愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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作「おのれ駅伝・・・こうなりゃ今すぐ全てを破壊して潰してやらぁぁぁああ!!」RPGなど完全武装
響「やめてください!」
作「あふん」
戦「今週の仮面ライダーゼロワンが駅伝によって潰されたために怒りを爆発させてお仕置きされた作者の図がこれです」
ク「ったくビルドの小説書いてるくせになんで他の仮面ライダー見てるんだか」
頭「それが仮面ライダーファンというものだ」
絶望センス「そういやお前は以前にも他のライダーになった事があるそうだな」
ネトアイ「丁度十年前になるのよねそのライダー」
頭「その時の活躍を見てくれても良いんだぜみー〇ん?」
スパイ「なおその時は相当な女たらしだった模様」
龍「マジかお前アッハッハ!!」
翼「それはともかく、仮面ライダービルドこと桐生戦兎は二課の面々と共にフィーネのアジトを突き止めたが、そこで敵の仮面ライダー、クライムとタスクに苦戦してしまう。そこで手を出したのが禁断の力『ハザードトリガー』によって成される『ハザードフォーム』だった」
青羽「言っておくけどなぁ、俺は黒いビルドを見るとイライラすんだよぉ!」
戦「悪かったって!こうするしか手がなかったんだ!」
黄羽「あの時は本当に大変だったよねえ・・・」
赤羽「ああ、あれはマジで信じられなかった」
戦「ああもう、もうそんな事がないように頑張るから!てなわけで今回は全国が鼻血吹いたらしい第二七話をどうぞ!」
ク「鼻血ってどういう事だ!?」
未「そのままの意味だよクリス」
ク「だからどういう意味だぁぁあぁああ!?」


教室モノクローム

F.I.S―――正式名称『米国連邦聖遺物研究機関(Federal Institutes of Sacrist)

 

米国における聖遺物研究所であり、謎の武装組織『フィーネ』が逸脱した組織。

フィーネの構成員は、大方がそこの研究員であり、その統率を離れ暴走したという事らしい。

二課同様に聖遺物に対する研究を行っていたわけだが、どうやら個人の才に左右される『歌』ではなく合理的に機械的に安定した起動方法を模索する事に大きく予算を割いていたらしい。

 

ソロモンの杖輸送任務にて行方不明になり、そして再び現れたウェル博士もまた、F.I.Sの研究者の一人だという事らしい。

 

 

 

「んでもって、マリアの纏うガングニールが時限式、か・・・」

龍我からもたらされた、新たな情報。それは、マリアはLiNKERによる薬物投与によって成立している後天的な装者、第二種適合者だという事。

即ち、天羽奏と同じ、という事だ。

そんな情報を資料に纏めたものを横眼に、戦兎は、目の前にあるとある機械を作っていた。

(奴らの目的がなんなのか知らない。だが、あの化け物を集中的に守っていた事は分かる。あれさえ確保できれば、あるいはあれがなんなのか分かれば、目的が何なのか分かるんだが・・・)

なんて考えつつ、その右手を横に突き出して何かを掴んだ。

「ひっ」

可愛らしい悲鳴があがり、戦兎はそちらをジト目で睨む。

「で?お前は一体なにやってんだ?」

「あ、えーっと、そのぉ・・・」

どう言い訳しようか考えているのは、戦兎の助手であるセレナである。

その手には、まだ未完成のストームナックルとその設計図があった。

「せ、戦兎先生はまだアレの完成も出来てない事ですし、だからせめて、戦力増強の為にこれだけでも直しておこうかなぁ・・・と思いまして・・・」

「文化祭の準備は?」

「学校行事より直面している問題を解決する方が大事だと思うんです」

「馬鹿かお前は学校の方が大事に決まってんだろ!?」

「は、はいぃい!!」

戦兎に怒鳴られて縮こまるセレナ。そんなセレナに戦兎は呆れ、ぽんぽんと頭を軽く叩く。

「ま、その心意気だけは受け取っておくよ。だけどお前はまだ学生。今は青春を謳歌する方が大事だろ」

「でも・・・」

「本当に困った時は手伝ってもらうさ。だからそれまでは学校の友達とかを大事にしろ」

「・・・分かりました」

セレナをそうなだめ、戦兎は未だ痛む体に我慢を要求しつつ、考える。

(どちらにしろ、見過ごす事は出来ない。もし何か動いた時は、必ず―――)

