アニナナ2期(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク
天と話して吹っ切れた俺は、早速状況打破に向けて動き出そうとしていた。
(あそこまで啖呵切っちまったんだ、やるしかねぇよな)
片付けるべきは星影反対派___原作にはない新たな敵だ。
今までは活発に動くことを躊躇していたのだが、原作をぶち壊す覚悟のできた今なら迷わない。
というか前の自分を振り返ると泣けてくる。月雲社長が恨まれてるのに呑気にライブに行くとか穴が入りたい…。いや落ち込んでる暇はないぞ。
まず手始めに、モモたちが手を結ぼうとしている反ツクモの勢力に、俺の部下を幾人か紛れ込ませる。反ツクモ勢力の動向を詳しく知り、会社内での勢力をさらに強める為だ。
部下の中でも、あまり俺に従っているそぶりがなかったり、一緒に行動してないやつを選んだから怪しまれることは無いだろう。
次に、星影反対派を説得する。というかこれが一番難しい。
いくら社長といえども、クビ覚悟で向かってくる相手に言うことは聞かせられない。
むしろ月雲社長の悪行を考えれば、逆に会社を追い出されかねない。
(だからこそ、利用する!)
いきなり止めることは不可能。なら相手を騙せばいい。
幸いにも、月雲社長の威厳は保たれている。チャンスは今しかない。
「本当にやられるのですか…?」
張り切る俺に、部下の1人が心配そうに声をかける。…俺ってそんなに信用ねぇのかなぁ。
「大丈夫だって!月雲了いっきまーす!なんてな!」
場を和ませるためにおちゃらけだが、異物を見るような目で見られた。本当に穴があったら入りたい。
*
会議室のドアを前に深呼吸をする。呼び出したのは俺だが、それでも緊張してしまう。
(ここで上手くいけば、今後の行動もしやすくなる。がんばれ俺!)
意を決してドアノブを捻る。中に入ると、時間前だが俺を除く全員が席に着いていた。
俺が席に着くと、代表の1人が話し出した。
「本日はわざわざ足を運んでくださりありがとうございます。えぇー私達としては___」
「前置きはいいよ。さっさと話し合いを始めようじゃないか」
「…では、何故社長は私達の計画を妨害するのでしょうか」
「あなたとて、今までにTRIGGERやRe:valerを貶めてきたはずでしょう。それをどうして今になってやめようとするのですか」
俺に問いかける声には、わずかだが怒気が漏れていた。そりゃそうだ。急に手のひらを返したように行動されれば、不満の1つや2つ出てくる。だがこっちにも考えがある。
「別に嫌がらせをやめようって訳じゃないよ。ただ、タイミングが悪いって言ってるんだ」
「タイミング…ですか?」
案の定相手は困惑した。また月雲社長に振り回されると思っていた彼らにとって、嫌がらせ自体の肯定は驚くべきものだろう。
「そう、タイミング。君らはデマの記事やスキャンダルで貶めようとしてたみたいだけど、そんなにちまちまやったんじゃ意味がない。現にRe:valerの2人は自分達の仲良し度を示すことでこれを克服してしまっている」
「ですが元Re:valerと、ユキが相方を捨てたという疑惑は世間に相当効いて___」
「2人がなんで5年も王者で居られたと思う?どうしてこけら落としの直前に口パク疑惑がでてもステージを成功できたと思う?…2人の絆がそれだけ強いってことだよ」
「元Re:valerの疑惑だって、解散が事実でも何を理由に解散したかまでは定かでない。そんなものでは完全にRe:valerを切り裂けない」
俺の言葉に場は静まり返った。困惑や驚き、焦りといったところか。
だって、今までのどの方法よりも上手くいっている今回のスキャンダルでさえ、Re:valerを追い込むには不十分だと言っているのだから。
「なら、ならどうすればいいと言うのです!?これ以上に有効な手段があるのですか!?」
社員のうち1人が睨んできた。めっちゃ怖い。しかし俺は社長!ここでビビってるわけにはいかない。
「ブラホワ終わり___世間のアイドルに対する熱がピークになった時に一気に悪い噂を流せばいい。ブラホワを超えるような栄光はそうそう来ない。それこそ不穏な噂を覆い隠せるほどの栄光なんてね」
「それに、ZOOLやIDOLiSH7が盛り上がれば盛り上がるほどRe:valerに対する好意が移ろいでいく。Re:valerを擁護するような声も減るというわけさ」
俺を睨みつけた社員は暫く唸る。話に乗ろうか迷っているのだろう。
「しかし、ならどうして社長は、アイドルを助けるような真似をしたのですか!TRIGGERのスキャンダルも貴方が抑えたと聞きました。スキャンダルを起こさせたのは貴方だというのに!」
「それはあれ以上TRIGGERのスキャンダルを流しても、大して効果が見込めないからだよ。世間の印象は悪くなっても、ファンは支えようとますますTRIGGER協力的になる。」
「それに、君たちを試したかったんだ」
「私達を…試す?」
「僕が主導でやってもよかったんだけど、星影が気に入らない人間も多くいると思ってね。それを確かめたかったんだ」
「そのようなことを、考えていらしたのですね」
あっぶねぇぇえ!! 一瞬ドキリとしたが、何とかアドリブで誤魔化した。
俺の行動なんて傍から見ればマッチポンプ(マッチは月雲社長で、ポンプは俺だが)だからな。怪しいことこの上ない。
しかし、これで説得できた気がする。みんなの雰囲気も少し柔らかくなっているように感じた。
えっ貶める計画?ブラホワ終わる前にカタはついちまうんだよ!
秘密裏に動いている反ツクモ勢力がこのままバレなければ、原作通りだとブラホワ前か開始直後には問題が解決する。というかもっと頑張ればその前にケリがつく。
要は星影反対派をその気にさせて、時間稼ぎが出来ればいいのだ。ユキの交渉だってスムーズにいけば、きっと上手くいく!
「それじゃあ詳しいことはおいおい話すよ。今後の月雲の為にもね」
ふっ、決まったな。いやまぁ不安も残るが最善を尽くせただろう。後はこの時間稼ぎをいつまで通用させるかだ。
…ところで退出して部下達に連絡を取ると、何故かめちゃくちゃ心配されて褒められた。
やっぱり俺は情けないのかもしれない。だから、
『随分面白いことしてるじゃないか』
頭の中に一瞬聞こえた声に気づくことはなかった。