暴走悪逆仮面 カルデア   作:烏賊の毒

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プロローグ

歴史というのは兎角不思議なものである。

ほんの少しの出来事で簡単にも変わってしまうのに対し、積み上げてきた歴史は強固なものになってしまう。

そして出来がった物語がどんなに歪で脆く醜い歴史としても、そこに存在する人々が一瞬一瞬を必死で生きてきた証として完成される。

 

かつて、人への愛が故に人理を焼却し人類史を初めからやり直そうとした事件があった。

かつて、仮面の英雄達の歴史を一つに纏め強引に歴史をやり直そうとした事件があった。

 

そんな世界を揺るがす事件があらゆる綻びを産み出した。

綻びが綻びを呼び、奇跡が奇跡を生み出し、紐と紐とが絡み合った。——―——絡み合ってしまった。

 

そして始まってしまった。

死者との再会、悪に染まった仮面、そして―――

 

 

 

 

 

――――――再度訪れる離別。

 

 

 

 

 

 

果たしてその先にあるものとは。

これはその歴史と歴史が絡まる序章である。

 

 

 

 

 

2019 地方都市 その地下

 

その場には、黒い服装の人物が一人、白い服装が数人、画面の前にある透明なカプセルに入った目の前の物体に向けキーボードを打つ。

 

「進歩はどうなっている?」

 

不意に黒い人物が問う。

 

「順調です。完成はもうすぐでしょう。」

 

白い服装の一人が答える。物体は薄っすらと輝き始める。

 

「残り空き容量にデータをインストール。70%……80%……90%……っ!これはっ!何者かからの邪魔が入りました!」

 

鳴り始めるアラーム。ドア前からの打撃音。

骨のような怪人が一人、ドアを突き破り弾き飛ばされて来る。

それと共に悠々と歩いてくる黒い切り札が一人。

それを目の前に白い服装の人物たちが臨戦態勢に入る。

 

「おい財団X、さっさとお縄につきな。」

 

「ほう、確か君は仮面ライダー……だったかな?」

 

「あんたは?」

 

「なに、ただ歴史を書き換える者だよ。」

 

〈Masquerade〉

 

白い服装の人物たちが黒い小箱をその身に挿し、髑髏のような姿にその身を変え、切り札に襲い掛かる。

その隙に黒い人物は物体に近づく。

 

「インストールは99%……まぁ良い。」

 

「邪魔だ!おい!待ちやがれ!」

 

「悪いが君とは遊んでいる暇は無い。もう会うことも無いと思うがね。」

 

「はぁ?」

 

黒い男は金と紫に輝く物体……聖杯を持つ。

 

「ではさらばだ仮面ライダー。

 だが、お楽しみはこれからだ。」

 

輝きに身を任せ、黒い服装の男はその場からの存在をかき消す。

 

「おらっ!」

 

最後の一人を殴り飛ばした切り札。

 

「あぁ~!くそっ!取り逃がした!」

 

おもむろに携帯を取り出す。

 

「悪りぃフィリップ、取り逃がした。そっちはどうだ?」

 

通話越しにフィリップと呼ばれた男が答える。

 

「あぁ、こっちは成功だ。ただまぁ、話した通り博打のようなものだけどね。」

 

「そうか、じゃあ一旦戻る。」

 

携帯での通話を止める切り札。

 

「はぁ……さて、依頼人にはどう話すか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019 彷徨海 ノウム・カルデア

 

「…す……。ま……た…。マスター!」

 

マスターと呼ばれた人物……藤丸立香は重い瞼を開ける。

 

「ん……どうしたのマシュ?」

 

薄紫色の髪をした少女……マシュが慌てふためいているのが見える。

 

「マスター大変なんです!一部のサーヴァントの皆さんが!」

 

眼を見開くマシュ。

 

「おかしくなってしまったんです!」

 

 

2019 彷徨海 ノウム・カルデア 廊下

 

「はい、飴あげる。」

 

「わー!ありがとー!」

 

「ありがとう!白いお髭のおじ様!」

 

「う~んおいしい!実にロジカルな味です!」

 

急ぐ彼らの目の前には子供系サーヴァントに飴をあげる白い髭のサーヴァントが一基。

 

「コロンブス……?!」

 

コロンブスと呼ばれたサーヴァントが立香とマシュに迫る。

 

「はい、どうぞ。」

 

バスケットに入った飴を二人に渡す。

 

「いえ、すごくありがたいことですし喜ばしい事で普段の生活からもありえそうですが。」

 

