愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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罪「どうも、この小説のオリキャラ一号の仮称『罪』です。名前はGからになると思います」(CV.堀内賢雄)
ガキ「オリキャラ二号の仮称『ガキ』です・・・ってかなんで俺こんな不名誉極まりない名前なの!?確かに俺の年齢はしr・・・工具と同じだけれども・・・」(CV.松岡禎丞)
罪「それ以外にいい名前が見つからなかったんだろう。それはともかく、おい、桐生戦兎」
戦「おうなんだ?」
罪「実は先ほどからタヤマから『セレナぁぁぁああぁぁあぁあああ!!』・・・と、いう訳なんだが」
戦「オーケー今ので大体状況は分かった」
妹「アハハ・・・すみません今すぐ黙らせてきます」
ガキ「頼んだ・・・っで、今までかなりカオスな事な内容やってましたけど、俺たちもやんなきゃいけないのかな・・・?」
戦「別に、そこまで気負う必要はないと思うぞ。今までが問題なだけだったから・・・」
罪「おい、お前ちょっと来い」
農具「なんデスか?」
戦「おいまでお前ら今から何をするk」
罪「やれ」
ガキ「だが断る!この〇白が最も好きな事の一つは」
ガキ・農具「「自分で強いと思ってるやつに『NO』と言ってやることだ!」」
戦「おいコラいくらCV(中の人)がそういう繋がり多いからってそのネタぶっこむな!?ていうかなんでネタ!?ただの三重パロディだよな!?」
罪「作者がやりたかったから?」
戦「何作者の心境代弁してんだよ。確かに農具のCV茅野さんだけれども、確かに松岡さんと接点多いけどー!」
農具「次はこのネタやってみたいデース!」
ガキ「お、それなら今からでも・・・」
麗人「いきなり割り込んで悪いがこれ以上はネタバレになりかねん。だからそれくらいにしておけ」
農具「はいデース!・・・って何故敵のお前が!?」
ガキ「馬鹿前回も出てただろ」
麗人「あの二人にはずるいずるいと言われて、とりあえず許可を取りによったのだが・・・」
戦「もうバッチリ音入ってるよ。ああもう、それじゃあ波瀾の二十話をどうぞ!」
ガキ「スターバーストストリーム!」
農具「リリース・リコレクションデース!」
戦「だからやめろぉ!!」


作「あ、セレナ誕生日おめでとうです」(遅い
タヤマ「セレナぁぁああぁぁぁああああ!!!」(血涙疾走
作「ぐべぁ!?」(轢かれる


双翼と兎のライジングサルト

―――リディアンの地下。そこにある一室に、未来たちはいた。

 

あの後、フィーネによって二課の施設の機能を全て殺された後、重傷を負った弦十郎を抱え移動。そのままリディアンの電力施設のすぐ傍にある部屋にて、藤尭の情報処理能力によって、どうにか監視カメラなどの映像を見る事が出来ていた。

そして、そこには未来の友人たちもいた。どうやら逃げ遅れてここに急いで避難したらしい。

そして―――クリスが堕ちるところも、彼女たちが戦っているところも、全て、見ていた。

(さよならを言えずに別れて、それっきりだったのよ・・・・なのにどうして・・・・?)

そのクリスの生き様を見て、未来はただ言葉を失っていた。

(お前の夢・・・そこにあったのか?そうまでしてお前がまだ夢の途中というのなら、俺たちはどこまで無力なんだ・・・!?)

