龍「おい、俺たちのことも忘れんな!」
戦「うるっさいなこの小説の主役は俺だぞ」
一「出たよいつもの・・・ってか他の奴らはどうしたんだよ?」
戦「今日来るはずだった響は翼のCDを買いに、翼は新しい歌の作曲、未来はクロのいたずらの餌食になってて、切歌は調とお買い物だってさ。なんか服を買いに行くとか」
幻「む、服なら俺のオーダーメイドの・・・」
一「お前の服はダサいんだよ!」
幻「何故誰も俺のファッションを理解できないのだ!」
一同「一生理解できねえよ!」
慧「まあまあ皆さん落ち着いて。最近、コロナが加速して色々と大変なんですから。マスクしないとですよ」
シ「慧介、ここはフィクションの世界だから俺たちが対策しても意味ないz―――」
戦「お前はお前でメタいこと言ってんじゃないよこの真面目天然野郎!」
シ「あ、アズレンでエンタープライズと結婚したそうだぞ。次は瑞鶴とだそうだ」
慧「それ今ぶっこむ!?」
龍「加賀が出なくて泣いてたな」
一「ああ、赤城は思いのほか早く出たのにな」
幻「あとクリーブランドも建造で出ないそうだ」
慧「待ってくださいそれ以上やると作者が泣き崩れてしまいます!」
戦「あとデュエルリンクスでもネット対戦で連戦連敗らしいな」
慧「やめて皆!作者のライフはもうゼロよ!」(裏声)
シ「なぜ俺を掴む!?HA☆NA☆SE!」
龍「あ、作者が使ってんのはブルーアイズだとかいう奴を中心に構成した奴らしいぜ」
幻「上手くコンボが決まらないそうだ」
一「なにせ素人だからな」
慧「ああ、文字外で作者のライフが削られていく・・・」
戦「と、いうわけで、集いし願いが新たな力を呼び起こす!シンフォギア・ビルドGX編第八話をどうぞ!」
『PROJECT IGNAITE』
知っての通り、シンフォギアシステムには、いくつかの決戦機能が存在する。
一定の歌を紡ぐことにより、限界値を超えたフォニックゲインを発動、自らの体の損壊を顧みず極大の大技を繰り出す『絶唱』
一方、それ以上のフォニックゲインによって、シンフォギアに搭載された301.655.722種類のロックを全て解除、飛翔、超火力などといった、人智を超えた力を発揮する『
だが、どちらもそれなりの欠点を備えているのは確か。
絶唱は相討ち覚悟の心中技、失敗すれば、自滅技となりかねない超弩級の危険技。
一方のエクスドライブは相当量のフォニックゲインを必要とする。その量は、まさしく奇跡に等しいものだ。そんな奇跡を戦略に組み込むわけにはいかない。
であるならばどうすればいいのか。
シンフォギアには、もう一つの決戦機能が存在するのをご存知だろうか?
それは―――『暴走』
今までに響が幾度となく発動させてきた、あの黒化現象。
知能は怒り狂った獣並みに低下するものの、戦闘力が爆発的に引き上げられるあの現象。
『PROJECT IGNITE』とは、その暴走を三段階のセーフティロックにて制御し、純粋な戦闘能力へと変換錬成し、キャロルへの対抗手段として確立させることを目的としたプロジェクトだ。
「―――というのが、先日エルフナインが説明した『イグナイトモジュール』のおおまかな内容だ」
翼、クリスだけでなく、マリア、切歌、調、そして仮面ライダー全員すらもそろえたメンバーの前で、戦兎はそう言う。
「それを踏まえて、オートスコアラーが現れて説明できなかった俺が考案する『PROJECT LINK ANIMAL』だが、端的に言って装者の適合係数引き上げ機能の搭載だ」
「装者の適合係数を?」
「ああ」
戦兎の背後のモニターに、ある図面が映し出される。
「これは・・・」
「今考案している翼の天羽々斬のリンク・アニマルの設計図だ。まず、これを作ることによって得られるメリットは、まずLiNKER無しでのシンフォギアの装着可能な適合係数を引き出すことが出来るという事」
その言葉に、場が一気に騒然となる。
「それってもしかして」
「LiNKER無しでも、私たちも戦えるという事デスか!?」
「ああ・・・と、言いたい所だが」
調と切歌の期待気な言葉を落胆させるような言葉を戦兎は言う。
「実はこの理論はまだ未完成なんだ」
「未完成って・・・そもそもどうやって適合係数を向上させる?」
マリアの言葉に、戦兎は説明する。
「装者が適合係数の不足によってバックファイアを受けるのは、ギアからくる信号によって引き上げられる身体能力に体が耐えられないからだ。であるならば、その信号を機械的に制御することで適合係数を引き上げ、十全な力を発揮できるようにするのがリンク・アニマルの重要な機能になる。最も、第二種適合者が絶唱を使う場合にはLiNKERは必要になるが」
「でもまだ未完成なんだろ?じゃあなんでそんなもん作る必要があるんだよ?」
「まあ、その理由は後述する三つの機能かな」
そう言って戦兎は指を三本立てて見せる。
「まず一つ目に、装者の戦闘をサポートする強化武装の搭載。例えば天羽々斬には、ラビットボディにある『ホップスプリング』を応用して、反動による超機動、重攻撃を可能にする『スカイスプリング』の搭載する予定だ。それによって、翼の機動力は大幅に向上する」
