愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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マ「さあ始まるわよ先週すっぽかしたシンフォギア・ビルド!」
慧「正確には試験の為に投稿を断念するしかなかったというだけなんだけどねぇ・・・」
切「というわけで、地球外生命体キルバス打倒の為、宿敵エボルトと共に戦うクローズたちデスが、その最中でクリス先輩が致命傷を負ってしまうデス」
調「しかし、その寸前で放った言葉が、再びクローズを立ち上がらせる力を与え、ついに、クローズ最強の姿『クローズエボル』が誕生する!」
シ「そして物語は結末へ。その戦いを見逃すな」
マ「それにしても、まさか地球外生命体と合体するなんてね。龍我って本当に人間?」
慧「まあ人間だな。エボルトの遺伝子を持っているとはいえ、龍我さんは仮面ライダーなんですから」
調「悪の力を正義という仮面で覆う・・・それがどれほどの悪を内包していても、仮面ライダーは正義の仮面をもって正義を執行する、正義の味方だから」
切「正直、あの人たち以外の仮面ライダーはライダーじゃないと思うのデス!」
シ「それは人それぞれだろう。というわけで、クローズ編最終回を見ろ」



その前に少し小話

切「―――やぁっと試験が終わったのデース!」(リアルの作者役
切「そしてやってやるデスよPC版シンフォギアXDU!」(スマホ持ってない勢
切「早速ガチャを引いて・・・およ?およよ!?」

『Vitarization』からの☆六マリア

切「―――( ゚Д゚)」



調「ちなみに、イグナイト響さんにイグナイト私、あと確定ガチャで最初にとったのはクルースニク切ちゃんです」
慧「作者って意外に切歌好きだよな。一番の押しは翼さんみたいだけど」
マ「ただしスタイルは効率重視と一式染め編成と来た」
シ「バトルは楽してムービーは楽しみたいというスタイルだな」


雪の音のヴィクトリークローズ

―――キルバスとクローズが激突する。

 

キルバスの拳を躱し、すかさずその脇腹に拳を叩き込む。

「ぐお!?」

そして追撃のストレートをキルバスに叩き込んでさらに下がらせる。

踏み止まったキルバスは再びクローズに殴り掛かる。激しく打ち合い、キルバスがクローズに拳、蹴りを叩きつけるもクローズは意に介さず、捌き、その足を掴むなり、持ち上げてフィールドを駆け巡りながらキルバスを何度も地面に叩きつける。

そして何回か叩きつけた所でキルバスを投げる。

そのままさらに接近、凄まじい連撃を叩き込んでキルバスをさらに追い込む。

「ぬぐう!?ならば、こっちも本気を出すまで!!!」

実力差を感じとり、キルバスは自らが生み出したスマッシュを取り込む。

「ハハハ・・・さあ行くぞ!」

再び、クローズとキルバスが激突する。

激しい撃ち合いが繰り広げられる。クローズの拳がキルバスの顔面を打ち据える寸前で掴まれ、すかさずキルバスの蹴りがクローズの腹に叩きつけられようとした寸前でクローズが止め、さらに反撃と言わんばかりに掴まれた手を振り払い、反対の手でキルバスを打ち据えようとするも躱され、互角と言わんばかりに激しく激突する。

地面に降り、そこから恐ろしいスピードで戦場を駆け抜け、交錯する度に凄まじい衝撃が大気を弾けさせ、もはやすさまじいの一言に尽きる戦いだ。

しかし、その拮抗もいずれは破れる。

「がァ!?」

クローズが押し負ける。

殴り飛ばされ、派手に地面を転がり、激しく土煙を上げる。

「残念だったなァ。オレの方が上だァ!」

そのままクローズを追撃、倒れたクローズを蹴り上げて、そのまま拳を連続で叩きつける。

「ぬ、ぐっ、がァ!?」

クローズはなんとかしのぐも、擬態を取り込んで力を取り戻したキルバスの拳は想像以上に重く、防いでいる腕が痺れ、次第にその痺れは強くなっていく。

やがて耐え切れなくなり、ガードが外される。

「しまっ――――」

「オラァ!!」

キルバスの渾身のボディーブローがクローズに叩き込まれる。

「がぁあ!?」

ぶっ飛ばされて壁に叩きつけられるクローズ。

しかし、そのダメージにどうにか耐え、立つクローズだったが、すかさずキルバスがボルテックレバーを回す。

 

『Ready Go!』

 

