現実世界にポケモンをぶち込んだらサバイバル系B級パニック物になってしまった 作:薔薇尻浩作
『皆さんこんにちわ‼︎ 今日は予定していなかった緊急配信です‼︎ どうすればいいか悩んでます‼︎ 皆さんの知恵をお貸しください‼︎ と、いうわけで今日もお送りするのは、ドレミファ〜!』
『……ソラ‼︎ はい、私ソラでーす‼︎』
いつもの挨拶から始まるソラの動画だが、少しばかり彼女の様子が今までとは違う。
彼女を囲うようにして寄り添うモンスター達が。そして何より、ソラ本人がどこか慌てた様子でカメラに向かって捲したてている。
どうやら予期せぬハプニングがあったようだ。
つい先日配信されたばかりのこの動画。
実はチャンネル内のコメント欄だけに収まらず、様々な掲示板などで異様なまでの盛り上がりを見せている話題の神回らしい。
「まさかのハプニング‼︎」「これは歴史に残る瞬間‼︎」「怪物達の生態の謎がまた一つ解けた瞬間」「ソラは俺の嫁」等々。
まるでお祭り騒ぎのようにあちこち盛り上がっており、奇跡の木の実を発表したあの動画とほぼ同等の反響を呼んでいるようだ。
そんな今回の動画のタイトルはシンプルに『卵を拾いました‼︎』というもの。
この要点のみを切り抜いた題名。
そして掲示板やコメント覧での爆発するような盛り上がり。
これらの要素だけで何となくオチが読めて来るではないか。
理不尽な障害にも折れず、人々の悪意に汚される事も無く。
ただただ自分の意思と、正義のままに突き進む美しい少女。
様々な出逢いを経て次々と新たなモンスターを仲間にしては、無限に沸いて出る邪悪な敵と戦い、勝利して成長していく。
間違いない。ソラという小さなヒロインは、やはり『何か』を持っているのだ。
(善意の塊のような心と言い、率先して周りを引っ張る行動力と言い、何よりその強運と言い。やっぱ主人公みたいな娘だよなあ、ソラって)
俺は眩しいものを見る気持ちで、小さな画面に映る彼女の姿を眺めていた。
挨拶から流れるようにコミュニティの近況報告。といつも通りの流れをいつも以上にサラリと流すソラの様子は、やはりいつもより興奮気味だ。
頰を赤らめて早口で説明を終えたソラは、この時を待ってましたとばかりに身を乗り出した。
カメラ外からヒョイと取り出したソレを彼女の豊かな双丘の間にスッポリと大事そうに抱え込む。
白地に青い斑点模様。歪な楕円形の球体。
つるりと光を反射したバレーボール大の大きさの『ソレ』の名は。
『ハイ‼︎ 卵ですよ、卵‼︎ コレ、見たこと無い卵なんです‼︎ って事はきっと、クッキー君やビスケットちゃんみたいなモンスターの卵ですよね⁉︎』
間違いなく『モンスターの卵』だった。
配信を続けた結果、順調過ぎる程に人数を増やし続けるソラ率いる渋谷生存コミュニティ。
奇跡の木の実の栽培は順調なものの、やはり増え続ける生存者を飢えさせない為には木の実だけではやっていけない。
成人男性を中心にした探索班を結成し食料や生活必需品なんかを拝借する為、広範囲に遠征を行っているそうだ。
件の卵もその遠征時にたまたま発見されたものらしい。
卵を見つけたのはソラ本人では無く、つい最近コミュニティに合流したばかりの中年男性のグループ数人だそうだ。
すぐさまソラに報告すると同時に卵を引き渡そうとする年上の男性達の様子を疑問に思ったのだろう。
「見つけた本人が育てるべきでは?」とソラも提案したらしい。
だがモンスターの卵とは薄っすら理解しているものの、果たしてどんな種類の生き物が産まれるかさっぱり分からない上に、産まれて来るモンスターが人間を害する種である可能性も否定できない。
もし戦力になるなら頼もしいが、逆だったら命の危機だ。あまりにもリスクが高く、非常に悩ましい。
