前回のあらすじ。月雲社長に転生し、狗丸トウマにあってイケメン力にやられた俺は、癒しを求めてライブに行こうと決意したのであった…。
「思い立ったが吉日、それ日以降は全て凶日。って誰かが言ってた気がするし、早速ライブに行く準備をするぜ!!」
とは言ったものの、あの人気アイドルグループTRIGGERのライブのチケットをそう簡単に手に入れられるのか、そもそも月雲社長って仕事あるからちゃんと休みあるのかなど、色々な問題が頭をよぎる。だが、
「こういう時こそ行動しなければ!オタク魂を発揮する時!!」
人は限界まで追い詰められた時、凄まじい力を発揮するというが、俺は正にその状態だったらしい。
後に、月雲社長の部下はこう語ったという。
あれはこの世のものでは無かった、と。
*
「サイコーーーー!!!」
俺は今まさに、TRIGGERのライブに来ていた。
会場はファン達の声援で埋め尽くされ、地方のライブなのにその人気っぷりに驚かされる。
結論から言うと、チケット買えました!やったね!
とは言っても、月雲社長の部下の友人が当日行けなくてどうしようか悩んでいたものを買い取っただけなのだが…。
ちなみに俺があまりに必死だったためか部下も部下の友人もビビりまくっていた。ごめんね。
後、月雲社長の仕事の件に関してだが、本人はあまり社長らしいことはしてないんだとか。なんでも部下がほとんどやってくれているらしい。
三部の様子を見る限りある程度察してはいたけれど、月雲社長よそれはあんまりじゃないかね。部下の人、マジでごめんね。
「まだまだ盛り上がっていこうぜ!」
八乙女楽の声に合わせて、観客もさらに熱い声援を送る。力強い声と溢れるオーラ、流石である。
本日ラストの曲が始まり、三人の息のあったダンスと歌声がここら一帯を支配する。
おー!十龍之介のダンスはやっぱ迫力があるし上手いな。
そして曲が終わり、達成感のある笑顔で、九条天が会場を見渡す。
「今日は僕たちのライブに来てくれてありがとう!」
こうして、今をときめくアイドル、TRIGGERのライブは幕を下ろしたのであった…。
とまぁ紳士な態度で楽しんだように思えるかもしれないが、実は終始、最高…だの、好き…だのとしか言えてない。
もう叫びまくったし、ペンライト猛烈に振り回しまくった。(もちろん近くの人の迷惑にならない範囲で)
というか、天!なにあの笑顔!?天使なの!?天使なのね!!!推しが現実にいるって素晴らし過ぎる!!!!
楽のクールに振る舞いつつも、カリスマオーラと時々顔を出す熱い男って感じがカッコ良かったし、龍之介のめちゃくちゃなエロさと優しさのギャップが俺の心をかき乱しまくった。
ん〜癒し!やっぱり俺のあの時の選択に間違いはなかったという訳だな。次はファンクラブに入って、もっと確実にチケットを入手出来るようにしなければ。
ライブの余韻に浸りつつも会場から出ようとすると、若い女の子二人にぶつかった。
「あっ、すみません!大丈夫ですか?」
出来るだけ紳士的に対応した筈だが、相手の方は何故か俺を見て固まってしまった。
もしかして、人相が良くないから怖がらせてしまったのかもしれない。
「あの…」
「もしかして、天くん推しですか!!」
興奮している女の子二人に、目をパチクリとしてしまう。
これはなんていうか、予想外だ。
*
私は収録が終わったので、近くのカフェに休憩しようと立ち寄りました。
今日の収録は少し遠出だったので、「一織、これで何か好きなもの買えよ!」と兄さんにお小遣いを貰ったのですが、私も一応社会人なのに良いのでしょうか…?
まぁ、「そうだけど、たまには俺にも兄貴らしいことさせてくれよ」などと笑顔で言われてしまっては断る理由もありませんし、受け取っておきました。兄さんには後でお土産を買ってきてあげなければ。
店内に入ると、お洒落な内装と、看板に描かれた色とりどりのスイーツが目に入りました。
折角ですし、このお店オススメのラビットいちごパフェでも頼みましょうか。普段はこういった可愛らしいものは食べれませんし…
「あそこの天くんがホントに天使!って感じで可愛かった〜!」
「分かる!カッコよく歌いきった後にフッと見せる笑顔がクるんだよね〜!」
ふと隣の席から、九条さんについて熱く語り合う声が聞こえました。確か近くでTRIGGERのライブがやっていたみたいですし、その帰りでしょうか。
流石TRIGGERと言ったところでしょうか。ライブのことについて語る声は興奮冷めやらぬといった感じで…
「そうそう!やっぱ天は凄いよな!!」
…なんだか随分と聞き覚えのある声が聞こえたのは気のせいでしょうか。
きっとTRIGGERの男性ファンは少ない方だから意外に思って耳に残ったからというだけで、決してあの人ではない筈です。そうであってください。
しかし、声の先にある光景が、それが決して勘違いではないということを示していました。
女性二人と混じって、楽しそうに九条さんについて語る月雲社長。
それはあまりにも信じがたい光景でした。
一織くんの口調難しい…
主人公はアイドル達の名前は基本下の方で呼んでいます。