キルバスが両手から蜘蛛の糸を射出。それでクローズを拘束し、そのまま思いっきり振り回す。

「ぐぉぁぁああ!?」

「フハ、フハハハハハハ!!!」

高笑いを上げ、キルバスは拘束したクローズを良いように振り回す。

壁に叩きつけ地面に叩きつけ、激しくクローズを痛めつけていく。

やがて、蜘蛛の糸を引っ張り、クローズを引き寄せたかと思いきや―――

 

キルバススパイダーフィニッシュッ!!!』

 

オーバヘッドキックでクローズを打ち据え、蹴り飛ばす。

クローズが叩きつけられた地面が爆ぜ、凄まじい衝撃と共に土煙を巻き散らす。

「ぐあぁぁあぁあああ!?」

キルバス渾身の必殺技が、クローズに直撃したのだ。

クローズが、倒れる。

「おい!」

「龍我さん!!」

「万丈!」

クローズが倒れた事に、それを見ていた者全員が思わず叫ぶ。

「ぐあ・・・あぁ・・・」

必殺技を叩き込まれた事で、クローズの体の中は、凄まじいまでの激痛が迸っていた。

だが、そんな中で、クローズは―――龍我は思い出す。

 

 

まだ自分が、自分の為だけに戦っていた時の事を。

 

 

(―――確かに、昔の俺は、自分の為に戦ってた・・・)

自分の冤罪を晴らす為に。自分の無実を証明するために。

(でも、アイツが教えてくれたんだ・・・)

冤罪で刑務所に叩き込まれ、味方が誰もいない状況。ただ逃げる事しか出来ず、誰も信じる事ができなかった。だけど、そんな自分の前に、あの男が現れた。

愛と平和をなんの躊躇いもなく言い切り、誰かの為に自分を犠牲にして、なんの見返りも求めず、ただ人の為に戦いたいと願う、一人の男に。

 

誰かの力になりたいと思える正義を―――

 

自分が毒に侵されていても、誰かの心配をしてしまう。

 

誰かに手を差し伸べる優しさを―――

 

どれほど自分が傷ついても、誰かを守る事をやめない。

 

誰かを守る事の勇気を―――

 

自分に、自らの正義を語って見せる。

 

誰かの為に戦う強さを―――

 

他の誰でもない。

 

 

(俺のヒーローが、教えてくれたんだ・・・!!)

 

 

そして――――

(ああ、くそっ)

その視界に、由衣に介抱されているクリスが見える。

自分に、その想いを伝えてくれた、たった一人の少女の姿。

口端から血を流している事を無視すれば、まるで、安らかに眠っているようで。

その白い雪色の肌から連想するは、白雪の名を関する眠り姫―――。

こっちは命懸けだというのに。なんて呑気な事なのだろうか。

でも、だからこそ―――

(最悪だ・・・お前と一緒にいた日常が、香澄と一緒にいる時と同じくらい、楽しいなんて思える日が来るなんて・・・!)

クリスのあの言葉が蘇る。

 

『立ち上がって』

 

その言葉を思い出し、クローズは、その足を地面に踏みしめる。

「―――ああ、立つさ」

胸の想いのままに、その心の声のままに。

 

「―――『愛と平和』を胸に生きる俺は―――誰にも負ける気がしねェ!!」

 