ならばここはモンスターのプロであり、コミュニティのリーダーである我らが救世主。ソラちゃんに任せようではないか。という話になったそうだ。
ソラの口からの又聞きだが、話を盛るような性格の娘でもない。
恐らくは、ほぼほぼ実話なのだろう。だが、何というか、どうにも、情けない話ではないか。
(まあ、無理も無ぇけどさ)
例えば俺にとってのモンスターは言うまでもなく、その殆どが敵だ。
隙あらばの無力な種族人間を喰らい、痛めつけようとするファッキンファンタジーな畜生どもは厄災でしか無い。
だが俺にはスマイルという大きな例外がある。
大した能力も無い平凡な俺を唯一無二の相棒と慕い、どんな無茶な命令にも命を賭けて従ってくれる。そんな最高のパートナーという大き過ぎる例外だ。
だが、その他の多くの人間にとって、モンスターという存在は一括して理不尽な災害でしか無いのだ。
人を喰らい、傷付け、暴れ回るだけの招かれざる客人。
恐らくソラのコミュニティに合流した殆どの人間はモンスターの被害に遭い、身近な人間を亡くしているのでは無いだろうか。
そんな人達にモンスターとの共生を強いる事は余りにも酷だ。
そんな圧倒的弱者の地位に追いやられた種族人間の中の極めて貴重な例外。モンスターを友とし、共に戦い助け合う事が出来る奇跡のような存在が身近にいるのだ。
それが自分よりもずっと幼く、非力な少女だったとしても。
ついつい頼り、縋ってしまう事は果たして悪い事なのだろうか。
(俺もスマイルが居なかったらどうなってたかなあ。必死になってソラのコミュニティに合流する為に移動してたかもなあ)
まあ、そうなったところで合流する前にハイエナ擬き辺りに喰われて死ぬのがオチだろう。
そもそもスマイルと出会わなければ今こうして身体を休めている小屋にたどり着く前に死んでいる筈なのだから。
閑話休題。
どうやら卵がソラの元に届けられたのはつい先日だったらしく、どの様に育てれば良いのか。また、どんな子が産まれるのか。
そもそも産まれたモンスターは人間に友好的なのか?
こんな未熟な自分を親代わりと認めてくれるのか?
未だ見ぬこの子の幸せを願うなら無理を承知で卵の本当の親を探しに出掛けた方がいいのか?
と、どうにもソラは思いっきりズレた方向で悩んでいるらしい。しかも真剣にだ。
普段はコメント欄には軽くしか触れないソラも、今回ばかりは色々といっぱいいっぱいなのだろう。
物凄い勢いでスクロールしていく視聴者達からの大量のコメントに逐一真剣な表情で対応している。
『卵を発見した状況ですか? はい、卵を持って来てくれたオジサンから聞いた話では普通の住宅街の中に、ポツンと落ちていたそうです。はい、周りにはモンスターも特に居なかったとか。だから、どんな子の卵なのか全く分からないんです‼︎』
『大事を取って捨てるべき。ですか? でも……産まれる前に捨てられるなんて。それって、とっても悲しい事じゃないですか? せめて大きくなるまでは面倒を見てあげたいんです。
クッキー君達もいるから、きっと沢山お友達が出来て、この子も寂しい思いはしないでしょうし』
『毒を持つモンスターが産まれる可能性もあるから隔離すべき。……毒。うん、毒、毒は怖いです。前にサブレ君が毒を持った大きな虫に刺されてしまって。あ、その時はクッキー君が取って来てくれた不思議な木の実で治ったんですけど』
動画の中では常に明るい笑顔を浮かべているソラだが、今日ばかりは常時シリアスモードでコメントの一つ一つに返事をしている。
モンスターの卵など、大勢の人間にとっては命を脅かしかね無い危険物でしかないが、彼女にとっては小さな一つの命なのだ。