そして弦十郎は、ただただ悔しがる事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

泣き崩れる響。

「そんな・・・せっかく仲良くなれたのに・・・」

「夢が見つかったって言ってたじゃねえかよ・・・それなのに・・・馬鹿野郎・・・!」

クローズは拳を握りしめる。

「こんなの・・・嫌だよ・・・嘘だよ・・・」

ただ目の前にある現実を直視できず、響はその場に手をついて、ただ、己の無力さに打ちひしがれる。

「もっと沢山話したかった・・・話さなかったら、喧嘩することも・・・もっと仲良くなることも出来ないんだよ・・・!」

そんな響に、翼とビルドは何も言わない。

「クリスちゃん・・・夢があるって・・・でも、私まだ聞けてないままだよ・・・」

そんな中で、フィーネの冷徹な言葉が発せられる。

「自分を殺して月への直撃を阻止したか・・・・ハッ、無駄な事を」

嘲笑った。

「見た夢も叶えられないとは、とんだ愚図だなぁ」

フィーネは、クリスの所業を嘲笑う。

「・・・笑ったか?」

翼が、呟く。

「大切なものを守り抜く・・・そんな、誰にでも出来ないような事をやってのけたアイツを・・・無駄と笑ったのか!?」

ビルドが、咆える。

翼の脳裏に映るのは、二年前、絶唱を使い、その身を滅ぼした奏の姿。

ビルドの脳裏に映るのは、決死の行動で最強の敵の力を封じ、そして消えていった氷室幻徳の雄姿。

その行為を、今、無駄と称して嘲笑った。それは、彼らにとっては到底受け入れがたい言動だ。

翼は剣を向け、ビルドは構える。

その時だった。

 

「――――それガ」

 

「「「―――ッ!?」」」

突如として聞こえた、おぞましい歪んだ声。

そして、その歪んだ声を発したのは――――その体を真っ黒に変え、獣のように成り果てた――――響だった。

「夢ト命ヲ握リシメタ奴ガ言ウ事カァァアァァアアアアァァアアア!!?」

獣のような方向が、その場に轟いた。

その変化に、フィーネの口元が歪んだ。

「おい、立花・・・!?」

その変化に、戸惑う翼。

「あれは、あの時と同じ・・・!?」

かつて地下鉄で見た響の黒い姿。

今の響は、その姿を完全に真っ黒に染め上げて、獣のように咆哮を挙げていた。

「融合したガングニールの欠片が暴走しているのだ。制御出来ない力に、やがて意識が塗り固められていく・・・」

「やはり実験か!?」

ビルドが叫ぶ。

「お前はその事を知っていて、響を実験に使っていたんだな!?」

記憶になくとも、かつて自分も同じ事をしていた戦兎だからこそ言える事だった。

「実験を行っていたのは立花だけではない」

その問いに、フィーネは答える。

「見てみたいとは思わんか?ガングニールの翻弄されて、人としての機能が損なわれていく様を・・・」

「くそったれが・・・!」

「お前はそのつもりで立花を・・・奏を・・・!」

その時、響が地面に手をついて四つん這いとなり、そのままフィーネに向かって飛ぶ。

「ッ!?立花!」

翼が叫ぶも、響は止まらない。そのまま響は、フィーネに襲い掛かる。

 

 

―――その寸前、クローズが響を殴り飛ばした。

 

 

「ガァァア!?」

そのまま横に吹っ飛び、瓦礫に激突する。

「万丈!?」

翼はクローズの行動に驚く。

「・・・なんのつもりだ?」

フィーネが、クローズに問いかける。だが、クローズは何も答えない。

代わりに、ビルドたちの方を見た。

しばり交わる、クローズとビルドの視線。

「・・・・分かった」

ビルドは、新たにボトルを二本取り出す。

「響は任せたぞ」

「おう」

 

パンダ!』『ロケット!』『ベストマッチ!』

 

「桐生・・・万丈・・・?」

「響はアイツに任せて、俺たちはフィーネをやるぞ」

 

『Are You Ready?』

 

「・・・分かった」

刀を構える翼。

 

「ビルドアップ!」

 

ぶっ飛びモノトーンロケットパンダ!イェイ!』

 