確固たる想いをもって、クローズは、地面を蹴る。

「オラァ!!」

クローズの拳がキルバスに叩きつけられる。しかしキルバスはそれを左手をもって防ぐ。

すかさず蹴りが飛び、それを再び右手で防ぐ。

さらなる攻撃、追撃、連撃がキルバスに叩きつけられる。

「だからァ、お前たちがどれほど足掻こうとも、このオレに勝つ事は出来ないんだよォ!!」

キルバスの反撃の蹴りがクローズの顔面に炸裂する。しかし―――

「なっ!?」

蹴りは、クローズの腕によって防がれていた。

「そんなの、やってみなきゃ分かんねえだろッ!!」

クローズのアッパーが炸裂、キルバスが空中へ吹き飛ぶ。その後をクローズが追い、そのまま空中で激突。激しい空中戦が繰り広げられる。

あちらこちらを飛び交い、交わっては凄まじい衝撃波が巻き散らされる。

クローズの拳がキルバスに向けられるも、キルバスはそれを紙一重で躱し、すかさず反撃のキルバスの拳をクローズは躱し、返す拳もキルバスも躱し、そのまま拳の応酬。

だが、その最中でキルバスがクローズを地面に向かって殴り飛ばす。

どうにか地面に着地したクローズに向かってキルバスが突撃、そのまま地面を砕いて一気に沈む。

そのまま地面を突き進んでいけば、地中にある空洞に出る。

そこには地下水が溜まっており、そこへ飛び出たクローズは水中に落ちる。

キルバスは水中にまで追いかけてきて、拳を叩きつけてくる。防げば水が爆ぜ、激しい水飛沫を上げる。

その水飛沫が上がった所でクローズがキルバスを殴り飛ばす。

「ハァァアア!!」

吹き飛ばされたキルバスが、その身からエネルギーを放出。無数の光弾となったそれはでたらめに上下左右四方八方に放たれ、空洞の壁や天井に直撃、一気に割り、崩していく。

落ちてくる岩盤。それを殴って砕いていくも、壊しきれず圧し潰されていく――――だが、それで諦める程、仮面ライダーは―――万丈龍我は、弱くはない。

 

「―――破壊を楽しんでんじゃねぇぞぉぉぉぉぉぉおおッ!!!」

 

クローズ自ら、凄まじいまでのエネルギーが放出され、それがクローズの周囲の岩を吹き飛ばし、そのままクローズは地中を突き進む。

いずれは地面を突き破り、地上に飛び出す。

その後を、キルバスが追いかけてくる。

飛翔する、二つの光――――

「龍我さんだ!」

「負けんじゃねえぞォ!!」

その姿を、傍観している彼らは応援する。

「万丈!ここが踏ん張りどころだ!」

「いけェ!」

空中でクローズとキルバスが激突する。

クローズの拳を躱し、受け、そのまま反撃に出ようとしたキルバスの拳は、突如として空ぶる。

そして次の瞬間、キルバスの下からクローズのアッパーが炸裂する。

そのまま飛翔、雲を突き破り、激しく殴り合う。

クローズの拳がキルバスを殴り飛ばし、キルバスの拳がクローズを殴り飛ばす。

一進一退の攻防。

もはやただの人間が介入していいような戦いではない。

そんな極限の戦いを、クローズは戦い抜く。

両手を掴み合い、押し合えば、すかさずクローズがキルバスを蹴り飛ばす。

そのまま、天高く飛び上がる。

そのまま大気圏ギリギリにまで到達。

「そっちが、飛び道具を使うってんなら・・・!!」

クローズがキルバスに殴り掛かる。それをキルバスは躱す。

「こっちだって、やってやるよォ!!!」

キルバスの顔面にクローズの拳が炸裂する。しかしすかさずキルバスが反撃に腹に一撃を入れ、再度クローズが殴り掛かろうとした所を躱し、その背中にさらに一撃入れる。

「どうぞォ、ご自由にィ。どうせ無駄だがなァ!!」

しかしすかさず、クローズがボルテックレバーを回す。

 

クロォーズサイドッ!!』

 

『Ready Go!!』

 

突如としてどこからともなくクローズドラゴン・ブレイズが出現。それが、龍我の引き絞られた拳に呼応し、咆える。

 

マッスルフィニッシュッ!!!』

 

「ウオリヤァァァァアァアア!!!」

『グルアァァァアアァァアアアァァアアアッ!!!』

 

クローズドラゴンが吼え、恐ろしい速度でキルバスを襲う。

「グアァアアアァァアァアアァァアアアアアァアアア!?」

避けられなかったキルバスはそのままクローズドラゴンの牙の餌食になり、噛み砕かれ、貫かれる。

『このままたたみかけろォ!!』

「言われなくても分かってんだよッ!!」

クローズと合体しているエボルトがクローズに向かってそう叫ぶ。

すかさずクローズがボルテックレバーを回す。

 

クロォーズサイドッ!!』『エボルサイドッ!!』

 

『Ready Go!』

 

クローズドラゴンに撃ち抜かれたキルバスは、そのダメージ故か一気に地面に向かって落下していた。

それに対してクローズは自らの目の前に生成したブラックホールへ飛び込みワープ。

キルバスの真上に転移し、ブラックホールの超重力によって一気に引き寄せる。

そして、その拳に超重力・圧縮・崩壊・爆発させる力を込めて、キルバスに一気に叩きつける。

 

ギャラクシーフィニッシュッ!!!』

 