仲間として、家族として受け入れる事が出来るかどうかは、非常に大きな決断なのだろう。
『……え? あ、はい。奇跡の木の実とは別の種類のですね。次の配信で紹介しようと思っていた、とっても甘い木の実なんですけど。まるで桃みたいな……あ、あれ⁉︎』
そんないつもの配信風景とは程遠い、厳粛な空気が流れている。その時だった。
胸元に抱き抱えられていた卵がビクビクと大きく震え出したのだ。
驚き固まっているソラを尻目に、卵はまるで暴れまわるように痙攣し徐々にヒビ割れていくではないか。
間違いない。孵化の兆候だ。
『え、えぇ⁉︎ 昨日拾ったばかりなのに⁉︎ ど、どうしよ⁉︎ ねえどうしたらいいのクッキー君‼︎ あ、お湯⁉︎ お産だからお湯を用意すればいいの⁉︎ ほら、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー‼︎』
何故か卵に向かってラマーズ呼吸を伝授するという奇行に走るソラ。
どっからどう見ても完璧にテンパっている彼女の瞳には心なしかぐるぐると渦を巻く幻覚が見えている。
そもそもお産ではなく孵化だと言うのに、そこら辺の違いも判断できない程に混乱しているのだろう。
いつも以上にバタバタと大きく動き回り、あわあわと慌てているソラを嘲笑うかのように、胸元の大きな卵は孵化の準備をドンドンと早めていく。
ピキピキと音立てながら殻の欠片を撒き散らし、跳ね回るようにしてますます大きく動き出した。
『あ、ど、ど、どうしよ⁉︎ えっ、何⁉︎ ひっ、光⁉︎ きゃあああっ⁉︎』
(うおっ⁉︎ 眩し⁉︎)
そして、ついに縦方向に真っ二つに割れる大きなヒビが入ったと思った、次の瞬間。
辺りが真っ白に染まる程に、爆発的に発光した。
まるでモンスターが進化する時のあの光景を再現するかのような強い光だ。
あまりの眩しさにソラも、そして画面に注目していた俺も思わず目を瞑る。
やがてパリンと何かが割れる音が響き、光はスッと霧のように消えていく。
残されたのは辺りに撒き散らされ粉々になった卵の破片。
そして何よりも、ソラの胸元にしがみついて居るのは。
『……リィ? リォー?』
濃厚なロイヤルブルーの毛皮に身を包んだ、小さな獣人型のモンスターだった。
あのバレーボール大の卵に収まっていたとは思えない三頭身の体は70センチ程だろうか。
卵の時よりも明らかに力を込めて耐えているソラの様子から、そこそこ体重も増えているようだ。
顔立ちは狼やジャッカルを思わせる端正なもので、それとは対照的に大きな紅い瞳がウルウルと揺れている。
大きな頭を支える、細く小さな首を守るように巻かれた金の首輪のような不思議な部位がキラリと光を放つ。
その見た目通りに獣と人の両方の特徴を持っているからなのか。
胴体の作りは人間のソレと大きな変わりは無いようで、犬や狼といった獣の特徴を思わせる小さな手足と長めの尻尾が揺れている。
両手の甲には骨がポコリと隆起したような突起が。両足の裏にはピンク色の柔らかそうな肉球が生えているのがそれぞれ印象的だ。
しっとりとした体毛は殆ど全身が見事な青色に染まっているが、両目の周りをまるでアイマスクで囲うように。
そしてそこからなぞるようにして、鼻のラインまでが黒く染まっている。同じように両脚も真っ黒だ。
青と黒。それから紅い瞳のコントラストは自然界の動物からは考えられないものだが、どうにも上手く調和を見せており、どこか神秘的な色合いにも見えてくるから不思議だ。
特に目を引くのは獣耳の下にある真っ黒な房のよう突起だろう。
赤子が不思議そうに首を捻る旅にユラユラと揺れる様は、まるで髪に結いつけたリボンのよう。
人間には存在しないそのパーツが何の意味を持つのかは分からないが、どうにもこの『青毛の小獣人』には似合っているように思えた。