「つまり、それぞれの装者にあった強化パーツをギアに搭載するってことか」
一海が思案顔でそう呟く。
「んでもって二つ目に、
「具体的にはどのような感じだ?」
「まあ端的に言って、自分の視界に相手には見えない情報を提示することだな。お前ら、
「それはそれでなんか楽しそうだな・・・」
それはともかく。
「んでもって三つ目。盗難と紛失の防止だ」
戦兎が言った言葉に、全員が首を傾げる。
「リンク・アニマルは、クローズドラゴンのように自由に動き回れる。だから、常にギアペンダントを常備していなくても、戦闘に入った時にすぐに飛んできてくれる。その上丈夫だからそう簡単に破壊されることもない」
「つまり、何かの拍子で盗まれることも、落としちゃうことがないというわけだな」
クリスの言葉に、戦兎は頷く。
「ま、説明としてはこんな感じだな」
現在のS.O.N.Gにおける技術主任は戦兎。事実その技術力は了子にも負けず劣らずであり、すでにシンフォギアの修復作業まで可能という天才っぷりである。
まさしく、天才は全てを凌駕する。といった所だろうか。
「だが、シンフォギアを強化してオートスコアラーに対抗できるようになるならば、イグナイトモジュールは必要なくなる。それでイグナイトの説明のあとにそのリンク・アニマルの説明をしたという事は、そのギアだけじゃ奴らには敵わないという事を意味している」
そんな中で、シンがそう言い出す。
「LiNKER無しでも運用可能なシンフォギアを作り出すのは良い。だがそれを何故、実現できない状態で出してきた?」
確かに、そんな状態の提案を、このタイミングで出してきたのか。
「その上で、お前はこの案を出したという事は、何か別の目的があるんじゃないのか?」
その言葉に、その場にいる者たちの視線が一斉に彼に集まる。
「・・・まあ、最初はマリアたちがLiNKER無しでも戦えるようになるというメリットがあったから考案したんだけど、ちっとばっか状況がそうせざるを得ない状況になってきたからな。イグナイト起動前でもある程度戦えるようにしておきたかった。ただそれだけだ。それに、いつかはやらなくちゃいけない事だったからな。早いか遅いか。ただそれだけの違いだ」
と、戦兎はそう言って見せる。
その様子に、シンはため息を吐く。
「まあ、そういう事にしておいてやる」
とりあえずは見逃された、という事なのか。
そして、響の敗北から、一週間近くが経過した。
響は未だ意識不明の状態。怪我の状態はかなり良くなっているとは言え、あの一撃は、相当な威力だったことが、当初の彼女の傷から伺えた。
そんなわけで、発令所には翼、クリス、マリア、龍我、シンが集まっていた。
幻徳は政府官邸で外せない仕事、一海は猿渡ファームの状況を確認しに行っている。
「『PROJECT IGNITE』『PROJECT LINK ANIMAL』、現在の進捗は、八十九パーセント。旧二課が保有していた第一号、および第二号聖遺物のデータと、セレナちゃん、エルフナインちゃんの頑張りのおかげで、予定より早い進行です。ライダーシステムの改修も、順調に進んでるとのことです」
戦兎はライダーシステムの改修を、セレナはリンク・アニマルの外殻及びシステムを、そしてエルフナインはギアにイグナイトモジュールを搭載する作業に勤しんでいる。
セレナは学校に公欠をとっているため、実質技術力のある三人がいることはかなりありがたい。
「各動力部のメンテナンスと重なって、一時はどうなることかと思いましたが、作業や本部機能の維持に必要なエネルギーは、外部から補給できたのが幸いでした」
現在、二課本部潜水艦があるのは、港にある発電所のすぐ傍。そこから電力を貰い受け、それを使って本部の電力を賄っている所である。
「それにしても、シンフォギアの改修となれば、機密の中枢に触れるという事なのに・・・」
ふと、緒川が一つの疑問を口にする。
「状況が状況だからな。それに、八紘兄貴の口利きもあった」
「八紘?誰だそりゃ?」
弦十郎が言った名前に龍我が首を傾げる。
そんな龍我に疑問に、弦十郎ではなく翼が答える。
「限りなく非合法に近い実行力をもって、安全保障を陰から支える、政府要人の一人にして、氷室長官の懐刀。超法規措置の対応など、彼にとっては茶飯事であり・・・」
「とどのつまりがなんなんだ?」
しかし、そのクリスの言葉に翼は視線を逸らす。
その代わりに、緒川が答える。
「内閣情報官『
「だったらはじめっからそう言えよな。こんにゃく問答が過ぎるんだよな」
「私やシンのS.O.N.G編入を後押ししてくれたのも、確か、その人物なのだけど・・・なるほど、やはり親族だったのね」
しかし、その言葉に翼は浮かない様子だった。
「ん?どうしたんだ?」
龍我が首を傾げる一方、弦十郎も頭を掻いていた。
(何か、ただならぬ事情があるのだろうな・・・)
その様子を見ていたシンは、一人勝手にそう納得する。
そんな中で、発令所の扉が開いて、未来とクロが入ってくる。
「響の様子を見てきました」
