現実世界にポケモンをぶち込んだらサバイバル系B級パニック物になってしまった   作:薔薇尻浩作

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息抜きギャグ回


3ー3

 

『LOVE & PEACE』。直訳すると愛と平和。

 

たった二つのこの単語には、途方も無く深いメッセージが含まれている。

 

 

ラブアンドピースという言葉が広まり始めたのはベトナム戦争前後に流行したヒッピー文化が関係しているらしい。

保守的な宗教に対してのカウンターカルチャーとしての側面が強いヒッピーだが、そこに根ざした愛と平和に対する強い欲求は本物だ。

 

争いは無くならない。このファッキンファンタジーな世紀末世界でも、それ以前の世界でもだ。

奇跡的に戦争とは無縁である超平和国である日本の外に目を向ければ、何処かしらの国が毎日のように戦争をしている。

そして毎日のように人を殺し、毎日のように人が死んでいく。

 

いくら愛と平和を願っても現実は変わらない。

誰かが愛と平和を唄い、訴え、懇願しても、無情にも現実は揺らぐ事は無い。

 

だが、だからと言ってソレを願うのは本当に無駄な事なのだろうか?

 

 

ふと思い浮かぶのは逆境にもめげずに身体を張って生存者コミュニティを作り上げた少女、ソラの姿。

モンスターパニックに翻弄され、人々の悪意に晒され、地獄のような飢餓に襲われた少女。

だがそれでも彼女は折れなかったのだ。

 

一人でも多く生き残って欲しい。少しでも平和だったあの頃に近付けたい。

ともすれば青臭く、偽善めいたその信念を元に、数少ない食糧を配給したり、率先して安全地帯の確保に赴いては少しでも多くの人を救う為にパートナー達と戦っている。

 

そんな彼女の原動力こそが、愛なのではないか。

そんな彼女の願いこそが、平和なのではないか。

 

 

LOVE & PEACE。

たった二つのこの言葉こそが、俺達人類が忘れてはいけない、とても尊いものなのでは無いだろうか。

 

世は荒れ果て、人心は荒んでいる。

思い出すのは哀れな男を標的に命を弄ぶゲームを配信していた悪意に染まりきった男、『ペニー』の姿だ。

 

悪人は消える事は無いのだろう。例えどんなに愛と平和を叫んだところで、全ての人間が善の心に満たされる訳では無い。

争いを、犯罪を、そして何より悪意を。それらを完璧に消滅させる事は不可能だろう。

 

だが、それでも願い、叫ぶ事は本当に無意味なのだろうか。

俺は信じたい。こんな世の中だからこそ、傷付き、争い、絶望が覆い尽くそうとしているこんな世の中だからこそ信じたいのだ。

 

 

LOVE & PEACE。愛と平和を。

 

何故なら、きっと。

 

愛は世界を救うのだから。

 

 

 

 

 

「そうさ。ラブアンドピースなんだ。確かに俺達はいがみ合って来た。戦い、傷付け合い、命を奪い合ってきた」

 

 

俺の目の前にはかつての宿敵が佇んでいた。

鋭い眼光で俺を貫かんとばかりに睨みつけ、憤怒の表情のまま今にも俺に襲いかからんと身構えている。

昨日までの俺なら殺意を滾らせる彼を目にした瞬間、得物である槍をすぐさま構えては戦いを挑んでいた事だろう。

何故ならこの世界は世紀末。命があまりにも軽い、絶望の世界だからだ。

 

だが、俺は大事な事を忘れてしまっていたのだ。

 

 

「愛なんだ。そう、LOVEなんだよ。この荒んだ世界が生み出す争いや悪意を覆す為に必要なものはただ一つ。平和を取り戻す為に必要なのはたった一つだけの、小さく、暖かい、愛って奴なんだよ」

 

 

世界中の詩人が愛を詠い、世界中の歌手が愛を歌っていたではないか。

今の俺の脳内に流れているのはジョン・レノンの名曲『イマジン』だ。

俺が産まれるよりずっと昔に流行った曲だが、その旋律と歌詞に込められた人類愛と平和への強いメッセージは本物だ。

嗚呼、やはり、こんな時代だからこそ愛と平和が必要なのだ。

 