『わぁ……』
新たな生命の誕生を目の当たりにして上手く言葉が出ないのだろう。
ソラは感動のせいか小さく震える手の平を恐る恐る胸元の赤子に差し出した。
『リオー‼︎』
ソラを母と認識したのだろう。
赤子は嬉しそうな声で鳴き声をあげると、そのモフモフとした両手で彼女の手をギュッと掴むと、まるで乳を吸うようにそのままソラの人差し指を口に咥えてチュウチュウと吸い始めた。
その微笑ましい様子にソラの顔はあっという間に真っ赤に染まり、感動と興奮。
それらが綯い交ぜになった爆発的な歓喜にその大きな瞳を潤ませ、蕩けたような声をあげた。
『か、可愛い。可愛いよぉ。え、赤ちゃん、赤ちゃんだよね。あ、ご飯、どうしよ? ミルク、ミルクだよね? あ、おっぱい。え、と、私、出るかな?』
もはやすっかり感情の制御を放棄し、暴走状態のソラ。
産まれたばかりの小さな生命に眠っていた母性が刺激されてしまったのか、何と自らが着ている薄桃色のシャツのボタンを胸元まで大きくはだけさせたかと思うと、下着に手をかけ始めたではないか。
『フィア⁉︎ ニィニィ‼︎ フィアー‼︎』
『ピカ⁉︎ ピッカチュー‼︎』
ブラのホックを外し、たわわと実ったソラの魅惑の果実がカメラの前にさらけ出される。その直前。
慌てた様子のクッキー君がリボン型の触角で素早く彼女の動きを拘束。
同じく焦りの表情を見せたビスケットちゃんが電光石火の早業で持ってカメラの前に飛び出して視聴者からの視線を遮った。
(チッ。惜しかったのに)
『え、クッキー君? ビスケットちゃん? ……あ、あぁ。そうだよね、私、まだおっぱい出ないもんね。それに配信中だもんね。は、恥ずかしい……でも、どうしよう? 赤ちゃんだからミルクを、へ? 笑った‼︎ ほら‼︎ ほら、今、確かに笑いましたよ⁉︎ ほら、へにゃって。へにゃっーって笑ってますよ』
ご主人の思わぬお色気サービスに慌てふためき責めるような瞳を向けるモンスター達を尻目に、ソラは赤子の表情にすっかり夢中でカメラに向かって呼びかける。
彼女の指示通り、ビスケットちゃんから離れたカメラが改めてソラの胸元をズームすると、そこには確かに大きな瞳をにんまりと細めた赤子の笑顔が写っていた。
人間に対して敵対的なモンスターが産まれたらどうすべきか。散々コメント覧で議論されていたが、どうやらそんな心配は杞憂だったようだ。
ソラの指を咥えてうっとりした様子で胸元に甘えるその姿は、どう見ても彼女を実の母と慕っている事がありありと伝わって来るのだから。
そんな無垢な様子に完璧に心を撃ち抜かれたのだろう。
ソラは、ほぉっ。甘い息を吐き出すと、恋い焦がれるような様子で自身の感情を吐露した。
『か、可愛い。可愛い過ぎるよぉ。私の赤ちゃん、可愛い……好きぃ。可愛い、好きぃ』
(お前の方が可愛いよ‼︎)
胸が熱くなり心の中で思わず叫んだ俺は悪く無い。
少なくともこの動画を観ている男どもは年齢問わず、俺のように彼女の尊さに激しく胸を高鳴らせている事だろう。
結局その後、赤子のあまえる攻撃にトロトロに蕩けてしまって幸せいっぱいのソラはヘブン状態のまま中々戻って来なかった。
クッキー君やビスケットちゃん、それから途中から顔を出したサブレ君までもがソラの身体を引っ張ったり突っついたりと気を引こうとするも、彼女の意識は赤子に首っ丈である。
すっかり機能停止したソラとは対照的にコメント覧はますます加速して、まるで文字の洪水状態。
赤子の誕生を祝うコメントから始め、「授乳すべき、おっぱい早よ」とサービスシーンを催促するコメント。クッキー君とビスケットちゃんのファインプレーを讃えるコメント。
