現実世界にポケモンをぶち込んだらサバイバル系B級パニック物になってしまった 作:薔薇尻浩作
それからアンケートご協力ありがとうございました。お気に入り100記念の番外編は『♀ポケモンとエロゲ主人公(笑)』に決定です。
9/18追記 お気に入り300記念の番外編は『草ポケモンとボッチ喪女』に決定です。次回アンケートは500記念か何かおめでたい事があったらやる予定です。
「ラタアアアアッ」
ジャンガリアンハムスターを巨大化させて凶暴化させ、ついでに思いっきり不細工にしたような小麦色の『大鼠』が突き出した前歯で敵を貫かんと飛び掛かる。
「反射! 打上げ!」
「ナノ‼︎」
俺の短い指示に迷いなく従った相棒は小さな身体を縮こませるようにしゃがみ込む。
そして大鼠と衝突する瞬間、身体を大きく反らして反射角度を瞬時に調整した。
ガキンッ! と耳慣れた大きな衝突音と共に、苦悶の表情を浮かべる大鼠が吐血しながら空に打ち上げられる。
俺は腰を落として右手に握ったアトラトルを構えてタイミングを計る。
ふと中学のバレーボールの授業を思い出す。アタックを打つ時はトスが上がって、引力に引っ張られたボールが一瞬静止した瞬間を狙うのがベストだそうだ。
真上に宙を飛ぶ鼠の速度が徐々に落ちる。
三。二。一。間も無く停止するだろう瞬間。間違いない。ここだ。
「シィッ‼︎」
肩の回転を強く意識して右腕を振り抜いた。
アトラトルから発射された燃え上がる竹槍は避けようもない空中にて大鼠の腹に真っ直ぐ突き刺さり、そのまま落下。
鳥脂をたっぷり塗りたくったお陰か火の勢いは収まる事を知らず、直ぐに鼠の体に燃え広がった。
「ラッ!……ラッ……ダァ……」
既に重症だった鼠からしたら決定打だったのだろう。
炎に包まれながら二度三度と身動ぎしただけで、そのまま静かに絶命した。
パチパチと音立てる死体に土をかけて手早く消化し、鼠の死体に脚を乗せて踏ん張りって竹槍を引き抜く。
その後しつこく燃え上がる竹槍を二、三回振り回し消化。
足下の鼠型モンスターからは、ゴムと獣肉が焼けるものを混ぜたよう独特な臭いがした。
視界の端で白い光が上がる。光の発生源はもちろんスマイルだ。
早朝から始まったレベルアップトレーニングは順調に進み、本日は既に十体の敵を倒し三度目のレベルアップ。
スマイルの動きも随分と良くなり、ステータスの上昇が見て分かる程だ。
だが、そんな順調な筈のレベルアップだが気になる事もある。
発光の時間が以前と比べて明らかに長くなってるし、相変わらずスマイルはレベルが上がる度に何かを堪えるような姿勢で暫くプルプルしているのだ。
やはり成長痛が酷いのだろうか?
