゃんの心臓にあるガングニールの破片は、前より体組織と融合しているみたいなの。驚異的なエネルギーと回復力は、そのせいかもね」

「融合・・・ですか・・・?」

「「―――!」」

その発言で、戦兎と翼は同時に了子を見た。

(融合・・・?それってかなりやばいんじゃないのか・・・なのになんでコイツはこんな平然としている?)

実際に経験した事はない。だが、人体において本来ありえないものとの融合は、かなり危険の筈。

それが、果たして未知の産物である聖遺物と融合して、果たして無事でいられるのだろうか。

(了子さん・・・貴方は一体・・・?)

戦兎は、了子の事を、じっと見ていた。

 

 

 

 

 

その一方で、

「ハア・・・ハア・・・」

クリスは、走っていた。逃げる為に、あの、化け物から逃げる為。

「くそ!なんだってこんな事に・・・!」

どれだけ走っても走っても追いかけてくる。まるで体力が無尽蔵であるかのように。

ギアは解除され、あとは自らの力で走るしかない。

走って逃げて逃げ続けて、それで曲がる路地。すぐに傍の物陰に隠れて、追手をやり過ごそうとする。

音が聞こえる。その音が一度止まり、また動き出すような音が聞こえ、遠ざかっていく。

「・・・・・ほっ」

どうやら行ったようだ。

「やっと巻いた・・・」

疲れを知らないのかという程で追いかけてくるものだからすっかり疲れてしまった。

だが、ここで立ち止まる訳にはいかない。

「すぐに、フィーネの所に行かねえと・・・」

「キュイ!」

「うわぁ!?」

目の前に、ソイツはいた。

小さくて青い、四角い胴体を持った小さな竜。

自らの主人の、自分の居場所を知らせる化け物。

「くそ!なんなんだよぉ!」

その小さな化け物から逃げるように走り出したクリスだが、

「やっと捕まえた」

「ッ!?」

駆け抜けようとした途端に何者かに捕まる。

その何者かとは言うまでもない。

 

―――万丈だ。

 

「しばらくドラゴンが追いかけてくれっから、飯買ってきておいてやったぞ」

「キュルッキュイ!」

「は、はあ!?」

こちらが必至になって逃げている間に、そんな悠長な事をやっていたのか。そしてなぜかドラゴンは誇らし気だ。

「お前、どこまでアタシの事を馬鹿にするつもりだ!?」

「馬鹿じゃねえよ筋肉をつけろ」

「お前の事じゃねえよ!?」

ダメだ。こいつはすさまじいまでに頭が悪い。

そんな事を考えていると、目の前に何かが突き出される。

 

あんパンだ。

 

「・・・」

「腹減ってるだろ?」

「ば、馬鹿にすん――――」

 

ぐぎゅるるる・・・・

 

「・・・」

「ほら見ろ。食っとけよ」

「キューイ!」

バナナを食べながら、万丈はクリスにあんパンを押し付ける。

だが、クリスは尚も万丈を睨みつける。

「別に毒とか入ってねーぞ?すぐそこのコンビニで買ってきたんだからよ」

「信用できるか!敵の与える食いもんなんて!」

走り出すクリス。

「あ、おい!」

その後を万丈はバナナを食いながら走り出す。

(くそ!なんで振り切れないんだ!)

万丈はなおもバナナを食いながら追いかけてくる。バナナを食いながらである。

だというのスピードが一切衰える事なく追いかけてくる。

「ちくしょぉぉぉおお!!ついてくんな変態ー!」

「変態じゃねえよ!?何言ってんだ!?」

幸か不幸か、おまわりさんはこなかった。

 

 

 

「ハア・・・ハア・・・」

「大丈夫か?牛乳飲むか?飲みかけだけど」

「・・・!」

それを聞いてすぐさま万丈から牛乳を奪い取って飲み干す。

「お、なんだ飲みたかったんじゃねえか」

「勘違いすんな。これに毒が入ってないから飲んだだけだ」

「コンビニで買ってきたもんにどうやって毒入れんだよ・・・」

もちろん、万丈にそんな頭はないのだが、それをクリスが知る由もないのは当然の事である。

それと、さっきからクリスの頭の上を飛び回っているクローズドラゴンはあの赤色の姿から青色に戻っている。

(どーなってんだこりゃ・・・)

