現実世界にポケモンをぶち込んだらサバイバル系B級パニック物になってしまった   作:ケツマン

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流石に1日に何度も投下するのは無理そうなので、ペース落ちるです。
一章の加筆修正もしたい。
9/11追記…投下2日目にて底辺ながらもまさかの日間ランキング入り。ありがとうございます。
12/28加筆修正済み


一人と一匹
2ーOP 主人公に非ず


心の何処かでは理解していた。

決して自分が特別な存在などでは無いなんて事は。

 

それでも何処かで、ほんの少しだけ。

無意識にも甘ったれた期待をしていたのかもしれない。

この地獄を生き延び、掛け替えの無いパートナーと出逢った。

そんな、まるで御伽噺のような日々を生き抜いて来た自分自身こそが。

 

そう、俺こそが物語の主役なのだと。

俺は主人公なのだと夢を見ていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ……」

 

 

声は出なかった。

身体の何処かしらが負傷している今となっては、その原因が喉にあるのか耳にあるのか、それ以外の何かにあるのかすら判らない。

 

身体中が燃えるように痛い。

そう意識したかと思えば、次の瞬間にはまるで麻痺したかのように全身の感覚が鈍った。

かと思えば、あっという間に全身を冷蔵庫に突っ込まれたみたいに急速的に異常な寒気に襲われた。

そしてまた繰り返すように、灼熱に焦がされるような激熱が身体を蝕んでいく。

 

自分の身体が既に正常じゃ無い事は目を開けるまでまでも無く感じていた。

だが自分自身の事だと言うのに自らの身体がどんな状態か全く判らない事が、なんとももどかしい気持ちにさせていく。

 

 

(熱いのは傷が痛むからか。寒いのは血が流れてるから? 痺れは……死にかけてるからか)

 

 

身体は既に動かない。

鉛のように重い。なんて在り来たりな比喩では表せない程に、重く、硬く。

そして一分一秒事に命の血潮が魂の熱と共にトクトクと流れ出て、俺の身体から徐々に冷熱を奪っていく。

 

歯を食いしばった。痙攣する筋肉に鞭打ちながら、意識を覚醒させる。

ただ目を開けるだけの作業とも言えない行動だというのに、とても億劫だ。

体力の限界を超えた俺の身体は、辛うじて。

本当に辛うじて、ほんの僅かだけ首を持ち上げる事が出来た。

痙攣する身体を抑え付けるよう必死の思いで頭を上げ、両の眼をしかと見開き、冷たい大地に横たわる自分の身体を確認した。

 

 

「……っ……っ!」

 

 

喉が面白いくらいに激しく痙攣し、ヒュッ、ヒュッ、と。過呼吸でも起こしたような声とも呼べない音が口から漏れていく。

本当のところ、俺自身は皮肉げに乾いた笑い声をあげたつもりだった。

だが実際はまともに喋る事すら出来ず、奇妙な表情で顔を硬直させたまま気力を失い半開きになった眦から涙を流すだけで終わってしまった。

頬を伝う透明の涙があっという間に顔中の汗と傷に付着した砂埃と。

そして頭や鼻からダクダクと流れる血液と混ざり合って、泥のような汚水となっていくのが何となく分かった。

 

今更、言うまでもない。

俺の身体は傷だらけ、なんてチープな状態なんかでは無く明らかに瀕死の重体だった。

両脚は崩れ落ちたパペットのようにあらぬ方向にひん曲がり、脊髄が傷ついてしまったのだろう。下半身の感覚は完全に遮断している。

そして散々に齧られ、捻られ、嬲られた俺の左腕は千切れていないのが不思議なくらいの有様だ。

まるで最初から骨など入っていなかったようにグニャグニャと捻れてひん曲がり、辛うじて二の腕の筋繊維にぶら下がるように引っ付いているだけ。

いっそ切り取ってしまった方が清々しいのでは無いかと言うほどにグチャグチャしている。

まるで使い古しの雑巾をキツく絞った時みたいだ。

自分の身体の事だというのに、そんな他人事のような感想しか出てこなかった。

 

 

「ーーーーーーー‼︎‼︎」

 

 

遠くの方から何かの声が轟いた。

もはや自分の耳ではまともな音一つすら拾う事は出来なかった。

だが周囲の空気がまるで泡立つようにして激しく震え出すものだから、嫌でもその咆哮の力強さと敵意は感じ取れた。

 

間違いない。決戦が近いのだろう。

 

 

「グボッ⁉︎」

 

 

胸の奥が急激に熱くなり、奇妙な嘔吐感と共にそれを吐き出した。

酸っぱい臭いと鉄臭さが周囲に立ち昇る。

吐瀉物混じりの血の塊だった。

きっと肋骨の何本かが折れ、内臓にでも突き刺さったのだろう。

 

 

(物語の主人公だったら、肋骨なんて何本折れても平気だっていうのになぁ)

 

 

やはり俺は主人公では無いのだ。

何処にでもいる一般人が、星の巡りの因果でたまたま生き残っただけ。ただそれだけだったのだろう。

 

声すら出ない喉をヒクつかせ、頬を無理やり釣り上げる。

形だけの笑みだ。最期くらいは笑って逝きたい。

思春期の男の子の、何の意味もない強がりだ。

 

 

「ーーーーーーー‼︎‼︎」

 

 

再び、咆哮が大気を震わせる。

そして規則的な地の揺れが急速に大きくなっていく感覚から、獣の形をした『死』そのものが牙を剥き出しにして此方に近付いて来ているのを悟った。

最期の力を振り絞り、再び頭を上げて地を踏み鳴らす死神を見やる。

暗闇に真紅の光点が二つ、ボンヤリと浮かんでいる。

 

残り僅かな生命力を振り絞るようにして脳に映像を送っている俺の眼球は、殆どまともに機能してくれず正確な色彩を写す事は既に出来ない。

霞んで震えるノイズ混じりの視界は、本来の夜の暗さ以上の暗闇包まれている。

もはや徐々に近づくその輝く赤い光以外はブラックアウトしたように、すっかり何も見えなかった。

 

一層強く、甲高い耳鳴りがした。

身体が一気に冷えて、今まで以上の強烈な虚脱感が俺を襲う。

 

 

(死ぬのって、やっぱ痛いのかなあ?)

 

 

レーザービームのような細かい残像を残しながら、真紅の眼光は見る見る内に大きくなっていく。

烱々煌々と火花のようにスパークする赤が『死』と共に近付いて来るのを茫然と眺めながら、俺は静かに目を閉じた。




ガッツリ編集しました。混乱させてしまったら申し訳ありません。

今後の展開

  • 本編を早く進めて欲しい
  • 番外編を進めて欲しい
  • ソラが主役の話が読みたい
  • 新キャラを沢山出して欲しい

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