俺は心打たれたような、どこか夢見心地な気分のままに。

目の前のかつての敵、そして今日からの親愛なる友へ微笑みかけた。

 

 

「俺は君に愛を持って接しようと思う。今までの殺伐とした俺達の関係をやり直し、絆を深め、平和を目指す同士として、掛け替えのないパートナーとして歩き出そうじゃないか」

 

 

俺は大袈裟なくらいに両腕を大きく広げる。

そう。平和を夢見る同士となるであろう、愛しい彼がいつこの胸に飛び込んで来たとしても、優しく抱きしめられるように。

 

 

「さあ、LOVE&PEACEの心を持ってこの胸に飛び込んでおいで‼︎」

 

 

やがて俺の愛の言葉に感じ入るものがあったのだろう。

睨みつけたまま、決してその場を動こうとしなかった彼、小鳥は。

その瞳に大きな決意を滲ませ、やがて俺に向かって大きな一歩を踏み出し......

 

 

 

「さあ、俺と友達に「ポポオオオオオオオオオッ‼︎」ぐふぇっ⁉︎ 痛っ、ちょっ、くちばし刺さってるって痛たたたたた‼︎ 違う‼︎ ほら過去は忘れて俺の仲間に「ポオオオオオオオオォォッ‼︎」痛っ⁉︎ いてて痛い痛いちょっとタンマって ......てんめえいい加減にしやがれこの鳥公が‼︎ ぶっ殺して焼鳥にすんぞゴラァ‼︎」

 

 

普通に攻撃して来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な動画配信者の実態を知ったあの晩。

俺はまともに寝付く事も出来ずにひたすら思考の海に沈んでいた。

 

モンスター。奴らの存在はこの無法の世界において明確な武器となる。

剣や槍や弓なんて以ての外。銃や爆弾なんかよりも強力で貴重な武器だ。

その武器の力を利用し、あのペニーという男のように悪事を働く人間は今後も増えるだろう。

 

俺は別にこの世界に蔓延る悪意を消しとばしたいだとか。世界人類の平和を願っているだとか。

そんな不相応で大層な願いを持っている訳では無い。

ただ単純に自分がその悪意の標的になった時、それを跳ね除ける力が欲しいだけなのだ。

 

故に俺は決意した。俺も武装しよう、と。

力には力を。武器には武器を。モンスターにはモンスターを。

つまり早い話がスマイル以外のモンスターを仲間にし、有事に備えようという訳だ。

 

 

そして冒頭へ。

まあ、考え過ぎて寝付けずにほぼ徹夜をしたせいだろう。

何だか変なテンションで、阿保みたいな妄言を垂れ流していた気がするが、要するにそういう事だ。

俺は現在、拠点としている小屋から少し離れた竹藪の周囲でモンスターへのスカウト作業に勤しんでいるのだ。

 

 

 

「ほーらご飯だぞー。俺は敵じゃないぞー。お前と友達になりたいだけなんだぞー」

 

「......ナマァ?」

 

 

怒りのままについつい首を圧し折ってしまった小鳥の死体から離れて十分後。

気を取り直して新たなモンスターの前で、俺は柔らかい笑みを浮かべながら奇跡の木の実を差し出した。

 

竹藪近くのしっとりとした腐葉土にベッタリと寝そべっている豚のような鼻と、眠気を堪えているような瞳が特徴の新たなターゲットは非常に分かりやすい見た目をしている。

全身全霊でダラけきっているこのモンスターはナマケモノ型だ。

 

 

「……ケロ」

 

 

全身は小麦色の毛皮に覆われ、目の周りと背中の一部分だけトラ猫のような模様で焦げ茶色に染まっている。

中型犬程度の大きさにしては両手脚とも異様に長いのも特徴だろう。

両手に生えた二本の鉤爪は、ギラリと陽光を反射し見るからに鋭く尖っている。

が、このモンスターの特性なのか動きが非常に鈍く、おまけにその眠たそうな表情通り闘争心のカケラも見せない。

拠点近くで今までも何度か見かけており、遠くから観察しようが、あえて近くを通ってやろうが全く動く気配が無い。

 