「なあ、本当に無理してないか? 嫌だったら無理に戦わなくていいんだぞ。別に食糧調達の為の狩りでもないんだから」
「ナノ。ノーナノー」
スマイルは問題ないとばかりにガッツポーズをしてみせる。
が、どうにも俺には強がっているようにしか見えない。
レベルアップの度にはしゃぎ回って飛び跳ねてた頃の相棒を知っているからか余計に不安だ。
だが本人は強くなる事にそれなりの執着を見せているようで、無理に止めさせるのも悪い気がした。
「……なら良いけど。本当に無理はするなよ? ほら、木の実だ。しっかり食べろよ」
「ノー。ノーナノ。ナノ! ナノ‼︎」
「抱っこか? ちゃんと後でしてやるから先に傷を治した方が……」
「ノー‼︎ ノーナノ‼︎ ナノ! ナノ‼︎」
「わ、分かった分かった。ほら、おいで」
木の実を渡そうとするも、地団駄を踏みながら両腕を俺に広げて抱っこをせがむスマイルの様子にはどこか鬼気迫るものがあった。
一応抱きしめて思う存分甘えさせてさえやれば、普段の素直で明るいスマイルに戻る。
だがレベルが上がる度にこの調子なので、どうにも不安が募る。
一種の幼児帰りみたいなものなのだろうか。
スマイルの種族がどれほど生きるのかは分からないが普段の言動から見て本人は幼児、または子供程度の幼さだと見ている。
レベルアップ=精神的な成長と考えればまあ、納得出来なくはないのだが。
だがそう考えるとあっという間に反抗期が訪れてしまいそうで複雑だ。
五分間たっぷりと甘えたスマイルはピョコんと大地に降り立つと俺の手から黄色の果実。奇跡の実を受け取ると美味しそうに食べ始めた。
実験の過程で俺自身も腕に包丁で傷をつけてから試食したが、この木の実は見かけからは想像できないほどに美味だった。
甘みが特別強い訳では無いが程よい渋味と苦味が良い塩梅で、まったりとした果肉の食感が面白い。
普通に販売しても売れるのでは無いかと思った。まあ、今の時代では金など文字通り便所で尻拭く紙にしかならないだろうが。
「さてと、続けるか」
「ナノナノ! ソーナノー‼︎」
エイエイオーッと右腕を天に伸ばすスマイルに頬を緩ませながら、投槍をアトラトルにセットした。
空はまだまだ明るい。俺たちは糧を求めて再び歩き始めた。
太陽が徐々に沈み始める午後六時。徐々に長くなる陽に季節の移り変わりを感じる。
奇跡の実を活用したレベル上げは大いに捗り、今日だけで五回はレベルアップした。
だが育成モノのお約束と言うべきか、敵を倒す頻度は変わらないにも関わらずスマイルのレベルは徐々に上がりにくくなってきた。
具体例を出すと前回は一気に二回もレベルが上がった『怪鳥』を今日も一匹倒したのだが、今回はそれだけではレベルが一つも上がらなかったのだ。
結局その後に初めてスマイルが倒したモンスターである、懐かしの黒い犬型モンスターを二匹倒してようやく一つレベルアップ。
「この調子じゃ明日はもっと上がりにくくなるだろうな」
これに関しては妥協するしかないだろう。
スマイル自身が強くなってるのは明らかだし、上がりにくくなったとは言えモンスターを倒す事でゲーム用語の『経験値』を稼げてる事は確かな筈だ。
だがこうしてレベル上げに勤しんでいる途中に俺は一つの問題に気付いた。
「肝心のスマイルの今のレベルが分からないんだよなあ」
レベルアップ時の発光の回数からかんがえると、行動を共にしてから恐らく15~20近くは上がったと思う。
思うのだが、いかんせん出会った当初のレベルが分からない。
ついでに言うと普段戦ってる敵のレベルも分からないものだから、スマイルの具体的な実力が判らないのだ。
「狩りの獲物を選ぶ基準もスマイルの判断に任せてるからなあ」
常日頃から臆病である俺は初見の敵に出会った時、スマイルに勝てそうかどうか確認を取ってから戦闘に入る。
一度に複数の相手は避けている事や、スマイル自身が見た目の割にタフだし反射スキルも凶悪な為に大概の場合は問題無しと判断して即戦闘に移る。
だが、時たまスマイルが元々青い顔をさらに青くして戦うことを激しく拒否したりするモンスターもいる。
分かりやすい例を出せば『季節を司る大鹿』何かがその筆頭だ。
流石にアソコまでヤバイ奴は中々いないが、戦い慣れたスマイルが警戒する程度には強いモンスターも潜んでいる。
