劇場版名探偵コナンの犯人たちの事件簿   作:三柱 努

25 / 49
決して交わることのない時の中で、彼らは同じ舞台に立ち、各々の苦難の中で、同じ敵と戦い、そして敗れ去っていった。
彼らは決して主役ではなかった。主役の座を与えられたところで、辱められるだけ。そんな存在だった彼らに、今ようやく互いの傷を舐め合う機会が与えられた。
今宵、彼らは集結する!



犯人たちの鎮魂歌 【番外編】

「爆弾、スケボー、クイズ。歴史の定番は私が作った。シンメトリー戦士・モリアーティG」

「爆発、水、ボウガン、刃物、人呼んで犯人界のクウガ。スーパーソムリエール・8」

「死者の声を聴いた事がありますか?右目キラー・蠍」

「宗教上の理由じゃないが、ブタは食べない。BuriBuri」

「犯人以外がほとんど主犯。ワシは帰らせてもらうぞ。如月峰水」

「年代的に言えば私はジャック・ザ・リッパーの孫世代デース。IT業界の帝王・トム」

「小さい子も見ているから、残虐表現は規制します。放送倫理の申し子・弁慶」

「歴代最多犯人は俺達だ。赤いシャムネコじゃないほう、傭兵団キャッツ」

「パートナー選びは慎重に。人生においても、殺人においてもね。秋吉」

「この小説は私が終わらせた。宮台なつみの登場だ!」

 

 

 

 

顔を合わせたるは錚々たるメンバー。

劇場版を彩ってきたもう1人の主役たち。

我の強い彼らが集められた理由はただ1つ。

それは自らの罪を悔い改めるため・・・

 

 

 

8「そんなつもりはありませんよね?皆さん」

 

蠍「各々が謎を全て解かれて、今作で散々辱められているわけだし」

 

G「そういうことだ。つまり私たちがやりたいことは全く違う。そう」

 

 

 

最強犯人決定戦である

 

 

 

 

猫「となれば話は早い。傭兵部隊に勝てる一般市民がいるとでも思ったか?我々は頭数だけで諸君らより多いのだが」

 

G「フィジカル自慢がしたいなら、私のいないところでやるべきだな。数百キロの爆弾を一晩で環状線とビルに仕掛けることができてからな」

 

トム「仕事を貰って雇用される側が何を言っているんデスか?社会的地位で私に勝てる者がいたら出てきてくだサーイ」

 

弁「大事な事を忘れていませんか?俺達は犯人。つまり殺害人数で語らないと」

 

蠍「国際指名手配を舐めないことね。作中で語られていない殺害人数はきっと私が最多。いえ、ラス様の分を入れたらもっと・・・」

 

 

 

議論が白熱する中、只一人静かに退室しようとする者がいた。

 

如月「くだらぬ。ワシは帰らせてもらう。見送りは結構!」

 

踵を返した如月であったが、その腕を掴み引き止める弁慶。そんな彼が差し出したスマホ画面に、如月は足を止め、2人は部屋の隅でコソコソと何かを語り合いはじめたようだ。

 

 

 

 

なつみ「それより皆、大事な数字があるわ。44億。そう、私の映画の興行収入よ。この中の誰が私に勝てるかしら?いないわよねぇ。何なら左右対称さんの4倍なのよ」

 

秋「それ言い出したら、ここにはいない人が93億叩きだしたわ。そもそもあの数字は怪盗キッドの功績であって貴女じゃ・・・」

 

なつみがキッと秋吉を睨み付ける横で、風戸だけがフンと鼻を鳴らし「せいぜい雑魚共がピーチク喚いていれば良い。世界最強のこの私の次に最強な犯人になれればさぞ幸せなことだろう」と言い放ったが、その場にいた誰もが無視するのは定番であった。

 

 

 

 

8「まぁ皆様、落ち着いてください。皆様が様々な犯罪を起こした素晴らしい犯人たちであることは大変よく理解できました。ですが誰もが探偵によって最後には謎を解かれてしまっているのです。そこには探偵の推理や運、行動力や周囲の協力の違いがあり、十人十色の境遇があり、そこに優劣をつけることは難しいのではないでしょうか?」

 