ハザードを使ってでも、スクラッシュドライバーを取り戻す。

 

 

 

 

 

そうして傷の痛みも引いてきた三日後。秋桜祭当日。

「なあ、秋桜祭って毎年こんなに人が来るのか?」

「ああ。一般公開の日は毎年こんな感じだ」

翼と一緒に文化祭を回る戦兎。

ちなみにセレナは龍我と一緒である。理由は、まああれだ。クリスが『奴ら』から逃げているから。

ちなみに、

「あ、見て、戦兎先生よ!」

「翼さんもいるわ!」

「なんて仲睦まじく横並びで歩いているのかしら・・・」

「戦兎先生イケメンだから翼さんと引けを取らないわ・・・」

「ああ!出来る事なら翼さんと場所を変わりたい!」

「ちょっと!変わるべきはこの私よ!」

「何よ!まるで自分の方が相応しいとでも言いたげな言い分ね!?」

「少なくともアンタよりは上よ!」

「なんですって!?」

「やめなさい貴方たち。戦兎先生の隣は私のものよ」

「さらに増えたー、もうやだー」

なんていう会話が繰り広げられており。

「く・・・うぅ・・・」

翼は顔を真っ赤にしていた。

「・・・ま、まあ気にすんなよ。単なる噂だし・・・」

「・・・むう」

「ん・・・?」

「・・・・」

「おい、どうした・・・?」

顔を赤くしていじける翼が頬を膨らませている事に戦兎はついぞ理解する事は出来なかった。

「ま、まあとにかく、今は文化祭を楽しもうぜ」

「・・・ふう、仕方がない。今日は私も羽目を外すとするとしよう」

戦兎の提案を受け入れ、二人はそのまま学祭を楽しんでいく。

 

 

 

その一方で―――

「楽しいデスなぁ、何を食べても美味しいデスよ!」

何故かリディアンの学園祭にいる切歌と調。

「じー・・・」

そして何故か楽しんでいる切歌を睨みつける調。

ちなみに二人はどういう訳か額縁眼鏡をかけていた。

「ん?なんデスか調・・・?」

その視線に、切歌は訳も分からず気まずそうに調をみる。

「私たちの任務は、学祭を全力で満喫する事じゃないよ。切ちゃん」

移動して人気の無い木の所までやってきた切歌と調。

「わ、分かってるデス!これもまた、捜査の一環なのデス!」

調の言葉にそう言い返す切歌。

「捜査?」

「人間誰しも、美味しいものに引き寄せられるものデス」

そう言って、切歌はポケットから受付で貰ったパンフの内、『うまいもんMAP』と書かれた紙を取り出す。

「学院内のうまいもんMAPを完成させる事が、捜査対象の絞り込みには重要なのデス」

そんな切歌の言い分を聞いた調は、頬を膨らませてさらにその睨みを強くする。

「むぅー・・・!」

「う・・・心配しないでも大丈夫デス。この身に課せられた使命は、一秒たりとも忘れていないのデス」

 

 

 

 

それは、ほんの昨日の事。

「アジトを抑えられ、ネフィリムを成長させるに必要な餌、聖遺物の欠片もまた、二課の手におちてしまったのは事実ですが、本国の研究機関より持ち出したその数も、残り僅か・・・遠からず、補給しなければなりませんでした」