以前までは普通のクローズで戦っていた。だがそれでは勝てないと思い、グレートクローズでクリスと戦ったわけだが、どういう訳か変身を解除した途端、金色だったグレートドラゴンエボルボトルが黒く変色してしまったのだ。

まるで力を失ったかのように。

とにかく、これでグレートへの変身は出来なくなった。

今後はいつも通り、通常のクローズで戦う事になるだろう。

「・・・ってか、お前食いかけなら食べるのかよ」

「毒が入ってるかもしれないからな。もしくは睡眠薬でアタシを監禁するかもしれねえし」

「しねーよそんな事。てか、食いかけ食うってハイエナか」

「アタシは死肉を漁ってんじゃねーよ!?」

万丈は仕方がなくあんパンを一つ開けて人齧りしてからクリスに渡す。

それを奪い取るようにクリスはそれを受け取り、一気に口に頬張る。

「言っておくが、礼は言わねえからな」

「分かってるっつーのんな事。もともと礼言われる為に買ってきたんじゃないんだからよ」

「はっ!どーだか」

鼻で笑うクリス。未だ、万丈に対する信頼はないようだ。

ふと、そこでどこからともなく泣き声が聞こえた。

「ん?」

「なんだ?」

そちらに向かってみると、そこにはベンチに腰掛けて泣く女の子と、そのすぐ傍には男の子が困っているような様子でそこに立っていた。

「泣くなよ!泣いたってどうしようもないんだぞ」

「だって・・・だってぇ・・・!」

それを見て二人が思った事はこうだ。

「おいこら、弱いものを虐めるな」

「何してんだよ」

そう言って二人は彼らに近付く。

「虐めてなんかないよ。妹が・・・」

「うわぁあん!」

声を泣き出す少女。それを見たクリスは腕を振り上げる。

「虐めるなって言ってんだろ!」

「うわ!?」

思わず頭を庇う少年。その腕が振り下ろされる、その前に、何故か少女―――妹が兄とクリスの間に立る。

「おにいちゃんをいじめるな!」

「はあ・・・?」

思わず首を傾げるクリス。

「お前が兄ちゃんに虐められてたんじゃねえのか?」

「違う!」

万丈が聞けばそう言い返してくる。訳が分からず首を傾げていると、兄が説明する。

「父ちゃんがいなくなったんだ。一緒に探してたんだけど、妹がもう歩けないって言ったからそれで・・・」

「迷子かよ・・・だったらハナッからそう言えよな」

「いやお前が早とちりしたんだろ?」

「自分の事を棚に上げて言うな!」

ごもっともである。

「だって・・・だってぇ・・・」

さらにぐずる少女。

「おい、こら泣くなって!」

「おい待て、そこまで言ったら―――」

次の瞬間にはすでに兄の方が妹とクリスの間に入ってきていた。

「妹を泣かせたな」

「あーあー」

「うるっさい!あーもーめんどくせえ!一緒に探してやるから大人しくしやがれ!」

そうしてクリスと万丈による小さな兄妹の親探しが始まる事になった。

 

 

 

 

 

色とりどりの光が輝く街中を歩く万丈とクリス、そして迷子の兄妹。

妹の方は万丈に肩車をしてもらっており、これなら高い視線から親を探しやすいだろう。が、クローズドラゴンに夢中でその手段はすでにアウトになっている。だってドラゴンに視線が行ってるから。