ロケットとパンダ。文明の繁栄の象徴と絶滅危惧種の相反するフォーム『ロケットパンダフォーム』。

「任せたぞ。万丈」

「・・・おう」

ビルドと翼が、フィーネの前に立つ。

「・・・カ・ディンギルの動力はデュランダルだな」

ふと、ビルドが問いかける。

「いかにも」

それをフィーネは肯定する。

「いかに月を破壊する事の出来る兵器だとしても、それがただの一発だけの消耗品であれば本末転倒・・・失敗した時の為に、もう一発、いや、何度でも撃てるように設計するのが大砲の構造だ。そして、あの馬鹿げた砲撃を撃つには、それ相応のエネルギー源が必要だ。あの時、クリスにデュランダルを狙わせたのも、カ・ディンギルの力の供給源を確保する為だな」

「その通り。エネルギー炉心に不滅の刃『デュランダル』を取り付けてある。それは尽きる事の無い無限の心臓なのだ・・・・」

「だが、お前を倒せば、カ・ディンギルを動かすものはいなくなる・・・!」

翼が刃を向ける。

「やれるものならやってみろ」

「ああ、やってやるよ!」

ビルドがそう叫ぶ傍らで、クローズは暴走する響と対峙する。

「・・・」

「ガァァァアァァアアァァアアア!!!」

咆哮を挙げる響。

それを見て、万丈は、かつて戦兎が暴走した時の事を思い出し、そして、自分が暴走した時の事を思い出す。

 

そして、その結果生み出された惨劇を、脳裏に思い浮かべて。

 

「・・・・お前を止めるぞ、響・・・!」

「グガァァアアァアアァァァァアアアアァアアアアァァァァァアアアアァァアアアアアァアア!!」

響が絶叫を挙げて、クローズに襲い掛かった。

 

 

 

「どうしちゃったの響・・・!?」

クローズに襲い掛かる響を見て、未来は声を挙げる。が、その響はいとも容易くクローズに殴り飛ばされる。

しかしそれでも立ち上がり、ただ本能のままにクローズに襲い掛かる。それを再び、クローズが殴り、今度は地面に叩きつけた。

「元に戻って!」

そう声を挙げるも、ここから聞こえる筈がなく、画面の向こうの響はクローズと壮絶な戦いを繰り広げていた。

「もう終わりだよ・・・私たち・・・」

そこで板場が、そのような声を挙げる。

「学院がめちゃめちゃになって・・・響もおかしくなって・・・」

突然の非日常に放り込まれて、完全に弱気になっているのだ。無理もない。

「終わりじゃない。響だって、私たちの為に―――」

「あれが私たちを守る姿なの!?」

未来の反論を真っ向から否定するように、板場が泣きながら怒鳴る。

それと同時に、響の拳がクローズを吹き飛ばし、すぐさま追いついては頭を掴み、そのまま地面に叩きつけるように投げた。

『ぐあ・・・』

『グルァァァアアァアア!!』

咆哮を挙げて、地面に倒れたクローズに跨り何度もその拳を叩きつける。

その様子に、安藤も寺島も恐ろし気に見ていた。

それでも、未来は言う。

「私は響を信じてる」

その響の姿から、目をそらさず、真っ直ぐに。

「・・・私だって響を信じたいよ・・・この状況はなんとかなるって信じたい・・・でも・・・でも・・・!」

それでも板場は、泣き崩れる。

「板場さん・・・」

「もうやだよ・・・誰かなんとかしてよ・・・!怖いよ・・・死にたくないよぉ・・・!」

頭を抱えて泣き喚く。現実に耐え切れずに、ただただそこに蹲る。

「助けてよぉ・・・響ぃぃい・・・・!!!」

そう、泣き叫んだ時だった。

『――――いい加減にしろぉぉぉおお!!』

クローズが、叫んだ。

それと同時に、青い龍がクローズの拳から放たれ、響を吹っ飛ばしてそのまま地面に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

