でもあきらめちゃ駄目。偽物のひまわりが本物と一緒に展示されるなんて我慢できない。死んだ方がマシ。
この気持ちがあれば、何度でも立ち上がれるわ。
『偽物・ひまわり・絵画 をぶっ壊す』
そして始まった展示会。
場所は郊外の湖のそばの鍾乳洞に作られた『レイクロック美術館』。
すっごくアクセスが悪いわ。
ちなみにこの美術館、ひまわりを守る設備がパーフェクトらしいの。
ひまわりに異常があれば、各種センサーが働いて即座に防火防水ケースに入る仕組みになっていて、脱出シューターで運ばれるの。
・・・・そうよ。私がキッドの仕業に見せかけて可燃性液体使ったから、炎と水への対策がめっちゃ強化されてるの。たぶん。
でもこの程度の対策なんて平気。私のひまわりに対する情熱の方が火力が上だから、平気なの!
そして始まった展示会。
私の『偽物を・炎に包んで炭と・化す』作戦の舞台。
(えっ?だいぶ前の話だから計画の詳細を私が忘れちゃってないかって?それは大丈夫。ちゃんとパソコンに「ひまわりを燃やすための計画書のデータ」をまとめてあるから)
100人のお客さんが次々と美術館に入ってきて、警備の私たちはキッド侵入を警戒したわ。荷物の持ち込みも金属探知も十分に管理。
ほんと、仕事が雑。
だって私、普通にホスフィン持ち込めたもの。内部への警戒ガバガバ。ありがたい話だけどね。
さて、あとは頃合いを見て警備のフリして、電気室で配電盤でも壊して、観客を避難させてる間に2枚目と5枚目を燃やせばいいだけ。
と思った矢先。奴が来た。
キッドカードよ。
頼むから、半端キッド。予定にない事しないで!
14=(11人+1人)+2人
15=(11人+1人)+2人+1人
って書いてあったの。
・・・・何コレ?
前々回はゴッホクイズ、前回はストレートな手紙だったのに。今回急になぞなぞ?
全然わからない。ひまわりの本数のこと?だけど人数って・・・
私が頭を抱えていると、仲間の1人、東が口を開いたわ。
「ゴッホがひまわりを十四本と認識していた場合、それはキリストの十二使徒とテオとゴーギャンを意味したのではないかという説がありましたよね」
それだ!
「『11人+1人』のところがキリストの十二使徒で『+2人』がテオとゴーギャンではないかという説です。これで合わせると十四人。そして、十五本と認識していた場合は、『+1人』のところにゴッホ自身という説があるんです」
私の口が勝手に語り始めたわ。
そんでもって私、背中で冷や汗ダラダラ流したわ。
だってこれ、キリスト12使徒が11人+1人ってことは、絶対ユダのこと。つまり裏切り者のこと。つまり私の事をキッドが指摘してるってことよ。
まずい・・・意外と超ストレートなメッセージ。
こんなことに気付かれたら、私たちに対する警戒レベルまで上がっちゃうじゃない。
「だがなぜ急にキリストの十二使徒が出てくんだ?」
「問題はこの数式が何を意味しているかだ」
「なぜキッド様はこんなわかりづらい予告状にしたのかしら」
「それ以前に、あのキッドカードって本当に予告状なのかしら?」
みんな鈍感だったわ。良かった。
普通、十二使徒っていったらユダじゃない?ユダネタ、有名だと思ってたけど、私の地域だけ?バレないのはそれはそれでありがたいけど、なんだか少し寂しいわ。
その後、キッド出現したから打ち合わせ通りに展示会は中止で観客の避難開始。
これでひとまず今日は偽物が本物に並んで展示されることだけは防げたわね。
よし、作戦始動よ。電気制御室にGO!
「クソォ!待てえキッド!!」
電気制御室で騒ぎがあったわ。
私が入る直前にチャーリー警部がキッドを見つけて追いかけて行ったみたいなの。
危うく鉢合わせするところだったわ。
でもこれで邪魔者はいなくなった。配電盤に放火!
熱っ!
でも無事に美術館は停電したわ。
さぁ、あとは2枚目と5枚目を燃やすだけ。
まずは直接、偽物に火をつけ・・・ることは、見回りに来たチャーリー警部のせいで失敗したわ。なんて抜け目ないヤツ。
仕方なく、次の偽物の所へ向かっていると、私の所に通信が来たわ。
「七人の侍の再調査で怪しい人物が浮かび上がってきたんだ」
それは日本の警察、キッド専任捜査官の中森警部から。
終わった・・・
さすが日本の警察。私達7人を怪しんで、私の事を特定したみたいね。
こうして、謎は全て解かれ
なかったわ。だって中森警部、もったいぶらずにすぐに教えてくれたもの。怪しい人物の双子の兄がフランス・アルルで亡くなったって、私に無関係な話を。
警察が睨んだ怪しい人物は東だったわ。
誰だっけ?
あっ、影薄いから忘れてた。そう、今日のキッドカードの謎の解説をした彼!