赤子の見た目からその生態を考察するコメント等々。とにかく様々な意見や感想が垂れ流しだ。
再生時間の終了二分前になって、ようやく戻って来たソラが爆発的な加速を見せるコメント覧に気付いた頃には収拾のつけようが無い程に。
結局、突発的なハプニングの為に今日はここまで。
とやや打切り気味に終了を宣言し、次回の配信は来週。赤子の様子をメインにお伝えします、と宣言。
恐らくソラ本人は最後くらいはしっかり締めようと意識して、キリッとした真面目な表情を作ったつもりなのだろう。
が、いつのまにかスヤスヤと寝息を立てている赤子の様子をチラチラと盗み見ては我慢出来ずにニヘラと頰を蕩かせているのが何とも滑稽だった。
最後こそ締まらなかったものの、ソラの天然な一面。
そして何よりモンスター誕生の瞬間を映像に収めたこの動画は、確かに歴史的な価値あるものとなったのだ。
「神回。だった、な」
節約モードに切り替えたスマフォを寝袋の上に放り投げた俺は満ち足りた気分で感嘆の溜息をついた。
思わぬセクシーシーンにドキドキしたり、夢中になっている我らがアイドルの尊いシーンに激しく萌えたりと。そんな至高の一時だった。
「とは言え、そろそろ現実を見ないとな」
が、いつまでも余韻に浸れないのが現実の悲しさという奴だ。
俺は横目で相棒を。もっと言うならば相棒の胸元に抱かれているものをチラリと見やった。
そう、歪な楕円形をした、バレーボール大のアレだ。
「……やっぱ卵だよなあ。モンスターの」
「ナンスー、ナンスー」
ソラが抱えていた卵と似たソレを胸元に抱え、優しく撫で回しているスマイル。
微笑ましい様子に、思わず俺も釣られて笑顔になりそうになるが、残念ながら呑気にニコニコしていられる状況ではない。
「一応、聞くけどさあ。やっぱ育てるつもりか? スマイル」
「ソー‼︎ ソーナンス‼︎」
勢いよく首を振って肯定する我が相棒の眩しい笑顔。いつもなら憂鬱な気持ちを吹き飛ばしてくれる癒しの笑みなのだが、状況が状況だけに今回ばかりは素直に喜べない。
自分の顔がヒクヒクと引き攣っているのが自覚できるほどに。
どうやらスマイルの中で、この卵から産まれる未来のモンスターは新たな家族の一員と決定しているようだ。
「あー。実は内緒にしてたんだが俺はそれなり以上に料理が。特に、卵料理が得意でな?」
「ソー?」
「ほら。ちょうど目の前には大きな卵がある訳じゃないか。是非とも今夜のディナーで俺の料理の腕前を披露させて「ナンナンス⁉︎ ナンナン‼︎ ナーン‼︎」……だよな、分かってた。冗談、冗談だからそう怒らないでくれ。悪かったよ」
尻尾をベチベチと床に叩きつけ、プンスカと怒りながら、卵を庇って俺から隠すスマイルの姿は、まるで巣を守る親鳥のようだ。
残念ながら久々の卵料理はお預けらしい。
目玉焼きからプリンまである程度はササッと作れるというのに残念だ。
家庭の事情から半ば強制的に取得せざるを得なかったとは言え、そこそこ自慢の調理スキルを披露する事を諦めた俺は改めてスマイルが拾ってきた卵を観察する。
色味や模様こそ違うものの、やはりソラが抱えていたあの卵と殆ど同じものだ。
つまりこれは間違いなくモンスターの卵なのだろう。
「ナンスッ、ナンスッ、ソォーナンスー」
すっかり卵を気に入ったスマイルはこうして拠点に帰ってから片時も手放そうとしない。
ソラを真似ているのか、細長い両手で卵を抱え込んではタオルでせっせと磨いたりして世話をやいている。
自分の弟が妹が産まれて来るのを期待しているのだろう。
(食っちまうのは冗談にしても、ぶっちゃけ爆弾にしかならない気がするんだよなあ)
いつも以上にニコニコとご機嫌なスマイルの様子から言って、いくら卵を廃棄するよう説得したとしても無駄だろう。