「じゃあどうすんだよ?」

そんな事を言っているウェルに、慧介がそう尋ねる。

今だ傷は癒えていないために、療養中なのは致し方ない。

「対策は何か考えているのか?」

「対策などとそんな大袈裟な事は考えていませんよ。今時聖遺物の欠片なんて、その辺にごろごろ転がっていますからね」

「まさか、このペンダントを食べさせるの?」

調が驚いたように言うも、ウェルがすぐさま否定する。

「とんでもない。こちらの貴重な戦力であるギアを、みすみす失わせる訳にはいかないでしょう?」

ちなみに、ジェームズは自室に引きこもってルインドライバーの改良を行っている。スクラッシュドライバーについてはまるで頓着がない。

「だったら私が、奴らのもっているシンフォギアを・・・」

「それはダメデス!」

ふと、そう言うマリアに向かって、切歌が声を挙げる。

「絶対にダメ。マリアが力を使う度、フィーネの魂がより強く目覚めてしまう。それは、マリアの魂を塗り潰してしまうと言う事・・・!そんなのは、絶対にダメ・・・!」

調が立ち上がり、そう言いだす。

「その通りだ。お前が戦うのなら、俺が代わりに戦う」

そして、シンもまた立ち上がってそう言い出す。

「そうだ、マリアがマリアでなるなるなんて、そんなの絶対にダメだ」

慧介もまた、同じく。

「四人とも・・・・」

「だとしたら、どうします?」

ウェルが訪ねる。

「アタシたちがやるデス!マリアを守るのが、アタシたちの戦いデス!」

 

 

 

 

 

そして、今に至る。

シンと慧介はビルドたちから受けた傷の回復に専念させる為に今回は置いてきた。

その為、今ここにいるのは切歌と調の二人だけなのだ。

「とは言ったものの、どうしたものかデス・・・」

未だ、見つけるべき相手を見つけられていない現状。

どうすればいいのか考えていた。

「とにかく、この学園祭を回れば、きっと奴らにも―――」

その時だった。

「それでですね。クリスさんったら顔を真っ赤にして怒っちゃったんですよ」

「アッハッハ!まじかそれ!?マジで笑えるじゃねえか!?」

「ですよね!?」

そんな、仲睦まじい男女の会話が聞こえてきた。

その方向へ視線を向けた調は、目を見開いて、硬直した。

「――――」

「ん?調、どうかしたデ・・・」

その調の異変に気付いた切歌が、調を同じ方向を見た時、調も固まった。

そこにいたのは―――彼女たちが、見知った顔だった。

「んで、その後クリスはどうなったんだよ?」

「もう恥ずかしかったのか思いっきり走って逃げていきましたよ。あー、本当に面白かったぁ・・・」

そこにいたのは、仮面ライダークローズこと、万丈龍我。そして、一人の橙色がかった茶色の髪を靡かせる少女。

「・・・セレナ?」

セレナ・リトルネッロ・ヘルカートだった。否―――

「せ、セレ―――!?」

思わず飛び出そうとした調の口を切歌が塞いで木の陰に隠れる。

そうして、二人が過ぎ去っていくのを待った。

「・・・切ちゃん、何を・・・」

二人が過ぎ去っていくのを物陰から見つつ、調は切歌に尋ねた。

「・・・あれは、別人かもしれないデス」

「別人?」

「そうデス。言うでデスよね。世界には、同じ顔の人間が三人もいるって・・・だから、あのセレナは、別人かもしれないデス・・・いいえ、絶対に別人デス・・・!」

切歌は断言した。

「もしセレナが生きていたら、きっとアイツらと一緒にはいないデス。それに、セレナは、あの時・・・・」

そこから先の言葉が、続かなかった。

だけど、その気持ちを、調は汲み取る。

「・・・そう、だよね・・・」

行ってしまうセレナを背中を見て、調は呟く。

「セレナは、もう、いないんだよね・・・」

調は、虚しく呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で――――

「んむ・・・このチョコバナナという菓子は絶品だな」

「お前、それ食ったどころか存在すら知らなかったのか?」

チョコバナナを頬張る翼を半目で見つつ、満足そうにしている翼の顔を見て思わずふっと笑ってしまう戦兎。

しかし、しかしだ・・・・

(なんか周りからの視線が痛いんだが・・・)

道行く人、翼の存在を認めるなり、何故か翼ではなくその隣にいる戦兎を好奇な目で見ていた。

(なんで翼じゃなくて俺に注目するんだ?)