『セヤァァァァアッ!!!』

その拳が叩きつけられたキルバスは、地上に向かって一気に落下していく。

「グアァァアアァァアアアアァァアアアァァアアアァァァァァアアァァァアアア!?!?」

キルバスが叩きつけられた場所では、何重にも出来た大きなクレーターが出来ていた。

その中心で、キルバスは、ボロボロの状態で倒れていた。

「ぐあ・・・ぁ・・・何故だ・・・」

どうにか立ち上がろうとするも、すでにその体はボロボロ。もはやまともに立ち上がれる状態ではない。

「人間・・・・如きにィィ・・・・!!」

そこへクローズが着地する。

そして、すかさずボルテックレバーを回す。

 

クローズサイドッ!!』『エボルサイドッ!!』

 

ダブルサイドッ!!!』

 

『Ready Go!』

 

クローズが、飛び上がる。

その右脚に、青と赤の炎を纏わせて、一気にキルバスへと突き進む。

「ウオリヤァァァァアアァァアァアアァァァアアァァアアアアア!!!」

そして、その右脚を突き出し、ボロボロで立つのがやっとなキルバスに叩きつける。

 

前に突き進む勇気を、自分を愛してくれた人の想いを、そして、愛と平和の為の正義を込めて―――

 

クローズは今、撃ち貫く。

 

凄まじいまでの衝撃波が迸り、クローズは、その一撃が発する推進力のままにキルバスを押し込んでいく。

その最中で、キルバスは見た。

 

クローズエボルが、二人の、仮面ライダーの影を映しながら絶叫している事を―――。

 

その影の片方―――己が弟である、エボルトが、キルバスに告げる。

『まだ分かんないかァ?』

その言動は、キルバスを完全に小馬鹿にしたようなものであり、

 

『人間だからお前を倒せたんだよ。チャオ~♪』

 

いつもの別れの言葉の言葉と共に、クローズエボルの必殺技が、キルバスに炸裂する。

 

 

マッスルギャラクシーフィニッシュッ!!!』

 

 

究極の一撃へと昇華した必殺のライダーキックがキルバスを吹き飛ばす。

そして、壁に叩きつけられたキルバスは―――――跡形もなく消し飛んだ。

 

 

 

 

 

 

キルバスが消滅し、そして、キルバスが持っていた白いパンドラパネルの箱は、自ら勝手にパンドラボックスの元へ戻り、そして元のパネルに戻り、そのまま欠けていた面の位置へ戻ったと思ったら、それ以外のパネルが消滅。

白いパネルだけがそこへ落ち、やがて、変わってしまっていた地形は、何もかも元通りになる。

しかし、ただ一つだけ、元に戻らないものがあった。

「クリスちゃん・・・クリスちゃん!!」

キルバスから致命傷ともとれる一撃を喰らったクリスが、未だ目覚めない。

「頼む・・・目を開けてくれ、雪音ぇ!」

響と翼が必至に呼びかけるも、クリスに返事はない。

その様子を、一海と幻徳は黙って見ている事しか出来ず、由衣も、ただクリスを抱えてその体温が奪われていく様を見ている事しか出来ない。

「クリス!!」

そこへ、変身を解除した龍我が駆け寄り、由衣からクリスを受け取り、そしてその体を揺らして呼びかける。

「おい!目ェ覚ませよ!お前、自分だけ気持ち伝えて勝手に行くなんて、卑怯すぎるだろ!」

「そうだよクリスちゃん。ちゃんと、龍我さんの気持ちも聞かなきゃだめだよ!こんな、こんな所で死ぬなんて・・・絶対にダメだよ!」

響がクリスに必死に呼びかける。しかし、クリスは目を覚ます事はない。

今、弦十郎が医療班を現場へ送っているだろうが、それでも間に合うかどうかは分からない。

もしかしたら、このまま―――

「ちくしょう・・・」

龍我が、クリスを抱き締める。

「俺は・・・また間に合わねえのか・・・!!」

そう、後悔の言葉を呟いた―――その時だった。

 

『・・・・あァー、これじゃあ折角の勝利ムードが台無しじゃねェかァ』

 

龍我の頭の中に、そのような声が聞こえた瞬間、突如として龍我が跳ねるように顔を上げる。

そして次の瞬間、龍我の手がクリスの腹を鷲掴む。

その瞬間、クリスの体が一度、大きく跳ね、そして、その体にうっすらと無数の赤い基盤のようなラインが走ったかと思いきや、すぐさま消える。

そして、赤いラインが消えるのと同時に、龍我の体の中から、赤い液体が溢れ出て、それがやがて、人の形を―――否、人型の怪人へと姿を変える。

 

