僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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王蛇と黒龍

「げぇっマジで来ちまったよ!!?」

「だ、誰かヒーロー呼んで!!?」

『いやお前もヒーローだろ!!』

「あっそっか俺ヒーローだった!!」

 

「……相変わらず腑抜けた馬鹿どもだ」

 

全く状況が読めないリュウガ、突如としてトレーニングルームへと入ってきた人物にサイドキックの皆が大慌てになっている。何が何だか分からないが、目の前の男は自分に相手をしろと言ってきた。事情は把握できないが兎に角相手をするしかないだろう。構えを取ろうとした時に、自分の前にパワーコングが出た。

 

「下がるんだリュウガ……彼は、まずい……おい直ぐにシャチョーに連絡を!!」

「俺はそのギャングオルカに言われてきたんだ、あいつに何を言う気だ」

「くそっシャチョー正気かよ!!よりにもよってこの人に自分の弟子をぶつけるとか何を考えてるんだよ!?」

 

両手をぶつけ合わせながらコングは毒づいた。話を聞く限り、この男もサイドキックの一員なのだろうか。少なくとも師匠とは面識があり、師匠の言葉でここに来たという事は自分もこの男と戦えばいいという事になるのだが……それにしても周囲のサイドキックの反応が異常すぎる。

 

「というかなんでいるんだよ!?地方に飛ばされたはずだろ!?」

「その地方での仕事が終わったから戻って来た、麻薬の密造と密売ヴィラン共を全員潰しせて愉しかったぜ……お前も一度行ってみろ」

 

そんな風に語る男の表情はありったけの快楽と快感に染まったような歓喜に染まっている。男にとってはヴィランとの戦闘は唯の快楽や自分の欲求を満たすただのイベントでしかない。コングはリュウガに対して目の前の男の危険性を教える為も含めて詳細を語りだす。

 

「コブラヒーロー・王蛇、シャチョーことギャングオルカのサイドキックだけど実力はほぼ互角。ヒーローとしての実力はハッキリ言って化け物レベル。だけどこいつはハッキリ言ってヴィラン側と言っても過言じゃないんだ」

「どういうことですか……?」

「ダークヒーローなんて生易しい言葉は適応されないぐらいに外道だからさ」

 

王蛇、龍牙もわずかながらに聞いた事があるヒーローネームだ。ヒーローとは思えない程のヒールっぷりでヴィランを恐怖のどん底に叩きこむヒーローだと何かで読んだ記憶がある。そんな男が師匠のサイドキックとは……ハッキリ言って驚き以外の何物でもない。

 

「倒したヴィランを必要ない程に攻撃して再起不能にする、ヴィランからの攻撃を自分が倒したヴィランで防ぐ、既に降参しているヴィランに対して攻撃を叩きこむ、単身でヴィランのアジトの殴りこんだと思ったらヴィラン全員を半殺しにしてたなんて事も良くあった位だよ」

「う、うわぁっ……」

 

思わずリュウガもそんな声を上げてしまうほどの所業を王蛇は重ね続けている。本当にヒーローと問いただしたくなるレベルの行いを続けている男、最早ヴィランになってくれた方がいっその事諦めがついて確保出来るのだが……この男、逆にその行いによってヴィランに対する絶大な抑止力にもなり得ているのも事実で平和に大きく貢献してしまっているのが質が悪い。

 

「人聞きの悪いことを言うなよぉ……俺は、世間が認めた悪を叩き潰してやってるんだ」

「だから質が悪いって言ってんだよ!!アンタが急行したって現場に俺も急行したら、血だらけのヴィランが号泣して俺に助けを求めてきたんだぞ!初めての経験だったわ!!」

「いい経験したなぁ」

「お陰様でな!!」

 

しかも、ヒーローという合法的に相手を叩き潰しせる上に金やらも手に入れられる現状に酷く満足している。故にヴィランになろうなんて気持ちは全くないらしい、自分がしたい事をやっているだけなのに周囲がそれに対して勝手に謝礼などを用意してくれる。これほどまでに都合が良い仕事が他にあるか、と本人は言っている。

 

「下らねぇ話はもういい、おいオルカの弟子さっさとやろうじゃねぇか……ちょうどさっき潰したヴィランが物足りなかったところだからなぁ……」

「ってちゃんと通報とかしたんでしょうね!!?」

「鎖で簀巻きにして街灯に吊るして通報はしたぞ、じゃねぇとオルカがうるせぇからな……」

「街灯に吊るすなぁ!!!子供が見たらトラウマ物じゃねぇか!!」

 

大慌てでコングは周囲のサイドキックと連携して現場近くでパトロールをしているであろう者達に連絡を取って現場の確認などを指示をする。そんな中で王蛇は一瞬のスキを見つけてコングの隣をすり抜けて、その背後にいたリュウガへと回し蹴りを繰り出した。

 

「重いっ……!!」

 

それを上手く防御する、だが何の個性を発動させてもいない筈の姿でこの威力の蹴りは余りにも異常すぎる。余りにも一撃が重い、増強系の個性なのかと思うがそんな思考は意味をなさない。相手が自分の間合いにいながら攻撃を仕掛けてくる場合には特に意味をなさない。

 

「はぁっ!!」

「ふったあっ!!」

 

続けて一気に駆け寄ってくるような勢いのまま連続のパンチとキックの連打。流れるような連打の嵐、防御に努めるリュウガだが一撃一撃がまるで師匠のように非常に重い。いや、師匠の方が遥かに重く威力もあるだろうがこの男のラッシュは速度が段違い、幾ら威力が劣るとしてもこんな速度で打ち込まれるのが相当にまずい。

 

「だぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

状況打破の為に黒炎を吐き出すが、王蛇はそれを予測していたのか軽く跳躍しながら後方へと飛び退いてそれをあっさりと回避して見せた。恐ろしいまでの戦闘センスとそれを支えている異常なまでの戦闘経験からくる直感、相手の次の動きを直感で読み取って即座に対応する。厄介すぎる。黒炎を容易く回避する王蛇は一度高笑いをすると指をさしてきた。

 

「お前……悪くない、またやろうじゃねぇか。今度はガチでな……」

 

一度、鋭くさせた瞳をすると王蛇はトレーニングルームから去っていくのだが、リュウガはとんでもない相手に目を付けられたんじゃないかと冷や汗を流すのであった。初日から色々と不安になる職場体験はまだまだ始まったばかりである。




ギャングオルカと王蛇。

一応ギャングオルカがストッパー的な立場……まあそれでも抑制しきれてないけど。

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