こういう状況になれていない為か、首を傾げるだけの戦兎。

全くもって鈍感な男である。

「翼、ちょっと人目のつかない所に行こう。視線が結構きつい」

「む、それもそうだな・・・よし、行くか」

戦兎に言われて状況を理解したのか、翼も了承し、一目のつかない校舎の方へ。

「今まで、ノイズの対処に専念していたが、こうして改めて参加してみると、存外楽しいものだな」

「そう思えたようで何よりだよ・・・」

そう言い合いながら、食べ終わったチョコバナナの串を捨て、廊下を二人並んで歩く。

「そういえば、例のものは出来たのか?」

「ん?・・・ああ、まだだ。結構深い所で破損してて中身を一から作り直さなくちゃいけないから、まだまだ時間がかかりそうだ」

「そうか・・・」

ハザードトリガー。

それに内臓された黒色の強化剤『プログレスヴェイパー』が充填されており、変身者の肉体に装甲と一緒に浸透される。

そして、脳の特定部分に浸透させて戦闘本能を刺激する事で圧倒的な戦闘力を発揮させる事が出来る。

しかし、その分変身者への負担が高く、時間が経つと脳が負担に耐え切れなくなり、『ハザード限界』と呼んでいる危険域に達すると、目につくもの全てを敵味方関係なく破壊しようとする暴走状態である『オーバーフロー状態』に陥ってしまう。

その力で、戦兎は一度、人を殺している。

だから、絶対に制御しなければならない。

「次の戦いまでにいは間に合いそうか?」

「間に合わせる。絶対に」

「そうか・・・そうだな・・・」

ハザードの暴走は、響の暴走と似たものがある。だからこそ、そんな事は絶対にあってはならない。

「それはそうと桐生・・・・」

その時だった。

ふと、視界の横にあった扉から、何かが飛び出し、翼を真正面から衝突した。

「「うわ!?」」

クリスだ。

「いってぇ・・・」

「またしても雪音か」

「え?何?前に同じような事があったのか?」

「まあそんな所だ・・・それで何をそんなに慌てている?」

「っ!追われてるんだ!さっきから連中の包囲網が少しずつ狭められて・・・」

「追いかけらているって・・・」

「だから頼む!匿ってくれ!」

「あー、一体何の話だ?」

状況が理解できない戦兎。

「私もよくは知らないのだが・・・何やらクラスメイトに追われていてな」

「あああれか・・・」

「頼む助けてくれ!」

「お前歌上手いんだからいいじゃねえか」

「でも・・・」

「あ!雪音さん見つけた!」

「げっ」

そうこうしている内にクラスメイトに捕まるクリス。

「お願い!登壇まで時間がないの!」

「うぅう・・・」

「諦めろ」

戦兎がクリスの肩に手を置いて、そう言った。

 

 

 

 

 

そんな訳でカラオケ大会の開催されているホールにて。

「さあて!次なる挑戦者の登場です!」

司会と書かれたリストバンドを腕につけた少女がマイク片手にテンション高めにそう言う。

その会場の席には、響と未来、そしてクロの姿があった。

実は彼女たちの友人である板場たちがこの大会に出るとのことで、彼女たちも見に来ていたのだ。

ただし、結果は惨敗である。

そして、会場が歓声に包まれる中、出てきたのは、一人の少女。

その姿を見て、響と未来とクロは驚く。

「響、あれって!?」

「うそぉ!?」

「キュル!?」

そんな彼女たちの驚きに答える者がいた。

「雪音だ」

「私立リディアン音楽院二回生、雪音クリスだ」

翼と戦兎である。

一方のクリスは、顔を赤くしてその場に佇んでいた。

既に曲は流れているが、クリスは、どうにも歌い出せないでいる。

「ぜえ・・・ぜえ・・・よぉし間に合ったぁ!」

「まだ前奏が始まったばかりですね!」

そこへ駆け込む龍我とセレナ。

しかし、すぐに異変に気付く。

すでに歌は始まっているだろう。しかし、クリスはまだ歌い出さない。

(やっぱり、いきなりなんて・・・)