それが、エボルトの本来の姿。ブラッド族としての彼の本当の姿。

 

「エボルトさん・・・?」

響が、背中を向けるエボルトの方を見る。

そして、先ほどまでエボルトに体を操られていた龍我は、同じ遺伝子を持つからこそ理解していた。

「エボルト・・・なんで・・・」

「そいつにはあらかじめオレの遺伝子を忍び込ませておいててなァ。昨日オレが吸収された時に司令塔を失って体中に拡散しちまってたのを集めて、潰された内臓を補強しておいた。若干、ハザードレベルが上がって、オレの遺伝子が体に馴染んでるかもしれねえが、これで命に別状はないだろォ」

エボルトはそう説明する。

「それじゃあ、クリスちゃんは・・・!」

「ただし、あくまで応急処置。他の怪我はそっちでどうにかしろ」

「ありがとうございます!」

響は、立ち上がって、深くお辞儀をする。

「どういうつもりだ?」

一方の龍我は、クリスを抱えたまま立ち上がる。

「ナニ、安心しろ。どういう訳かソイツだけは乗っ取れない。だからソイツがお前たちを裏切るような事は・・・」

「そうじゃねえ!・・・なんで助けた?」

人類を滅ぼそうとしていた存在が、何故クリスを助けたのか。

その点が、龍我には分からなかった。

自分たちの、敵だった筈なのに。

「・・・さあなァ」

しかし、エボルトはそう答える。

「しばらくこの星を離れる。また力を蓄えたら戻ってくるよ」

そしてそう言って、エボルトは龍我たちの方を向く。

「それまでしばしの別れだ」

「はい!お元気で!」

「・・・やっぱ変わってんなァお前」

響の想定外な言葉に、エボルトはほくそ笑む。

「え?そうですか?」

響は首を傾げるだけだ。

だが、今はその事はどうでもいいだろう。

「チャオ~♪」

エボルトは、彼らにそう挨拶し、その身を液状化させて、天高く飛んでいく。

「・・・二度と戻ってくんじゃねえ」

「ええ~!?なんでですか!?」

「~・・・いいか?アイツは思っている以上に悪い奴なんだぞ?」

「でもクリスちゃんを助けてくれました!」

「それはアイツの計画の一部に決まってんだろ。きっと何かクリスに仕掛けたに違いねえ」

「いくらなんでもそれはないと思いますよ?」

「なんでそう言えるんだよ?」

「だって・・・」

響は、エボルトが消えていった空を見上げる。

「エボルトさん、さっき『人間だからお前を倒せたんだよ』って言ってました。それって、人間を認めたって事じゃないですか?」

「・・・・」

なんとも、響らしい考え方だ。

人の良い面をよく見ている。

まあ、あの男の場合は、良い面も悪い面の一部なのだが。

「少なくとも、私はそう思うんです」

「立花らしいな」

「・・・やっぱこいつ天性の馬鹿だろ?」

「言ってやるなまだ高校生だ」

「カズミンさん酷いです!」

わーぎゃーと騒ぎだす響と一海。そしてそれを呆れ気味に眺める翼と幻徳。

そんな様子を、龍我はふっと笑う。

「万丈」

そんな中で、由衣が龍我に声をかける。

「おう由衣」

「ありがとう。さっきは助けてくれて」

「・・・おう!」

由衣は、微笑んで礼を言う。

そして、その視線を、龍我に抱えられている眠ったままのクリスへと向けられる。

「・・・その子、大事にしなさいよ」

「・・・おう」

由衣は、含みある笑顔でそう言い、龍我は、それをなんとなく察して頷く。

しかし、それをいつの間にか見ていた外野は―――

「なんというか、すげえよなあのガキ。あんな土壇場で告白するなんてよ」

「ですよねぇ・・・」

「これが恋する乙女の底力、というものなのだろうな」

「うむ・・・」

「・・・ん?幻徳さんなんで脱いで・・・ぶっアハハハハ!!」

幻徳を見て突如として笑い出す響。

「む?どうした立花・・・ッ!?」

そしてそれを見て幻徳を見た翼は、それを見て絶句する。

幻徳が、どういう訳か上に来ていたジャケットのファスナーを下ろし、下に着ているTシャツを晒していたのだ。

そのシャツに書かれていたのはこれだ。

 