一方で、

「おぉぉお!!」

ロケットの勢いで飛び、右手の鉤爪を振り下ろす。その先にはすでに刃の鞭。

鍵爪と刃の鎖が直撃―――だが拮抗せずにいとも容易く刃の鎖が両断される。

「何ッ!?」

「オラァ!」

すかさず懐に飛び込んで左足で後ろ蹴り(ソバット)を叩き込む。

「ぐぅ・・・!?」

「ハァァア!!」

そこへ翼の上空から巨大化した剣による『蒼ノ一閃』を放つ。

それを寸前で躱す。

「調子に乗るなァ!」

すかさずフィーネは刃の鎖を振るい、ビルドに叩きつけようとするも、ビルドは肩の噴出口で飛び上がり、逃げる。

「これでも喰らってろ・・・・!」

そして左手を向けるなり、左手を覆うグローブからいきなりレーザーが発射される。

それをフィーネは鞭で陣を作り出し、それによって出来た盾でそのレーザーを防ぐ。

 

ASGARD

 

「んだと・・・!?」

「ふんっ!」

防がれた事に動揺するビルドに、フィーネはすかさず刃の鞭を飛ばし、その足に絡みつかせる。

「しまっ・・・・」

そのまま一気に地面に叩き落とされる。

「桐生!」

「余所見をしている場合か!?」

「ッ!?」

すかさずフィーネが刃を鞭を振るい、翼に叩きつける。

「ぐあ!?」

直撃を貰い、吹き飛ばされるかと思いきや、その腕に刃の鞭が絡み、引っ張られ、そしてすかさずその顔面に拳の一発を貰う。

「かはっ――――」

そのまま吹き飛ばされ、地面を滑る。

しかしそこへ、ビルドが叩きつけられた場所の土煙の中から何かが凄まじい勢いで飛んできて、それがフィーネに直撃、吹っ飛ばす。

それは、フィーネを吹き飛ばした後に、引き返していき、やがて、左拳を突き出したビルドの左腕に戻り、その体を分解させ各部パーツとして装着された。

「ハア・・・ハア・・・どうだ、俺のロケットパンチのお味は・・・!」

ビルド・ロケットパンダフォームの固有武装であるコスモビルダーである。

しかし、吹き飛ばされたフィーネは、何事の無かったかのように立ち上がる。

その右肩の鎧が吹き飛び、中が粉砕骨折しているにも関わらず、だ。

「この程度の傷、ネフシュタンの前では無意味だ」

そうフィーネが言うと、彼女の体からパキパキという音が聞こえたかと思うと、歪んでいた肩が元に戻り、さらには鎧すらも修復してしまう。

「なんだと・・・!?」

「私と一つになったネフシュタンの再生能力だ。おもしろかろう?」

「人の在り方を捨て去ったか・・・!」

頬を赤く腫れさせて立ち上がる翼がそう呟く。

その時、カ・ディンギルに変化が起こる。

「なんだ!?」

「まさか、もうチャージが始まったのか・・・!?」

「その通り。さあどうする?急がなければカ・ディンギルは再び発射されるぞ?」

フィーネが挑発する。

「・・・・桐生」

ふと、翼が隣のビルドに話しかける。

「なんだ?」

「・・・私がどうにかする。だから・・・」

ビルドは思わず翼の方を見た。そんなビルドを見返す翼の眼を見た瞬間、ビルドは何も言えなくなり、ただ、絞り出すように答えた。

「・・・分かった」

「・・・ありがとう」

翼は、短くそう呟いた。

その時、青い龍が、響を上空へ吹き飛ばし、地面に叩きつけた。

 

 

 

 

「いい加減にしろよ・・・お前・・・」

クローズドラゴン・ブレイズによる攻撃を浴びてもなお立ち上がる響に、クローズは言う。

「その拳は、一体なんの為の拳だ」

響が飛び掛かる。その響の突き出された拳を掴んで、頭をひっつかんで、そのまま背負い投げの要領で背後に叩きつける。

「ガァッ!?」

「誰かを壊すだけの拳なのか!?誰かを悲しませるものなのか!?ただ流されるままに暴れて、その先に一体何があるんだってんだよ!?」

クローズの抑えつけを逃れ、響は踵落としをクローズの脳天に叩きつける。

クローズの足元が大きく陥没する。

「・・・・違うだろ」

しかし、クローズは耐えきった。

「お前のその手は、誰かと手を繋ぐためのものだろ!?」

その足を掴んで、もう一度地面に叩きつける。

「束ねて繋げる力の筈だろ!?」

その響の顔面に、拳を叩きつける。

「受け継いだ力なんだろ・・・・」

もう一度叩きつける。

「テメェの恩人から貰った、大事な力なんだろ!?」

もう一度、叩きつける。

 