東の話によると戦時中、彼のおじいちゃんが芦屋で5枚目のひまわりを守って死んで、使用人が贋作に見せかけてアルルに逃がしたんですって。
(あれ?どこかで聞いた話な気がするけど・・・まぁいっか)
そして近年、ようやく彼とお兄さんがひまわりを発見したそうなの。でもお兄さん、ひまわりはアルルの地で散るべき理論を持ったとんでもないクレイジーな思い込み人間だったみたい。
そしてその喧嘩中に銃が暴発して兄死亡って経緯があったらしいの。
まぁ私には関係ない話ね。皆が話に夢中になってる間に、さっさと当初の計画通りにチューブ通路に火をつけて美術館ごと燃やしちゃいましょう。
ファイヤー!
火は瞬く間に通路を燃え広がったわ。想定外のスピードで。死ぬかと思った。
「オイッ!ひまわりが燃えてるぞ!!」
火に気付いた東が叫んだわ。私も乗らないと疑われちゃうから、「早く消して!」って叫んだわ。いや、消さないで!
無線越しに警備室でも必死な様子が窺えるわ。どうやら防災システムはダウンしているみたい。
停電だけでダウンする防衛システムって、どんだけ安いの使ってるのよ。ありがとう。
さぁ、ここからがショータイムよ。
7枚のひまわりが脱出シューターに格納されていくわけだけど、私の狙いは2と5だけ。
そこで私はあらかじめ、装置にピアノ線で展示エリアのポールを結び付けておいたの。
こうすれば、シューターが作動すると勝手に引っ張られて、絵画がひっかかって脱出を邪魔できるの。
そして私は普通にエレベーターで脱出。
パーフェクト♪
あとは緊急脱出用保管庫で本物5枚を回収するだけ。
「6枚しかない!」
『6枚もある!?』
そこで見た衝撃の光景・・・それは2枚目のひまわりだけ不在で、5枚目がしっかり無事に残ってるという現状だったわ。
でも、とりあえず7枚揃う事が無くなったわけだから、展覧会はこれ以上は中止ね。私の勝利!
それ以前に美術館が崩壊し始めているから、どのみち中止。
というか、放火だけで崩壊するって、どんだけ脆い美術館よ。
なんて胸をなでおろしていると突然、無線に通信が入ったわ。
それは空港でいつの間にか消えていた工藤新一からの通信だったわ。
『あなたは初めから、二枚の〈ひまわり〉を破壊することが目的だった』
えええええええ!?嘘、いつの間にバレてたの!?
そこから咲き乱れない推理。
言い間違いじゃないわ。推理、咲き乱れてないの。
キッドの犯行に見せかけた方法を全て言い当てられたわ。それはもう、私の行動をずっとストーカーみたいに監視していないと当てられないほど正確に。
まぁ想像の範囲で言えるような内容だけだったけど、怖いわ。
しかも肝心の動機部分、私が2枚を狙う理由はわからないとほざいたの。
とんだ推理ショーね。
一番自信持っていそうな部分も、チューブ通路にひまわりを設置しようと、私が言い出したってところだけ。
曖昧なことで人を犯人扱い。まぁ犯人なんだけど。
ほんと、仕事が雑!
そうして私がしらばっくれていると、工藤新一は呆れるようにため息をついたわ。
「そうですか。本当はあなたに自首してもらいたかったんですが。もっと確かな証拠が必要なら、後でお見せしますよ。あなたのパソコンのデータ ── 二枚の〈ひまわり〉を破壊するための全計画書をね」
証拠あるんかい!
言い逃れ絶対不可の決定的すぎる証拠を突きつけられたわ。
仕事、全然雑じゃなかったわ。
そして2枚目のひまわり、無事でした。
こうして、謎は全て解かれた。
でもどうせなら、最初から決定的な証拠を出して欲しかったわ。弱い推測だけ話して、ちょっとでも私に「これなら言い逃れできそう」なんて期待を持たせずに。
しかも最後の最後
『死んだほうがマシだと言っておきながら、飛行機の爆発を着陸直前にしたり、今回の火災も自分が逃げ出せる場所と時間を計算して発火させた』
『本当に死を覚悟した計画なら、なぜ美術館に残ってキッドの消火を妨害しなかった!?あんたは所詮、自分に都合のいいようにしか考えることのできない犯罪者だ。決して学芸員なんかじゃない!』
でオーバーキル罵倒。
この男・・・工藤新一、真性のドSね。女を泣かせるタイプよ。間違いないわ。
未来のお嫁さん、気を付けてね。
まぁそもそも、そんな犠牲者が出ない事を、私は祈ってるわ。
それにしてもなんで私ばかりこんな目に?不公平じゃない。
犯人を辱めて、トリックを馬鹿にして、自分たちだけ安全圏で。
恨むわ作者に読者。
悔しいから最後に、
ノックアウトされた・犯人を・傷つける今作を ぶっこわしてやるわ
「今作は、次の事件でグランドフィナーレにします」
言ってやったわ。ざまぁみなさい。
もう取り返しつかないわよ。
ゴッホ様みたいに、短い期間にその命の炎を燃やし尽くすの。
引導を渡してあげたんだから、むしろ感謝してほしいわ。
というわけで読者の皆さん、最終回をお楽しみに
最終回は豪華な話になるらしいわよ。業火だけに。