   右

   に

   同

   じ

   ←

 

 

「・・・あー、氷室首相補佐官」

「む?なんだ?」

「・・・・何故、一番右なのにそのTシャツを・・・」

そう、幻徳は今、一番右にいるのだ。

だから、そのTシャツは本来なら、自らが誰かよりも左にいなければ使えないものであり、ある意味全く的外れな事なのだ。

「・・・・」

それを指摘された幻徳は―――何事もなかったかのように左に移動した。

「いや使いこなせねえなら使うなよ」

「えっと・・・それは一体どういう・・・」

「あ、それが絶望センスの由来ですか!」

「誰もこのセンスを理解してくれんのだ・・・!」

「ああ・・・はい・・・それは・・・」

拳を握り締めて血の涙を流す幻徳の様子に、翼はそれ以上何も言えなくなる。

「皆~」

「あ、紗羽さん」

「もう酷い目に遭ったわよ~。車は壊されるし頭ぶつけて気絶するし。なんでエアバック開いてくれなかったの・・・ついでにもう全部終わってるみたいだし・・・ん?あの三人何かあったの」

「まあ、それはこれから分かりますよ」

遠くで、多くのサイレンが聞こえてくる。

おそらく、二課の救急隊員たちの乗る車両のサイレンだろう。

そのサイレンを聞き入れつつ、彼らは、クリスを抱える龍我を見守り――――

 

 

 

―――そして、戦いは終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後―――

戦兎、セレナはとある発明品の開発に勤しんでいた。

「戦兎、入るぞ」

「また発明?」

そんな中で、翼と美空が戦兎の家に入ってくる。

「あ、翼さん、美空さん!」

「ご飯持ってきたよ」

「さんきゅー」

呆れ気味ながらも昼飯を持ってきてくれた美空に礼を言う戦兎。

「むう・・・」

そんな中で翼は美空の弁当を注視する。

「ん?・・・ああ、はっは~ん」

そんな翼の視線に気付き、美空はふっと笑みを浮かべる。

「今度料理教えてあげようか?」

「い、いいのか!?」

「いいわよ。これで私の負担も減るもんだし」

「おお・・・・あ、でも仕事が・・・」

「ああ、そういえば海外進出に向けての準備があるんだっけ」

それじゃあ仕方がない、と納得し、弁当の中身を取り出しつつ、美空はある事を話しだす。

「由衣さんから聞いた。ビルドが昏睡状態だった子供たちを救ってくれたって」

そう、旧世界における実験で、意識不明となっていた子供たちを、戦兎は治したのだ。未だ起動しないジーニアスフルボトルを使って。

「ジーニアスボトルの浄化機能を利用したんだ」

未だ、まともに起動できないとはいえ、浄化機能だけは使えるジーニアスボトル。

その機能を使い、戦兎は子供たちの体内に残っていた汚染物質を全て除去したのだ。

その言葉に、美空、翼、セレナは笑顔を浮かべる。

「やっぱり、仮面ライダーはこの世界にも必要だね」

「ノイズが去った今、仮面ライダーとシンフォギアは災害救助手段となってしまった。しかし、だからこそ我々が存在する意味がある」

「これからも愛と平和のために、ですね」

「・・・ああ」

そんな三人の言葉に、戦兎は頷く。

「あれ?そういえば万丈は?」

「龍我さんなら、クリスさんのお見舞いに行きましたよ。今朝目覚めたそうでして」

「そうなの?じゃあ後で私もいかなくちゃ」

「うむ。それはそれとして、桐生は何を作っているのだ?」

「ん?ああ」

戦兎が作っているものを覗き込む翼と美空。

「『リンク・アニマル』。装者の適合係数を安定させる自立稼働型アイテムだ。これを使えば、LiNKERを使う必要もなくなる・・・!」

「LiNKERを使わずとも・・・まさか、マリアたちの為か?」

「まあ、そんな所だ。アガートラームの修復もひと段落して、今は試作段階だが・・・これから実用段階にまで改良していくつもりだ。凄いでしょ?最っ高でしょ?天っ才でしょ?」

「はいはいスゴイデスネー」

恰好つける戦兎に美空が棒読みでそう返す。

だが、翼にとっては驚愕せざるを得なかった。

 

 

LiNKER無しでギアを纏う事ができる。

 

 

それは即ち、もう奏のようなLiNKERに頼って戦う必要がなくなるという事。

 