馬鹿ながらに良い発想である。

「~♪」

そんな中で、クリスは一人鼻歌を歌っていた。

「なんだ。歌好きなんじゃねえか」

「は?」

いきなり万丈からそんな風に言われる。

「何言ってんだ。歌なんて大っ嫌いだ。知ってんだろ」

「歩きながら歌を唄ってる奴が、なんで嫌いなんて言えるんだよ」

「うるせえ・・・ママがいつも歌ってたから、それを覚えてただけだ」

「なんだ?お前の母ちゃん歌手かなんかだったのか?」

「まあ、そんな所だ・・・馬鹿やらかして死んじまったがな・・・」

「馬鹿・・・?」

その意味が分からずにいると、

「あ、父ちゃん!」

「ん?」

「あ!」

どうやら、父親が見つかったようであり、交番から出てきた男に駆け寄る。

万丈は妹を降ろし、父親の元に向かわせる。

「お前たち、どこに行ってたんだ?」

「おねえちゃんとおにいちゃんがいっしょにまいごになってくれた!」

「おい」

「違うだろ。一緒に父ちゃんを探してくれたんだ」

「すみません。ご迷惑をおかけしました」

父親が頭を下げて謝罪する。

「いや、なりゆきだからそんな・・・」

「人を助けんのは当たり前の事だ」

その謝罪にそう返すクリスと万丈。

「ほら、二人にお礼は言ったのか?」

「「ありがとう」」

礼儀正しく、頭を下げる兄妹。

「仲良いんだな・・・そうだ。どうすればそんなに仲良くなれんのか教えてくれよ」

そう尋ねると、妹は兄の腕に抱き着き、兄が代わりに答える。

「そんなの分からないよ。いつも喧嘩しちゃうし」

「喧嘩しちゃうけど、仲直りするから仲良し!」

その返事に、クリスはただ黙る。

「理屈じゃねえんだよそういうのは」

隣の万丈がクリスにそういう。

「俺だって戦兎と喧嘩する事はある。だけど、その度に互いの事が知れて、んでもって喧嘩する前より信頼できるようになる・・・あー、なんというか、まあそんなもんだ」

「なんじゃそりゃ・・・馬鹿かお前は」

「馬鹿じゃねえよ筋肉つけろ筋肉を」

「そこじゃないだろ・・・・」

論点が違う万丈の返しに、クリスはやはり呆れる。

「じゃあねー!」

あの後、あの兄妹と別れて、またあの公園に戻る。

「一体いつまでついてくる気だよ・・・」

「実を言うと帰り方が分かんねえだわ」

「キュルッキュ!」

「はあ!?」

ハッハッハ、と笑う万丈に今度こそ驚くクリス。

「お前・・・通信機とかそういうのあるだろ?」

「いやー実は携帯とかその手の奴全部置いて来てさ」

「なんでだよ!?」

本当に馬鹿なのか。

「どうしてそういう大事なもん全部おいてこれるんだよ!?」

「あれがあったらお前の居場所すぐに分かっちまうだろ?」

「はあ?何言ってんだお前・・・」

「なんか良くは分からねえけどよ、お前にはやりたい事があって、んでもって今捕まるのは都合が悪い・・・違うか?」

鋭い指摘。万丈曰くの第六感か。

「それでお前に一体なんのメリットがあるんだよ?」

「メリット?んなもん考えてねえよ」

「はあ!?」

ばっさりという万丈に、クリスは開いた口が塞がらない。

「ななな何も考えてねえてお前馬鹿なのか!?やっぱ馬鹿なのか!?」

「そんな馬鹿馬鹿言うな!」

「いーや馬鹿だ!お前大人の癖に天性の大馬鹿野郎だ!」

よもやこの様な人間がいるだなんて。

自分が今まで見てきた人間の常識が覆るような男がこの世に存在するだなんて。

(いや、これも演技かもしれねえ。アタシの油断を誘って、体よくは裏切って・・・)

「そういやお前なんでボトルなんて狙ってんだよ?」

「誰が教えるか!いいか?アタシとお前は敵同士だ!そんなアタシたちが仲良く情報交換なんてするか?しないだろ?敵だった奴が味方になるだなんてありえねえんだよ」

「いやありえるぞ。実際そうだったし」

「はあ!?何言って・・・」

「いやー、あの時は大変だった。街は壊れるわ敵攻め込んでくるわでさー・・・」

ふと、万丈の顔に影が差す。

「・・・ほんと、色々あった」

「・・・」

その雰囲気に、クリスは、なんとも言えなくなる。

(こいつ・・・何かあったのか・・・?)