「キュル!」
言わずもがな、響の見舞いだ。
「生命維持装置に繋がれたままですが、大きな外傷もないし、心配はいりませんよ」
「・・・ありがとうございます」
緒川のその言葉に、未来は寂しく微笑むのだった。
「・・・エルフナインさん、エルフナインさん」
「ん・・・あ・・・」
セレナに揺すられ、エルフナインは目を覚ます。
「寝落ちてましたよ」
「あ、すみません、セレナさん・・・」
「いい寝顔でしたけど、いい夢でも見てたんですか?」
白衣を着て、リンク・アニマルの外殻の組み立てに着手していた筈のセレナがそうエルフナインに尋ねる。
その部屋は、チョークで壁や床に、多くの式や文字、図形が描かれており、さらには資料すらも置いてある。
しかし、それほど散らかってはおらず、しかしその惨状を見るあたり、彼女の頑張りが十分に伺える。
「あ、はい。パパとの思い出に・・・」
「パパ・・・それって、キャロルさんの・・・」
その問いに、エルフナインは頷く。
見たのは遠い彼方の思い出。父親が料理に失敗し、それを食べる羽目になって、そして、これからの料理は自分が作ると意気込んだ、彼の日。
「はい。どういうわけか、キャロルにはボクに、錬金術の知識だけでなく、自分の思い出まで転送複写したんです。その理由は、わかりませんが・・・」
ふと、エルフナインは時計を見る。
「十分ぐらい寝落ちてましたか」
「こっちの準備はできました。あとは聖遺物とリンク・アニマルをうまく同期させることが出来れば・・・」
「分かっています。手伝ってくれますか?」
「もちろん」
二人が共同作業に入る。
そんな中で、エルフナインは、父イザークの、最後の言葉を思い出す。
『世界を知るんだ』
その最後に、一体何を言おうとしたのか。
その答えを探す為に、キャロルと敵対し、こうしてギアの改修に勤しんでいる。
しかし、同時に疑問に思う。
何故、キャロルは自分に自らの思い出すらも、転送複写したのだろうか。
それが、いまだ疑問であった。
「―――頃合いだ」
玉座にて―――
「仕上げるぞ」
アルカノイズが、出現する。
それに、すぐさまS.O.N.Gが対応する。
「アルカノイズの反応を検知!」
「反応、絞り込みます!」
その直後、船体が大きく揺れる。
そうして映し出されたのは―――このドッグの近くの監視カメラのリアルタイム映像。
「まさか、敵の狙いは――――」
「俺たちが補給を受けている、この基地の発電施設か!」
事実、アルカノイズたちが、発電所に向かって進行していっていた。
「何が起きているデスか!?」
そこへ切歌、調、慧介が駆け込んでくる。
「アルカノイズに、このドッグの発電所が狙われてるの!」
「ここだけではありません!都内複数個所にて、同様の被害を確認!各地の電力供給率、大幅に低下しております!」
そうなれば、都内への二次被害だけでなく、ここへ供給する電力すら足りなくなり、ギアやライダーシステムの改修に大幅な影響が出る。
それと同時に、猿渡ファームにて。
「ノイズだぁぁああ!!」
「逃げろ!今すぐ!」
どういうわけか都内から遠く離れた場所に位置する猿渡ファームに、アルカノイズが出現していた。
そして、そのアルカノイズの集団の中に、一人だけ、スキンヘッドの筋骨隆々のパワードスーツを着た男がいた。
「でぇてこぉーい!カァメンライダァァァア!!!」
どこのレスリングマンか、そう雄叫びをあげるスキンヘッドの男。
「今すぐぶっ殺してやるから、大人しく俺の前に姿を現せやぁぁああ!!」
無駄にうるさく叫ぶそのスキンヘッドの男は『モーガン・ゲンネル』。
武装はその身の丈の二倍はある戦斧。
それ以外に武装はなく、あるのは全身を覆う真っ黒なパワードスーツだ。
イメージとしてはワンパンマンの桃源団が来ていたものをイメージしてもらえれば幸いである。
「うるせえよ」
そんなモーガンの声にこたえる声が一つ。
「そんなに叫ばんでも聞こえてるわ卵頭」
この猿渡ファームの主、猿渡一海である。
そんな一海に、モーガンは嘲笑をもって出迎える。
「ふっふっふ、こうもぬけぬけと出てくるとは、貴様、よほど頭が悪いと見える!」
「はっ、こんな楽しそうな事があって、出てこねえ奴なんかいねえよ」
「フハハハハハ!それを楽しむ為には、お前には少々資格がないようだがァ!?知っているぞぉ!貴様、今のライダーシステムはアルカノイズの分解攻撃には全くの無力を聞いているぞぉ!まともに戦えるのはタスクとビルドのみ!貴様は無能!即ち、貴様はここで死んだも同然だ!」
モーガンは、一海をそう指差し、嘲笑ってみせた。
一方、ここは政府官邸。
「あ、あー、氷室幻徳ー、氷室幻徳ー、貴方はただいま完全に包囲されているので、大人しく出てくることを提案しまーす。じゃないとー、ここにいるこの国を担う要人たちが、勇者の名の元に皆殺しにされちゃいまーす」
アルカノイズが政府官邸を包囲し、その一角で、一人のいかにもコスプレといったふざけた格好をした男がいた。
その姿は、ある意味『勇者』と呼べるものであり、恰好に加えてマントや背中に背負ったバスターソードがその本気度を物語っていた。
