劇場版名探偵コナンの犯人たちの事件簿   作:三柱 努

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100年前のロンドンに隠された事件の真相とは
シリーズ最愛の謎と罠



ベイカー街の亡霊 【前編】

ハロー諸君。

私はIT産業界の帝王トマス・シンドラー。

気楽にトムと呼んでくだサーイ。

 

 

 

今日は東京の米花シティーホールで、日本のゲーム会社と共同開発して完成させた仮想体感ゲーム機「コクーン」の披露パーティ。

その直前、私はゲーム開発の責任者・樫村に呼び出されていマシタ。

『2年前、私がジャック・ザ・リッパーの子孫であることに、ヒロキ・サワダが気付いたため、私は彼を自殺に追い詰めた。その証拠にジャックの短剣に付着したDNAと私のDNAを解析したデータがある』

死の真相を突き止めたというヒロキの実父・樫村の言い分デース。

 

一つ、叫ばせてくだサーイ。

 

 

 

Nooooo!!!

 

 

No。

反論だらけデース。

 

まず、私とヒロキはベリーフレンドリーな義理の親子デース!

日本で疎外されて、離婚した母親を失い孤独になった彼を養子に招きマシタ。本当の親子以上に仲良しデース。誕生日には私の大好きなブランコと滑り台をプレゼントしたくらい仲良しこよしデシタ。

DNA解析プログラムと人工頭脳『ノアズ・アーク』を作ったヒロキは、何処に出しても恥ずかしくない自慢の息子で、私の最高のビジネスパートナー。

自殺した時だって、私は寝間着のままで彼の部屋に駆けつけたくらいデース!

 

 

たしかに自殺直前の頃は、彼が急に私を避けはじめて、会っても仕事の話しかできない関係になっていマシタ。

でもそれは別のストレスが原因のハズ。短剣に付着しているのは被害者のDNAであって、それが私と同じだからといって、すぐにジャックに結びつくわけではありマセーン。

 

ですが彼の自殺は、10歳という難しい年頃の、遠慮がちな日本人の気持ちに寄り添ってあげられなかった私に責任がありマース。

この2年彼の過労死をずっと悩んで悲しんでいマシタ。

悲しみから目を逸らすために必死に仕事に打ち込んで、ヒロキの居ないHappy Birthday to meを2回乗り越えて、産業スパイの暗躍と戦いながら、ヒロキと同じ年頃の子供たちに楽しんでもらえるゲームを頑張って作ったのデース。

 

 

だからこそ樫村の指摘は、殺人鬼との血の繋がりに50年苦しんできた私への冒涜デス!

そもそもヒロキを捨てたくせに、今さら父親面デスか?

 

 

「私はあなたを強請るつもりなんかありません。ただ償ってほしいだけです」

償ってほしいとは何を言いたいんでショウか?

日本人はハッキリと自己主張をしないから困りマース。

具体的に償いの方法を言わず、相手に考えさせるという手法。この人、私が謝罪した後に強請るつもりに違いないデース。

 

 

「ヒロキは知ってしまった。シンドラー帝国を崩壊させてしまう貴方の秘密を」

償えと言った側からこれデスよ。

崩壊が分かっているのに公表を望んでいるのデスか?

それはつまり、シンドラーカンパニーや子会社、多くの関係者が路頭に迷うことになるんデース!

 

 

「私にはヒロキの魂の叫びに思えました」

私の中のヒロキも『トムがんばれ!』って叫んでいマース。

 

 

 

さて、ずっとヒロキのことばかり話していましたが、ここで一度私の現状について考えてみまショウ。

・イベント中に

・「お前の過去を知っている」と

・呼び出される

これ、ミステリー映画だと私が殺されるパターンじゃないデスか!?

 

 

ヒロキを過労死に追い込んだ汚名を着せられたまま殺されてしまう私。

 

そんなことさせまセーン。ヒロキの名に賭けて!

 

返り討ちにしてやるつもりで、今日私は来マシタ。

でも、素手で39歳を撃破できるほど私は若くありマセーン。なので私はトリックを使い、凶器を持って今、樫村ルームに来ていマース。

装備はもちろん因縁のジャックの短剣。畏怖する血脈ですが、死の舞台に立つ私を霊祖は見守ってくれるはずデース。

 

 

いざKILL

 

 

あっさり終わりマシタ。心臓一突きDEATH。(心臓刺したのに出血が少ないのは何故でショウ?そういう体質?放送倫理への配慮?)

あとは短剣の血を拭って、HDDのデータを壊して、トリックの後片付けをしたら、私の殺人は終わりデース。

トムの勝ちデース!

 

 

 

 

さて一安心したところで、今夜の私の一番の仕事が始まりマース。

それはもちろんコクーンで50人の子供たちを楽しませてあげることデス。

「ゲームスタート」

私の号令でコクーンは起動し、子供たちは無事にゲームの世界へとインしていきマシタ。

これで二安心。

と思っていた矢先、ゲームにアイディア提供してくれたという作家の工藤優作が警察を引きつれて制御室に入ってきマシタ。

 

早すぎデス!もう樫村の死体が見つかったというのデスか?

警察はゲームの中止を進言してきましたが、その時ちょうどシステムに異常が発生し、制御できなくなってしまいマシタ。

何事デース!?

 

 

「我が名はノアズ・アーク」

 

 

 

What!!??

ヒロキのノアズ・アーク!?彼の自殺と一緒に消えてしまった人工知能!?

私の混乱は追いつきまセン。

そんなことお構いなしに、ヒロキと同じ声でしゃべるノアズ・アークは一方的にまくし立てていきます。

50人の子供たちのうち1人でもゲームをクリアできなければ全員死亡。日本の将来を担う子供たちを一掃し、よりよい日本にするために一度その繋がりをチャラにしようというのデース。

 

 

「いい加減にしろ!人間の命をおもちゃにする権利がお前にあるのか!」

キン肉マンみたいなイイ声のおじさんが、皆の怒りを代弁してくれまシタ。

しかしノアズ・アークは冷淡な声でこう答えマシタ。

「無いよね。ヒロキくんの命をもてあそぶ権利が大人に無かったように」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Noooooooo!!!!!

 

アンビリーバボー!!!

信じられナイ!

 

遠回しな言い方ですがノアズ・アーク。ヒロキの死の真相、樫村の言った通りじゃないデスか!

ヒロキは私に流れる殺人者の血を怖れ、恨んで死んでいったということデスか・・・

ジャックの血、恐ろしすぎマス。嫌ですもうこんな血。

 

 

でももう後戻りはできまセン。

樫村殺人事件が捜査されている今、会社の今後を左右するのは、事件を解かれることと、私がジャックの子孫であることが明らかになるかどうかにかかっていマス。

 

そして願わくば、子供たちが全員生きて帰ってくることを祈るばかりデース。

 

 

 




【次回予告】

≪やめて!ノアズ・アークの特殊能力で、ジャック・ザ・リッパーの真実が暴かれたら、闇のゲームでジャックと繋がってるシンドラーの会社まで燃え尽きちゃう!

お願い、死なないでシンドラー!あんたが今ここで倒れたら、ヒロキとの約束はどうなっちゃうの? 言い逃れの余地はまだ残ってる。でっちあげだ!って耐えれば、推理に勝てるんだから!

次回、「トムの負けデス」
デュエルスタンバイ!≫

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