「なんかおかしいね。」

 

「え、えぇ~?おかしい?う~ん、そうなのかなぁ~。」

 

コロンブスが頭を押さえる。その押さえた隙間から緑の髪がチラッと見えたところで隣からその声からは想像のつかない怒鳴り声が聞こえる。

 

「だぁかぁらぁ!俺はお前らなんかしらねぇ!」

 

急いで現場に急ぐ二人。

 

そこにいたのは……フランス王妃であるマリーと王家の騎士であるデオン、そして赤いメッシュの入った宮廷楽長であるサリエリがいた。

 

「あら?一体どうしたのかしら?サリエリ先生?」

 

「マリー、どうやら様子がおかしい。下がってください。」

 

「だから俺はお前らの事なんて知らねぇって言ってんだろ!

 いいから構うなって!」

 

絶対にマリーに対して暴言は吐かないであろう人物が暴言を吐く。

そんな光景を目にして愕然とする二人。

 

「どうしたの?」

 

藤丸立香の問いに答えるマリー。

 

「あらあらマスター!

 サリエリ先生がちょっとおかしいの。」

 

「えぇ、普段の彼とは些か違います。」

 

「だから俺はお前たちの事は知らないって何度言ったら……ったく!うるせぇ!」

 

そんな中、またもや騒ぎが食堂である様子。

 

「今度は一体……?!」

 

またも二人、駆け出す。

 

 

 

2019 彷徨海 ノウム・カルデア 食堂

 

「ねぇ、お姉さん?どうかなぁ~ボクと一緒にちょっと散歩に出かけないかなぁ~。」

 

「あのねぇ、お姉さんがそんなことするわけないでしょ!」

 

「まさか……金時が……酒池肉林に走るとは……よよよ……。」

 

「わ、私は自室に戻るぞ!もう訳が分からん!」

 

またもやそんなことするわけない人物がここに。

 

ブーディカに言い寄る青いメッシュの入った金時。そしてそれを見て失神寸前の源頼光に自室に逃げるゴルドルフ所長。

 

「あぁ!金時さんがブーディカさんをナンパしてます!」

 

「これは一体?」

 

「おやぁ、こっちの眼鏡の娘もかわいいねぇ~。どう?ボクと一緒に星空について語ったりしない?」

 

「えぇ!ちょっと困りますよ金時さん!」

 

「ねぇ、良いでしょ?どうかなぁ僕は良いんだけどってちょっと!まだ出てこないでってあぁ!」

 

いきなり体を痙攣させる金時。

青いメッシュがいつもの?金髪に変わる。

 

「いつもの金時さんに戻ったのでしょうか?」

 

「おう!いつもの金太郎やで!おおきに!」

 

首を傾げる二人。

 

「なんか違うような……。」

 

その時、ダ・ヴィンチのアナウンスが入る。

 

『えぇ~、マシュと立香?至急、中央管制室まで来てください!』

 

「一体何が起きたのでしょう!とにかく急ぎましょう!マスター!」

 

 

 

 

2019 彷徨海 ノウム・カルデア 中央管制室

 

「一体どうしたんですか?!ダ・ヴィンチちゃん!」

 

管制室で待っていたのはダ・ヴィンチとホームズ。

 

「あ!来た来た!二人とも!道すがらサーヴァントの異変には気づいた?」

 

「なんか全員やばくなってた。」

 

「あぁ、それについては彼から説明していただこう。」

 

ホームズの掛け声と共にダ・ヴィンチの後ろからヒュッっと出てくる紳士的な男。

 

「すいませんねぇ~、ご迷惑をおかけして。

 私はデンライナーのオーナーでぇす。」

 

「デンライナー、ですか?ライナーというからには電車のようなものでしょうか?」

 

「はぁい。そうですねぇ。その前に。」

 

アナウンスのマイクを手に取るオーナー。

 

「皆さぁん、見つかりましたよぉ~。戻ってきてくださぁい。

 じゃないと戻れなくなりますよぉ~。」

 

その声を聴いたのだろうか、ドタドタと慌ただしく走る三人の音。

 

その三人とは先ほど問題の中心となっていた三人であった。

 

「おうオーナー!ってさっきのガキじゃねぇか!」

 

「えっどういうこと?」

 

首を傾げる立香を尻目に三人のサーヴァントから四人の奇怪な人物が出てくる。

 

「うぅ~、一体なんだったんだぁ?」

 