とどのつまり、勇者気取りの痛い奴、である。
しかしどちらにしろ、政府官邸内にいる人間は一人足りとして逃げることは出来ないだろう。
何故なら、政府官邸は完全包囲されているのだから。
その入り口にて。
「危険です長官!」
「安心しろ。死にに行くわけではない」
「しかし・・・」
外に出ようとする幻徳を、必死に止める職員たち。
そんな彼らに、近付く者がいた。
「幻徳・・・」
この国の首相にして、幻徳の父親である『
「親父・・・」
そんな父親の姿を見て、幻徳は、外になおもふざけた降伏勧告をする勇者然とした男の方を見る。
「・・・奴は、おそらくここにいる者たちを皆殺しにするつもりだ。おそらく、話し合いでも解決しないだろう」
「・・・・」
その言葉に、泰山は何も言わない。
そんな泰山に、幻徳は背中越しに言う。
「その為に、俺が行くんだ。ここにいる者たちを守るために―――この胸に宿る、俺の『大義』の為に」
そして、もう一度父親の方を振り返って、微笑んで見せる。
「だから親父はここで待っててくれ。すぐに終わらせてくるから」
「・・・分かった」
その幻徳の言葉に、泰山は頷く。
「行ってきなさい、幻徳」
「ありがとう、親父」
その父親の言葉を背中に、幻徳は外に踏み出した。
そして、その様子を空から見下ろす、リカルドの姿があった。
「さあ、全ての仮面ライダーを抹殺するのだ。我らの悲願の為に。アルカノイズがいる限り、我らの優位性は覆らない」
その言葉は、―――儚くも砕かれることを、彼はまだ知らない。
そんな、さも当たり前のように笑うモーガンに、一海は鼻で笑ってみせる。
「
「なにぃ?」
モーガンは、一海の言葉に怪訝そうな表情を見せる。
そうして、一海はスクラッシュドライバーを取り出して見せる。
「もうライダーシステムは、ノイズの攻撃を克服してんだよ」
「お、出てきた出てきた」
勇者服の男『
「よかったぁ。君が出てこなくちゃ、勇者である僕の活躍を分かってもらえないからね」
「誰が勇者だ。貴様は誰が見ても変な恰好をしたテロリスト野郎だ」
「酷いなぁ。僕は本物だよ。勇者の剣に、勇者の服、勇者の鎧だってある。僕は正真正銘の勇者さ」
健治は悪びれもせずに言って見せる。
「勇者なら、こんな大人数で囲むなんてことはしないと思うのだが?」
「分かってないなぁ。今時の勇者は使い魔を使うんだよ?彼らはみんな、僕の使い魔。だから使役してもおかしくないよ」
「ものはいいようだな」
「さて、それじゃあそろそろ君を殺すね。あまり苦しまないように、頭から分解してあげるよ」
そう言って、健治はアルカノイズたちに指示を出す。
するとノイズたちが動き出し、幻徳に迫っていく。
その様子に、幻徳はあきれるようにため息を吐き。
「やれやれ、見た目は大人でも、中身は子供だな。どうして俺の相手は、いつもこんな子供みたいなやつの相手なんだか」
そう呟き、幻徳はスクラッシュドライバーを取り出す。
「ぷぷぷ、知ってるよ。お前のライダーシステムはアルカノイズに対抗できない。何もできずに死んじゃうといいよ」
「随分と情報が回っていないようだな」
幻徳が、そんな彼を逆に笑って見せる。
「もう既に、ライダーシステムはお前たちを攻略する準備はできている」
そして、本部潜水艦が泊まるドッグの発電施設にて、自衛隊がノイズの迎撃に当たっていた。
「アルカノイズの位相差障壁は、従来ほどではないとのことだ!解剖器官を避けて、集中砲火!」
アサルトライフルはもちろん、バズーカなどを率いて、彼らは進撃するアルカノイズたちを迎撃する。
バズーカの砲弾が炸裂すれば、アルカノイズたちは、たちまちその身の大半を吹き飛ばされ、次々に沈黙していく。
「行けそうです!」
誰かが、そう叫んだ直後、背後から近づいてくるアルカノイズに気付かず、そのアルカノイズの攻撃を受け、その身を跡形もなく分解されてしまう。
すぐさまそれに気付いた隊員が応戦するも、呆気なく分解される。
「く、いくらこちらの攻撃は通用するといっても、やはりノイズか・・・!」
隊長が、そう苦虫を噛み潰したかのような表情でそう呟いた直後だった。
何者かが、彼らの合間を縫って前に出た。
『ドゥラゴンジュエリィーッ!!』
『タイガァージュエリィーッ!!』
『ロボォットジュエリィーッ!!』
『クロコダイル!!』
スクラッシュドライバーを腰に装着し、そのボトルスロットに、それぞれのアイテムを装填する。
そして、待機音が鳴り響く中で、彼らはアクティベイトレンチを叩き下ろすと同時に叫ぶ。
「「「「変身ッ!!」」」」
『潰れるゥ!流れるゥ!!溢れ出るゥッ!!!』
『割れるゥ!喰われるゥ!!砕け散るゥッ!!!』
『ドゥラゴン・イン・クロォォズチャァァジッ!!』
『タイガァー・イン・タァスクゥッ!!』
『ロボット・イン・グリィスゥッ!!』
『クロコダイル・イン・ロォーグ…ッ!!!』
『ブルァァァァア!!!』
『オゥラァァァア!!!キャァァァア!!!』
その身を頑強なアーマーに身を包み、変身するは仮面の戦士。