猫「たしかに一理あるな。我々の戦場でも、活躍の場が違う様々な兵器の、どれが優れているとは一概には言い切れない。ジャンケンで例えるなら、我々にはグーのような犯人もいれば、チョキのような、パーのような犯人がいる。グーが必ずチョキより優れているとは言い切れないものだ」

 

沢木とキャッツの言葉に、犯人たちは静かにうなずき、むしろ互いの健闘を讃え合おうという雰囲気が生まれ始めた。

 

 

 

 

秋「そういえば、皆はどんな探偵が強いなぁって思った?私は断然、毛利小五郎ね。カッコいいし強いし頭も切れるし。私、手も足も出なかったわ。手は出したけどね」

 

 

この秋吉の発言に、その場にいた犯人たちから小さな苦笑が巻き起こった。

 

 

トム「えっ、あんなポンコツに負けたのデスか?」

 

 

唯一、彼女の味方についたのは沢木だけであった。

 

 

8「えっ、ちょっと皆さん。毛利小五郎ですよ?あの名探偵の」

 

猫「いやいや、そりゃ弱くはないが・・・我々としてはむしろ眼鏡の坊主のほうが恐ろしいぞ。あと怪盗キッド」

 

蠍「馬鹿ねぇ、コナンくんに勝てるわけないじゃない。最強の小学生よ。あと怪盗キッド?あんな雑魚、私が楽々撃ち落としてやったわ」

 

なつみ「コナンくん・・・って子はよく知らないけど、キッドはたしかに弱いわね。あと仕事が雑」

 

ぶり「コナン?あぁ、あのちょこまか小僧か。所詮は小学生。この世界最強の私があと50cm腕を振り下ろせていれば、空手JKの邪魔さえ無ければ殺せたさ。何故なら私はレディに手をあげないジェントルマン」

 

 

鼻を鳴らした風戸であったが、その横顔を青蘭が「お前の右目を撃ってやろうか」と睨み付けていたことには気付いていなかった。

 

 

G「コナン、あぁ工藤新一の使い走りの。私が病院送りにしてやった」

 

 

鼻で笑う森谷であったが、その横顔を青蘭が「お前は両目潰してシンメトリーにしてやろうか」と睨み付けていたことには気付いていなかった。

 

 

 

 

G「今までの話を総合すると、どうやら最強は私のようだな。ドクター風戸が敗れたという毛利蘭も、私が爆弾で爆殺できたかもしれないのだから。まぁ工藤新一には勝てなかったが・・・奴を倒せる犯人こそ、最強に違いない」

 

森谷が胸を張って高笑いしていると、部屋の隅で如月と共にスマホを弄っていた西条がふと顔を上げた。

 

弁「えっ、工藤新一って・・・ひょっとして服部平次と友達の?俺、ちょっと戦いましたけどアイツすぐに尻尾巻いて逃げていきましたよ」

 

 

 

この時、犯人たちに衝撃が走った。

 

急転直下の森谷は一瞬その顔を強張らせたが、何か憑き物が落ちたように表情を晴れさせ、西条に握手を求めた。

 

G「キミこそがNo1だ。おめでとう、最強の犯人よ」

 

弁「えっ?それはどうも・・・でも、俺も所詮は西の高校生探偵の服部平次に負けた犯人ですから」

 

8「では決まりですね。服部平次を倒した犯人こそ、最強の犯人と。そしてあなたはそれまでの暫定最強犯人です。おめでとうございます西条大河さん」

 

犯人たちから拍手を贈られ、なつみから“ひまわり”の花束を受け取り、西条は恥ずかしがりながら静かに頭を下げて、歓声に応えた。

 

 

 

 

 

8「では皆さん、そろそろお開きの時間です。西條さんにシメていただき、最後は声を揃えて、我々も憧れる“あの台詞”を言いましょう!」

 

沢木の仕切りに応え、犯人たちは整列した。

 

 

弁「短い期間ではありましたが、【劇場版名探偵コナンの犯人たちの事件簿】を読んでいただき、読者の皆様ありがとうございました

 

 

 

 

 

 

 

次回、最終回の事件をお楽しみに!」

 

 

 

 

 

犯人一同「「Next Conan‛s HINT 【孫】」」

 

ええ。次の事件で最終回と言いました。今回は事件ではありません。

 

 

 

次回 おたのしみにね

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。