もう二度と、あのような惨劇は起きないという事。

 

それを思い出せば、翼は、自ずと笑みがこぼれる。

「本当に、桐生はすごいな」

そんな時だった。

「すみませーん戦兎先生は・・・あ」

そこへ未来がやってくる。

「おお小日向か」

「すみません。お邪魔だったでしょうか?」

「そんな事ねえよ」

「あれ?響さんは?」

「弦十郎さんの所で修業です。キルバス戦で思う所があったみたいで・・・」

「うむ、そう言われてみると私も鍛えねばならんな」

翼は拳を握って見せる。

「さて、と」

「あれ?戦兎先生どこかへ出かけるんですか?」

「ああ、ちょいと未来と用があってな」

「そうなの?」

「ああ」

戦兎はそう答えて立ち上がり、未来の方へ歩き出す。

「そんじゃ、行こうか」

「はい」

戦兎の言葉に未来は頷き、二人は外に出ていく。

「・・・・なんというか」

そんな二人の様子を見送り、翼はふと呟く。

「仲良くなったな・・・」

「ほんと、こんなに多くの女の子たちに囲まれて、幸せ者ねえあの馬鹿は」

「アハハ・・・」

美空の言葉にセレナは苦笑した―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院にて。

「・・・・」

龍我はクリスのいる病室の前で、小さな花束片手に立ち止まっていた。

そして、その前で、かれこれ一時間は突っ立ったままだった。

その理由はただ一つ―――先日のキルバス戦における、あの告白だ。

(なんか気まずい・・・)

クリスの偽り無き想い。それは龍我にだって分かる事。

だけど、だけども、龍我はそれに答えられる自身がなかった。

かつて、香澄を死なせてしまった後ろめたさ故に。

ついで相手は年下。そして戦争を体験してしまっている少女だ。

そんな彼女に、果たして自分は、支えてやることが出来るのか。

それ以前に、まだ香澄の事を拭う事が出来ていない。

一体全体どうすればいいのか。

「・・・だぁっもう!!」

しかし、いくら考えても答えが見つからない為、龍我はそこで思考を中止。

意を決して、扉を開ける。

自動ドアが開き、部屋の中から吹き付けてくる風を感じながら、龍我は病室に踏み込む。

そうして入った先に、彼女はいた。

病衣に身を包み、ベッドから上半身だけを起こし、日差しが差し込む、開いた窓から外を眺める、雪色の髪をした少女を。

その佇まいは、妙に絵になる様子だった。

そんなクリスを、龍我は立ち止まって見ていた。

ふと、彼女が龍我の気配に気付いて、視線を龍我の方へ向ける。

「龍我・・・」

クリスは、ただ一言、龍我の名を呼ぶ。

真っ直ぐ、こちらを見てくる、アメジストの瞳。

その瞳にどきりと心臓を跳ねさせつつも、なんとか平静を装いつつ、龍我は無理に笑顔を作る。

「よ、よお、元気そうじゃねえか」

「おかげさまでな」

クリスはなんでもないかのように答える。

「それで、どうよ?」

龍我が、ベッドの横にある台に花束を置き、椅子に座りつつ尋ねる。

「肝臓を中心に、そこら周辺の遺伝子が他の所と違うらしい。一応、生殖機能に異常は見られないってさ」

「そ、そうか・・・」

(なんでそこをチョイスした・・・!?)

クリスの言葉に、いちいちどぎまぎしてしまう龍我。

「先公の見立てだと、アタシがエボルトの記憶に塗り潰される事はないんだと。アタシはいわゆる『特異体質』らしいからな」

「へえ・・・」

「ついでにアタシのハザードレベルもあがってるらしいから、普通の人間より生身で強くなってるってさ。話には聞いてたけど、やっぱエボルトってすげぇんだな」

「まあな・・・」

ふと、クリスが窓の外を見る。

「なんか、龍我と一緒になっちまったなぁ・・・・」

「・・・・」

と、感慨に浸るクリス。そんなクリスをちらりと見やった龍我だが、ふと、その耳が赤くなっている事に気付く。

「・・・それで、だな」

・・・なんか、声が若干上ずっていたように聞こえたが気のせいだろうか?