その正体は完全秘匿。しかしその心は人を守る戦士の気構えをもつ者達。
「反撃だぁぁぁあぁあああ!!」
「うおっしゃぁぁぁあああ!!」
クローズとタスクが雄叫びを挙げて、アルカノイズたちを薙ぎ払っていく。
鬼気迫るその戦い方は、今までの鬱憤を晴らすが如く勢いであり、瞬く間にノイズたちは殲滅されていく。
「オラオラどうしたどうしたァ!」
「フハハハハハハ!!!見ろ!ノイズがゴミのようだァ!」
真正面から解剖器官の一撃を受けてもものともせず、一切の分解が引き起こらない。
それは即ち、ライダーシステムは、アルカノイズの分解能力を克服したという証明に他ならない。
猿渡ファームにて。
「行けィ!奴を素っ裸にしてしまえェ!」
グリスにアルカノイズが襲い掛かる。
「ふん」
それを見てグリスは、両手のツインブレイカーをアタックモードで構え、そして、同時に両の拳を突き出す。
するとグリスに襲い掛かっていたアルカノイズは一瞬にして消し飛び、消滅する。
だがしかし、ノイズはなおもグリスに襲い掛かり、その身を纏う鎧を削ぎ落そうとその身の解剖器官を振るう。
だが、それをグリスは片手で払って見せる。
「フハハハハハ!触った!触ったなァ!さあ、その身をこの戦場に曝け出すがいいィ!!」
だがしかし、グリスの腕が分解されることはなかった。
「・・・・は?」
途端にモーガンは間抜け面になり、そしてグリスは、仮面の奥でほくそ笑む。
「さあ、祭りの始まりだぁ!!」
グリスが、両手にツインブレイカーをもって、アルカノイズの殲滅を開始する。
両手のツインブレイカーを操り、殴り、撃ち抜き、蹴り飛ばし、瞬く間にノイズを殲滅していく。
「ぬ、ぐぅ・・・!?」
その光景はモーガンにとって信じられない光景であり、そして気付けば、全てのノイズの残骸がグリスの足元に転がっていた。
「そんな・・・馬鹿な・・・」
ノイズの攻撃をものともせず、例え受けても無傷であり、どれほどの衝撃を受けようともビクともしないその男は、次々にノイズを捻りつぶしていく。
「この程度か?」
そしてローグは、片手に掴んだアルカノイズを握りつぶして、そう健治に向かって言い放った。
「クローズ、タスク、エンゲージ!」
「グリスとローグも、別の場所にてアルカノイズと交戦を始めました!」
モニターの奥では、クローズとタスクがアルカノイズを蹂躙している姿が見られる。
解剖器官の攻撃を受けてもその装甲は分解されず、一方的に敵を叩きのめしていく。
「スクラッシュドライバーの改良は、既に二日前に終わっていた・・・それによってアルカノイズへの対抗手段はすでに整っている」
「強化型シンフォギアの完成まで、これで時間を稼げる・・・!」
モニターの先で、クローズの『スクラップブレイク』とタスクの『スクラップクラッシュ』が炸裂し、大部分のアルカノイズが消滅していた。
「・・・・ふふ」
それを見て、健治はほくそ笑む。
「どうやら、お前は僕が直々に倒さなきゃいけないようだね」
健治は背中に背負ったバスターソードを取り出す。
そして、横に向かって剣を振りぬいて見せる。すると、剣から
「これが僕の勇者の剣。これを受ければ、いくら仮面ライダーの君とて簡単に消し飛ばせる」
そしてそのバスターソードをローグに向ける。
「ならば受けなければいいって思うかもしれないけど、君が避ければ後ろの建物に直撃して、誰か死んじゃうかもね~」
「・・・・」
健治は嫌な笑みで剣を構えて見せる。
「さあ、避けるか受けるか・・・決めるのはお前だよ!」
次の瞬間、健治の振るう勇者の剣が、ローグに炸裂した。
「フハハハハハ!面白い!」
モーガンが突如としてそう高笑いして、傍らにある戦斧を持ち上げる。
「どうやら貴様はこの俺が直々に倒さなければならないようだなァ!」
「は、やれるもんならやってみろ」
グリスがくいくいと手で招いて挑発してみせる。
それにモーガンは戦斧を横に大きく振りかぶる。
「くぅらぁえぇいッ!!この俺の、渾身の一撃をぉぉぉぉぉお!!!」
その振りかぶった戦斧の一撃を、恐ろしい速度と質量をもって、グリスに叩きつける。
――――だがしかし、
「・・・はえ?」
健治の一撃は、ローグの装甲の前に止められており。
「大きく振りかぶりすぎだバーカ」
モーガンの一撃はグリスがしゃがむことで躱されていた。
「な―――」
『シィングルゥッ!!』
冷蔵庫フルボトルをツインブレイカーに装填。それをモーガンの足元に叩きつける。
『シィングルゥブゥレイクッ!!』
「な、にぃ!?」
足元がかっちんこっちんに凍り、身動きが取れなくなる。
そんなモーガンの前に立ち、グリスはアクティベイトレンチを下ろす。
『スクラップフィニッシュッ!!!』
そして、グリスは自分の胸に右拳を当てる。
「心火を燃やして、ぶっ潰す・・・!!」
次の瞬間、グリスの両腕から液状のロボットアームが出現。
「この俺の前にひれ伏せぇぇぇぇええぇええ!!」
そしてその腕をもってモーガンを殴り飛ばす。
「ぬぐあぁぁぁああ!?」
吹っ飛ばされたモーガンはそのまま壁に叩きつけられ爆発する。
「ふっ」