基本的にこちらから攻撃しなければ一切の動きを見せず、時おり欠伸をしては怠そうに地面に這い蹲っているだけなのだ。

 

まあ、見るからにノロマで明らかに弱そうなのは少々頂けないが大人しいモンスターなのは有難い。

こうして向き合った時点でこちらを威嚇し、隙あらば体当たりをぶちかまして来るような小鳥とは雲泥の差だ。

 

 

「ほら、お食べ。俺からのプレゼントさ。なぁに、遠慮なんかいらないからな」

 

「ナマァ?......ケロォ」

 

 

慣れない猫撫で声が功を奏したのか、俺の言葉は通じてくれたようだ。

目の前のナマケモノは眠気を孕んだトロンとした鳴き声をあげると、ゆっくりとした動きで奇跡の木の実に手を伸ばす。

 

 

「......ケロ。ナーマァ」

 

 

そうして焦れったくなるほどゆったりとした手付きで、鉤爪をフォークのように木の実に刺す。

そしてこれまたゆっっっっっくりとしたスローペースのまま、口に運ぶ。

 

 

「……ナマ……ナマ……ケロォ」

 

 

そしてこれまた、ゆっっっっっっっっくりとした怠慢な動きで、モシャモシャとようやく咀嚼。

一噛み一噛みに十秒程かかっている事にツッコミたい気持ちが募るがここは我慢。

どうやら奇跡の木の実はお気に召したらしい。

ふんにゃりとした、どうにも気の抜ける笑顔を見せながらケロケロと変わった鳴き声をあげている。

 

 

(よし、こいつならイける)

 

 

チョロいもんだぜ。俺は勝利を確信し、ニヤリと口角を上げた。

 

 

「ナンス……」

 

 

背後からスマイルの呆れたような声が聞こえて来た。

有事に備えて俺の背後に控えている我が相棒はどうやら俺のネゴシエーション能力を見くびっているらしく、鼻からこの交渉が失敗すると踏んでいるようだ。

背中を見せているというのに、ジトっとした視線が突き刺さっているのが分かる。

 

だが気にしたら負けだ。ここからがスカウトの本番なのだ。

なに、華麗に成功させてスマイルを驚かせてやればいい。

 

 

「さて、と」

 

 

俺はふんにゃり笑顔になったナマケモノと視線を合わせる為、地面に膝をついて顔を近づける。

湿った腐葉土のせいでジーンズの膝部分が濡れて気持ち悪いが、そこは我慢だ。

俺はゆっくりと、それでいてハッキリとした発音を心掛け、目の前のモンスターへ語りかける。

 

 

「俺は今、一緒に戦ってくれる仲間を探してるんだ。分かるか? 仲間。友達、家族。そういった感じのやつ。一緒に生活して、共に助け合う仲さ」

 

 

決して視線をそらす事無く、相手の反応を待った。

トロンとしたナマケモノの瞳を見てるとどうにも気が抜け、こちらまで眠くなってくるがここが正念場だ。

ゴクリと唾を飲み込み、畳み掛けるように俺は訴えた。

 

 

「いつだって食事を与えるよ。それに生活に余裕ができたらもっと美味いものを好きなだけご馳走する、約束するから。だから」

 

 

俺は緊張に固まる身体を無理やりに動かし、ゆっくりと腕を伸ばした。

 

 

「この手を取って、俺の仲間になってくれないか?」

 

「......」

 

 

ふと生暖かい風が吹いた。

数分か、それとも数十分か。しばらくの間が空いた。

 

果たしてどれ程の時間が経ったのだろうか。

幾度も風が吹き、木々が騒めき、鳥が羽ばたき、虫達が鳴いた。

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

「ナァ〜ナァ」

 

 

