劇場版名探偵コナンの犯人たちの事件簿   作:三柱 努

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僕・風戸京介は1年前に僕が起こした事件に再捜査のメスが入ったことを知り激しいストレスに襲われた。そのストレスにより生まれた人格、白鳥警部と混ざった?ことで生まれたというもう1人の僕に導かれるまま、捜査官2人を殺害。次の標的は最後の捜査官、女性警官の佐藤刑事だ。


瞳の中の暗殺者 【中編】

「どうやって彼女を殺す?もう一人の僕」

『その前にやるべき重要なことがあるだろう』

もう一人の僕との脳内会話で、彼は神妙な声でそう呟いた。

『呼び方がダサイ。何だもう一人の僕とは?しまらないじゃないか』

そう、もう一人の人格はどうでもいい事にこだわる変な奴だった。

 

「そんな事を言ったって、キミはもう一人の僕なわけで。自分同士で風戸とか京介とか呼び合うのも変だよ」

『お前のセンスを見極めてやろうというのだ』

「・・・じゃあ、白鳥警部と混ざって生まれたっていうなら、白鳥から『スワン』ってのは?」

『ふん、やはりその程度の貧しい発想しかないのかお前は。もう一越えしてこいよ』

「じゃあ、白鳥座から『キグナス』」

『ほぉ、なかなかいいじゃないか。よし決めた。私の名前は『ジーク』だ』

そして僕の話をたまに無視する。そしてこのやりとり、本当にどうでもいい。

 

「で、どうします?次の殺人は」

『どうせ最後だ。爆弾で楽をすればいい』

「・・・・僕に作戦があります」

先の事件に触発された僕が一生懸命考えた殺人プランがコレだ。

 

 

まず、殺人の舞台は白鳥警部の妹の結婚を祝う会。警察関係者が一堂に参加するから、標的である佐藤刑事も確実にそこに現われる。

(第1の殺人で奈良沢刑事と米花町の交差点で遭遇できたのは完全に運だったから、その運任せだった反省点を活かしたものだ)

 

犯行現場は女子トイレ。トイレならいくら佐藤刑事でも油断してくれるはず。そのタイミングで配電盤を爆破して停電を起こし犯行に及ぶ。

『こんなこともあろうかと私は爆弾処理の免許を持っている。しかも2級』

「こんなこともあろうかと、僕は趣味で爆弾を作ったことがある。しかも携帯電話で遠隔作動させることができるタイプ」

『うわっ陰険な趣味』

 

停電の暗闇の中で佐藤刑事を探すために、あらかじめトイレの化粧台の物入れの中に懐中電灯をつけっぱなしで入れておく。

暗闇の中で光る懐中電灯を見つけた彼女がそれを拾えば、光る標的として狙うことが簡単になる。『うわっ、電池代が勿体ない』とか言わない。

 

警察官で一杯な会場だから、殺害後にすぐにホテルを封鎖されて、射殺の証拠になる硝煙反応を調べられてしまう。

その網をすり抜けるために硝煙反応から自分自身を守るため、傘に穴をあけておいて、そこから手と拳銃を出して撃つことにする。もちろん銃を撃つ手はゴム手袋でガードして。

『なるほど素晴らしく用意周到な作戦だ。そこまでして捕まりたくないのかこの臆病者』

「先に起こした2件、キミは捕まっても良かったからあの雑さだったの?」

 

そして毎度の容疑者候補擁立のための友成召喚。

今まで僕の地声で呼び出していたけど、さすがに声紋を調べられたらまずかった。

だから今度は診察の時に録音していた女性患者の声を編集して、その声で呼び出すことにする。

『患者の声を集める趣味があるとか、変態じゃないか』

「治療の一環で使うの。あとは音声を編集するだけ」

『そんな仕事もするのか。心療科医は大変だな』

これは趣味で経験があるだけの話だが・・・そんなことはどうでもいい。

 

 

僕は早速、友成の家の留守番電話に「来ないと殺人容疑で逮捕する」と音声を残し、米花サンプラザホテルに向かった。

 

 

白鳥妹の結婚を祝う会。

主治医まで招待してくれるという太っ腹っぷりだが、この会をぶち壊してしまうことになる僕としてはすごい罪悪感。

そんな胸の痛みを覚えながら、僕は早速準備に取り掛かった。

電気室に忍び込んで遠隔操作爆弾をセット。

次に穴をあけた傘を傘立てにセット。

『運が良かったな。天気が悪かったら、他の傘と紛れてしまうところだったぞ』

たしかに、天気の神様に微笑んでもらえたのは幸運だった。

 

あとは女子トイレに懐中電灯を置くだけ。

『おいお前、大事な事を忘れているぞ』

「何?女子トイレに入るのは犯罪だって?」

『こういうパーティは開始直前に清掃が行われるはずだ。トイレも当然な。つまり今、懐中電灯を置いても片付けられてしまう可能性が高いということだ』

 

・・・その通りだ。

 

 

 

「どどどどうしよう!」

『案ずるなたわけ。私に良い考えがある。今から自首するのだ』

「それのどこが?ふざけてるの?」

『ふざけてなどいない。発想の転換だ。私達犯人が警察に行けばもう逮捕すべき犯罪者が居ないということだ。戦わずして勝つ。これにて一件落着』

 

 

どうしようこうしようと考えても、この事態への解決策は思い浮かばなかった。

そして無情に時は流れパーティタイム。

そう、初めから単純な話だった。

清掃後、パーティが始まってから懐中電灯を置けばよかったんだ。

「よしあとは、女子トイレに潜入すればいい」

女子トイレに・・・潜入・・・

『禁断の地』

「別件逮捕事案だ」

 

 