その様子に、グリスは鼻で笑う。所詮はパワードスーツ。ライダーシステムの足元に及ばないのか、胸部装甲が砕かれた状態で沈黙しているモーガンがそこにいた。
「カシラー!」
そこへ、オウルが飛んでくる。
「おう黄羽」
「終わったんならこっち手伝ってよ~。流石に僕たち三人じゃ倒せなくはないけど面倒臭いんですけど」
「はあ?お前らそれでもこの農場の三羽ガラスか・・・はっ、まあいい。祭りの続きと洒落込もうじゃねえか!」
そのままグリスはオウルを引き連れて、アルカノイズの殲滅に乗り出す。
「くそっ!くそぉ!」
健治が何度もバスターソードを振るう。その度に雷鳴が轟き、そしてアスファルトが砕け散る。
だが、目の前にいるこの男だけは―――砕けなかった。
「くそ、なんで、なんで勇者の剣が効かないんだ・・・!」
超強力な防御力を持つローグには、たかだか雷を出せるだけの剣の攻撃など、蚊に刺されたも同然のもの。
その理由は内部がヴァリアブルゼリーで満たされている全身各部を保護している装甲『クロコダイラタンアーマー』。
普段は柔らかく動きやすいそれは、攻撃を受けると瞬時に硬化、徹甲弾すらも受け止める防御力を発揮する。
そして健治の振るう剣はただの雷発生装置。
剣を振るう際の威力に、切れ味はあれどそれほどの重さはない。
「・・・・なるほどな」
そして、ローグは攻撃を受け続けて分かったことをつぶやく。
「剣術の心得はない・・・戦い方も素人同然・・・能力に頼るタイプか」
格闘戦における技術力は皆無。あるのは強力な一点突破の火力のみ。
―――彼にあるのはただ、一方的な蹂躙によって得た自尊心のみ。
「貴様のような奴は生きる価値もない」
アクティベイトレンチを下ろす。
『クラックアップフィニッシュ…ッ!!!』
バスターソードを掴み、思いっきり引く。
「大義の為の、犠牲となれ」
右拳を握り締め、その右手の『デスローブグローブ』にエネルギーを充填。
「う、うわぁぁぁあぁああああ!!」
その拳を、健治に容赦なく叩きつけて、そのバスターソードを粉砕してぶっ飛ばす。
「ぎゃぁぁぁあぁあああ!!」
断末魔と共に吹っ飛び、落ちた先ですさまじい爆発を引き起こす。
「・・・・ふん」
ぶっ飛んで沈黙した健治を一瞥し、ローグはすぐさま残ったアルカノイズたちの方を見る。
「最後の仕上げと行こうか」
そう呟いて、ネビュラスチームガンを取り出し、すぐさまアルカノイズの殲滅に乗り出した。
「うばっしゃぁぁぁああああ!!」
タスクのアッパーがノイズをまとめて上空にぶっ飛ばす。
「うおりやぁぁぁああぁぁあ!!」
クローズの突撃がノイズを車に轢かれたが如く吹っ飛んでいく。
「このまま強化型シンフォギアが出来上がるまで、時間を稼ぐぞ!」
「くそ!それにしてもうざい!ノイズだけに騒音がすごい!」
「誰が上手い事言えって言った!?」
連携も糞もないが、二人は確実にそれぞれの戦い方で敵の数を減らして言っている。
そんな中で、
「うおーりやぁぁあ!!」
「ッ!?」
タスクにミカが襲い掛かる。
ミカがその手に持つカーボンロッドが、タスクの掲げたツインブレイカーに叩きつけられる。
「うぐっ!?」
どうにか防ぐも、そのまま押し込まれ、押し返して動きを止められる。
そしてすかさず、ミカがもう一本の手で生成したカーボンロッドでタスクを吹っ飛ばす。
「ぐあぁぁあ!?」
「ッ!?慧介!」
そのまま壁に叩きつけられ、突き破る。
「慧くん!」
「やはりいたか、オートスコアラー・・・!」
その様子は発令所からも見えていた。
『ぐ・・・この野郎・・・!』
瓦礫の中からタスクが這い出てくる。
『ジャリンコ~、アタシは強いぞぉ』
挑発のつもりか、先が錐状のカーボンロッドの上に乗ってミカはそう言ってくる。
『ガキだからってバカにしやがって・・・仮面ライダー舐めんな!』
『ん?うおあ!?』
その一方で、クローズの方で驚いたような声が上がる。
そちらを見てみれば、そこにはクローズを襲う獅子の毛皮を被った男がいた。
「なんだあいつは!?」
クリスが声を挙げる。
『なんだテメェ!?』
『ムハハハハ!俺はデイブレイク社の切り込み隊長『テラー・オブジビアス』!これより貴様ら仮面ライダーを皆殺しにし、この世界を終焉に終わらる為の礎を築きに来たのだぁ!』
毛皮の男、テラーはそう叫ぶ。
「なんなんだあの男は・・・!?」
「ッ!?あの男から、聖遺物の反応を検知しました!」
「なんだとォ!?」
藤尭の言葉に、弦十郎は驚きの声を挙げた。
「は、上等だ」
クローズが身構える。
「テメェらがどうして世界を壊したいとか思ってるのか知らねえが、それが目的ならすぐにぶっ倒してやるよ」
「お前に出来るかぁ。このテラー様に」
「やってみなくちゃ分からねえだろうが!」
クローズがテラーに突撃する。
「やってみるが良い!」
それに対し、テラーは避けようともせず、その場に仁王立ちする。
「うおりやぁぁああ!!」
そして、そのまま拳を叩きつけた―――が、
「んな!?」
テラーの体に拳は通らなかった。
(な、んだ、このメッチャかてぇ皮膚は・・・!?)