あとスマイルの欠伸が聞こえた。

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

真上に上がった太陽がやがて傾き、ギラギラとした陽光がますます色鮮やかになっていく。

そよ風に木々が騒めき、沈黙に浸る俺達を強調させているように感じた。

この静寂の時間が、まるで永遠に続くかのような錯覚を覚えた。

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

(もっしゃもっしゃ、ごくん)

 

 

あとスマイルが何か喰ってる音が聞こえた。

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

やがて太陽は雲に隠れ、風も止んだ。

この世界に音という音が無くなった。

そんなあり得ない妄想に取り憑かれてしまう程に、静かで。それでいて異様なまでに緊迫した空気が包み込んでいるのだ。

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

「……ナンスゥ……スゥ……スゥ……」

 

 

あとスマイルの寝息が聞こえた。

 

 

「……ふぅ」

 

 

溜息を一つ。張り詰めた空気を払拭するかのように軽く首を振ってみると、コキリと音が鳴った。

 

やがて俺は静かに立ち上がり膝を払って泥を落とす。

そして、相変わらずのゆっっっっっっくりとした動きで顔を上げ、此方を見上げているナマケモノと再び視線を交わす。

 

俺はとても穏やかな気持ちで。まるで波の無い海のような、凪の心境のままニコリと笑いかける。

 

そして目の前の心優しい隣人に向かい、大きく一歩を踏み出して……

 

 

「反応が遅えんだよこのノロマがああああああああ‼︎」

 

「ゲロオオォッ⁉︎」

 

 

顔面を蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほーら、ご飯だぞー。遠慮せずに食えよー?」

 

「ビィ?」

 

 

苛立ちのままに顔面を蹴り飛ばし、あっという間に気絶したナマケモノから離れること十分少々。

俺は今度こそ、と気合を入れ直して別のモンスターに奇跡の木の実を与えていた。

最近、竹藪の周辺でよく見かけるようになった巨大な黄色い芋虫型のモンスターだ。

頭部に鋭い一本角が生えていることから、俺は『角芋虫』と名付けている。

 

チョココロネのように球体が繋がったような細長で円筒形の胴体に、桜桃のような真っ赤で丸いイボ足。

頭頂部に生えた5センチ程の大きさの一本角と、尾の先についた小さな棘。

円らな黒い瞳、それから顔面の中心にある大きく膨らんだ赤い鼻のようなパーツが特徴的だ。

 

 

「美味いか? いいぞいいぞーどんどん食っていいからなー?」

 

「ビィ‼︎ ビィビィ‼︎」

 

 

もしゃもしゃと存外にもハイペースで木の実に喰いつく様は見ていて気持ちがいい。

小鳥のように警戒するでもなく、ナマケモノのように極端にトロいわけでもない。

これは今日の中でも1番の当たりのモンスターでは無いだろうか。

 

 

(間違いない。勝ったな)

 

 

三度目の正直というやつだ。俺は今度こそ揺るぎない勝利を確信し、歯を剥き出しにしてニタリと笑みを浮かべた

 

 

「……ソー」

 

 

背後からまたしてもスマイルの溜息が聞こえて来る。

どうやら我が相棒は完璧に俺の交渉能力に見切りをつけているらしい。

背中には先程よりも強烈な呆れと失望の視線がこれでもかと突き刺さって来るではないか。

 

だが、ここで諦めたら男では無い。

今度こそスカウトを成功させ、スマイルに如何に俺が有能な男であるかというのを証明してやろうではないか。

 

 

「……と、言うわけで俺に着いて来てくれるなら好きなだけ美味いものを食わせてやる。だから仲間になってくれないか?」

 

「ビィ?」

 

 

すっかり陽も傾き始めた今、無駄な時間は使えない。

簡潔に要点だけを伝えてみると角芋虫は軽く頭を傾げ、考えるようなジェスチャーをとった。

やはりモンスターなだけはあるのだろう。

地球に生息している虫どころか、そこらの動物なんかよりもよっぽど賢い知能を持っているようだ。

 

 

「ビィ‼︎ ビーイビィ‼︎」

 