憂いのある、万丈の顔に、クリスは自分に近いものを感じた。

「・・・あー、もう!」

ふと、クリスは苛立ちを抑えるように頭を掻き出す。

「しょうがねえ。ついてくるなら勝手にしろ!」

「お、いいのか?」

「お前がどこまでも付いてきそうだからな・・・だけど、付いてきて後悔するんじゃねえぞ」

「はっ、逃げて後悔するより立ち向かって後悔した方が何倍もマシだ」

「そうかよ・・・」

「そんじゃ、改めてよろしくな、()()()

そう言って、万丈は手を差し出す。

「・・・よろしくってどういう事だよ?」

「え?今のそういう意味じゃねえの?」

「どこをどうとったらそうなるんだ!?」

ダメだ。この馬鹿さ加減にはいい加減なれるしかない。

クリスはそう諦めて、踵を返して歩き出した。

その後を、万丈は追いかけていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――装着した適合者の身体機能を引き上げると同時に、体表面をバリアコーティングする事で、ノイズの侵食を保護する機能、更には、別世界にまたがったノイズの在り方を、インパクトによる固有振動にて調律、強制的にこちら側の世界の物理法則下に固着させ、位相差障壁を無効化する力こそ、シンフォギアの特性である。同時に、それが人とシンフォギアの限界であった。

 

シンフォギアから解放されるエネルギーの負荷は、容赦なく装者を蝕み、傷つけていく。

 

その最たるものが、『絶唱』―――人とシンフォギアを構成する聖遺物とに、隔たりがある限り、負荷の軽減はおよそ見込めるものではない。

 

それは、了子自身が定説した櫻井理論でも結論付けられている。

 

 

そんな了子のいる部屋には、どういう訳か、響の映る写真ばかりが飾られていた。

 

 

―――唯一理を覆る可能性があるならば、それは立花響。人と聖遺物の融合体第一号。

 

 

天羽奏と風鳴翼のライブ形式を模した起動実験で、オーディエンスから引き出され、さらに引き上げられたゲインにより、ネフシュタンの起動は一応の成功を収めたのだが、立花響は、それに相当する完全聖遺物『デュランダル』をただ一人の力で起動させる事に成功する―――

 

 

そんな了子が使っているマグカップには、紫の蝶の絵柄―――

 

 

―――人と聖遺物が一つになる事で、さらなるパラダイムシフトが引き起こされようとしているのは、疑うべくもないだろう。

人が負荷なく絶唱を口にし、聖遺物に秘められた力を自在に使いこなす事が出来るのであれば、それはあるけき過去に施されし、()()()()()()()()()()から解き放たれた証。

 

真なる言の葉で語り合い、()()()()()()が自らの手で未来を築く時代の到来。

 

過去からの超越――――だが――――

 

 

ただし、その部屋には、二枚、響ではない人物の写真があった。

 

 

―――突如現れた、聖遺物以外の方法でノイズと戦う者たち、桐生戦兎と万丈龍我。この私ですら知らない超技術をもって、本来触れられない筈のノイズに触れ、そして打ち倒す、シンフォギアに匹敵する力を持つ『ライダーシステム』を持つ者たち―――

 

それを思うと、了子は、握った拳に力を込めた。

 

―――聖遺物ではない未知の物質、()()()の知らないものを駆使して戦う仮面の戦士。

完全なるイレギュラー。

まるで、()()()からやってきた、異界の戦士。

果たして彼らはどこから現れたのか――――

 

「こことは、違う世界からやってきた・・・もしくは、()()()()()か・・・」

 

どちらにしろ、不確定要素である事には変わりはない。

あのボトルの使い方は、彼らの専売特許。しかし、ボトルさえ奪えば――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――二課にある、戦兎の自室―――の前を偶然通りかかった翼は、ふと戦兎の部屋の前で立ち止まった。