今度こそどうしよう・・・停電も殺害手段も準備万端なのに、トリックの要が完成に至らないなんて。

『仕方がない。ここは女装して潜入するしかない。買いに行け今から!』

と、オドオドしている間に運よくトイレから人が出て、僕はサッと入ってサッと置いて。

 

 

人が入ってきて・・・・

 

 

個室に隠れて・・・

 

 

人が出ていって、僕はドキドキしながらどうにかトイレからの脱出に成功した。

 

 

 

 

「疲れた・・・殺す前から疲れた。警察に囲まれるのもすごいストレス。とてもじゃないけど落ち着いて参加できない。あとはもうキミに任せてもいい?」

『やれやれ、あまり気が進まないのだが、場合が場合だ仕方あるまい。私の社交界テクを炸裂させてやるとするか』

「とりあえずニコニコだけして、何かあったら『風戸です、よろしく』って言うだけにしてくれ頼む」

 

 

   = 豹変 =

 

その後、私は白鳥警部とともにパーティに参加。

参加しているお客さんを色々と案内され、探偵の毛利小五郎と妻と娘と居候の子供を紹介された。

ちょっと何か話したかと思うと、毛利探偵はいきなり男の子の頭をゲンコツで殴り下ろしていた。なんという恐ろしい男だ。

その後、毛利探偵は何か白鳥警部から「Need not to know」と釘を刺され落ち込んでいた。何の話か分からない。

『つまり僕が2件目の事件で握らせておいた警察手帳のおかげで、警察関係者・上層部・組織全体に犯人説がしっかり浸透しているってことだよ』

 

 

しばらくすると佐藤刑事がトイレに席を立った。

後をつけてニヤリを1回。

傘立てから傘を回収して、銃と手袋をしっかり持って。

爆弾を作動!無事に停電。

暗闇の中、光るライトに照らされる佐藤刑事を発見し・・・

「やばっ。傘の穴の位置が分からない」

『何やってんだ馬鹿』

 

ドタバタしている間に、私に気付いた佐藤刑事がトイレの奥に走っていった。ふん、臆病者め。

「駄目、蘭さん!」

逃げる彼女の背に銃弾を4発。

ん?蘭さん?

どうやら彼女はトイレにいた他の女性を守ろうとしていたようだ。

そもそも考えてみれば、彼女をライトで照らしている人がいないと、私も視認できなかった。

まったく、もう一人の私も詰めが甘い。

 

「佐藤刑事!」

外れた1発の弾丸が蛇口を破壊し、吹き出した水に驚いた少女・蘭が懐中電灯を手放した。

そして照らされる私の顔と彼女の顔。

めちゃ見られた・・・

だが、一緒に倒れ込む佐藤と蘭の音に、私は勝利を確信した。

「標的を目撃者と共に消す。これぞクールな男の仕事だ」

あとは用済みの拳銃を捨て、ゴム手袋を男子トイレに捨て(詰まらないか心配だ)、傘を傘立てに置いて、非常灯で廊下が照らされ・・・・

電源の回復早っ!さすが日本の技術力。

そして流石は頼れる日本警察の集まり。

ホテルはすぐに封鎖され、私は硝煙反応を調べられた。

まぁ当然、客に反応は出ること無く、出入口封鎖前に外部犯の逃走した説が濃厚に。

 

これにて一件落着。

さぁ帰らなきゃ。救いのヒーローは1日3時間しか働けぬ。

 

 

 

   = 復帰 =

 

 

その後、パーティは当然のことながらお開きに。

僕もようやく我が家に帰ることが出来る。今夜は良い酒が飲めそうだ。

 

だが、そんな矢先に突然白鳥警部から呼び出しがかかり、米花薬師野病院に呼ばれた。

心療科の当直が居なかったのが理由らしいが・・・何故?

 

 

 

そして病室で出会った見知った顔に、私は度肝抜かれた。

 

 

 

ラララ・・・蘭!?

 

そう、そこに居たのは、もう一人の僕・・・じゃなかった、ジーク・・・だっけ?

『Yes』

の犯行現場にいた目撃者の蘭の姿だった。しかもしかも無傷。

 

まさか、もうバレてしまうとは・・・

 

 

あんなに練ったのに

 

 

雑じゃなかったのに

 

 

僕の緻密な殺人計画が

 

 

 

 

 

 

僕は全身の力が抜けていくのを感じた。

 

 

こうして謎は全て解かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わけではなかった。

 

呆然自失とした彼女の様子に、僕に希望が降り注いだ。

 

 

「自分が誰だかわかりますか?」

首を横に振る蘭。

「今日何があったか覚えていますか?」

「いいえ」と答える蘭。本当?本当の事言ってる?

「アメリカの首都は何処でしょう?」『ニューヨーク!』

「ワシントン」

「5×8はいくつですか?」『40』

「40」『やったぜ』

「このボールペンの芯を出してください」

時々邪魔が入りながらも、蘭の診断は終わった。

 

 

【逆行健忘】

突然の疾病や外傷によって、障害が起こる前のことが思い出せなくなる記憶障害を、彼女は患っていた。

幸運にも、私の起こした事件のことは何も思い出していないのだ。

 

本当に良かった。

 

 

「念のため、何日か入院して様子を見ましょう」

こうして僕は目撃者を手元にに残し、いつでも殺せる状態に誘導することにも無事成功した。

 

あとは蘭を殺すだけ。

頑張ろうか相棒!

『ふん』






それにしても今回、運に救われすぎ。

だが運命の女神は確実に僕に微笑んでいる。

僕が安心して眠れる日が来るのも時間の問題だ。



あとはよっぽど、彼女を守る優秀なナイトが現われない限りは。
『それは私のことか?』
そうだったらどれだけ良かったことか。
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