そして、クリスは恥ずかしそうに顔を赤くしながら、龍我をちらちらと見ながら、ある事を尋ねる。

「・・・・この間の・・・返事・・・」

「・・・・ッ!?」

それを聞いて、龍我は体の体温が一気に跳ね上がるのを感じた。

「あ、あああえっとそれはその・・・」

思わず取り乱してしまう龍我だが、クリスが心配そうに龍我を見つめてくる。

そんなクリスの様子に、龍我は気まずそうに口をつぐみ、頭を何回か掻いた後に、やがて姿勢を整えて、答える。

「・・・正直、俺は香澄の事が忘れられない」

「・・・」

「お前の事は、嫌いなわけじゃねえ。むしろ、女として見てるつもり・・・いや、確かにお前の事を、一人の女として見てた。お前と一緒にいる事が、香澄と一緒にいる時ぐらい、楽しいって思えた。それでも俺は、香澄の事を忘れられない。たぶん、俺はお前と香澄を重ねちまう。それが、凄く申し訳ねえんだ」

龍我は、正直に自分の気持ちを明かす。

「また、お前を香澄と同じように死なせちまうかもしれねえ・・・それが、俺はどうしようもなく怖いんだ」

大切な人の命が、自分の腕の中で消える。

その時程、辛くて、悲しかった事はない。

そんな想いを二度としたくない。

「だから、すまねえ・・・」

龍我は、そう言って頭を下げる。

そして、次の来る、クリスの返答を待った。

罵倒か、呆れか。いずれにしても、気分の良い言葉ではないだろう。

龍我は、その時を、頭を下げながら待つ。

「・・・分かった」

ふと、クリスからそんな言葉が聞こえる。

その言葉に、龍我は少し顔を上げる。

「だったら、とりあえずアタシと付き合え」

と、次の瞬間、まさかの言葉が飛んできた。

しばしフリーズ。

「・・・・ハアッ!?」

そして数秒待ってやっと理解した所で素っ頓狂な声を挙げる龍我。

「龍我の気持ちは良~く分かった。だから、とりあえずアタシと付き合え」

「いや待てなんでそうなる!?」

クリスの滅茶苦茶な提案に龍我は思わず叫んでしまう。

しかし、そんな龍我の顔の前に、クリスは人差し指を突きつける。

「アタシが、そう簡単に死ぬようなやわな奴に見えるかよ?」

そう、不敵に笑って見せるクリス。

「確かに、龍我にとって、香澄は忘れられない人だと思う。だけど、その逆も然りだ。きっと、うじうじしてる龍我の事を心配していつまでも成仏できないでいるかもしれないな」

「お、おう・・・?」

「だから、アタシが龍我を目一杯幸せにしてやる。誰もが羨ましがるぐらい幸せにして、香澄さんが安心して成仏できるようにしてやる!だからとりあえずアタシと付き合え」

なんてめちゃくちゃな。というか、新世界創造の際にほとんどの人間が生き返っているのだから成仏というのはおかしな話なのだが。

「お前・・・馬鹿なのか?」

「筋肉馬鹿の龍我には言われたくねえな」

龍我の言葉に、そう軽く返して見せるクリス。

そんなクリスが、ふと両手を組んで、語り出す。

「龍我の香澄は、前の世界で死んだ。今この世界で生きてる香澄は、この世界の龍我のもので、アタシの目の前にいる龍我のものじゃない・・・だから、アタシが龍我を幸せにする」

クリスは、確かな覚悟をもって、そう言った。

「他の誰でもない。アタシが龍我に幸せにするんだ。アタシは龍我が好きだから、龍我の幸せを独り占めしたいんだ。だから、アタシは龍我と付き合う」

他の誰にも譲らない。龍我の幸せを、自分が作って見せる。そうしてみせる。

「だから、アタシと付き合え。龍我」

「あくまで命令口調なのな・・・」

なんと強引な事か。しかし、意外と、悪くない気がする。

「当然」

ふんす、と胸を張って言ってのけるクリスに、龍我はふっと吹き出す。

「分かった。俺の負けだ」

そう言って、龍我はクリスの手を取る。

それに、クリスは少し顔を赤くする。

「幸せに出来る者ならやってみろ」

龍我は、その『挑戦』を受けて立つ。

その言葉に、クリスは同じ様に笑い、

「上等だ。絶対に龍我を誰よりも幸せにしてやる」

その笑顔は、誰よりも嬉しそうな笑顔だった――――




次回の愛和創造シンフォギア・ビルドは『創造しない』!

何話かに分けて一度に投稿ですのでお楽しみに!

ついで現在のキャラ設定も投稿しちゃいます!

ですので楽しみにしてください!

ではまた次回で!

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