「おぉ……!我が心に何が巣食っていたのだ……!」

 

「あぁーなんかナイトメアってたみてぇ……。」

 

ぼやく三人を尻目に怪人達が話し出す。

 

「俺はモモタロスだ、よろしくな。」

 

「僕はウラタロス。よろしく♪」

 

「俺はキンタロスや。よろしゅうな。」

 

「俺はデネブ。優斗をよろしく。」

 

周りのスタッフに飴を配りだすデネブ。

困惑する全員を見ながらオーナーが話し出す。

 

「さて、では説明を。」

 

ツカツカと歩き出すオーナー。

 

「この世界にはいくつもの世界というものがあります。」

 

「それは特異点が続いた異聞帯のようなものでしょうか?」

 

マシュがオーナーに向かって問う。

 

「いえいえ、根本が違うのですよ。例えば……。」

 

杖を地面に刺すようにし立ち止まる。

 

「魔術協会という団体は存在していませんし、またゲーティアと名乗る者が行った人理焼却という事柄も影響も受けてはいません。現在の異聞帯のような事柄もありません。」

 

「つまりはこちらの世界よりかは安全、ということでもなさそうだね?」

 

ダ・ヴィンチの問いかけにオーナーは頷く。

 

「えぇ、こちらでも危機は何度も起こっていますねぇ。例えば、彼らのように未来から来るイマァジンのような存在が歴史を書き換えようとしたぁり。」

 

「えっそうなの!」

 

「俺たちはちげぇからな。それに俺はただ暴れたかっただけだしよ。」

 

驚く立香に答えるモモタロス。

 

「世界の破壊者が数多の世界を破壊しようとしたぁり、生と死をひっくり返そうとする悪の組織がいたぁりと。」

 

「ちょちょちょちょっと待ってくれ!世界を破壊したりとかって相当危なくないかな?」

 

慌てるダ・ヴィンチ。

 

「えぇまぁ、しかし彼には世界を破壊する気はありませぇんので大丈夫なはずですが。

 それぇに、この世界にあなたたちのような魔術師がいるよぉうに、こちらの世界にもそれぞれの世界を守る仮面のヒーローがいまぁす。

 詳しい事は省きますがそのようにして世界の均衡は保たれてまぁす。」

 

なので、とオーナーは付け加える。

 

「本来はそちらとこちらの世界は干渉しあうことも無ければ影響しあうことはありませんでした。

 が、しかし……。」

 

それまで口を閉ざしていたホームズがその言葉をつなぐ。

 

「人理焼却による綻びですね?」

 

「えぇ、その通りでぇす。

 そして、こちらもこの前ある組織がそれぞれの世界の仮面ライダーという歴史を一つに纏めあげ平成と共に消し去ろうとした事件がありました。そして、こちらの世界でも綻びが生まれしまったのですねぇ。

 もともとこちらの世界はあやふやでしてねぇ、歴史が繋がっているようで繋がっていないという事が続いていましたので余計に綻びが。

 その綻びを通じて世界を移動したものがありまぁす。」

 

「っ!聖杯ですね!」

 

「はぁい。正確にはその欠片程度ですが、それを見つけた組織がまずかったんですねぇ。

 財団Xという死の商人でして、その聖杯の欠片をあまつさえ復元してしまったんですねぇ。

 そして、その復元した聖杯を元にこちらの世界へと跳んでしまったわけですねぇ。」

 

「して、その跳んだ先というのは?」

 

ホームズの問い。

 

「それはおそらく皆さんご存知の筈、もうそろそろこちらで生まれる筈ですよぉ?」

 

「生まれる?」

 

「ダ・ヴィンチ!」

 

「どうしたんだいムニエルくん!」

 

こわばる顔をしたムニエルの見るモニターを見て愕然とするダ・ヴィンチ。

 

「これは……!」

 

「どうしたのダ・ヴィンチちゃん?」

 

「立香くん、マシュ、驚かずに聞いてくれ。」

 

巨大なモニターが浮かび上がり場所を示す。

 

「新たな異聞帯の発生が確認された。」

 

赤く点滅する場所は……。

 

「場所は南極……。」

 

「まさかそんな……!」

 

マシュが両手で口を覆う。

立香の口から思わず出てしまう。

 

「カル……デア……っ!」

 

 

 

 

異聞深度_Unknown

 

     Lostbelt No.EX

        夢想する泡沫達

 

   A.D.2017 暴走悪逆仮面 カルデア

 

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