そういう場合は大人しく撤退して近づかないようにしている訳だが。
「異世界物のラノベみたいに鑑定魔法なんかありゃいいのに」
今日だってダメ元で色々と試したのだ。
スマイルに向かって「ステータスオープン」と叫んでみたり「鑑定」と指差してみたり。
結果はスマイルがキョトンとして俺の黒歴史が増えただけ。
世界は変わっても人間が魔法は使えるようにはなっていなかった。
まあ、前触れも無くモンスターが沸いて出る世の中だ。
人間に優しくないのなんて今更だろう。
「……にしてもコレ、本当に食えるんだろうな? 腐敗臭が凄いんだけど」
閑話休題。
俺は現在、拠点内の解体室にて巨大な肉塊と向き合っている。
その正体は以前、ボーラとアトラトルの実験台となった不思議な角を持った鹿の肉だ。
鹿と言えばジビエ。という漠然としたイメージだけはあった俺は解体した後、鹿肉の食い方やジビエについてスマフォで色々と調べたのだ。
本格的な調理は無理だとしても、自分の力だけで狩った人生初の大物なのだ。
少しでも美味く喰いたいと思うのは自然な事だろう。
そして調べたの結果、俺は肉を美味く喰うには熟成が必要という結論に至ったのだ。
「新聞紙に包んでたから流石に虫は沸いてないが、やっぱ冷蔵庫無しではキツかったか?」
本来なら適当な大きさに切り分け、クッキングペーパーなどで水気を取った後に冷蔵庫で保存するのがセオリーらしいのだが、当たり前ながらこの拠点に電化製品など無い。
仕方ないので肉の周りに塩を塗りたくり、新聞紙で包んで陽の当たらない場所に放置した。
その結末がこの腐敗した肉塊だ。
例年に比べれば涼しい気候とは言え、初夏である六月に常温放置は無謀だっただろうか。
だが今さら棄てるのは余りにも勿体無い。
「先ずは腐ってる部分を削ぎ落とすか」
気を取り直して嫌な色に変色した肉の表面を槍から外した包丁で丁寧に削ぎ落としていく。
ケバブの肉を削るようにして、みるみるうちに小さくなった肉塊は最終的に食用可能と思われる真っ赤な赤身は全体の半分より少し多い程しか残らなかった。
予想よりも腐敗部分が多い。やはり常温にしては放置し過ぎたようだ
「まあ普通に食えそうだから妥協点だろ」
自分を納得させるように独り言ちると、削ぎ落とした部分を新聞紙に包んでまとめて置く。
この腐った肉に関しては後ほど、内臓や使わない死体を埋めてある穴に投げ込み、焼却する予定だ。
「うん。ネットで見た肉と同じ色だな。削ぐ前は不安だったけど美味そうに熟成されてるな」
ぬらぬらと光る鹿肉は濃厚な血を凝縮したような深い紅色に仕上がっていた。
いい感じに旨味が凝縮されている事だろう。初めての熟成はなんとか成功したようだ。
暇があれば今後は小鳥肉や怪鳥肉でも試していいかもしれない。
「んじゃ。切り分けて持っていくとしますか」
包丁で適当に肉をぶつ切りにして鍋に押し込み、塩を多めにぶっかける。
かなり削ぎ落としたとは言え、やはり大物の肉塊。
余りに肉の量が多いので鍋から溢れて小山のようになってしまったが、まあスマイルと二人なら食べきれるだろう。
最悪余ったら塩漬けして干し肉にすれば良い。
予め汲んであった井戸水で手を洗ってから大部屋に置いてあるリュックサックを開く。
自宅やコンビニなどから持ち込んで来た食料品から目当ての物をいくつか取り出し、鍋を抱えてスマイルが待っているであろう拠点の外に向かった。
「おー。本当に石窯作っててくれたんだな。サンキュー、スマイル」
「ナノナノ!」
拠点の外では既にスマイルが大小様々な石を積み上げた簡単な石窯の前で待っていた。
ネット検索した画像を見せて「こういう風に石を並べてくれ」と頼んだだけなのに中々の再現度だ。
メイド・イン・スマイルの石窯の中に適当な小枝と少量の固まった鳥脂を放り込んでチャッカマンで着火。
枝の量を調節したり息を吹きかけたりしながら火の勢いを確認して、窯の上にやや小さめの鉄板を敷いた。
この鉄板は拠点に転がっていた古い鍬の頭の部分を丁寧に洗って再利用したものだ。
実はこの鍬。落とし穴を掘る時に使ったら一振りしただけで先端の金属部分がすっぽ抜け、鍬としては全く使い物にならなかったのだ。