横眼でステージ横にいるクラスメイトの方を見る。

そんな彼女たちは、頑張れ、とクリスを応援しているが、どうにも歌い出せない。

だが、そんな時だった―――

「クリス―――!!」

よく聞き知った声が、クリスの耳に届いた。

見上げてみれば、そこには、不敵な笑い顔でこちらを見る龍我の姿があった。

「りゅ、龍我・・・!?」

その姿にクリスは目を見開いて驚く。しかし、

「歌えよ!お前の好きなように!」

ただ、短く、そう声をかけた。

その声に、クリスは、少し恥ずかしがって――――それでも、ほんの少しの勇気をもらった。

 

「―――誰かに手を差し伸べて貰って」

 

少し遅れての、歌い出し。

しかし、一度歌い出せば―――そこはもう、クリスの世界(ステージ)だ。

 

「―――(いた)みとは違った(いた)みを知る」

 

その綺麗な歌声が、一瞬で会場を魅了する。

 

「―――モノクロームの未来予想図」

 

リズムに乗り、歌に乗り、自分の世界に夢中になり、彼女の歌は、加速する。

 

「―――絵具を探して…でも今は―――」

 

 

その最中で、クリスは思い出す。

 

 

「えー、今日から転入してきた生徒を紹介すっぞ。ほら、挨拶しろ」

「雪音、クリス・・・」

なんとも軽い感じでクリスに話しかけてくる戦兎に恨みがましい視線を向けながら、クリスはそう名乗る。

 

 

―――何故だろう、何故だろう―――

 

 

―――色付くよゆっくりと 花が虹に誇って咲くみたいに―――

 

 

唄えば唄うほど、初めての学園生活の事が呼び起される。

「雪音さん!」

「一緒に食べない?」

話しかけてきてくれた人がいた。あのクラスメイトの三人だ。

そんな彼女たちを前にして、クリスは、思わず逃げてしまう。

「悪ぃ、用事があるんだ・・・」

 

 

―――放課後のチャイムに混じった風が吹き抜ける―――

 

 

本当は、一緒に食べたかった。だけど、そんな事に慣れてなかった。

「まあ最初はそうだろうな」

そんな中で、あの教師は声をかけてきた。

「人間誰しも初めての事には戸惑うものだ」

「・・・」

黙々とあんぱんと牛乳を頬張りながら、その教師の()()()を聞く。

「でも、ほんの少し勇気を振り絞れば、案外簡単に出来ちまう事だぜ。誰かと関わりを持つっていうのは」

 

 

―――感じた事無い居心地のよさにまだ戸惑ってるよ―――

 

 

歌を唄えば唄うほど、自分の想いが表に出ていく。歌を唄っているときだけ、自分は自分を出せる。

だからこそ、今、こうして笑っている。

歌の授業で歌にのめり込んで、いつの間にか体を動かしていた事がとても恥ずかしかった。

だけど―――

 

 

―――ねえ、こんな空が高いと 笑顔がね…隠せない―――

 

 

 

「―――一体どうしたんだ?」

「勝ち抜きステージで、雪音さんに歌ってほしいんです」

ここに連れ込まれる前の会話―――

「だからなんでアタシが・・・!」

「だって雪音さん、凄く楽しそうに歌を唄ってたから」

「あ・・・」

歌を唄えば、本当の自分が出る。

歌を心の底から大好きな自分が出てきてしまう。

それを、歌を唄う度に見られてしまう。

その結果が、これだ。

 

「―――笑ってもいいかな 許してもらえるのかな―――」

 

 