クローズのドラゴンフルボトルが、最愛の人の形見であるように―――

 

「ガァァアアァアア!!!」

響が立ち上がり、クローズを蹴り飛ばす。

靴底を擦り減らしながら、後退したクローズ。そして響は、右手のバンカーを叩き起こす。

それに対して、クローズはボルテックレバーを回す。

「その力を、そんな事の為に使ってんじゃねえよ!!!」

 

『Ready Go!』

 

「グガァアァァァアアアアアァァァアアアァァァアアアア!!!」

「ウオリャァァァアアアアァァアアアアアァァアァアアア!!!」

 

 

ドラゴニックフィニッシュ!!!』

 

 

二人の拳が、相手に叩きつけら、凄まじい衝撃を巻き散らす。

交錯した二人の一撃は、どうなったのか。

「・・・違うだろ」

響の拳は、クローズの鳩尾に決まり―――

「その力は、こんな事の為に使うもんじゃねえだろ」

クローズの拳は、響の顔面に直撃する寸前で止まっていた。否、止めていた。

鳩尾に突き刺さっている拳を、クローズは反対の手で掴む。

「誰かから貰ったその力を、誰かを壊すために使うな。それじゃあ、ソイツの想いを裏切る事になるんだぞ」

「・・・・」

その拳をそっと引き離し、クローズは、こつん、と響の額に拳を当てた。

「だからもう、戻って来い」

「・・・・・ぁ」

次の瞬間、響の黒が、消えていった。

クローズの当てた拳の所から、一気に、引いていくように消えていく。

その姿はシンフォギアを纏っておらず、いつもの制服姿に戻っており、その両目からは、涙を流し、やがて膝をついた。

「・・・ご・・・め・・・なさい・・・・ごめん・・・なさい・・・!!」

体を震わせて、響は、クローズに握りしめられた拳を、もう一方の手で掴んだ。

「わた・・・わたし・・・わたし・・・!」

「分かってる。お前は何も悪くない。誰も死んじゃいない。だから泣くな」

「でも・・でもぉ・・・わた、しの・・・手は・・・誰かと・・・手、繋ぐため・・・に・・・あるのに・・・わた・・・りゅう・・・がさんを・・・!!」

まるで、小さく怯える子供のように、響は泣きじゃくる。

「分かってる。俺はなんともない。だから泣くな」

そう言いながら、クローズは響の頭を撫でて、響を慰める。

ただぐずり泣く響と慰めるクローズ。

その時だった――――

 

「立花ァぁぁああぁぁあああああ!!!」

 

翼の叫びが、響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――お前がいるから、私は、心置きなく歌える・・・」