金属は貴重だから念の為に。捨てないで取っておいたが、まさか鉄板焼きに使うとは当時はまだ俺も予想できなかった。
「うん。そろそろいいかな」
待つ事しばらく、鉄板がしっかりと熱くなった事を確認すると俺はその上に適当にちぎったブロック状のバターの塊を乗せた。
鉄板の上でジュウジュウ音たてて蕩けながら食欲をそそる独特なまろやかな香りを上げている。
「ナノナノ〜」
スマイルは初めて嗅いだバターの香りにウットリとしている。
確かにこの香りは癖になるよな。小さく笑いながら俺は竹で作った二つの皿の上に鯖味噌缶の汁だけを移す。
そこに再びバター、そして塩。最後に奇跡の実の果汁をほんの少しだけ入れてからかき混ぜる。ジャンク臭が拭えないが、これでもステーキソースの代用品のつもりだ。
「んじゃ焼くぞー」
「ソーナノー‼︎」
鉄板の上にやや厚めに切られた鹿肉が乗る。
先ほどのバターよりも大きな音と共に肉が焼ける匂いがする。
いつもの鳥脂や小鳥肉では無いからか、この匂いを嗅いでるだけでも贅沢な気分だ。
頃合いを見て肉をひっくり返し、鉄板の端っこでカイワレとモヤシを焼く。
待ちきれないのかスマイルはウズウズソワソワしている。
ソースの入った皿を持っていなければ今頃は飛び跳ねていただろう。
「そろそろいいだろう」
失敗は無いと思うが素人の熟成なので肉が傷んでいる可能性も考慮し、焼き加減はミディアムウェルダンだ。
いい焼き色に仕上がった鹿肉と付け合わせの野菜をそれぞれの皿に移す。
ゴクリと唾を飲んだのはスマイルか、そらとも俺だろうか。とても美味そうだ。
「さて、レベル上げの為の連戦おつかれ様。今日は思いっきり贅沢にジビエを楽しむぞ‼︎ それでは、いただきます‼︎」
「ナノナノナー‼︎」
ソースに潜らせた熱々の鹿ステーキを口に放り込む。
即席で作った割には濃厚で甘みの強い味噌ベースのソースは鹿肉にピッタリだ。
久々に口にする塩以外の調味料の味に鈍っていた味覚が刺激されたような気分になって思わず涙が出そうになる。
そして、肝心のステーキの出来だ。
「柔らかい。柔らかくて、美味え……‼︎」
脂肪の少ない赤身はよくグルメリポーターの定型句である『舌の上で肉が蕩ける』なんて事は決して無い。
だが噛めば噛むほど程よい脂と鹿肉の濃厚な味がジュワジュワ滲み出て来る。
熟成が上手くいったおかげか、しっかりと火を通したにも関わらず程よい噛み応えと柔らかさのバランスが絶妙だ。
このサバイバル生活が始まってから。いや。下手したら今までの人生で口にしてきたどんな肉料理よりも美味かった。
「ナノナノ‼︎ ナーノー‼︎」
スマイルもその美味さに感動したのだろう。
口の周りをベタベタに汚しながら、いつもの食事とは比べものにならない勢いでガッついている。
大好物のチョコレートを渡した時の反応にも負けていなかった。
「肉はドンドンあるからな。たくさん食べて、明日からも頑張ろうな」
「ナノ‼︎ ソーナノー‼︎」
鉄板の上に追加の肉を置きながらスマイルに微笑む。
小さな相棒は今日一番の輝く笑顔で俺に応えた。
優しい月明かりがたなびく煙で仄かに霞む夜空の下。
俺達は最高に贅沢な二人きりのジビエパーティーを心から満喫していた。
だからこそ、気付かなかった。
「……グルルルラアアアアァァ」
そんな俺達を林の奥から炯々と瞳を光らせて観察する存在に。
・ラッタ ねずみポケモン(ノーマル)
肉質はゴムのように固く、臭みも強い。
食用には向いてないが割とどこにでも生息している上に身体はそこそこ大きいので、食べるものが無いサバイバル時には非常食とされる。
今後の展開
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本編を早く進めて欲しい
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番外編を進めて欲しい
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ソラが主役の話が読みたい
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新キャラを沢山出して欲しい