(そういえば、雪音を見て何かのアイディアが浮かんだと言っていたが・・・)

一体なんだろう。と思っていたら、

「完っ成だ!」

「うわ!?」

突然の叫び声が聞こえ、翼は思わず驚く。

「か、完成・・・?」

恐る恐る扉を開けてみると、そこには、丁度椅子から立ち上がった戦兎の姿が見えた。

その頭からは、まるで兎の耳のようなくせ毛が飛び出していた。

「クリスの変形する銃器を見て思いついた武器・・・その名も『ブラストモービル』!」

「ぶ、ブラストモービル・・・?」

そう声を漏らした瞬間、戦兎の眼が翼に向いてギラリと光る。

「ひっ」

その眼光は百戦錬磨の翼すらも竦み上げさせる程の威力で、さらには一瞬にして翼との距離を詰め、眼前で矢継ぎ早に赤い長方形の装置―――ブラストモービルについて説明しだす。

ちなみに翼の背後はすでに閉じた扉で塞がっている為逃げられない。

「このブラストモービルの凄い所はな、変形機構『マルチギミックサック』による変形でな、拳銃だけどとんでもない威力の弾丸を連射出来る『ブラストシューター』、グリップ部分を倒して銃口とは反対側からビームソードを出す『ブラストブレード』、二つくっつけて双身刀にする『ブラストデュアルソード』の三段階!凄いでしょ?最っ高でしょ?天っ才でしょ?」

「そ、そうか、それは凄いな・・・アハハ・・・」

もはや狂気染みた戦兎の説明に翼はどうにかしてこの状況から逃れる方法を模索していた。

だが、翼は知らない。

 

戦兎の本当の恐ろしさは、これからだと言う事を。

 

「試したい・・・」

「は?」

折りたたんでいたグリップを起こす戦兎。翼は一瞬何を言っているのか分からなかったが、戦兎が徐々に翼に銃口を向けようとしている事で気が付く。

「まて・・・・待て待て待て!?いくら出来たばっかで気持ちが昂るのは分かるがいくらなんでも人に向ける奴があるか!?」

「科学に犠牲はつきものだ・・・」

「愛と平和を愛する科学者とは思えない発言!?い、いや、待って!お願い!お願いだからそれを向けないで!シンフォギアも纏ってないから!」

恐ろしい笑みを浮かべて涙目の翼に銃口を向ける戦兎。

だが、すぐに笑みを引っ込めて銃口を上に挙げた。

「ま、これを使うにはそれに見合うボトルの成分が必要なんだけどな」

「ほっ・・・」

安堵する翼。

「ボトルの成分というと、何が必要なんだ?」

「ドラゴンともう一つ」

「万丈のボトルと・・・もう一つ?なんだそれは?」

「いやー実は後先考えずに作っちまって、一つはドラゴンなのは分かってんだけど、問題はもう一つ。ベストマッチであるロックフルボトルじゃない何かのボトルが必要なんだが、今持ち合わせてるボトルのどれにも当てはまらないんだよな・・・」

「どれにも当てはまらない?それじゃあどうするんだ?」

「ん・・・諦めるかな?」

「おい」

思わず叩いてツッコミを入れてしまうが、これではせっかくの発明品もお蔵入りだ。

(どうにかならないだろうか・・・・)

隣で悩んでいる戦兎と一緒に考える翼。

だが、考えても思いつく訳がなく、ただ時間が過ぎていくだけだった。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!

フィーネの屋敷にどうにか戻るクリス。

「毛ほどの役に立たないなんて」

しかしそこでフィーネに斬り捨てられる。

「テメェぇぇええ!!!」

そこへ、クローズが乱入する。

「ダメですね・・・」

その一方で、響は未来とすれ違いを起こしていた。

「今のままでもいいんじゃないかな?」

そして鳴り響く警報。

その戦いの最中で、黒くなったクローズのボトルが輝き出す。

次回『激唱!紅のクローズドラゴン!』

激唱戦場!』

「負ける気がしねぇ・・・!」

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