最近はすっかり癖にになってしまった大きな溜息を吐き出した。
確かに俺は新たな仲間となるモンスターを探していた。
だが、何が生まれるか分からない卵と言う名のビックリ箱を懐に抱えるというのは単純に心臓に悪い。
それに、ソラの動画のように人間に友好的、かつ家族として慕ってくれるような利口なモンスターが確実に産まれてくれる保証などどこにも無い。
もっと言うなれば、動画内の卵から『青毛の小獣人』が『誕生してしまった』点も問題なのだ。
犬や狼といった哺乳類と人間の特徴を持ったモンスターが『卵から産まれた』という事実。
つまり数多のモンスター達は、明らかに卵生とは思えない人型や、哺乳類の特徴を持つ種族までもが総じて卵生である可能性を示しているのではないだろうか。
これはかなり大きな問題だ。
虫や爬虫類、鳥なんかならともかく。犬や猫、獣人や人型。果てには存在するのか分からないがドラゴンやらベヒモス、グリフォンにユニコーンまでもが卵から生まれると考えると、恐ろしくはないだろうか?
おまけに動画内の獣人のように、羽化した瞬間に『明らかに卵に収まらないサイズにまで巨大化する』可能性も考えられる。
出会った当初のスマイルサイズならともかく、卵から孵った瞬間に10メートル越えの巨大怪獣が誕生しました。何てことになったら笑い話にもならない。
(ヤベェ。冷静になって考えれば考える程に厄ネタじゃねえか)
考えれば考える程に不安要素が湧いて出てくる。
俺は自分自身がソラのような善人でもなければ主人公の如く強運を持っている訳でも無いのを自覚している。
卵が孵化した時が俺の最期。なんていう最悪の可能性だってあり得てしまいそうだ。
「なぁスマイル。今から元あった場所に返してくるとか「ナーン‼︎ ナンナン‼︎」だよな。はぁ……」
まあ、とりあえずは先送りしよう。流石にソラのように今日明日に孵化する訳でもあるまいし。
それに仲間が欲しかったのは今でも同じだ。
今後産まれたモンスターに刷り込みが効くならば忠実な味方になってくれる今年だろう。将来的な戦力の投資と思えば悪くはないかも知れない。
と言うかそうでも考えないとやってられない。
ただでさえ毎日が生きるか死ぬかのサバイバル生活の最中だというのに、何が悲しくてパンドラの箱を抱え込まなくてはならないのだろうか。
(まあ、アレだ。本格的に邪魔になったら非常食にしちまおう)
俺の邪な考えが電波に乗って伝わったのか。
スマイルがふいにビクリと震えて辺りを見回している。
そんな状況でも愛しそうに卵を撫で回す相棒を尻目に、俺はまた大きく溜息を吐き出した。
(せめて産まれるなら『角芋虫』以外にしてくれよ)
そんな下らない事を願いつつ、俺は卵に夢中な相棒の為に晩飯の支度に取り掛かった。
・リオル はもんポケモン(かくとう)
筋肉の塊の為、とにかく身が硬い。オマケに骨太で食べられる箇所が殆ど無い上に個体数が少なので、どこまでも食用に向いていない。
どうしても食べたい場合はルカリオに卵を産ませて養殖しよう。
今後の展開
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本編を早く進めて欲しい
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番外編を進めて欲しい
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ソラが主役の話が読みたい
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新キャラを沢山出して欲しい