「だから、それは洒落にならねえって言ってるだろうが・・・」

「分かっている。でも、こんな気持ちは初めてなんだ」

フィーネに向かって歩きながら、翼はビルドに向かってそう言う。

「奏と一緒に歌う時とは違う安心感。奏が隣にいてくれる時とは違う高揚感。お前が聞いてくれているというだけで、私は、安心して天高く舞い上がれそうな気がするんだ」

フィーネの前に立ち、翼は、キッ、とフィーネを睨みつけた。

「どこまでも『剣』といくか」

「今日に、折れて死んでも、明日に人として歌うために。風鳴翼が歌うのは、戦場ばかりでないと知れ!」

そう言い放つ翼。

「人の世界が剣を受け入れる事などありはしない!」

まるで蛇のように唸った刃の鞭が、翼に襲い掛かる。

「いいや、受け入れるさ」

その刃の鎖を、ビルドが弾き飛ばす。

「コイツがただの『剣』じゃなく、『風鳴翼』という一人の人間である限りッ!」

ビルドがコスモビルダーを放つと同時に、翼が飛び上がる。

コスモビルダーは真っ直ぐフィーネの方へ飛んでいき、それをフィーネは躱す。その上空から翼が飛び掛かるもすかさず刃の鞭を叩きつけようとする。

しかしその刃の鞭による攻撃を、翼は脚部のブレードで迎撃、弾いたところで、剣を巨大化させて『蒼ノ一閃』の一閃を放つ。

その一撃をフィーネは刃の鞭の切っ先を叩きつける事で相殺。その直後、コスモビルダーがフィーネの眼前に接近、さらにビルドも接近して右手のジャイアントスクラッチャーで交差時に強烈な斬撃を与え、コスモビルダーが直撃する。

「ぐあぁぁあぁああ!?」

吹き飛ばされるフィーネは、そのままカ・ディンギルの外壁に激突し、落下する。

「翼ァ!」

 

「――――去りなさい!無想に猛る炎!」

 

飛び上がり、刀を空中へ投げ、凄まじく巨大な大剣へと変形させて、その柄頭を蹴ってフィーネに向かって叩きつける。

 

天ノ逆鱗

 

天ノ逆鱗が、フィーネに向かって突き進む。

それに対して、フィーネはASGARDを三重に展開。そのASGARDに、翼の天ノ逆鱗が叩きつけられる。

凄まじい衝撃が迸り、周囲一帯に暴風が吹き荒れる。

翼の天ノ逆鱗はASGARDを貫く事はなく、その姿勢を一気に直立させる。

そのまま巨大な大剣は()()()()()()()()()()()()倒れていき、その上に乗る翼は二本の刀を携えて飛ぶ。

そして、その双剣から赤い炎を迸らせ、翼はカ・ディンギルに向かって飛ぶ。

 

炎鳥極翔斬

 

そう、翼とビルドの狙いは初めから―――

「初めから狙いはカ・ディンギルか!?」

「その通りだよ!」

 

ウルフ!』『スマホ!』『ベストマッチ!』

 

すぐさま翼を撃ち落とそうとするフィーネの前に、ビルドが飛び出す。

 

『Are You Ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

繋がる一匹狼スマホウルフ!イェーイ・・・!!』

 

灰色とシアンのスマホウルフフォーム。その姿へと再び変身したビルドは、すぐさまボルテックレバーを回す。

 

『Ready Go!』

 

翼へと迫る鎖の鞭。それを、ビルドは、展開した円状に展開したアプリアイコンの上を走る狼に噛ませ、捕まえる。

「何!?」

「翼の邪魔はさせねえ・・・・!」

 

ボルテックフィニッシュ!』

 

がっちりと刃の鞭を噛み込む影色の狼。

「チィッ!」

それにフィーネは舌打ちするも、しかし次なる手段は打っていた。

「だが、これならどうだ!」

次の瞬間、影の狼が加え込むネフシュタンの鎧の刃の鞭の切っ先から、突如として黒いエネルギー弾が生成される。

「これは・・・クリスの・・・!?」

かつて、クリスが放った、破壊の一撃――――

 

NIRVANA GEDON

 

「堕ちろぉぉぉぉぉおお!!!」

「しまったっ・・・避けろ翼ぁぁぁああ!!」

黒い砲弾が、空を駆け上がる翼に迫る。

「くっ・・・!」

だが、気付いた時にはすでに目の前に迫っていて―――

「ぐあぁぁああぁぁあぁああ!!!」

 

砲弾は翼に直撃した――――

 

 

 

(やはり、私では・・・)

意識が、闇に沈みかける。あの砲撃の威力は身をもって知っている。

だから、もう一度飛び上がる事は出来ないだろう。

そう、諦めかけた時――――

 

《―――何弱気な事言ってんだ》

 

懐かしい声が、聞こえた。

 

(・・・奏?)