「ネメアーの獅子」
「ッ!?」
テラーが、拳を振り上げる。
「かつて大英雄ヘラクレスが討伐せしめたあらゆる攻撃、あらゆる武器を通さなかった無敵の猛獣。俺が身に纏うこの毛皮はまさしくそれであり、この毛皮を纏う事によって得られる恩恵は、かつての獅子の力、そして、絶対的不死性を与えられるのだ!即ち、貴様が俺に勝つ通りなど、どこにもないのだぁぁぁぁ!!」
拳がクローズを狙う。
「チィッ!」
寸でのところでクローズは躱して見せる。
「だったらァ!」
『ツゥイィンッ!!』
ゴリラフルボトルとタカフルボトルを同時装填。
ボトルを装填することによって高速回転するパイルにエネルギーが充填、それをテラーの拳を避けながら懐に飛び込み、その肩にツインブレイカーを叩きつける。
『ツゥインブゥレイクッ!!!』
有機物系ボトル二連による一撃。ゴリラのパワーとタカの爪の鋭さを利用した、敵を斬り裂く一撃が、テラーに叩きつけられる。
その一撃が肩に直撃し、テラーの肩は大きく抉り飛ばされ、その肩から鮮血が溢れ出る。
「ぐぉぉぉぉおお――――なんてな」
「ッ!?」
一瞬、絶叫のようなものをあげたテラー。しかし、すぐさまその顔を卑しい笑みに変える。
そして次の瞬間、抉られた方の傷が一瞬にして修復、元通りになる。
「何!?」
「言っただろう。俺は不死身だと」
クローズがテラーに蹴り飛ばされる。
蹴り飛ばされたクローズは地面を転がり、しかしどうにか踏み止まる。
「んなのありかよ・・・」
「―――ありなんだよ」
「ッ!?」
突如として背後から聞こえた声に、クローズは思わず振り向く。そうして脇腹から見えたものは、一匹の蛇だった。
「なん―――」
なんだ、と言い終える前に、蛇がクローズのどてっぱらに体当たり、そのまま大きく吹っ飛ばされる。
「ぐおあ!?」
一気に吹っ飛ばされるクローズ。
「げほっ、ごほっ・・・!?」
「だぁれが一人だと言ったぁ?」
そうして聞こえてきたのはテラーとは別の声。
タンクトップとミリタリーズボンをきた筋骨隆々な男であり、その男の腕には何匹かの蛇。
「蛇・・・?」
「ああ、俺は無数の蛇を創造・使役する錬金術が扱える。俺が命令を下し、その命令を実行する、あるいは殺されるまでは決して消えることはない」
見れば、先ほどクローズを吹っ飛ばした蛇は真っ黒な塵となって消えていた。
獅子と蛇。それぞれの扱う能力の差はあれど、二人だというのはかなり厄介だ。
そこへ、タスクが飛んでくる。
「ぐぅ!?」
タスクは、吹き飛ばされた衝撃で後ろへ飛び、そのまま靴底をすり減らす勢いで後退、かがむクローズと背中合わせになるように止まる。
「んっふふ~」
見れば、ミカが両手にカーボンロッドをもってやってきていた。
「くっそふざけた見た目して無駄に強い」
単身で戦闘特化のオートスコアラーを相手にするのは手厳しいのか。
「くそ、ビルドドライバーさえあれば・・・」
ビルドドライバーさえあれば、あの姿に変身できるというのに。
「でも、引けない理由がある」
「ああ、そうだな」
二人は、意地と根性で立ち上がる。
「俺の牙をそう簡単にへし折れると思うなよ・・・!」
「たかが不死身と蛇、負ける気がしねぇ・・・!」
拳を打ち合わせて、二人はそう気合を入れる。
「状況が見えてねえのかぁ?お前らは俺たちに勝つことは出来ねえんだよ」
「大人しく負けを認めて、バラバラにされた方が早く楽になれるゾ」
「それでも戦いがお望みなら、どうぞご自由に。ただし一方的にやられて死にな」
テラーが煽り、ミカが提案、そして蛇使いの男『ロジャー・セリオ』が嘲笑う。
対峙する両者。
数においても戦闘能力においても、そして能力的にも劣っているこの状況。
正直、勝てる見込みはない。だが、それでも二人は戦う事をやめない。
何故ならば、彼らの背中には、守りたいものがいるのだから。
そして、緊張の糸が張り詰め、今、切れようとしたその瞬間――――
「待て!」
鋭い一声が響き渡る。
その声が響いた方を見れば、港のアスファルトの上に仁王立ちする未来の姿があった。
「未来!?」
「未来さん!?」
予想外の人物の登場に、クローズとタスクは同様に驚く。
「なんだぁあのガキ?」
「確か、ガングニールの装者の級友だったか?戦えねえ筈なのになんでこんなところにいるんだか」
そう、未来は戦う事は出来ない。であるならば、何故ここにいるのか。
「小日向!?」
「あいつ、なんであんな所に!?」
そして、未来の登場に驚いているのは、何も現場の彼らだけではなかった。
「今すぐ連れ戻せ!」
弦十郎がすぐさまそう指示を飛ばす。だが―――
『―――そうはいかない』
突如として艦内放送から、戦兎の声が響く。
「桐生!?」
「戦兎君、それは一体どういう事だ!?」
『あー、説明すると色々長くなるんだが・・・とりあえず全ての責任は俺が持つ。というわけで、あんたに一つ要求させてもらう』
おそらく自室の研究室でビルドドライバーの改修を行っているだろう戦兎が、無線を使って言う。
『七人目の装者の登録を、S.O.N.G司令であるあんたに要求する』
「七人目の装者・・・だとぉ!?」
その情報は、確かな衝撃をもって発令所に伝播した。
クローズが未来に向かって叫ぶ。
「何してんだ!?早く逃げろ!」
「おっと、そうはいかないんだゾ」
アルカノイズが未来を取り囲む。
「くっ」
「龍我さん!」
しかし、未来は戸惑いもなく、動揺もなく、ただ冷静に、龍我に要求する。
「ドラゴンフルボトルを貸してください」
「はあ?なんでそんなもんを―――」
「いいから早くッ!!」
「ッ!?」
その鋭い怒声に、クローズは驚く。
今まで、未来がこれほど強く要求してきたことがあっただろうか。
それも、あんな険しい表情で、真っ直ぐに見つめてきたことがあっただろうか。