「おお⁉︎ 着いて来てくれるのか⁉︎」

 

「ビィビィ‼︎」

 

 

しばらく黙って考え込んでいた角芋虫は、やがて俺の顔を見上げて甲高く鳴き声をあげた。

俺の言葉に器用にコクコクと頷き、瞳を細めて笑顔のようなものを作っている。

間違いない。俺のスカウトは成功したのだ。

 

 

「よっしゃ‼︎ それじゃこれから宜しくな‼︎ 」

 

「ビィ‼︎」

 

 

俺は新たな仲間に右手を差し出すと、角芋虫は嬉しそうに鳴きながら俺の右腕に頰を擦り付け、器用に腕をよじ登り始めた。

 

 

プニプニとした角芋虫の柔らかな身体が手に触れる。

スッと俺の体温が低くなった。

 

ツブツブとした角芋虫のブツブツのイボ足が腕をなぞる。

ゾワゾワと俺の背筋が凍りついた。

 

ウネウネと蠢く巨虫が俺の身体をグニャグニャ這い回る。

ガタガタと俺の身体が震え出した。

 

 

「ビビィ?」

 

 

震え始めた俺を心配したのだろうか。どうしたの? と言わんばかりに角芋虫は首を傾げて俺の顔を覗き込む。

肘の関節辺りで円な瞳を瞬かせる新たな仲間候補に、俺はニコリと笑いかけてやる。

 

そしてゆっくりと。ゆっくりと空いている左手を動かして……

 

 

「ゴメンやっぱキモいからデカい虫は無理‼︎」

 

「ビギャアアアアア⁉︎」

 

 

左手で掴んだ愛槍をその顔面にぶっ刺した。

 

 

 

 

 

 

「……ナンナンス?」

 

「いやいやお前スマイル‼︎ あのサイズの虫は幾ら俺でも無理だって⁉︎ マジで鳥肌が治らないんだぞ⁉︎」

 

 

スマイルがまるで悪魔を見るような視線で俺を眺めながらドン引きしているが、これは不可抗力だ。

冷静に考えて見てほしい。人の頭程の大きさのある虫が身体に引っ付いきグニャグニャと這い回るのだ。どう贔屓目に見ても気持ち悪くて仕方ないだろう。

 

最早スカウトどころの騒ぎでは無い。

俺は冷や汗を流しながらジリジリと距離を取り始めたスマイルに向かって必死で弁解をする羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、もう。全くうまくいかねー」

 

「……ソー」

 

 

何だかんだ言って半日以上。早朝から仲間探しに勤しんでいる訳だが結果はご察しの通り。

先の小鳥から始め、ナマケモノ、角芋虫と続き、あれから十匹近くのモンスターを仲間にしようと試してみた。

が、あの芋虫以降はどんなモンスターも目線が合った瞬間に襲い掛かってくるものだから餌付けどころの話ではない。

 

いつでも飛び出せるようにと背後にスマイルが控えていてくれる為に怪我などは無いものの、戦闘になってしまった時点でスカウトどころでは無いのだ。

 

 

「あーあー。やっぱ芋虫で妥協しておくべきだったかなぁ」

 

「ナンス?」

 

 

どこから取って来たのか見たこともない果実をもしゃもしゃと食べながら首を傾げるスマイルにボヤいた。

 

 

一応、勝算はあるつもりだった。

 

例えばスマイル。彼の場合は言わずもがな、きっかけは餌付けだ。

だが注目するべきなのは餌付け、という行為そのものではなく、お菓子に釣られて見ず知らずの異種族である人間と行動を共にしようと決定してしまう精神的な幼さと単純な思考についてだ。

 

様々な経験を経てある程度は成長し、更に進化まで遂げた今でさえ彼の甘えたがりは治らず、しょっちゅう俺に抱き着いてくる。

そこから逆算すると、恐らく出会った当初のスマイルは、産まれたての赤ん坊。もしくは幼児といったところだろう。

 

とにかく無垢で、人を疑う事を知らずに空腹だった時にたまたま食料(しかもそれが甘くて美味しいお菓子)を与えてくれた異種族である俺をまるで親か兄弟かのように慕い、こうして行動を共にしている。

