現実世界にポケモンをぶち込んだらサバイバル系B級パニック物になってしまった   作:薔薇尻浩作

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楽園追放
3ーOP 毒婦


 

古今東西、映画に始まり小説や漫画。

様々な創作物の中、サバイバル系と言われるジャンルには王道とも呼べる争乱の火種が存在する。

それは数少ない食料や水だったりだとか、生存者カーストでトップに立つ為の強力な武器だったりだとか。

そして何よりも争いを呼び込むきっかけとなるのは女だ。

世紀末もさながらの無法地帯と化した暴力的かつ混沌としたサバイバル世界で、女性の価値はとんでもなく跳ね上がる。

時には性の吐け口として。また時には権力者の生きたトロフィーとして。

 

理性を揺らし欲望を擽る、女体の甘美な誘惑は多くの男達を惑わし、秩序の崩壊を誘う。

混迷の世界において、女とは混乱の暴風を巻き立てる台風の目のような存在なのだ。

 

 

 

時が経つのは早く、モンスターパニックが始まってから一ヶ月以上も過ぎた。

ハイエナ擬きに喰われかけたり、巨大な怪鳥にぶっ飛ばされたり、変な毒虫に追いかけ回されたり。

腕が千切れかけたり、身体中の骨が折れまくったり、痛みのあまりに気絶しながら糞尿を垂れ流したり。

思い返せば血生臭いどころか、良く今の今まで生きていられるのが不思議になってくるような、思わず回想するだけで瞳が急速に濁り果てるような地獄の日々。

そんな生存本能を嫌という程にビンビンに刺激される日常を過ごしているからなのか、俺という人間にも人並みの欲が。

もっとはっきり言うならば煮えたぎるような性欲が溜まっていた。

 

とは言え一人と一匹の男同士(確証はないが、恐らく)で生き抜くだけで精一杯のサバイバル生活を過ごしている現在、女性と縁がある訳が無い。

なればこそ、せっかくの世紀末世界。

悪知恵を駆使して己が欲望と暴力のままに身近な生存者コロニーを襲撃でもしてやって、女性を拐かしその肉体を思う存分に貪り尽くしてやろう。

という気にもならなかった。

 

勿論、性欲は溜まりに溜まっている。スマフォの小さな液晶画面に写る卑猥なイラストやグラビア画像を目にするだけで、まるで爆発寸前になる程に昂ぶっている。

だが女性を仲間に引き込もうだとか、あわよくば襲ってやろうだとかは考えは否だ。

ほんの少し考えただけでもメリットよりもデメリットの方が遥かに多いからだ。

 

性欲なんてものは今まで通り自己処理すれば済む。

男なんて単純なもので、一発抜けば多少の虚しさは残るもののストレスも肉欲もすっきりと解消出来る。

だが、仮に何かの間違いでこの世紀末真っしぐらな世界で下手に女性と行動を共にすればどうなるだろうか?

 

死と隣り合わせの危険な日常による吊り橋効果で恋仲になれるかもしれない。

その結果、なんか、こう。いい感じの雰囲気に流されて身体を重ねる仲にもなるかもしれない。

だが、前にも言った通りこの世界での女性の価値は非常に高い。

どこで女を匿っている事がバレるとも限らない。もし見つかったら最悪だろう。

肉欲を滾らせた余計な輩が引き寄せられるのは考えるまでもないだろう。

 

ならばどこかのコミュニティに保護してもらい、そこで平時のようにゆっくりと女性との仲を深めるのはどうだろうか? 結論から言うとこれも最悪だ。

生きるか死ぬかで皆が必死な中で、カップル成立でもしたら絶対に面倒な事になる。

この世紀末世界で女の取り合いなんて起こったらサークルクラッシュなんて軽い言葉じゃ済まされない。

最悪は女体を取り合うドロドロの殺し合いに発展する事だろう。

 

たかが底辺よりちょっと上程度の男子高校生である俺の間抜けな脳みそですら、ちょっと考えただけで埃のようにデメリットが出てくる。

だからこそ俺はこの終末世界で女性と行動を共にするつもりは無いし、関わるつもりも無かったのだ。

 

無かったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、さあ。一応、聞くけどさあ」

 

 

瓦礫の上にはつい先程まで確かに生きていた男達が倒れていた。

一人は背中を抉るようにして大きな穴をぽっかりと空け、鉄板で肉を焼くような香ばしい音を傷口から立てては溶解を侵食させている。

隣で転がっている肥満体の男は全身に毒々しい色の細かい針が突き刺さっており、まるで 手芸で使うピンクッションみたいな有様だ。

おまけに傷口の一つ一つが拳程の大きなコブを作ってボコボコに膨れ上がり、目鼻や耳孔といった身体中の穴という穴から満遍なく流血している。

一目みただけで分かる。なんかしらの毒物に犯されたのだろう。

それも、相当な激毒だ。

 

 

「アンタ。まさか、こいつらのお仲間って訳じゃあ。無いよね?」

 

 

そして俺の足元に縋り付くようにして右腕をのばしたまま倒れている最後の死体は首筋にちいさな穴が空いている。

果たして何口径の穴なのだろうか?

FPSは専門外の俺には死体の傷跡から推測する事は出来ないが、俺に問いを投げかけた長身の女の手元を見れば一目瞭然だった。

 

 

『M360J SAKURA』。

 

伝説的な銃器メーカーであるS&W社製の5連発リボルバーで、日本のお巡りさんが標準装備している小口径の拳銃の名だ。

果たしてその凶器は壮絶な人間ドラマの果てにどこかで彼女に託されたものなのか。それとも血みどろの争いの末にどうにか奪い取ったものなのか。

 

この際そんな事はどうでもいい。

問題なのはただ一つ。

 

 

「弾、節約したいし。とりあえず大人しく、此処に来た目的を話してくれない?」

 

「シャアッーーー‼︎」

 

 

女の身体に巻きつく毒々しい紫色をした蛇型のモンスターが牙を剥き出しにして威嚇している事。では無く。

 

巨大な化け蛇を身体に巻きつけた女の手で怪しく輝く凶器。

 

その銃口が俺の胸元に向けてしっかりと構えられている事だ。

 

 

(やっぱりサバイバル物で女は貧乏神だ)

 

 

俺は強張った身体で何とか両手を挙げ、引き攣った顔でそんな事を考えていた。

 




・アーボ へびポケモン(どく)
身は鶏肉のように淡白。調理する時は毒腺や強力な胃液に触れないように注意が必要。

今後の展開

  • 本編を早く進めて欲しい
  • 番外編を進めて欲しい
  • ソラが主役の話が読みたい
  • 新キャラを沢山出して欲しい
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