いつも、後ろで、響の帰りを待つだけだった少女が、あんな目をするだろうか。
いつもとは違う、未来の様子にクローズは呆気にとられる。
しかし、すぐさま頭を掻くと、腰のボトルホルダーに手を伸ばす。
「っあぁ、もう!どうなっても知らねえぞ!」
「え!?龍我さん!?」
そしてクローズがドラゴンフルボトルを握り締め、未来に向かってそれを投げた。
『俺がリンク・アニマルを考案したのは、一つの前例があったからだ』
「前例?」
戦兎の懺悔ともとれる言葉。それに発令所にいる者たちは耳を傾ける。
『俺がそれに気付いたのは、ある機械の部品の一部が、とある聖遺物と融合している事に気付いた時だった。そしてそれが、とある少女の歌に反応し、またその機械が、シンフォギア・システムと同じ、聖遺物をエネルギーに変換、アーマーとして再構築する機能を有している事に気付いた』
そこで一つの実験を慣行。
その少女と、その機械で、その聖遺物の起動実験を行ったのだ。
結果は―――
『結果は、シンフォギアとして起動に成功。ついでLiNKER無しでも第一種適合者と差し支えないほどの運用状態が可能だという事を確認できた』
「待て!シンフォギアを起動した場合、その時必ずアウフヴァッヘン波形が検出される筈だ!?だが、今日にいたるまで、装者以外の反応を一度も検出されなかったぞ」
『覚えはないか?どんなレーダーも索敵能力も無効化する能力を持った超ステルス機能を持った聖遺物の事を』
その言葉に、マリアが呟く。
「神獣鏡・・・神獣鏡の持つステルス能力で、シンフォギア起動の際のアウフヴァッヘン波形を隠蔽したのね・・・」
「待てよ。それじゃあ、つまりあの子があそこにいるってことは・・・」
そう、そうであるならば、今、未来が
「キュールルールルールルールルッ♪」
クロが、未来の傍にやってきて、未来の左手に収まる。
そして未来は、クローズから受け取ったドラゴンフルボトルを振り、シールディングキャップを開け、それを背中に装填する。
「行こう、クロ」
「キュル!」
未来の言葉に、クロは頷く。
そして、未来はクロのウェイクアップスターターを押す。
『STANDBY!』
ハイテンションな音声が聞こえると同時に、未来はクロを上空へ投げる。
すると次の瞬間、クロからとてつもない程の炎が放出され、それが一気に形を成す。
それは、紫色の炎を纏った、クローズドラゴン・ブレイズだった。
そのクローズドラゴン・ブレイズが、未来の周りを自由気ままに飛びまわる。
その様子を、未来は見上げて、ふと思う。
(響・・・)
それは、オートスコアラーに敗北し、未だメディカルルームのベッドの上で寝ているだろう、親友を案じてのもの。
それは、後悔か。否、一つの決意だった。
(あの時、私がこの子を纏っていれば・・・なんて言わない)
だって、そうでなければ、響は自分の歌を取り戻せなかったのだから。
だから、あの判断を間違いとは思わない。ほんのちょっぴりの悔しさはあれど、それがあったから、響は、再び立ち上がることが出来たのだから。
だから、今、まだ君が眠っているというのなら―――
(せめて今だけは、私に響を守らせて)
その決意を胸に、未来は―――歌う。
「―――
『そうだ。仮称『第七号聖遺物』シンフォギア/リンクアニマル『神獣鏡』装者『小日向未来』―――お披露目の時間だ』
龍が、未来の体に纏わりつく。龍の吐く炎が、未来の戦装束を形成し、武装を作り出し、その身を超常の存在へと昇華させる。
頭部にはバイザー付きのヘッドギアが取り付けられ、その姿は、あの日未来が身に纏った、最凶のギアそのものだった。
ただ一つ違うとすれば、そのヘッドギアのバイザー部分が、龍の顔に見えない事はない事だろうか。
それは『鏡』。森羅万象、全ての景色、光景、光、闇すらも映し出し、敵の全てを曝け出し、また自らをも曝け出す、凶悪なる力。
全てを弾き、全てを消し、全てを受け入れ、全てを蹂躙せしめる。
それは最弱、されど最凶の異名を与えられた『
ああそれこそは、かつて失われた、剣、弓、槍、腕、鎌、鋸に次ぐ、『鏡』の第七のシンフォギア。
『
『
視界に表示される文字列。それをダイレクトに理解し、未来は、バイザーを開き、素顔を晒す。
「――――始めに消されたいのは誰?」
あの日のような、虚ろな目ではない。確固たる決意の灯が宿った目で、未来は敵を睨みつけた。
次回!愛和創造シンフォギア・ビルド!
「おいおい一体どうなってんだ!?」
神獣鏡を纏う未来。
「勉強不足ですね」
その力をもって、戦う未来。
「今度はワタシが相手だゾ!」
それでも強い、敵の襲撃者。
「なんと鋸!」
そこへさらに現れるシンフォギアを纏った調と切歌。
「確実に一人は仕留めてみせます」
激化していく戦い。その行方は―――
次回『臆病者たちの償いとプライド』
シンフォギア・ビルドのOPについて、いくつかシーンを想像してみた。
まずイントロにおけるセリフ
一期、二期『創造された新世界、その世界ではノイズが蔓延り、人々はその恐怖にさらされていた』
三期『ノイズがいなくなった世界で、錬金術師の魔の手がせまる。その野望を阻止するため、仮面ライダーとシンフォギア装者が立ち上がった』
四期『地球を滅ぼすほどの力を秘めた『神の力』。それを巡り、錬金術師と仮面ライダー、シンフォギア装者たちの戦いが幕を上げる』
五期前半『海底奥深くに眠っていた神の棺がその姿を現す。その力を巡り、数々の人間の思惑が入り乱れる』
五期後半『世界を滅ぼす力を秘めた神の腕輪がその力を目覚めさせた。その力を操るシェム・ハの前に、仮面ライダーとシンフォギア装者が立ち塞がる』
→タイトルロゴ→
とまあ、第三期イメージOPでした。
ぜひBe The One(Sing is Tsubasa)で。
ではまた次回で!