つまり、一種の刷り込みのような現象が起きているのではと予想しているのだ。

 

 

(それにソラに付き従ってるモンスターもそうだ)

 

 

クッキー君、ビスケットちゃんともに餌付けがきっかけでソラに懐いた。

新入りのサブレ君に至っては野生のモンスター達にリンチされているところを助けて貰い、恩を感じて懐いた。

 

ここで注目すべきなのはモンスターの知性だ。

人間の言葉を理解し、様々な命令を遂行する。

動物としての本能とは明らかに違う、理性的な行動を取る。

つまりモンスターは俺達人間と同等。またはそれ以上の知能を持っていると考えられる。

あの角芋虫ですら俺の言葉を完璧に理解していたのだ。これは間違い無いだろう。

 

 

(スマイルも、ソラのモンスターも小さくて幼かった。そんでもって言い方は悪いが、パッと見は弱そうで覇気の無い奴らばかりだった)

 

(つまり小さくて非力な進化前のモンスター。アイツらは総じて幼年期のようなものなんじゃないか?)

 

 

極端な例を挙げよう。

産まれて間もない赤児を懐かせるのと、すっかり成人した人間を懐かせるのと。果たしてどっちが楽だろうか?

言うまでも無い。当然、前者の方が圧倒的に楽だろう。

大人というものは様々な経験を経て社会を知り、常識を学び、その過程で人の下心や悪意までも学んでいくのだから。

 

以上の事から俺の出した結論は非常に分かりやすいものだ。

 

 

「見た感じ小さくて弱そうな。明らかにこれから進化を控えていそうな、幼い見た目のモンスターを狙っていけば。サクッと懐いて楽々仲間になってくれる。……と思ったんだけどなあ」

 

 

だが現実はそう上手くいってはくれない。

戦果も無いまま、既に時刻は午後五時半を回っている。

日が長くなったとは言えそろそろ小屋に戻るべきだ。今日はもうタイムオーバーだろう。

 

 

「しゃあ無い。また明日にでもスカウト作業の続きでも……あ? スマイル?」

 

 

そろそろ帰り支度をしよう。と振り向きながらスマイルに告げるとそこには誰もいなかった。

つい先ほどまで俺の後ろで何やら木の実を食べていたのに。

 

 

「ナンスッ‼︎ ナンスッ‼︎ ソーナンスッ‼︎」

 

 

一体どこへ、と周囲を伺っていると少し離れた林の奥からピョコピョコと跳ね回る相棒の姿を見つけた。良かった、遠くへ逸れていたらどうなる事やら。

安堵の溜息を吐きながら俺は小走りでスマイルの方へ向かった。

 

 

「おいおい、勝手にいなくなるなよ。心配しただろ?」

 

「ナンスッ。ソーナンスッ」

 

「ん? 何だそりゃ」

 

 

いつもなら少しでも叱ってやればションボリとした顔で俯くスマイル。

だが今の彼はどこか誇らしげで自信に満ち溢れている。いわゆるドヤ顔でその腕に抱えた物を俺に差し出して来た。

 

 

「ナンスッ‼︎ ナンスッ‼︎」

 

「おいおい。コレってまさか……」

 

 

恐らく林の中に落ちていたのだろう。

サイズこそ明らかに大きいものの、ツルリとしたその表面に特徴的なやや歪な楕円形。

平和だった現代ではコンビニやスーパーの食材売り場で何度も目にしている見慣れた物。

 

 

「モンスターの、卵。なのか?」

 

 

バレーボール大の、大きな大きな卵だった。

 




・ナマケロ なまけものポケモン(ノーマル)
やや固めながら牛肉に似た味わいはなかなかに美味。
脂肪分が多いのでプルコギやカルビ丼にオススメ。

今後の展開

  • 本編を早く進めて欲しい
  • 番外編を進めて欲しい
  • ソラが主役の話が読みたい
  • 新キャラを沢山出して欲しい
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