その、歌が大好きなクリスの全てが出ている歌は、会場を魅了していた。

響を感動させ、未来を震わせ、翼を昂らせ、戦兎を落ち着かせ、セレナを興奮させ。

セレナたちを追いかけてこの会場に来ていた調と切歌の二人に、自分たちの目的を忘れさせ。

そして何よりも、龍我に想いを届かせていた。

 

 

「―――あたしは、あたしの―――」

 

 

もし、この想いが届いているのなら―――

(もっと、もっと、伝わって欲しい―――)

 

 

「―――せいいっぱい、せいいっぱい…こころから、こころから…―――」

 

 

「お前は歌、嫌いなのかよ?」

戦兎が、あの場でそう尋ねる。

 

ああ、嫌いと言えたら、どれほど楽だっただろうか。

 

だけど、それでも、否定できなかったのは――――

 

 

 

(アタシは・・・歌が、大好きだから―――)

 

 

 

「―――あるがままに―――」

 

 

 

何より―――

 

 

 

「――うたってもいいのかな…!―――」

 

 

 

 

(―――龍我が聞いてくれる、この歌が―――私は―――!!!)

 

 

 

 

 

想いが、爆発する。

 

 

 

「―――太陽が教室へとさす光が眩しかった―――」

 

 

 

その瞬間、会場にいる全ての人間に、ある光景を映した。

 

 

 

――――そこは、晴天の空の下の、赤い花々が咲く、野原。

 

 

 

「―――雪解けのように何故か涙が溢れて止まらないよ―――」

 

 

 

それは、きっと、彼女の心の世界。

今、彼女が歌う事で、会場に見せている、彼女の幻想。

 

歌が伝える、想いの力。

 

 

 

「―――こんなこんな暖かいんだ…―――」

 

 

 

その花の花弁が、風に舞い、彼女の周りを花吹雪となって飛び回る。

ああ、それは、まさに―――

 

 

「―――あたしの帰る場所―――」

 

 

 

彼女だけの、歌だ――――

 

 

 

「―――あたしの、帰る場所―――」

 

 

 

 

(楽しいな・・・)

歓声が、会場を包み込む。

(アタシ、こんなに楽しく歌を唄えるんだ・・・)

会場を魅了した、彼女の歌の幻想は終わってしまった。だけど、その余韻は残り続ける。

(そうか・・・)

その会場にいる響や未来、翼、戦兎、セレナ。彼女たちが、激励をもって拍手をする中で、ただ一人、まるで自分の事のように得意気に笑って、グッドサインを向ける、龍我を見上げた。

(ここはきっと・・・アタシが、いても良い所なんだ・・・)

その余韻の嵐に吹かれながら、クリスは、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そんなわけで

 

「勝ち抜きステージ!新チャンピオン誕生!」

スポットライトに当てられたクリスが呆気にとられる。

「さあ!次なる挑戦者は!?」

改めるとかなり恥ずかしい状況である。しかし司会は当事者ではないためそんなクリスの事情などおかまいなしにどんどん話しを進めていく。

「飛び入りも大歓迎ですよー!」

そう司会の少女が言っている間に、龍我とセレナは戦兎たちの元へ。

「悪い、遅れた」

「よお騎士様、お姫様のピンチに颯爽と駆け付けて、かっこいいですな」

「茶化すなよお前・・・」

「でもでも!龍我さん格好良かったですよ!」

「まさしく、男だな」

なんて言い合っていると、

「やるデス!」

「ん?」

何やら聞き覚えのある声が耳に入ってきた。

そうしてスポットライトに当てられたのは――――

「アイツらは・・・!?」

その姿に、クリスは驚愕する。

「チャンピオンに」

「挑戦デース!」

 

月読調と暁切歌だった。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

突如として姿を現した調と切歌。

「一体なんのつもりだ?」

その一方で、『フィーネ』アジトでは、米国からの襲撃を受けていた。

「俺が出る」

その中で名乗り出たのは――――

「なるほどな・・・・」

調たちの狙いとは。

そして、シンの生身での実力は。

次回『戦場のジャック・ザ・リッパー』

「・・・白い・・・悪魔・・・」

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