目の前に立つのは、見間違うはずのない、唯一無二の片翼――――

 

《翼》

 

奏は、翼に手を差し伸べる。

 

《あたしとあんた。両翼揃ったツヴァイウィングなら、どこまでも遠くへ飛んでいける》

 

その手を、翼は掴み取る―――そして、思い出す。

 

(そう・・・両翼揃ったツヴァイウィングなら―――そして―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

《―――そして、勝利への方程式を導いてくれる、あの男が背中を押してくれるなら―――》

 

 

 

 

 

 

「―――翼ぁぁぁあああ!!!飛べぇぇぇええぇえええええ!!!」

 

 

眼を見開く。その目の前には、彼が作り出した、勝利への方程式。

 

(桐生が、背中を押してくれるなら―――!!)

 

カ・ディンギルに存在する足場を踏み、飛び上がって、翼は、飛ぶ。

 

(どんなものだって、超えて見せる―――!)

 

「―――勝利の法則は、決まった・・・!!」

その炎を蒼炎へと変えて、翼は、火の鳥の如く舞い上がる。

「させるかぁぁああ!!」

「それはこっちのセリフだぁぁぁああ!!!」

なおも妨害しようとするフィーネの攻撃を、ビルドは体を張って止める。

左腕のスマホは粉砕され、右手の鉤爪は折られ、肩の装甲が削れ、腹に直撃し、顔面に叩きつけられようとも、翼の邪魔をさせまいと、ビルドは全力でフィーネの攻撃を防ぐ。

そして翼は、天高く舞い上がる。

(立花、見ろ。これが、私の生き様だ!!!)

 

「――――立花ぁぁぁああああぁぁぁああぁぁあああ!!!」

 

親友の力を受け継ぐ少女の名を、翼は咆え――――そして、カ・ディンギルにその一撃を叩き込んだ。

「ああ・・・!!!」

フィーネは目を見開く。

「翼さん・・・!?」

「翼・・・!?」

そして、それを目撃したクローズと響。

「・・・・カ・ディンギル」

そして、散々フィーネからの攻撃を受けてボロボロになったビルドは、翼が突撃したカ・ディンギルを見上げて、仮面の奥でほくそ笑んだ。

 

「―――破壊だ。ざまーみろ」

 

 

 

次の瞬間、カ・ディンギルが爆発した―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の想いは・・・またも・・・!!」

もはや修復不可能なまでに破壊されたカ・ディンギルを見上げて、フィーネは呆然と呟く。

「ハア・・・ハア・・・畜生・・・やってやったぞ・・・くそったれがぁ・・・・!!」

地面に倒れ込み、ビルドは、破壊されたカ・ディンギルを見上げて、そう呟く。

だが、その声に歓喜はなく―――

「・・・くそったれがぁぁぁあ・・・・・!!!!」

ただただ、後悔しかなかった。

「そん・・・な・・・・翼・・・さん・・・・・」

そして響は、翼が消えたカ・ディンギルを見上げて、一人絶望し、膝をついて。

「畜生・・・畜生ッ!!!」

クローズはすぐ傍の瓦礫を殴り砕いて、悪態を吐く。

 

 

 

 

「・・・天羽々斬・・・・反応、途絶・・・」

藤尭が、絞り出すようにそう告げる。

その現実に、友里は思わず涙を流して目をそらし、弦十郎は、拳から血が滲みそうな程に握りしめる。

「身命を賭して、カ・ディンギルを破壊したか・・・翼・・・お前の歌・・・世界に届いたぞ・・・世界を守り切ったぞ・・・!!」

そして、実際にその手からは血が滲みだしていた。

「・・・分かんないよ」

そんな中で、板場が呟く。

「分かんないよ!どうして皆戦うの!?痛い思いして、怖い思いして、死ぬために戦ってるの!?」

涙を流し、理解できないと喚き散らす。

「分からないの?」

そんな板場に、未来は言う。未来もまた、涙を流して。

そんな彼女は、板場に歩み寄り、その肩を掴んで引き寄せる。そして、真っ直ぐに板場を見据えて、もう一度言う。

「分からないの?」

アニメという、非現実的なものを見ている、彼女なら、分かる筈なのだ。

 

ただ、誰かの為に。

 

やがて、板場の泣き声が、その部屋に響いた。

 

 

 

 

 

 

「―――どこまでも忌々しい!!」

フィーネが、刃の鞭を地面に叩きつける。

「月の破壊は、バラルの呪詛を解くと同時に、重力崩壊を引き起こす惑星規模の天変地異に人類は恐怖し、狼狽え、そして聖遺物を振るう私の元に基準する筈であった・・・!!痛みだけが、人の心を繋ぐ『絆』!たった一つの真実なのに・・・!!」

そう喚き散らすフィーネ。そんなフィーネに、叫ぶ者がいた。

「―――――フィィィィィネェェェエエエェエエエエエッ!!!!」

 

ビルド―――桐生戦兎だ。

 

ビルドは、フィーネを指差して叫ぶ。

「次へテメェだ!テメェをぶっ倒して、全部終わらせてやるッ!!!」

その手に、ラビットタンクスパークリングをもって、

「二年前のライブも、クリスを誘拐したことも、学校を破壊し、大勢の人間を騙し、そして、クリスと翼の事も、その全てに決着をつけてやるッ!!!」

その叫びに、フィーネは恐ろしい眼つきでビルドを睨み返す。

「私を、倒すだと・・・?」

ゆらりと怒りの感情を迸らせながら、フィーネはビルドと向き合う。

「私は、数千年もかけて、バラルの呪詛を解き放つ為に、一人抗ってきたのだ・・・かつて唯一創造主と語り合える統一言語を取り戻し、この胸の内の想いを届けるために・・・!それなのに、お前たちは・・・!!」

「その為に、大勢の人間を巻き込んだのかよ・・・」

クローズが、ビルドと挟み込むようにフィーネの背後に立つ。

「いったいその想いの為にどれだけの人間が死んだ・・・お前の為に、どれほどの奴が犠牲になった!?」

「是非を問うだと!?恋心も知らぬお前たちが!」

怒鳴るフィーネに、クローズは動じず、ただその手に『イチイバルレリックフルボトル』を取り出し、それをクローズドラゴンに装填する。

「恋心ぐらい分かる・・・だからこそ」

「お前を止める・・・!!」

 

激唱ゥ!』『クロォーズイチイバルッ!!!』

 

ラビットタンクスパークリング!』

 

フィーネが刃の鞭を振るう。その鞭が、展開されたスナップライドビルダーに阻まれる。

 

『Are You Ready?』

 

「ビルドアップ!」

「行くぜ!」

 

激唱戦場クロォーズイチイバルッ!!!』

 

イェェエイッ!!ドッカァァァァアンッ!!!』

 

シュワッと弾けるラビットタンクスパークリング!イェイイェーイ!』

 

「行くぞォ!」

「来い・・・仮面ライダーァァア!!」

「うぉぉぉおおぉおおお!!!」

フィーネとビルド、そしてクローズが今、ぶつかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリスちゃん・・・・翼さん・・・」

そして響は、ただそこで膝を付き、絶望していた。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

激突する仮面ライダーとフィーネ。

「痛みだけが、人を繋げる絆だと・・・ふざけてんじゃねえよ・・・!!!」

フィーネの言葉を否定し、彼らは戦う。

「二人とももういない・・・」

その最中で絶望する響。

「いくらなんでも無茶だ・・・!!」

その様子を、シェルターから見守る者たち。

「じゃあ一緒に応援しよう!」

そして、今まさに、敗北しそうな彼らに、奇跡が宿る。


次回『夜明けのシンフォギア』


シンフォニックマッチ!!』


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